軌道修正か、リスクオフの巻き戻し か、あるいはセンチメントの

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軌道修正か、
リスクオフの巻き戻し
か、
あるいはセンチメントの変化か
Global Update
2015年2月
どのような言葉で形容しようと、金融市場は1月に散々な結果となった
後、2月には大幅に回復しました。
グローバル株式、
クレジット・スプレッド、
ソブリン債、
コモディティおよびボラティリティなど、ほとんどの市場で
1月の流れが反転しました。
これらの市場で2015年初めの軌道が軒並
み修正された背景には、
リスクオンの動きが再び広がったことが挙げら
れます。
複数の経済指標の改善、政策的支援、および下振れリスクの抑制は、
市場センチメントに変化をもたらしました。米国と英国が世界経済の成長
の牽引役としての立場を確立する一方で、欧州では経済指標が改善し、
欧州中央銀行
(ECB)
の政策が効果をあげつつあることが示唆されました。
ギリシャの債権者による合意は既存の救済策の延長でしかなく、持続
可能な解決策に向けた動きではありませんでしたが、ユーロ圏の結束
は依然として強固であるというメッセージを再度市場に発することにな
りました。
しかし、
もう少し明るい兆候がなければ、世界経済は「見通し良好」
とは
言えません。多くの国が引き続き厳しい経済状況に直面し、
さらなる政
策的支援を必要としました。
その結果、中国、
インド、
オーストラリア、
イス
ラエル、
トルコをはじめとする世界10カ国の中央銀行が、政策金利また
は預金準備率の切り下げを行いました。
PIMCO の Global Update では、当月の市場に影響を
与えたイベントについて振り返り、各国および各資産
クラスにわたって簡潔かつ包括的に総括します。
また、
今後の見通しに関するPIMCOの考えをわかりやすく
説明しています。本レポートは以下のセクションに分
かれています。
In the world:世界では
世界の景気トレンドの最新情報、主な政治的展開、金融市場に影響を及ぼす
政策変更をはじめとする世界のイベントについて
In the markets:市場では
グローバル株式、
コモディティ、通貨、先進国およびエマージング市場の債券
をはじめとする資産クラス別のパフォーマンスについて
Outlook:見通し
PIMCOが短期的に最も投資機会があると考える市場と注目するリスクなど、
PIMCOの最新のグローバル経済見通し
In the world
GLOBAL UPDATE
2015年2月
世界の金融市場は、
リスクオンの動きが再び広がったことで、2月に
することと引き換えにギリシャへの金融支援の4カ月延長を承認し
大きく軌道修正しました。S&P500は、1月に3%下落した後、2月には
たところでギリシャの膨大な債務負担が軽減されることはなく、さ
5.7%上昇して過去最高値を記録しました。
メキシコやブラジル、中
らなる改革の必要性がなくなることもありません。
しかし、新政府
国をはじめとする多くのエマージング市場でも資金シフトが起こ
に持続可能な解決策を策定する時間的猶予を与えることを厭わな
り、
これらの国の株式市場は2015年に入り上昇に転じました。
クレ
いという債権者側の意思は確かに示されました。
ジット・スプレッドもこの流れに追随しました。2月には、投資適格債
とハイイールド債のスプレッドが共に縮小し、債券価格は1月の下
落分を取り戻してさらに上昇しました。多くのコモディティ
(エネル
ギー、穀物および工業用金属など)でも同じ動きが起こり、相場は
1月の下落分を取り戻してさらに上昇しました。中でも石油価格の
上昇は際立っており、原油価格は18%超上昇しました。世界の国債
と貴金属の大半はこれとは逆の動きをみせ(1月に上昇し、2月に下
落)
、
この流れの背景にリスク許容度の高まりがあったことがうかが
えます。市場が楽観的な見方を取り戻したことは、ボラティリティが
低下したことからもわかります。VIX指数は、金融危機以降の最低水
準まで安定的に低下しました。
しかし間違いなく、
グローバル市場には、留意すべき不確実性がい
まだに多く存在しています。米国と欧州では経済への楽観的見方が
広がっていますが、その他の多くの国の景気は依然として懸念材
料です。
このことは、2月に世界の多くの中央銀行が政策措置を講
じたことで浮き彫りになりました。1月に、ECBが歴史的な量的緩和
を発表したことを皮切りに、10行の中央銀行が緩和的な金融政策
スタンスに転換しました。中でも目立ったのは、2月の中国の動き
でした。中国人民銀行(PBOC)は、資本流出、経済成長率の低下、
為替レートの上昇をはじめとする複数の問題に直面しており、預金
準備率を0.50%引き下げたほか(2年数カ月ぶりの産業全体を対象
とした利下げ)、3カ月で基準金利を2度引き下げました。人民元は
経済指標の改善、政策的支援、
テール・リスクの後退は全て、厳しい
PBOCによって厳格に管理されているため、対米ドルでその他のグ
状況にあった市場の支えとなりました。米国では、非常に力強い労
ローバル通貨と同水準まで下落せずに済みました。
しかし、
「固定
働指標を受けて、2月初めに市場センチメントが改善しました。欧
レート」の漸進的な切り下げによって、人民元は2年数カ月ぶりの
州で発表されたGDP成長率が予想外に堅調であったため、世界の
最低水準まで下落しました。中国の動きは、オーストラリア、インド、
トルコなどの主要国の利下げと同じタイミングであ
経済成長見通しはさらに上方修正されました。
これは特にドイツ、 インドネシア、
スペイン、英国に当てはまり、成長率はそれぞれ1.6%、2.0%、2.7%
(前年同期比)でした。インフレ水準の健全化はまだ明確化してい
ったことから、全面的な通貨戦争ではないにしろ、各国は競い合っ
て金利の底を目指しているとの憶測を呼びました。
ませんが、連邦公開市場委員会(FOMC)でハト派的発言が維持さ
れていることや欧州の量的緩和(QE)開始への期待から、経済成長
を支える政策が維持されるとの見方が支えられ、
リスク選好が拡大
しました。
しかし、市場にリスクオンの動きが再び広がった最大の
理由は、ギリシャからのニュースでした。政府が一連の改革を実施
欧州に散見される楽観要因
GDP成長率
スペイン
最近では、欧州で発表される経済指標が予想を上回る
5.0%
ことが増えています。
とは言うものの、注意すべきことは
まだたくさんあります。昨年の欧州連合のGDP成長率
2.5%
は引き続き上昇しましたが、そのペースは前年比1.3%
と非常に遅いものでした。さらに、加盟国の間では依然
として成長率にかなりのばらつきが見られます。英国は
0.0%
ユーロ加盟国ではありませんが最も力強い経済を維持
しており、その後にはスペインが続きます。
スペインはよ -2.5%
うやく深刻な2番底の景気後退から回復しました。一方、
イタリアとフランスは景気後退を示す水準に近い危険
-5.0%
な位置にあります。
出所:ISTAT、欧州連合統計局/ヘイバー
-7.5%
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
英国
2012年
イタリア
2013年
フランス
2014年
3
In the markets
GLOBAL UPDATE
2015年2月
まさに鏡映し
2月のリスク選好へのシフト
上昇
-3%
株式
リスク資産
2015年は不調な出だしとなったものの、2月には多くの
市場で資産価値が上昇しました。上昇は特に「リスク資
産」
、すなわち景気の足取りがしっかりとして下振れリス
クが抑制された時に最も選好されやすい資産で顕著
でした。ほぼ全てのグローバル株式市場が2月に上昇
し、ハイイールド債やエマージング市場の債券をはじめ
とする高リスク債券のスプレッドは対米国債で縮小しま
した。世界経済見通しの改善により
「セーフ・ヘイブン
(安全な資金の避難先)」となる資産を追求する動き
が弱まり、国債市場は米国を中心に逆の動きとなりま
した。
下落
原油
-8%
ハイイールド
エマージング市場
国債
1月
2月
6%
18%
26 bps
51 bps
-78 bps
-52 bps
35 bps
-53 bps
株式はS&P500指数、原油はブレント原油、ハイイールドはバークレイズ米国ハイイールド指数、
エマージング市場はJ.P.モルガン新興国債券指数、国債は10年物米国債をそれぞれ参照しています。
出所:ブルームバーグ
先進国債券
2月は、多くの先進国市場で利回りが上昇し、先進国債券の価格は
下落しました。債券は、主に明るい経済ニュース(米国の予想を上
回る雇用統計、英国のサービス・セクターの堅調、ユーロ圏の一部
でのGDPの上昇など)に反応しました。指標の改善が散見される
一方で、先進国の一部の中央銀行は緩和的な金融政策を維持し
ています。
オーストラリアとイスラエルは政策金利をそれぞれ0.25%、
0.15%引き下げ、スウェーデンのリクスバンクは0.10%の利下げを
行った上に12億ドル規模の量的緩和(QE)
プログラムを開始しまし
た。
さらに注目すべきは、ギリシャ支援の延長によって、ギリシャや、
イタリアやスペインを含む他の欧州周辺国のスプレッドが縮小し
たことです。
先進国株式
MSCIワールド・インデックスは1月に下落しましたが、2月には5.9%
の上昇に転じ、年初来のリターンは3.9%となりました。欧州首脳が
ロシアとウクライナの停戦やギリシャ支援の4カ月延長について合
意したことを受け、株価が上昇しました。ギリシャ問題はくすぶり続
けると見られるものの、市場はギリシャ支援の延長によって欧州の
差し迫った危機が後退したことを市場は好感しています。加えて、
2月に米国で発表された米連邦準備制度理事会(FRB)議事録の内
容が全体的にハト派的であったと受け止められたことや、欧州の経
済指標(例えば、購買担当者景況指数(PMI)速報値や信頼感指数)
が依然として低調ながらも投資家の予想を若干上回ったことが明
るい材料となっています。
4
クレジット
2月の投資適格グローバル・クレジットのリターンは-0.50%1となり、
同等年限の国債のリターンを0.88%上回りました。
グローバル・ク
レジット指数は17 ベーシスポイント縮小しましたが、
これは原油価
格が高水準で安定化したことによるコモディティ関連セクターの動
きが中心でした。また、ギリシャ新政府による改革を可能にする第
二次ギリシャ支援の4カ月延長が合意されたことに加えて、米国債
と比べてクレジットに対する需要が引き続き堅調であることもクレ
ジットの下支え要因となりました。
2月は悪材料が少なかったことから、多くのリスク資産が恩恵を受
け、
グローバル・ハイイールド社債のスプレッドは70ベーシスポイン
ト縮小しました。原油価格が狭いレンジで推移したことで、エネル
ギー・セクターは群を抜いて良好な5.5%のパフォーマンスをあげま
した。ハイイールド市場全体も2.3%の健全な上昇を示しましたが、
それをも上回りました。
エマージング市場株式
エマージング市場株式3は2月に約3%上昇し、月次ベースでは2014
年5月以降で最も大幅な上昇となりました。
ジャネット・イエレンFRB
議長が、
「少なくとも今後2回の会合」では利上げの可能性は低い
とコメントしたことを受けて、
リスク資産は上昇しました。景気循環
セクターは上昇に転じ、エネルギーや素材セクターがMSCIエマー
ジング・マーケッツ・インデックスを牽引した一方で、ヘルスケアや
公益事業などのディフェンシブ・セクターは足かせとなりました。国
別では、金融支援の4カ月延長を受けたギリシャが最高のパフォー
マンスをあげ、ウクライナとの停戦合意に至ったロシアは、原油価
格の回復や停戦の恩恵を受けました。
トルコでは中央銀行の独立性
に対する懸念が市場センチメントの重しとなり、最も低いパフォー
マンスとなりました。
モーゲージ債
政府機関系モーゲージ債(MBS)5は、金利の低下と期限前償還懸
念の後退を背景に同等年限の米国債を61ベーシスポイント上回る
パフォーマンスとなりました。高クーポンの政府機関系MBSは金利
上昇の恩恵を最も大きく受け、2月は年限30年の4.5%普通債が流
動性のある利付債の中で最も大きく上昇しました。
しかし、新規発
行総額が増加し、FRBによる購入の影響が引き続き低下したことか
ら、政府機関系MBSは需給が悪化しました。
非政府機関系MBS6は新発債の供給が限定的で投資家の需要が旺
盛であったことから、2月の価格は横ばいから小幅上昇となりまし
た。担保物件のファンダメンタルズも長期にわたって緩やかな改善
傾向が続いています。
インフレ連動債
2月は堅調な経済動向を背景に世界的に金利が上昇したことから、
グローバル・インフレ連動債は-1.2%7の下落となりました。
しかし、
原油価格の上昇とリスク選好のセンチメントがブレークイーブン・
インフレ率の水準を下支えしたことから、インフレ連動債は名目金
利債券を上回るパフォーマンスとなりました。米国の物価連動国債
(TIPS)は下落したものの、原油価格が堅調に推移し、コアCPIが予
想を上回ったことが金利上昇の抑制に寄与したことから、名目金利
国債を大きく上回るパフォーマンスとなりました。ECBの議事録の
公表により、ECBのインフレ連動債の買入額が当初予想された規
模を上回ることが明らかになったことから、ユーロ圏のインフレ連
動債は絶対リターンと相対リターンの両方で良好な結果となりま
した。英国では国債が下落しましたが、
コア・インフレ率の改善がブ
レークイーブン・インフレ率を支えたことから、インフレ連動債は比
較的小幅な下落にとどまりました。
地方債
2月の地方債は下落し、バークレイズ地方債インデックスのリターン
は-1.03%となりました。地方債は米国債をアウトパフォームし、その
結果、米国債利回りに対する地方債利回りの比は低下しました。地
方債は、好調なリテール需要が供給増を吸収して市場が勢いを増
す中、金利上昇局面で米国債をアウトパフォームしました。地方債
ミューチュアル・ファンドへの資金流入は34億ドルと、1月の48億ド
ルを若干下回ったものの、堅調を維持しています。新規発行総額は
前年同月比80%増の295億ドルとなりましたが、借換債が大半を占
めています。高利回り地方債は資金流入が低調であったにもかか
わらずアウトパフォームしましたが、先日承認された債務再編法は
違憲であるとの決定を受け、
プエルトリコをめぐる懸念が高まって
います。
エマージング債券
新興国の外貨建て債券は指数のスプレッドが縮小して上昇しまし
たが、現地通貨建て債券は利回りが上昇し、価格は下落しました。
欧州経済に力強さの兆しが現れ、ロシアとギリシャのテール・リス
クが後退したことに加え、原油価格が2014年6月以来初めて前月比
で上昇したことから、市場センチメントは改善しました。ムーディー
ズがロシアのソブリン格付けを投機的水準に引き下げたにもかか
わらず(市場は概ね織り込み済み)、原油価格の上昇とウクライナを
めぐる欧州首脳との停戦合意を背景に、ロシアの資産は全ての資
産クラスでアウトパフォームしました。外貨建て債券の指数でスプ
レッドが全般に縮小する中、原油輸出国(ベネズエラ、ガーナ、ロシ
ア、エクアドル)は明確に他国をアウトパフォームしました。現地通
貨建て債券は下落して指数の利回りは25 ベーシスポイント上昇し、
全般に利回りが上昇した先進国市場と同様の動きとなりました。
コモディティ
2月はエネルギー・セクターを筆頭に幅広いコモディティが上昇し
ました。米国での石油掘削リグ稼働数が減少したことから原油価格
は顕著に上昇し、
ブレント原油価格の上昇がWTI原油を上回ったこ
とから、WTIとブレントの価格差は拡大しました。2月は農産物セク
ターも上昇し、大豆コンプレックス(大豆穀粒および派生品)、穀物、
綿花は価格が上昇し、砂糖とコーヒーは下落しました。一方、貴金
属セクターは下落し、中国の旧正月需要の剥落とギリシャへの金融
支援延長決定を受けてセーフ・ヘイブンとしての需要が減少したこ
とが金の重しとなりました。工業用金属はまちまちの結果となりま
した。中国の精錬業者が生産削減を協議し、世界最大手の採鉱企
業がプロジェクト投資の削減を発表したことから銅価格は上昇し、
他の金属は下落しました。
通貨
2月の通貨市場はまちまちの展開となりました。ギリシャ金融支
援の延長によりユーロの懸念は一服し、イングランド銀行が金利
を0.5%に据え置いたことから英ポンドは対ドルで上昇しました。
一方、
スイス・フランは1月に大幅に上昇した後、2月は下落に転じ、
黒田東彦日銀総裁が為替相場は安定的に推移することが望ましい
と表明したにもかかわらず、
日本円は小幅下落しました。
エマージング市場通貨は市場センチメントの改善により上昇しまし
た。ロシア・ルーブルは、
ウクライナおよび欧州首脳との新たな停戦
合意や原油価格の安定化を背景に顕著に上昇しました。
リスク選
好環境は全ての通貨に恩恵をもたらしたわけではありません。
ブラ
ジル・レアルは経済成長への懸念が同国のマイナス材料となって
いることから軟化しました。
5
Outlook
GLOBAL UPDATE
2015年2月
PIMCOは、世界経済の成長率が2014年の約2.5%から2015年には
2015年のエマージング市場では、特に直近のコモディティ市場の調
2.75%*に加速すると予想しています。
この景気の漸進的な改善を
整局面を背景に、格差の拡大が見込まれます。PIMCOが公表してい
牽引する主な要因として、原油価格の下落が世界経済に与えるプ
るBRIM(ブラジル、
ロシア、
インド、
メキシコ)の成長率予想は約2.0%
ラスの影響とこの数年間に幅広く実施されている金融緩和策がも
ですが、実際には国によって大きな差があります。PIMCOはインドと
たらす経済的効果が挙げられます。原油価格の下落は世界全体の
メキシコについては比較的堅調な成長を予想していますが、2015
総合インフレ率の明らかな下押し要因にもなり、それにより多くの
年にブラジルおよびロシア経済は縮小する可能性があります。実
国では金融刺激策の維持または強化が容認されるでしょう。
際に、ロシアでは原油価格の下落と欧米諸国の制裁措置が引き続
米国は3.0%程度の経済成長率を達成し、今後も引き続き先進国市
場の経済成長を牽引すると見られます。PIMCOの米国に対する明
るい見通しには、堅調な消費者信頼感、稼働率の上昇、増加傾向に
ある資金供給といった、今後も引き続き景気回復を下支えすると
思われる要因が反映されています。持続的な成長は賃金の順調な
上昇を支え、失業率の一層の低下に伴って賃金上昇圧力が徐々に
高まることが予想されます。原油価格の急落で総合インフレ率は
一時的にマイナス圏に入る可能性がありますが、FRBはわずかな
賃金上昇を政策上のシグナルと捉え、2015年下期に政策金利の段
き投資と生産の重しとなることから、深刻な景気後退に陥ることが
予想されます。
ブラジルはそれほど明確な景気後退とはならない
ものの、
ブラジル政府が必要とされる財政構造改革措置を遂行し
最終的に政策の優先事項を調整する中で、経済は短期的に減速す
るものと思われます。メキシコは先頃実施した改革と米国経済の
力強い成長の恩恵を享受できる特異な位置にあります。一方、
コモ
ディティ価格の下落と改革指向の新政権は、インド経済に恩恵を
もたらすと思われます。
*2015年3月に行われた短期経済予測会議からの結果はGlobal Update 3月号に掲載する予定です。
階的な引き上げを開始することが予想されます。景気見通しに力
強さが増し、金融政策の正常化が予想されることから、他国通貨に
対する米ドルの上昇は続くと見られます。
ユーロ圏では金融政策の下支えが効果を発揮し、経済は小幅に成
長すると予想します。月額600億ユーロの資産を買い入れるECBの
量的緩和策が予定されていることに加え、ユーロの下落と労働市
場の緩やかな改善が2015年の経済成長を下支えすると思われます。
量的緩和が実施される前から生じていた足元の景気拡大の兆候
は特に心強い材料です。
これには、PMIの向上、失業率の低下、景
況感の改善などが挙げられます。金融政策による下支えの強化
によりデフレ・リスク緩和は成功するかもしれませんが、長期にわ
たって持続可能な成長を実現するには意義のある構造改革が必
要です。
アジアでは、
日本と中国の両国での財政および金融政策が成長見通
しを下支えし、
下振れリスクを制限すると思われます。
コモディティ価格
の下落も成長の下支え要因となります。
日本経済は2014年第4四半
期のGDP成長率が2.2%となり、一時的な景気後退から回復に転じ
ました。
日本は2015年に、(1)原油輸入価格の下落、(2)円の大幅な下
落、(3)積極的な財政および金融政策の恩恵を受けるものと思われ
ます。中国では2015年に不動産市場が調整色を強め、企業セクター
のレバレッジ解消が進む中で景気減速基調が続くものの、GDPは
6.0~7.0%の適切に管理されたペースで拡大を継続すると予想さ
れます。PBOCは成長率の減速傾向を受け入れ、必要不可欠とされ
る構造改革に重点を置きながら、下振れリスクを緩和するために
政策措置を徐々に進めていくでしょう。
さらに中国は世界最大のコ
モディティ消費国として、原油および鉄鉱価格の下落の恩恵を大き
く受けます。
6
中国は機動的な人民元切り下げを行うか
世界各国の通貨が対米ドルで軒並み大幅に下落する中、厳格に管
理された中国人民元はこの1年間の下落幅がわずか2%にとどまっ
ています。中国経済が減速の兆候を示し、資本流出が拡大する中
で、PBOCは人民元の許容変動幅を現状の2%から3%に拡大して
人民元の下落加速を容認する可能性があるとの憶測が広まりました。
それを受けて米国の市場関係者の間には、PBOCが他国の中央銀
行に追随して、輸出原動力の再始動と初期のデフレ圧力への対処
のための手段として通貨を利用しようとするのではないかとの懸
念が高まっています。
こうした懸念は杞憂だとPIMCOは考えます。
第1に中央銀行には為替レートの大幅な切り下げを図る前に使用
できる政策手段がいくつかあります(預金準備率の要件、政策金
利、流動性オペレーション、その他の規制措置など)。
さらに中国は
人民元を国際的な準備通貨に昇格させることを強く望んでおり、
今年、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に
人民元が組み込まれることを期待しています。人民元の大幅な下
落はこの目標達成に支障をきたす恐れがあります。4兆ドルを超え
る中国の外貨準備も通貨の安定維持を強力に支えることは言うま
でもありません。
付属資料
債券
米国
英国
ユーロ圏
日本
2015年 月初 年初
2015年 月初 年初 2014 2015年 月初 年初 2014 2015年 月初 年初 2014 2015年
2014年
2月
来
来
2月
来
来
年
2月
来
来
年
2月
来
来
年
2月
水準 変動(ベーシスポイント) 水準 変動(ベーシスポイント) 水準 変動(ベーシスポイント) 水準 変動
(ベーシスポイント) 水準
目標金利*
0.25
2年
0.62
+17
-5
5年
1.50
+34
10年
1.99
+35
30年
2.59
5年インフレ連動債
10年地方債20
0.50
0.05
+28
0.43
+8
-1
-15
-9
1.22
+34
-18
-86
1.80
+47
+37
-16
-122
2.49
-0.28
+7
-61
+69
-1.13
2.12
+33
+1
-66
米ドル**
通貨
2015年 月初
2月
来
-12
-0.23
+6
-69
+4
-127
+45
-2
+20
+22
-13
-0.09
-4
0.33
+3
-116
1.01
+1
1.07
英ポンド/米ドル
年初
2015年 月初
2014年
来
2月
来
年初
来
変動(%)
水準
変動(%)
水準
0.5% 5.6% 12.8%
1.54
2.5% -0.9% -5.9%
1.12
S&P500種指数
2015年 月初
2月
来
水準
2,105
FTSE100種指数
年初
2015年 月初
2014年
来
2月
来
変動(%)
水準
公益事業
15
16
-12
12.74
+29
-17
+136
-10
-91
0.07
+3
+4
-22
12.45
+30
-16
+7
-21
-139
0.34
+6
+1
-41
+6
-38
-137
1.42 +15
+18
-50
+8
+19
-74
5.94
+17
-20
-9
年初
来
年初
来
米ドル/日本円
2014 2015年 月初 年初
年
2月
来
来
変動(%)
水準
水準
変動(%)
年初
来
日経平均指数
2014 2015年 月初 年初
年
2月
来
来
変動(%)
水準
月初
来
水準
-0.8% -7.5% -12.0% 119.62 -1.7% 0.1% -12.0% 2.84
2014 2015年 月初
年
2月
来
変動(%)
米ドル/ブラジル・レアル
2014 2015年
年
2月
年初
2014年
来
変動(%)
-5.6% -6.5% -11.1%
ボベスパ指数
2014 2015年
年
2月
変動(%)
月初
来
水準
年初
2014年
来
変動(%)
-2.9%
コモディティ
月初来
水準
金融
+4
5.5% 2.2% 11.4% 6,947 2.9% 5.8% -2.7% 11,402 6.6% 16.3% 2.7% 18,798 6.4% 7.7% 7.1% 51,583 10.0% 3.2%
2015年
2月
14
+1
ドイツ株式指数(DAX)
セクターのスプレッド***
MBS13
0.02
ユーロ/米ドル
水準
12.25
-31
2014 2015年 月初
年
2月
来
95.29
株式
0.07
-4
ブラジル
月初 年初
2014年
来
来
変動(ベーシスポイント)
年初来
2015年
2月
2014年
変動(ベーシスポイント)
月初来
水準
19
-14
-9
-7
原油
108
-11
-8
-5
金
109
-9
-10
-10
銅
穀物
カバードボンド
27
-7
-10
-30
17
ハイイールド
476
-70
-40
+105
外貨建て新興国債券 18
402
-52
-2
+77
19
年初来
2014年
変動(%)
$50
3.2%
-6.6%
-45.9%
$1,213
-5.1%
2.4%
-1.5%
$272
8.9%
-3.9%
-16.8%
$47
4.3%
-4.8%
-9.4%
* 中央銀行の政策金利
** 米ドル指数(DXY)
*** 同等年限の国債に対する各セクターのスプレッド
出所:ブルームバーグ
1
バークレイズ・グローバル総合クレジット・インデックス(米ドル・ヘッジ有り)、2 BofAメリルリンチ先進国ハイイールド・コンストレインド・インデックス、3 MSCIエマージング・マーケッツ・インデックス(日次ネット・トー
タル・リターン)、4 MSCIワールド・インデックス(日次ネット・トータル・リターン)、5 バークレイズ固定金利型MBSインデックス(トータル・リターン、ヘッジなし)、6 Markit iBoxx非政府機関系MBSトータル・リターン・イン
デックス、7 バークレイズ世界インフレ連動国債インデックス(米ドル建て、ヘッジなし)、8 MMD(ミュニシパル・マーケット・データ)の利回り、9 JPモルガンEMBIグローバル・インデックス、10 JPモルガンGBI-EMグローバル・
ダイバーシファイド・インデックス、11 ブルームバーグ・コモディティ・インデックス、クレディ・スイス・コモディティ・インデックス、12 JPモルガン・エマージング・ローカル・マーケッツ・プラス(ELMI Plus)インデックス、
13
バークレイズ・グローバル総合MBSインデックス、14 バークレイズ・グローバル総合フィナンシャル・インデックス、15 バークレイズ・グローバル総合公益事業インデックス、16 バークレイズ・カバードボンド・グローバル・
18
インデックス、17 バークレイズ・グローバル総合ハイイールド・インデックス、
JPモルガン・エマージング・マーケッツ・ボンド・インデックス、19 ダウ・ジョーンズ-UBS穀物サブインデックス、2 0トムソンMMD(ミュニシパ
ル・マーケット・データ)AAAカーブ
7
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過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。本資料には、本資料作成時点での著者の見解が含
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全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行者、信用、インフレ、流動性
などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの
長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券
価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティー
の取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初
元本を上回ることも下回ることもあります。外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経
済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、新興成長市場への投資ではかかるリスクが増大することがあります。為替
レートは短期間に大きく変動する場合があり、ポートフォリオのリターンを減少させる可能性があります。モーゲージ担保証券
と資産担保証券は金利水準に対する感応度が高い場合があり、期限前償還リスクを伴い、一般的には政府、政府機関、または
民間保証機関による保証が付されていますが、民間保証機関が債務を履行する保証はありません。ソブリン証券は通常、発行
体政府によって保証されています。米国政府機関の債務は米国政府からさまざまな形で支援を受けていますが、政府による
全面的な保証は付与されないことが一般的です。こうした証券に投資するポートフォリオに対する保証はなく、ポートフォリオ
の価値は変動します。政府が発行する物価連動債(ILB)は、元本価値がインフレ率に連動して定期的に調整される債券です。
実質金利が上がった場合、物価連動債(ILB)の価値は減少します。インフレ連動国債(TIPS)は、米国政府が発行する物価連動債
(ILB)です。地方債による利子収入は、州税、地方税、また場合により代替ミニマム税の課税対象となる場合があります。社債
には、発行体が元利金の支払い不能に陥るリスクがあります。また社債の価格は金利感応度や発行体の信用力に対する市場
の認識、市場の全般的な流動性といった要因の影響により、変動する可能性があります。株式の価値は一般的な市場、経済、産
業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。コモディティは市場、政治、規制、自然などの条件により高ま
るリスクを伴い、すべての投資家に適しているとは限りません。デリバティブ商品を利用することにより、コストが発生する可能
性があり、また流動性リスク、金利リスク、市場リスク、信用リスク、経営リスク、そして最も有利な時点でポジションを清算でき
ないリスクなどが発生する可能性もあります。デリバティブ商品への投資により、投資元本以上の損失を被る可能性もあります。
インデックスに直接投資することはできません。
言及されている特定の発行体については、売買や保有継続の推奨を目的としたものではありません。PIMCO商品および戦略
に言及された証券を保有している場合がありますが、その場合においてかかる証券を保有し続けることを表明するものでは
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運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、デリバティブ取引等の価値、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入
有価証券の発行体の財務状況や信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動による影
響も受けます。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、損失をこうむることがあります。運用に
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39297
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