高密度電流の流れる金属配線の 許容電流予測と信頼性向上 研究者: 弘前大学 大学院理工学研究科 知能機械工学コース 教 授 笹川 和彦 1 PC,ケータイ,車や航空機に多数使われるLSI 携帯電話の内部は? 2 2 IC(半導体集積回路)や微細回路 を構成する金属配線 厚さ 0.5ミクロン(0.0005mm)以下の金属薄膜 3 微細配線を流れる 高密度電子流 電子の流れ 数十~数ミクロン 微細化 45ナノ 1cm 1cm あたりにすると数百万アンペアの電流 4 エレクトロマイグレーション 金属原子 電子流 微小断面の配線に電流が流れると, 高密度な電子流による金属原子の移動 5 エレクトロマイグレーション による配線損傷 断線故障 ボイド(空隙)形成 ボイド ボイド 成長 断線 6 従来法とその問題点 既に実用化され、一般に利用されているものに、経験 式(Blackの式)による寿命評価法等があるが、 試験環境と動作環境間の損傷メカニズムの変化 を考慮することができないので,評価精度に疑問 同じ材料の配線構造でも形状が異なると,形状ご とに長時間の試験を多数行う必要があり,煩雑 等の問題がある。 配線の許容電流予測も簡単な理論に基づいていたた め,直線状の単純な構造の配線しか対応できなかった。 7 本評価法の特徴・従来法との比較 • エレクトロマイグレーション(EM)損傷を支配する パラメータ(理論式)を特定した。 * * AFD gb C gb N Qgb N N T N 0 T 1 exp kT 3d 2 T 4 N N 3 j x cos j y sin Z e cos sin N 0 x y j x j y j x j y d 2 N 2 N 2 N Z e cos 2 cos 2 Z e sin 2 2 sin 2 y N 0 x 2 y 2 x 2 N x y x y 0 3 2 N 2 N N 0 3 N N N N N N d d Z e j j y x x 4 N 0 x 2 kT 4 y N x x y y y 2 0 N d N N N 2 Z e j y jx sin 2 2 x y N x y 0 3d Qgb N N T N 0 T T T 1Z e j x jy 4T kT y x N T N T N 0 x x y y 局所的な原子濃度N [応力](拡散解析),温度T(熱解析), 電流j(流体解析) ⇒ EMによる原子消失量 8 本評価法の特徴・従来法との比較 • パラメータ式を用いて配線内部の原子濃度分布の コンピュータシミュレーション手法を開発し,これに 基づいた寿命および許容電流の評価法を構築した。 • これまでの経験的あるいは確率統計的な手法に 頼った寿命予測でなく,EM損傷の発現理論に基づ いた手法により信頼性を評価できるので,普遍的で 高精度かつ簡便に寿命や許容電流を設計段階で 評価できる。 • シミュレーション結果を利用して,より信頼性の高い (EM損傷の起きない)配線を作製できる。 9 EM損傷の数値シミュレーション方法 各要素のEM損傷 パラメータ 値を計算 配線を要 素に分割 ボイドの 形成・成長 原子濃度 (要素厚)変化 電流・温度分布 Simulation 配線の損傷→断線に至る過程 1.006 1.004 (a)2×103[s] N/N0 1.002 1.000 0.998 60 'dat/mesh.dat' (b)4×103[s] 0.996 40 20 0.994 0 -20 4 'dat/mesh.dat' (c)6×103[s] -40 2 -60 -300 -200 -100 0 100 200 300 0 Al -2 TiN -4 1.006 -6 1.004 -8 (d)7×103[s] -12 -14 20 30 40 50 60 70 Steady state N/N0 1.002 -10 1.000 0.998 0.996 0.994 Cathode -40 -20 0 Anod e 20 40 10 断線故障のコンピュータ・ シミュレーション Lifetime:3300s Lifetime:4002s 寿命のみならず断線箇所の高精度予測に成功! LSIとそれを使用する車,航空機などの安全を確保 11 配線寿命・断線箇所 + + 予測 配線厚さの等高 線[ミクロン] 厚さ:0.48ミクロ ン 0.45 0.45 0.45 0.3 0.3 0.1 0.45 0.3 0.45 0.1 - 0.3 - 予測寿命 : 5800s 予測寿命 : 7000s 電子顕微鏡 による観察 平均断線時間 : 7836s (10本) [7344s] 平均断線時間 : 6769s (11本) [6072s] 12 ビアで接続された多層構造配線 Metal line 1 (Al) e- Metal line 2 (Al) Shunt layer (TiN) Fig.A2 ・ ・ ・ ・layer Third Via Via (W, Al) Second layer First layer Drift e- EMによりビア接続された配線端部 が消失するドリフト損傷が発生 Fig.A3 SEM image for drift damage.[A1] EM損傷が生じないしきい電流密度 jthが存在する [A1] Chang, C. W., et al., Journal of Applied Physics, Vol.99(2006), 094505. 13 13 しきい電流密度の評価 しきい電流密度 jth 電流密度 j EM N x バックフロー 原子密度勾配 N x max max e- エレクトロマイグレーション損傷が生じない 許容電流 ドリフト開始 多結晶配線 バンブー配線 L=77.8µm,W=9.9µm jth [MA/cm2] L=18.93µm,W=980nm jth [MA/cm2] 数値シミュレーション 0.18 3.62 実験 (平均±標準偏差) 0.22±0.05 3.84±0.14 L W - + 14 ビアで接続された多層構造配線 Metal line 2 (Cu) Metal line 1 (Cu) Via ・ ・ ・ ・ Third layer Second layer First layer - e- Barrier metal (TaN) Via (W, Cu) 寿命延伸のためにリザーバ 構造と呼ばれる張り出し部が 設けられる リザーバ構造がEM損傷しきい電流密度jth (許容電流)に及ぼす影響 は未だ明らか になっていなかった 15 シミュレーション結果 [MA/ cm2] リザーバによる許容電流の変化 1: none Sample type Short 12.5 [μm] Reservoir length j - W +j L1 - L2 + - 0.76 0.82 0.71 0.76 0.88 0.67 Sample 2 j 3: 4: only cathode only anode 0.77 Long 25.0[μm] Sample 1 2: both - + L1 Sample 3 j L2 j L2 - + Sample 4 j j L1 + - - + L1 j L2 + - + Via Elec. current j Elec. Current j Cu : t = 410 [nm] L1 = 150 [μm] L2 = 12.5 [μm]: Short 25.0 [μm]: Long 16 想定される用途 • 半導体集積回路の信頼性評価・品質保証分 野に適用することにより,信頼性の向上が見 込める。 • また信頼性評価に基づいた回路設計ができ るので,さらなる高集積化を望める。 • 半導体集積回路のみならず,各種電子パッ ケージ,電子デバイス配線およびはんだ接続 の信頼性評価・品質保証分野などにも適用 可能である。 17 想定される業界 想定されるユーザー 電子デバイス製造メーカー, パッケージメーカー,実装メーカー 想定される派生ユーザー 電子デバイス検査装置メーカー, 回路設計ソフトメーカー, CAE(計算機援用工学)ソフトメーカー, カーエレクトロニクス等電子制御システム メーカー 18 実用化に向けた課題 • 実験室レベルで成功している評価法の 有効性および信頼性向上の検証を実用 レベルでも行い,既存の方法に対する 優位性を示すこと。 • ユーザー・フレンドリーな検査実験装置 および評価ソフトの開発。 • 回路設計ソフトと信頼性評価ソフトとの 統合。 19 企業への期待 • エレクトロマイグレーション損傷の特性定数を 求める検査実験装置とソフトの開発は,電子 デバイスメーカーの信頼性部門,または検査 装置メーカーとの協力により達成できると考 えている。 • 回路設計における信頼性評価を可能にする CAE(計算機援用工学)技術の開発は,電子 デバイスメーカーの信頼性部門,または回路 設計・CAEソフトメーカーとの協力により達成 できると考えている。 • これらに関する事業化,産業形成の可能性 は極めて高いと考えられる。 20 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 : 金属配線の信頼性評価装置及び方法,並び に金属配線の信頼性評価のためのプログラ ムを格納した記録媒体 • 特許番号 :特許第3579332号 米国特許 US 6,879,925 B1 台湾国特許 138905号 韓国特許 10-0753693号 • 出願人 :科学技術振興事業団 (外国特許:弘前大学) • 発明者 :笹川和彦 21 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 : 多層構造配線のEM損傷によるしきい電 流密度予測システム • 特許番号 :特許第4515131号 • 出願人 :科学技術振興機構 • 発明者 :笹川和彦,長谷川昌孝 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 : ビア接続の多層配線の信頼性を評価す る信頼性評価シミュレーションプログラ ム,ビア接続の多層配線の許容電流密 度向上方法およびビア接続の多層配線 • 出願番号 :特願2012-1966681 (特開2014-52832) • 出願人 :弘前大学 • 発明者 :笹川和彦 23 お問い合わせ先 弘前大学 産学官連携コーディネーター 中山 信司 TEL 0172-39 - 3178 FAX 0172-36 - 2105 e-mail chizai@hirosaki-u.ac.jp 24
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