新たな収益認識基準 合同移行リソース・グループ;pdf

Applying IFRS
新たな収益認識基準
合同移行リソース・グループ
2015 年 1 月
目次
1. 概要 ................................................................................... 3
2. 全体的な合意に至っていない論点 ........................................... 3
2.1 移行期間中の契約変更の会計処理 ...................................................... 3
2.2 現金以外の対価 ............................................................................... 3
2.3 回収可能性 ...................................................................................... 4
2.4 変動対価(特に顧客に支払われる対価) ................................................ 4
3. 過去に TRG で取り上げた論点に関するアップデート ................... 5
4. 今後 TRG で取り上げる論点のプレビュー ................................. 5
4.1 重要な権利 ...................................................................................... 5
4.2 顧客に支払われる対価 ...................................................................... 6
4.3 重要な金融要素 ................................................................................ 6
付録―TRG が合意した論点........................................................ 7
重要ポイント
TRG メンバーは、第 3 回会議において、実務適用上のさまざまな問題点について議論し、多く
のトピックに関して概ね合意に達した。
TRG は、移行期間中の契約変更、現金以外の対価、回収可能性、及び顧客に支払われる変
動対価に関する問題点については合意に至らなかった。そのため、両審議会は、追加の適用
指針の要否を判断する必要があるかもしれない。
両審議会のスタッフは、ライセンス及び履行義務の識別に係る規定の改善の可否に関する調
査について現状報告を行った。スタッフは、2015 年 2 月に開催される IASB・FASB 合同会議
において、調査結果を発表する予定である。
さらにスタッフは、財務諸表作成者が IFRS 第 15 号をより適用し易くするために、実務上の便
法の追加を両審議会で検討すべきか否かについても、現在調査中であることを説明した。
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新たな収益認識基準-合同移行リソース・グループ
1. 概要
収益認識の新基準に関する合同移行リソース・グループ(TRG)は 2015 年 1 月に再び
会議を開き、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)(以下、
両審議会)が合同で公表した新しい収益認識基準である IFRS 第 15 号「顧客との契約
から生じる収益」に関して関係者から提起された数々の実務適用上の論点について審
議を行った。
財務諸表作成者が
IFRS 第 15 を適用する
際の一助となるように、
TRG はこれまでの会議
よりも多くの論点を取り
上げた。
いくつかの論点に関して何人かの TRG メンバーは似通った見解を示したものの、移行
期間中の契約変更の会計処理、現金以外の対価、回収可能性、顧客に支払われる変
動対価に関する適用上の問題点については合意に至らなかった。両審議会は、追加の
適用指針の要否を判断するため、TRG の議論の動向を注視している。
TRG メンバーが概ね合意した論点は、本稿末尾の付録にまとめている。これらの見解
は正式な効力を有するものではないが、各トピックに関する最新の見解である。企業が
新基準の適用を進めるにあたっては、これらの見解を考慮すべきであると我々は考えて
いる。
さらにスタッフは、新しい収益認識基準に実務上の便法を追加することを両審議会が検
討すべきか否かに関し、現在調査を行っていると説明した。こうした実務上の便法として、
(1) 売上税の表示(2014 年 7 月の TRG 会議で審議1)、(2) 輸送が契約における履行
義務に該当するか、(3) 移行期間中における契約変更の会計処理について取り扱う可
能性がある。
新基準の発効日が延期される可能性についてスタッフから新しい情報は提供されず、
発効日の延期の可能性に関して受領したフィードバックについて、2015 年第 2 四半期
前半の合同会議で審議する予定であることが改めて説明された。
2. 全体的な合意に至っていない論点
2.1 移行期間中の契約変更の会計処理
TRG メンバーは、新基準の適用前に行われた契約変更について、移行時の会計処理
の負担を軽減するため、両審議会が実務上の便法の追加を検討する可能性があること
に概ね同意した。
財務諸表を作成する企業は、経過措置に基づくと、適用日時点(すなわち、2017 年 1
月 1 日)で完了していない過去の契約変更をすべて評価しなければならなくなるとの懸
念を提起していた。この評価は、過去に複数年契約を何度も変更している企業にとって
かなりの負担になる可能性がある。我々は、実務上の便法をどのように適用するかに
ついて(たとえば、両方の移行方法で利用できるようにするのか、すべての契約に適用
されるのか、一部の契約に適用されるのか等)、スタッフが利害関係者と議論するものと
見込んでいる。
2.2 現金以外の対価
TRG メンバーは、収益認識新基準では現金以外の対価(例:顧客から対価として受け取
る株式や広告)を公正価値で測定することを求めているが、公正価値の測定時期は明
記されていないことを互いに確認した。TRG は、考え得る測定日として、「契約開始日」、
「現金以外の対価を受領した(又は受領できるようになった)日」、「現金以外の対価を受
領した日と関連する履行義務を充足した日のいずれか早い方」の 3 つを検討した。いず
れの測定日も TRG メンバーから一定の支持を集めた。
1
IFRS Developments 第 85 号「収益認識に関する合同移行リソース・グループ(TRG)が適用上の問題点を議
論」(2014 年 7 月)を参照のこと。(http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ で入手可)
新たな収益認識基準-合同移行リソース・グループ
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また、IFRS 第 15 号では、対価の変動性が対価の形式以外のものに起因する(すなわ
ち、企業が対価を回収できるか否かが明確でない)場合にのみ、変動対価に係る制限
を現金以外の対価に適用することが求められている。上場株式の価格変動のように、
対価の形式によって現金以外の対価が変動する場合、この制限は適用されない。IFRS
第 15 号は、現金以外の対価がその形式及び他の理由の双方が原因で変動する場合
に、制限がどのように適用されるかについては説明していない。TRG メンバーの中には、
変動性の要因に基づき対価を区分することを基準書は要求しているものと解釈できると
いうメンバーもいたが、そのようなアプローチはあまりに複雑であり、その割に特に有用
な情報をもたらさないと強調するメンバーもいた。
2.3 回収可能性
TRG メンバーは、(契約開始時又は再評価時に)回収可能性が高くないと判断された場
合、企業はいつ収益を認識することになるのかについて議論した。IFRS 第 15 号では、
取決めが当該基準に基づき契約とみなされるための回収可能性要件(又は他の 4 つの
要件のうちいずれか)を満たさない場合、企業が履行を完了し、実質的にすべての対価
を受領した時点、あるいは契約が終了した時点でのみ、返還を要さない受取対価を収
益として認識できると述べられている。数人の TRG メンバーは、この規定があることで、
様々な状況において(例:企業が履行を継続的に行う月々のサービス契約)、返還を要
さない現金対価の認識が際限なく繰り延べられてしまうことを指摘した。これらの TRG メ
ンバーは、それが両審議会の意図であるのか疑問を呈した。
弊社のコメント
これらの規定によって、履行の時点や返還を要さない現金を受け取った時点よりも収益
の認識が遅くなるため、状況によっては当該規定が過度に厳格であることに我々も同意
する。この分野に関して、追加の適用指針が示されることが望まれる。
2.4 変動対価(特に顧客に支払われる対価)
TRG は、顧客に支払われる対価の形式を取る変動対価(例:リベート、クーポン)に関し、
取引価格の減額(よって収益の減額)をいつ認識するのかについて議論を行った。TRG
メンバーは、これらのトピックに関連して IFRS 第 15 号で矛盾が生じていることを指摘し
た。すなわち、IFRS 第 15 号は、契約開始時及び企業が義務を履行するときに潜在的な
変動対価のすべてを見積り、取引価格に反映させることを求めている。しかし、顧客に
支払われる対価については、関連する売上が認識された時点、あるいは企業がそうし
た対価を提供することを約束した時点のいずれか遅い時点で、当該金額を収益の減額
として認識することが定められている。TRG メンバーは、IFRS 第 15 号が明確化されな
ければ、一定のインセンティブ(たとえば、財又はサービスが顧客に移転された後に提
示された新しいインセンティブ・プログラム)の認識時期に関し、企業が異なる結論に至
ってしまうであろうことに大筋で合意した。
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新たな収益認識基準-合同移行リソース・グループ
3. 過去に TRG で取り上げた論点に関するアップデート
TRG は、2015 年 3 月
30 日に開催される次の
会議で取り上げる可能
性がある質問に関し、
最初のフィードバックを
行った。
両審議会は、TRG が 2014 年 10 月に審議した 2 つのトピック(ライセンス、及び財又は
サービスが契約の観点から区別できるか否かの判断を含む履行義務の識別)に関して、
IFRS 第 15 号を改善できるか否か調査を行い、作成者やその他利害関係者の意見を聞
くようスタッフに指示していた。両審議会は、2015 年 2 月の合同会議でこれらのトピック
について議論する予定である。スタッフは、2014 年 7 月に TRG が審議した、本人又は
代理人(総額又は純額)に関する適用指針の変更の可能性について、引き続き調査す
る予定である。スタッフによると、他の 2 つのトピックについて先に審議するとのことであ
るため、2015 年 2 月の会議では、本人代理人については審議されない。
IFRS 第 15 号に変更が加えられる場合、意見の募集をはじめ、それぞれの審議会のデ
ュー・プロセスの手続きが実施されることになる。
両審議会は、TRG が 2014 年 10 月に議論したその他の論点(すなわち、追加的な財又
はサービスに対する顧客の選択権に関する重要な権利の評価方法、契約資産及び契
約負債の表示、契約の強制可能性及び解約条項に関する質問)については、今後特段
の対応を取ることは予定していない。
4. 今後 TRG で取り上げる論点のプレビュー
スタッフは、2015 年 3 月 30 日に開催される次回の TRG 会議のアジェンダに加えられ
る可能性があるいくつかの質問に関し、最初のフィードバックを求めた。さらにスタッフは、
利害関係者は、審議が必要な論点を TRG に提出するとともに、IASB 又は FASB のウェ
ブサイトに既に提出されている論点を確認することが奨励されるとした。
4.1 重要な権利
•
重要な権利の行使は、当初契約の延長、契約変更、あるいは変動対価のいずれと
して会計処理すべきか?
•
重要性を評価するにあたり、返金が不要な前払手数料は、法的拘束力のある契約
期間に係る手数料と比較すべきか、それともサービス提供の見積期間にわたって受
領することが見込まれるサービス手数料の累計額と比較すべきか?
•
重要な権利によって、重要な金融要素も生じるか(すなわち、顧客は、実質的に将
来の財及びサービスに関して企業に前払いを行っているのか)?
TRG メンバーは、最初の 2 つの質問については実務でばらつきが生じる可能性が高い
ことから、議論すべきであることに大筋で合意した。3 つ目の質問に対する答えは、取決
めの個別の事実及び状況によると考えられるため、これ以上の分析は難しいかもしれ
ないと判断された。
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4.2 顧客に支払われる対価
•
顧客に支払われる対価に係る規定は、契約レベルで適用すべきか、それともより幅
広い「顧客関係」全体に適用すべきか?
•
当該規定は、流通網に含まれる顧客にのみ適用されるのか、それとも企業の顧客
であればすべての顧客に適用されるのか(例:取引における代理人が、本人当事者
の顧客に直接インセンティブを提供している場合)?
•
顧客への支払いが顧客から受領する対価を上回る場合、この「マイナスの収益」を
企業はどのように表示すべきか?
TRG メンバーは、最初の 2 つの質問については議論すべきであることに総じて同意した。
マイナスの収益に関しては、適用指針を追加すれば有用であると述べたメンバーもいれ
ば、このような問題が生じるのは稀であるというメンバーもいた。
4.3 重要な金融要素
•
IFRS 第 15 号では、約束された対価の金額と現金販売価格との差額が、資金提供
以外の理由により生じている場合、重要な金融要素は存在しないと述べられている
が、これはどの程度幅広く適用すべきか?
•
無利息の融資契約に重要な金融要素は含まれるか?
•
対価は前払いされるものの、収益が複数年にわたって認識される場合、貨幣の時
間価値はどのように計算するか?
TRG メンバーは、3 つの質問すべてについてさらに議論すべきであることに同意した。
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付録―TRG が合意した論点
約定した財又はサービスの識別
IFRS 第 15 号を適用するにあたり、企業は、契約に含まれる約定した財及びサービスを識別し、それらの財及びサービスのうちいずれが区
別できるか(すなわち、履行義務であるか)を判断しなければならない。
提起された質問
全体的な合意
新しい収益認識基準では、現在成果物として識別されていない
約定した財又はサービスの識別が要求されるか?
通常は要求されない。企業は、形式的、あるいは取るに足らないと思
える項目にも注意を払うかもしないかもしれないが、特定のアイテム
が約定した財又はサービスであるかどうかを判断するにあたり、重要
性を加味することになる。たとえば、電気通信会社は、提供する「無償
の」携帯端末に対価を配分しなければならない場合がある。同様に、
自動車メーカーも、現行実務においては販促のためのインセンティブ
と捉えられる「無償の」保守サービスに対価を配分しなければならない
場合がある。
非常に多くの約定した財又はサービスを新たに識別することが実
際には両審議会の意図ではなかった場合、IFRS 第 15 号に改正
すべき点はあるか?
多くの TRG メンバーは、IFRS 第 15 号の結論の根拠を改訂することは
望ましいが、IFRS 第 15 号の文言を変える必要はないと考えていた。具
体的には、何人かのメンバーが、結論の根拠 2 における「形式的、ある
いは取るに足らない」という文言は、両審議会の予想を超える混乱が
生じることを避けるために削除しても良いのではないかとコメントした。
両審議会は、2015 年 2 月の合同会議において、財又はサービスが契
約の観点から区別できるか否かの判断に関する規定について審議を
行う際に、これを改正すべきかどうかを検討する予定である。両審議会
が2015 年2 月の会議で何らかの対応を取った場合、約定した財又は
サービスの識別に関する TRG の全体的な合意に影響が及ぶ可能性
がある。
2 IFRS 15.BC90
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契約を獲得するための増分コスト
IFRS 第 15 号の下では、契約を獲得するための増分コスト(例:販売手数料)は、企業がそれらのコストの回収を見込んでいる場合、資産とし
て認識される。
提起された質問
全体的な合意
契約更新において手数料が支払われる場合、いつ、どの金額で
資産計上すれば良いか? 企業は当該資産をどのように償却す
ればよいか、また更新時の手数料が当初契約時に支払った手数
料と同等であるか否かをどのように評価すれば良いか?
TRG メンバーは、スタッフ・ペーパー中の詳細な質問に焦点を合わせ
るのではなく、IFRS 第 15 号におけるコストの資産化に係る基本原則
について議論した。TRG メンバーは、IFRS 第15 号の資産化要件を満
たす可能性がある契約コストをいつ認識すべきかを決めるには、負債
に関する基準が適用できることに留意した。
個別の契約として処理されない契約変更に関して稼得した手数
料を資産化すべきか?
手数料が将来事象を条件としている場合、増分コストとみなすこ
とができるか?
払い戻し条項がある手数料、及び(又は)累積的な閾値の達成を
条件とする手数料は資産化できるか?
手数料の支払に係る付加給付は、資産化金額に含めるべきか?
異なる期間にわたり充足される複数の履行義務に関係する契約
コスト資産は、どのようなパターンで償却すべきか?
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TRG メンバーは、IFRS 第 15 号によって、現行の IFRS に基づく負債
の認識に関する規定が変わることは想定されていない点に同意し
た。よって、企業はまず適用できる負債の基準を参照し、当該コストに
係る負債をいつ認識すべきかを判断することになる。その後に IFRS
第 15 号を参照し、関連するコストを資産化する必要があるか否かを
判断する。
TRG メンバーは、IFRS 第 15 号を変更する必要はないことに総じて同
意した。また、コストの認識に関しては、適切な会計処理を決定するの
に相当な判断が求められる局面があることでも意見が一致した。たと
えば、異なる期間にわたり充足される複数の履行義務に関係する契
約コスト資産の償却パターンなどの項目を評価する際に判断が求め
られる。
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待機義務
IFRS 第 15 号では、契約には「財又はサービスをいつでも提供できるように待機するというサービス(例:利用可能となり次第、提供されるソ
フトウェア製品の不特定のアップデート)又は顧客が使用することを決めた時に、財又はサービスを利用できるようにするサービス」3 が含ま
れる場合があると述べられている。
提起された質問
全体的な合意
「典型的な」待機義務に含まれる約定の性質とはどのようなもの
か?
TRG メンバーは、待機義務における約定は、財又はサービス自体の引
渡しではなく、顧客が財又はサービスにアクセスできるという保証であ
ることに総じて同意した。
あるスタッフは、どのような場合にソフトウェア/テクノロジーに係る取引
に特定のアップグレード権(すなわち、独立した履行義務)又は不特定
のアップグレード権(すなわち、待機義務)が含まれるのかを判断する
ための現行実務を変えることが両審議会の意図ではなかったとの考
えを示した。
企業は、一定期間にわたり充足される待機義務について、進捗度
をどのように測定するか?
TRG メンバーは、定額法による収益配分をデフォルトとして使うことは
できないことに同意した。しかし、TRG メンバーは、顧客が契約期間を
通して約定した便益を受領して消費することが見込まれる場合、時間
を基礎とする進捗度の測定(例:定額法)が適切になるであろうことに
総じて同意した。あるスタッフは、これは、不特定のアップグレード権
の場合に該当することが多いと述べた。TRG メンバーは、便益が契約
期間にわたり均等ではない場合(例:冬季に便益がより多くなる年間の
除雪契約)、比例的な認識は適切ではない可能性があることに総じて
同意した。
3 IFRS 15.26(e)
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回収可能性
IFRS 第 15 号では、回収可能性とは、企業が権利を得ると見込む対価の金額を顧客が支払う能力及び意図であると述べられている。両審議
会は、IFRS 第 15 号に定義される契約が存在するか否かを判断する上で、顧客の信用リスクを評価することは重要であると結論付けた。
提起された質問
全体的な合意
契約のポートフォリオに関し、企業は回収可能性をどのように評
価すればよいか?
TRG メンバーは、契約に基づく未払金額を顧客が支払う可能性は高い
ものの、過去に契約ポートフォリオ中の一部の顧客から対価を回収で
きなかった経験がある場合には、当該契約に係る収益を全額認識した
うえで、対応する契約資産又は債権に関して個別に減損の評価を行う
ことが適切であることに同意した。
一部の TRG メンバーは、収益を認識するのと同じ期間に、(予想される
価格譲歩に関して収益を減額する代わりに)契約に係る貸倒費用を認
識するか否かを決定するための分析では、判断が求められると注意を
促した。
企業はいつ回収可能性に関する評価を見直すか?
IFRS 第 15 号によれば、企業は、契約の開始時点(ならびに重要な事
実及び状況に変化があった時点)で、権利を得ると見込む対価(すな
わち、契約金額ではなく取引価格)を回収する可能性が高いか否かを
評価しなければならない。TRG メンバーは、事実及び状況の変化によ
る回収可能性に関する評価の見直しの要否を決定するためには判断
が求められることに同意した。また、事実及び状況の変化が、IFRS 第
15 号に基づく契約が存在しないことを示唆する程に重要なものである
か否かを決定する際にも判断が求められる。
企業は、契約に価格譲歩が含まれるか否かをどのように評価す
ればよいか?
両審議会は、履行に対して一部でも支払いを受けるだろうと企業が考
えていることが、当該取決めが契約の定義を満たすことの十分な根拠
になりうる(よって対価のうち回収が見込まれない部分は、むしろ価格
譲歩に類似する)と述べている。
TRG メンバーは、企業に判断が求められることに同意した。TRG メン
バーはまた、価格譲歩、減損、及び IFRS 第 15 号の下で契約とみなさ
れるための十分な経済的実質の欠如を区別するのは、難しい場合が
あることも認めた。
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変動対価
見積取引価格に含める変動対価の金額には制限が設けられている。すなわち、変動対価を取引価格に含めるためには、収益の大幅な戻
入れが将来生じない可能性が非常に高いと結論付けなければならない。
提起された質問
全体的な合意
変動対価に係る制限は、契約レベルで適用されるのか、それとも
履行義務レベルで適用されるのか?
TRG メンバーは、制限は履行義務レベルではなく契約レベルで適用さ
れることに同意した。すなわち、生じる可能性がある収益の戻入れの
重要性を評価する際には、(履行義務に配分された取引価格の一部
ではなく)契約の取引価格総額を考慮する。
イスラム金融取引
イスラム金融機関(IFI)は、シャリア(イスラム法)に則った金融商品及び取引を取り扱う。これらの取引では、融資による利息を稼得する代
わりに、実物資産(例:車)を用いることで、IFI は貸出の対価としての利潤たるプレミアムを稼得することができる。通常、IFI はこうした取引
において、原資産を購入し(短期であっても)これを法的に占有したうえで、延払条件で直ちに売却することによって利潤を得る。こうした取
引から生じる金融商品は、IFRS 第9 号「金融商品」(又は IAS 第 39 号「金融商品:認識及び測定」)及び IAS 第 32 号「金融商品:表示」の適
用対象となる。
提起された質問
全体的な合意
IFRS 第 9 号(又は IAS 第 39 号)に基づき報告される前に、シャリ
ア適格の金融商品及び取引を構成する延払条件付取引は、IFRS
第 15 号の適用対象となるか?
TRG メンバーは、シャリア適格の金融商品及び取引は、IFRS 第 15 号
の適用対象外になる場合があるが、契約は国や地域ごとに、また国
や地域内でもしばしば異なるため、この分析は具体的な事実及び状
況に左右されるとともに、相当な判断が要求されることに同意した。
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本資料はEYG no.AU2888の翻訳版です。
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