3 月は久々の IPO ラッシュ:新興市場は既上場銘柄の需給悪化に注意

☆ トピックス
☆ 3 月は久々の IPO ラッシュ:新興市場は既上場銘柄の需給悪化に注意 ☆
投資情報部
岩崎利昭
3 月 17 日から IPO(新規上場)が再開された。今年 3 月の株式 IPO(投資家が限定
される TOKYO PRO Market を除く:以下同じ)は全て新興市場に登場する 15 社で、
3 月としては 2008 年(12 社)を凌ぎ 2007 年(23 社)以来の水準。また 4 月の予
定は 3 月 19 日現在で 5 社判明しており、今のところ 1 月-4 月累計では 26 社が登場
する見通しとなっている。これも、2007 年以来の活況スタートとなる格好だ。
2000 年には 200 社超を数えた年間の株式 IPO 企業数は株式市場の悪化を背景に縮
小へと転じ、2009 年には僅か 19 社へと 10 年間で 1/10 に落ち込んだ。しかしその
後、モバイルサービスの拡大など新産業の成長や株式市場の復調もあって IPO 企業数は
じわじわ増加。昨年まで 5 年連続で前年を上回る実績を残し、今年は久々の三ケタ乗せ
も期待されている状況。また初値の平均騰落率(公募価格→初値)では 2012 年に 2007
年レベルへと回復し、2013 年には 54 社の平均で 2.2 倍。昨年は前年より沈静化した
ものの初値高騰銘柄は多く、IPO 銘柄人気の回復ぶりが鮮明化している。
(社)
☆ IPO企業数と平均初値騰落率 ☆
160%
250
企業数(左軸)
平均初値騰落率(右軸)
140%
200
120%
150
※
100%
80%
100
60%
40%
50
20%
0
※ 2015年の平均初値騰落率は3月19日までに初値が付いた10社の実績
0%
(出所:各種データより当社作成)
次ページチャートからも明らかだが、新興市場の足取りは依然として東証 1 部市場と
比べ穏当なものに止まっており、投資家の関心が薄らぎつつある印象。こうした環境下、
先週売買開始となった 5 社も初値が公募価格を上回る順調なスタートを切っており、新
興市場の中でも IPO 銘柄は「別枠」扱いされているかのような状況だ。
このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い
致します。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。
☆ トピックス
今週(3 月 23 日~
☆ 2015年の国内主要株価指数推移 ☆
27 日)の IPO 企業数
114
は先週の 2 倍で、高
112
値波乱を警戒しつつ
110
も新興市場にコミッ
108
トする個人投資家を
106
中心とした短期トレ
104
ーディングが引き続
102
き活発化しそう。
100
基本的にはITサ
98
ービス系企業が人気
96
化しやすいが、この他
94
日経平均
JPX日経400
東証2部指数
ジャスダック平均
マザーズ指数
※ 2014年末を100として日足終値を指数化
2015年3月19日終値まで
92
に資金吸収額の規模、
1月13日
1月21日
1月29日
2月6日
2月17日
2月25日
3月5日
3 月 期企業の場合は
3月13日
(出所:当社作成)
配当の有無などが物色の手掛かり材料となりそうだ。
また公募価格決定までの価格変動を追うことで、事前の評判がおぼろげながら浮かんで
来よう。「公募価格がブックビルディングの上限価格で決まるかどうか」は人気ぶりを図
る格好のヒントとされるが、「目論見書記載の想定発行価格とブックビルディング上限下
限価格」の関係にも注目しておきたい。
IPO 銘柄の人気化局面持続が期待される反面、新興市場の既存銘柄に関しては、春の
IPO ラッシュに伴う需給環境の悪化が懸念されよう。果たしてこの懸念は正しいのか。
2007 年及び 4 月までの IPO 件数が今年と似通っている 2008 年の 2 月~4 月株価指
数月間騰落状況を調べたところ、下表のような結果であることが判った。
予想通りだが、IPO 企業数が多い月の
☆ 過去の2月-4月IPO状況と株価指数騰落 ☆
2007年
2月
IPO企業数
騰
落
率
23
ジャスダック平均
▲1.3%
▲2.5%
▲3.8%
マザーズ指数
▲5.7%
▲6.8%
▲10.9%
日経平均
2008年
+1.3%
▲1.8%
+0.7%
2月
3月
13
4月
市場の主要指数が全て下げており、「懸
念は正しい」と見ておいた方が良さそう。
新興市場で IPO 銘柄以外への投資を考
える場合、当面は逆張りスタンスでの対
応が基本となりそうだ。
9
12
1
ジャスダック平均
▲0.1%
▲6.4%
+1.3%
また 4 月以降は、上場予定企業数が
マザーズ指数
+6.5%
▲10.7%
▲1.6%
日経平均
2015年
+0.1%
▲7.9%
+10.6%
どの程度となるかにより、「IPO 特化戦
IPO企業数
騰
落
率
低迷が目立つ。月間 10 社超の月は新興
4月
20
IPO企業数
騰
落
率
3月
2月
3月
6
4月
15
5
ジャスダック平均
+3.3%
?
?
マザーズ指数
▲0.5%
?
?
日経平均
+6.4%
?
?
※ 騰落率は前月末比。2015年4月は3月19日時点の判明分 (出所:当社調べ)
略の継続」「業績好調な既存銘柄への投
資再開」を選択することになりそう。判
明済みから大きく増えず、月間数社レベ
ル止まりなら、既存銘柄への見直しも有
力な手法となりそうだ。
このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い
致します。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。