ハンガリー - 日本格付研究所;pdf

14-I-0091
2015 年 3 月 25 日
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
ハンガリー
(証券コード:−)
【据置】
外貨建長期発行体格付
格付の見通し
自国通貨建長期発行体格付
格付の見通し
債券格付
ハンガリー国立銀行
BBB
安定的
BBB+
安定的
BBB
(証券コード:−)
【据置】
外貨建長期発行体格付
格付の見通し
自国通貨建長期発行体格付
格付の見通し
債券格付
BBB
安定的
BBB+
安定的
BBB
■格付事由
(1) 格付は、主に比較的発展し輸出指向が強い経済構造、経常および財政収支の改善、EU 基金を通じた大規
模な資金流入などを評価している。他方、依然脆弱な金融システムや改善がみられるものの比較的大きな
政府および対外債務などが制約要因となっている。格付の見通しは安定的。安定した政治基盤を背景に現
政権は非伝統的ともいわれる政策を導入してきたが、経済財政面では一定の成果をあげている。経済は内
需を中心に 14 年には 3%を超える成長となったほか、財政赤字も 12 年以降 GDP 比 3%を下回っている。
経常収支も黒字が 10 年から継続しており、対外流動性の安定とともに対外債務残高も縮小している。懸
案となっている金融システムについても政府は銀行の外貨建住宅貸出に対する重要な対策を講じている。
地政学的リスクや国際金融市場の先行きに大きな変化がなければ、このまま改善が続くとみているが、政
策効果が剥落した後の状況については注視していく。
(2) ハンガリー国立銀行(NBH)の格付は、同国の中央銀行であるほか、全ての株式は政府が保有しており、
ハンガリーの格付を反映している。
(3) 13 年の名目 GDP が約 1,000 億ユーロ、人口 1,000 万人と中東欧では中規模の国。比較的発展し輸出指向
が強い経済構造であり、13 年の一人当たり GDP(購買力平価)は約 2.3 万米ドルを超えている。金融危
機を受けて、経済は企業、銀行、家計の債務削減の継続から民間内需が落ち込み長らく低迷してきた。し
かし、13 年からは政府の雇用支援策や大規模な EU 基金からの資金流入、NBH による中小企業貸出対策、
さらには燃料安や公共料金引き下げなども加わり、投資や個人消費を中心に回復している。輸出も地政学
的な影響を軽微にとどめ自動車産業の能力増強や通貨安などから好調を持続している。これにより、14
年の実質 GDP 成長率は 3.6%(速報値)と 06 年以来の高成長を記録した。先行き経済は政策効果が縮小
することからやや減速するものの、経済成長の足かせとなってきた要因が解消されつつあるほか、主要貿
易相手国である EU 経済は欧州中央銀行の大胆な金融緩和により復調が期待されることから 15、16 年と
も 2∼3%程度の成長が続く公算が大きい。物価(HICP)は公共料金引き下げ、燃料や食品価格の下落か
ら 14 年は 0.0%となった(燃料、食品、アルコール、タバコを除いたコア:1.4%)
。消費者物価の下方圧
力が続くものの公共料金引き下げの影響の剥落や需給ギャップの縮小から 15 年から緩やかに上昇してい
くとみている。
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http://www.jcr.co.jp
(4) 金融システムは依然脆弱な状況にあるものの、政府は外貨建住宅貸出などに対する重要な対策を講じた。
銀行の民間向け貸出残高は外貨建を中心に 09 年初のピークから 14 年末までに 3 割近く縮小し経済成長の
足かせとなってきたが、足元 NBH の中小企業向け貸出対策や経済回復により下げ止まりつつある。他方、
14 年末の不良債権比率は企業向けが改善する一方、家計の外貨建住宅貸出の劣化から 13.3%と小幅な低
下にとどまっている。こうした高い信用リスクに重い銀行の税負担が加わり、銀行業績は 10 年以来低迷
してきた。14 年 11 月、政府は銀行が債務者と交わした契約が不公平であるとの最高裁の決定に基づいて、
外貨建の住宅貸出を市場の為替相場で自国通貨建に転換する決定を下した。銀行は自国通貨への転換、貸
出金利の引き下げ、債務者に対する補償費用の支払いに応じることとなった。銀行はこれにより大幅な引
当金の計上を余儀なくされ 14 年の銀行利益は過去最大の赤字を計上した。しかし、補償金は元本削減に
充当され、債権も自国通貨建に転換されることから、大幅なリスクの低減が期待される。また、資産管理
会社が設立され、銀行の劣化した商業不動産貸出債権なども買い取る予定である。銀行は既に欧州の親銀
行からの資本注入により 14 年末の自己資本比率は 17.3%と高水準を維持しているが、不良債権処理の先
行きは引き続き注視する必要がある。また、政府は数年内に銀行の税負担の軽減を図る検討を始めている。
(5) 対外債務は JCR が格付している BBB レンジのソブリンと比べて大きいが、14 年 9 月末には 09 年末の
GDP 比 149%から同 120%を下回るまで縮小している。経常収支は 10 年から黒字に転換し、14 年も GDP
比 4%を超える黒字を計上したとみられる。自動車産業の生産能力が増強されており経済回復によって輸
入増となった場合でも貿易黒字の継続が可能とみている。対外ポジションは経常黒字継続と EU 基金から
の資金流入などにより改善しており、対外債務残高も縮小している。対外流動性も外貨準備高/短期対外
債務が 2 倍を超えており、資金調達に支障を来す恐れは小さい。政府部門は対外債務全体の 4 割以上を占
めるが、世界の金融市場の行方が不透明な中でも国際金融市場から資金調達を実施している。また、13
年 8 月には IMF に対する借入残高を全て、14 年 11 月には EU 向けの借入残高の半分以上を繰上げ返済し
ている。
(6) 安定した政治基盤を背景に政府は債務の削減に向け、11 年初から財政健全化策を数次にわたって導入し
てきた。一般政府財政赤字(ESA2010)は経済が低迷する中でも 12 年から GDP 比 3%以内を維持してい
る。14 年は総選挙前でも大規模な歳出は打ち出されず財政健全化を堅持し、歳出の凍結や税収増などか
ら同 3%以内を堅持したとみられる。一般政府債務残高(ESA2010)は 11 年末には GDP 比 81%まで増加
したが、その後は財政赤字の改善から縮小に転じ、14 年末には GDP 比 77%前後まで低下したとみられる。
13 年 6 月には 04 年以来続いていた EU 過剰財政赤字是正手続きが解除されている。政府は 15 年の一般政
府財政赤字を GDP 比 2.4%とさらに引き下げる計画であるが、財政健全化を堅持していること、さらには
不測の事態に対処する準備金を計上していることから、財政赤字は引き続き抑制されるとみている。他方、
これまでの財政健全化策は、歳出削減策が盛り込まれているものの、歳入に依存しており、持続的な財政
赤字抑制に向け今後は歳出改革が重要である。
(担当)内藤 寿彦・佐伯
■格付対象
発行体:ハンガリー (Hungary)
【据置】
対象
外貨建長期発行体格付
自国通貨建長期発行体格付
対象
第 5 回円貨債券
格付
見通し
BBB
BBB+
安定的
安定的
発行額
発行日
償還期日
250 億円 2007 年 10 月 26 日 2017 年 10 月 26 日
発行体:ハンガリー国立銀行 (National Bank of Hungary)
【据置】
対象
外貨建長期発行体格付
自国通貨建長期発行体格付
格付
見通し
BBB
BBB+
安定的
安定的
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http://www.jcr.co.jp
利率
2.11%
格付
BBB
春奈
対象
第 25 回円貨債券
発行額
発行日
償還期日
100 億円 1995 年 10 月 19 日 2015 年 10 月 19 日
利率
6.00%
格付
BBB
格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 3 月 20 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本
主任格付アナリスト:内藤 寿彦
幸一
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類
と記号の定義」
(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、
「ソブリン・準ソブリンの信用格付方法」
(2014 年 11 月 7 日)として掲載している。
5. 格付関係者:
(発行体・債務者等)
ハンガリー(Hungary)
ハンガリー国立銀行(National Bank of Hungary)
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので
はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外
の事項は含まれない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
・ 格付関係者が提供した監査済財務諸表
・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明
・ 格付関係者が提供した経済・財政運営方針などに関する資料および説明
・ 経済・財政動向などに関し中立的な機関が公表した統計・報告
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
独立監査法人による監査、発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証な
ど、当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
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を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ
スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部
TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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http://www.jcr.co.jp