平成27 7年3月16日 日 キーワード:2 キ 重 重らせん、半導 導体、ヘリセン、 、光学特性、 酸化的カップ プリング わず ずか2ス ステップ プで!? ? 2重 重らせ せん分子 子の簡 簡単・便利な 便 合成が可能に に <本研究成果 < 果のポイント> ■ 新規工学材料への応用 用も期待され れるヘリセンの2 2重らせん構 構造を、わずか か2ステップで で構築する新方 方法を開発 ■ 剛直な骨格 格のために、高温でもらせ せんの向きが安 安定に保持さ され、広い適用 用性をもっ ■ 新たな光学 学材料や圧力 力に応答する る半導体として ての応用の可能性に期待 概要 大阪大学大 大学院工学研 研究科応用化 化学専攻の酒 酒巻大輔研究 究員(日本学術 術振興会特別 別研究員)、関 関 修平教授 授、 および名古屋 お 大学大学院工 工学研究科物 物質制御工学 学専攻の熊野 野大輔氏(修士 士課程 2 年))、八島栄次教 教授らからな なる 研究チームは 研 、有機半導体 体材料である N-ヘテロペン ンタセン(注 1) を用いて、1 を つの分子の中 つ 中に 2 つのらせ せんを有する分 分 子(ダブルヘリ 子 リセン)を簡便に合成する手 手法を開発しま ました。ヘリセ センは、それぞ ぞれのらせんの の向きに起因 因する光学特性 性 を示すため、新 を 新規光学材料 料としての応用 用を目指した研 研究が進めら られています。 。今後、円偏 光発光材料や や、圧力によ よっ て電気移動度 て 度を変えられる る半導体材料 料への応用が が期待されます す。また、照明 明やテレビ、デ ディスプレイ装 装置への応用が 2 期待されている 期 る有機 EL(注 2) や有機電界 界効果トランジ ジスタ(注 3)などへ への応用を目 目指します。 本研究成果 果は、独国 Wiiley-VCH Ve erlag GmbH の Angewand dte Chemie International In Edition 誌のオ オンライン速報 報 版で平成 版 27 年 3 月 16 日に公開され 日 ます。 研究の背 背景 注 4) ベンゼン環を をらせん状に に連結した分子 子はヘリセン(注 と 呼ばれます。ヘ 呼 ヘリセンは、そ そのらせん構造 造から右巻き き、左 酸 酸化 酸化 巻きの二種類 巻 類が存在し、そ それぞれのらせ せんの向きに に起因 する光学特性 す 性(旋光性、円 円偏光二色性 性・円偏光発 発光 (注 5) )を示すため、 、新規光学材 材料としての応 応用を目指し した研 X X =窒素、酸素 究が進められて 究 ています。しか かし、これまで でヘリセンのら らせん N‐ヘ ヘテロペンタセン 構造を構築す 構 する方法は限 限られており、合成段階で で多数 十字型二量体 ダブル ルヘリセン 図 1.酸化的カップリングによ よるダブルヘリセ セン合成 の工程が必要 の 要であったり、原 原料に特別な な修飾を施さ さなけ ればならないも れ ものがほとんど どで、一般的な な材料から簡 簡便に合成で できるとは言い難い状況でし した。 本研究成 成果が社会 会に与える影 影響(本研究 究成果の意義 義) 本研究では は、N-ヘテロペ ペンタセンと呼 呼ばれる平面状 状分子を酸化 化的カップリン ングによって直 直接連結することで、短工程 程 (最 最短で市販の の化合物から 2 ステップ)で でダブルヘリセ センを構築できることを明ら らかにしました た(図 1)。本研 研究で用いた酸 酸 化的カップリン 化 ングは、原料へ へ反応点とな なる置換基を導 導入する必要 要が無いため、様々な系に に適応可能な な高い一般性を 有していると考 有 考えられます。実際に本研究では、2 つ の窒素を有す するものと窒素 素と酸素を 1 つずつ有する るものの二種類 類 の N-ヘテロペ ペンタセンを用 用いてダブルヘ ヘリセンの合成 成に成功してい います。 1 得られたダブ ブルヘリセンの の構造は X 線単結晶構造 線 造解析に よって明らかに よ にされ、ひとつ つの分子内に同 同じ向きの 2 つのら せん構造(右巻 せ 巻きと右巻き、 、および左巻 巻きと左巻き)を を有して いることが明ら い らかになりました た(図 2)。この の二種類を分 分離する ことにも成功し こ し、これらが逆 逆符号の円偏 偏光二色性吸 吸収を示 すことが明らか す かになりました た。また、ヘリセ センは熱によっ ってらせ んの向きが反転 ん 転しますが、今回合成した たダブルヘリセ センは分 子内に 子 1 つのらせんしか持 持たない通常の のヘリセンと比 比べて骨 格が硬く、高温 格 温でもらせんの の向きを安定 定に保持でき ることが わかりました。 わ 開発した手法は は、簡便かつ つ広い適用性を をもって 本研究で開 図 2.今回開発 発されたダブルヘ ヘリセン (逆向きの のらせんをもった た二種類が存在 在している) いるため、ヘリ い センだけでな なくその他の非 非平面共役系 分子の合成に にも応用可能 能な強力なツー ールとなると考 考えられます。 今後の予 予定 本手法で合 合成したダブル ルヘリセンにつ ついて、円偏光 光発光や電荷 荷移動度特性 性などの固体 体状態における る物性を明らか にし、照明やテ に テレビ、ディスプ プレイ装置へ への応用が期待 待されている有機 EL や有 有機電界効果 果トランジスタな などへの応用を 目指します。特 目 特に、ヘリセン ンは圧力によっ ってらせんがバ バネのように伸 伸び縮みする る可能性がある るため、圧力印加時の物性 性 変化について検 変 検討します。また、本手法 法によってさら にらせんの巻 巻き方が大きい いダブルヘリセ センの合成を を目指す予定で す。 す 特記事項 項 本成果の一 一部は、文部 部科学省ナノテクノロジープ プラットフォー ーム支援事業 業 名古屋大 大学・分子・物 物質合成支援 援 制度を利用し 制 して行われました。 論文情報 報 ≪論文タイトル ≪ ル≫ “A Facile andd Versatile Approach to o Double N-Heterohelice enes: Tandem m Oxidative C-N Coupling Method of s” N-Heteroacennes via Cruciform Dimers ≪掲載雑誌≫ ≪ ≫ 独国 独 Wiley-VCH Verlag GmbH, G Angew wandte Chem mie Internatio onal Edition, DOI: D 10.1002 2/anie.20150 00684R1 用語説明 明 注 1) N-ヘテ テロペンタセン ベンゼン環が が5個連なった た構造を有す する有機化合 合物で、単純に に炭素と水素 素からだけ成る る化合物は、ペンタセンと呼 呼 ばれ有機半導 ば 導体の有力な な候補分子であ ある。N-ヘテ テロペンタセン ンは、このうちい いくつかの炭素 素と水素を窒 窒素で置き換え た構造を示し、 た 、ここでは少な なくとも2つの炭 炭素を窒素で で置き換えてい いる。 注 2) 有機 EL 低消費電力の の照明としてエ エレクトロルミネ ネッセンス(EL)電球・LED 電球が広く認 認知されるよ ようになった。昨 昨 震災以降、低 年のノーベル物 年 物理学賞の受 受賞対象ともな なった EL 材料 料は、現在そ そのほとんどが が、インジウム・・ガリウム・ヒ素 素・リンなどの無 無 機半導体で作 機 作られている。この材料を有 有機物で置き き換えたものが が有機 EL で、大面積化の で の容易性・柔軟性・軽量性 性・ 原理的な低コ 原 注目されている る。 スト性により注 2 注 3) 有機電 電界効果トラン ンジスタ さまざまな電 電子回路を駆動 動するための のトランジスタを を有機物で置 置き換えたもの の。たとえば、上 上記の有機 EL の素子を形 形 成した場合、こ 成 これを動かす すトランジスタが が無機材料で では、本当の有 有機材料のメ メリットが生か かせないため、すべてを有機 機 材料で形成す 材 するための研究 究が盛んに行 行われている。 注 4) ヘリセン ン ベンゼン環が がらせん(helix x)状に縮環した分子。複数 数のベンゼン環 環を輪を描くよ ように縮環して ていくと、立体 体的な制約か から 平面構造をとれ 平 れなくなり、ら らせん構造とな なる。らせんの の巻く向き(キラリティー)の違いを反映し した特徴的な な光学特性を示 示 すことが多い。 す 注 5) 旋光性 性、円偏光二色 色性・円偏光 光発光 キラリティーを を有する物質 質が光と相互作 作用すること で生じる現象 象(光学特性)。 。直線偏光は は右円偏光と左円偏光の重 重 ね合わせであ ね り、左右円偏 偏光とキラリティ ィーをもった物 物質との相互 互作用の大きさ さの違いに起 因して生じる。 3
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