特集論文 準天頂衛星cm級測位補強 サービスの鉄道環境での評価試験 加賀谷篤大* 角谷卓磨* 白樫智也** 金井利喜*** 横山啓之*** Evaluation of Centimeter Positioning Reinforcement in Railway Environment Atsuhiro Kagaya, Takuma Kadoya, Tomoya Shirakashi, Toshinobu Kanai, Hiroyuki Yokoyama 要 旨 準天頂衛星(Quasi−Zenith Satellite:QZS)を利用した 衛星の利用検討を行うに当たり,鉄道環境下における性能 cm級 測 位 補 強 サ ー ビ ス は , GPS( Global Positioning 評価及び実績が不十分である。 System)による測位で発生する誤差を補正するための情報 本稿では,東日本旅客鉄道㈱の埼京線E233系7000代一 (1) 般形直流電車(以下“E233系電車”という。)にGPSと準天頂 を配信し,cm級の高精度測位を行うサービスである 。 測位補強サービスで得られる高精度な自己位置及び時刻 衛星の受信システムを搭載し,埼京線/川越線の大崎∼南 は,自動車,鉄道を始め様々なアプリケーションに応用で 古谷間で鉄道車両の高精度測位計測試験を行った結果につ きるという期待が高まっている。 いて述べる。この試験における確認項目は次の3点である。 その中でも鉄道は,列車位置及び時刻管理が重要な交通 盧 実路線での動作を確認 機関であるため適用は効果的と考えられている。一方,鉄 盪 都市部での測位精度の実力確認 道では運行面での安全に対する要求は厳しく,現状準天頂 蘯 鉄道環境下(高圧線,車体の振動等) での精度確認 測位衛星システム QZS#1 (みちびき) 鉄道 GPS 遮蔽物 GPS 測位 測位 GPS メッ セー 補強 信号 ・架線 ・車両上部の設備(パンダグラフ等) ・線路周囲の構造物 情報 測位信号受信用 アンテナ ジ情 報 アップリンク 地上システム ダウンリンク 補強信号受信用 アンテナ 追跡 管制局 電子基準点 車内設置機器 監視局 運用 管制局 外部機関 GPS受信機AQLOC ログ収集用パソコン 鉄道環境下での測位 左側が準天頂衛星測位システム,右側が評価を行う鉄道である。電子基準点での観測データから補強情報を生成し,準天頂衛星を介して配信 する。鉄道側には,車両屋外上部に補強信号受信用アンテナ及び測位信号受信用アンテナ,車内にそれぞれの受信機を設置し測位演算を行う。 架線,車両上部の設備,周囲構造物が存在する鉄道環境下で高精度測位の評価を行う。 16 (166) * 三菱電機㈱ 鎌倉製作所 **同社 伊丹製作所 ***東日本旅客鉄道㈱ 三菱電機技報・Vol.89・No.3・2015
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