阪急リート投資法人

14-D-1000
2015 年 3 月 20 日
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
阪急リート投資法人
【据置】
長期発行体格付
格付の見通し
(証券コード:8977)
AA−
安定的
■格付事由
(1) 04 年 12 月に設立され、05 年 10 月に東京証券取引所(不動産投資信託証券市場)に上場した J-REIT。商
業用途又は事務所用途の区画を有する全国の不動産、中でも商業用途区画及び関西圏への重点投資をポー
トフォリオの構築方針としている。資産運用会社(AM)のスポンサーは阪急電鉄。現行ポートフォリオ
は商業用施設 16 物件、事務所用施設 2 物件、複合施設 5 物件の計 23 物件で構成され、取得価格総額で約
1,393 億円の資産規模となっている。足元では商業用途区画及び関西圏への投資比率が取得価格ベースで
それぞれ 70%超を占めているほか、15 年 1 月には商業用途に含まれるホテル用途への投資割合(現状
9.4%)の上限が 10%から 20%に引き上げられた。
(2) 本投資法人は、関西圏を主たる事業基盤とするスポンサーグループと強固な協働関係を構築している。14
年 6 月には 2 年連続となる公募増資を実施し、関西圏所在の商業施設 4 物件(うち底地が 3 物件)をスポ
ンサーから約 114 億円で新規取得しており、スポンサーサポートの活用を軸とする外部成長が継続的に進
められている。また、ポートフォリオについて、早期のリースアップが課題である物件(「スフィアタワ
ー天王洲」)を有するものの、稼働率は上場後ほぼ一貫して 98%超の水準を維持し、平均 NOI 利回りは
14/11 期末で 4.8%と安定した推移をみせている。これらのトラックレコード等からみて、上述の協働関
係に基づく堅実な賃貸事業運営を通じキャッシュフローの安定性が下支えされているものと JCR では考
えている。財務面では、LTV が 13/11 期末の 48.6%から 14/11 期末では 45.4%へと低下傾向にあること
に加え、主に直近のキャップレートの低下に伴う鑑定評価額の上昇や減価償却の進展により、ポートフォ
リオの含み損が 14/11 期末に解消し、約 16 億円の含み益に転じた。有利子負債の平均残存年数の長期化、
借入コストの低減等についても一定の実績がみられていることから、当面安定した財務運営が見込まれる。
以上を踏まえ、格付を据え置き、見通しを安定的とした。
(3) 商業施設等の新規取得について厳しい競争環境が続いているとみられる中、本投資法人は比較的長期の安
定収益が見込まれる地域密着型商業施設等を重点投資対象とし、スポンサーサポートを活用しつつ資産規
模 2,000 億円の達成を中期的な目標としている。現行ポートフォリオの中には低稼働物件(スフィアタワ
ー天王洲、14/11 期末:39.0%)、物件集中度が最大で含み損が比較的大きい物件(汐留イーストサイド
ビル、同:物件集中度 13.7%、含み損約 46 億円)や、築後 20 年超の一般的には経年物件とみなされる
ものも散見される。今後も、スポンサーグループの不動産ネットワークやウェアハウジング機能、PM 業
務、経年対応等におけるバリューチェーンの活用などを通じた外部成長及び内部成長に伴うポートフォリ
オ強化の動向に注目している。
(4) デット・ファイナンスでは新規取引先の招聘も含め、国内大手行を中心としたレンダーフォーメーション
が維持されている。有利子負債について、上場時より全額無担保・無保証で調達されているほか、借入期
間の長期化、返済期限の分散化、金利固定化等の取り組みも進められており、資金調達面に関する懸念は
足元で特段みられない。引き続き、財務の安定性向上に向けた適切なレバレッジコントロールの継続、返
済額の平準化等に関し AM による取り組み状況をフォローしていく。
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http://www.jcr.co.jp
【主な新規取得物件の概要】
コトクロス阪急河原町
・07 年 10 月に竣工・開業した、鉄骨・鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下 1 階付 9 階建の複合型店舗ビル。
テナントは物販、飲食等の店舗を中心に、1∼2 階にはワールドの展開するセレクトショップ業態「オペー
ク」が出店するなど、各種小売店舗から構成されている。概ねフロア貸しを基本とするが、各階の売場面
積は同種の建物としては比較的小さく、エスカレーターが 6 階までなど、大型の複合店舗と比べると導線
等について競争力が劣後する面は否めない。一方で、四条通と河原町通が交差する四条河原町交差点に面
しており、視認性が非常に良好でランドマーク性を有する。また、建物仕様は各種物販、飲食のほかサー
ビス店舗等の出店についても対応可能で汎用性にも比較的優れていることから、上述のデメリットは相応
に緩和されているものと想定される。
・阪急京都本線「河原町」駅の北東至近に所在し、同駅とは地下通路で直結している。近隣には京阪本線
「祇園四条」駅も存するほか、本物件が面する四条河原町交差点は京都市営バスを中心とした多くのバス
便の運行系統の経由点となっており、市内各方面からのアクセスも良好である。本物件が立地する「四条
河原町エリア」は京都最大の繁華街を形成しており、路面店や、百貨店をはじめとした大型商業施設の集
積がみられ、市内を代表する商業地として平日、休日を問わず買い物客、観光客で賑わいをみせている。
本物件は繁華性の高い商業地域内の施設として、消費者の回遊性という観点からは、他の商業施設等と相
互補完的な関係にあるものと想定される。
・本物件はスポンサーである阪急電鉄から取得し、現行賃貸方式は同社との間での固定型マスターリースと
なっている。築後約 7 年の築浅物件で、維持管理の状態は概ね良好。14 年 11 月末時点の稼働率は 100%で
ある。
取得日:14 年 6 月 4 日
取得価格:2,770 百万円
鑑定評価額:3,010 百万円(14 年 11 月末時点)
(担当)杉山 成夫・松田
■格付対象
発行体:阪急リート投資法人
【据置】
対象
長期発行体格付
格付
見通し
AA-
安定的
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http://www.jcr.co.jp
信康
格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 3 月 17 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本
主任格付アナリスト:杉山 成夫
幸一
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類
と記号の定義」
(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法(格付方法)の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)のストラク
チャード・ファイナンス「格付の方法」のページに、
「J-REIT」(2014 年 6 月 2 日)の信用格付の方法として掲載し
ている。
5. 格付関係者:
(発行体・債務者等)
阪急リート投資法人
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので
はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外
の事項は含まれない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
・ 格付関係者が提供した監査済財務諸表
・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
いずれかの格付関係者による表明保証もしくは対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、当該方針が
求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ
を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ
スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部
TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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http://www.jcr.co.jp