大田広域市 - 日本格付研究所

14-I-0090
2015 年 3 月 19 日
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
大田広域市
(証券コード:−)
【据置】
外貨建長期発行体格付
格付の見通し
自国通貨建長期発行体格付
格付の見通し
A+
安定的
AA−
安定的
大田リバーサイド・エクスプレスウェイ・ファンディング・ピーエルシー
【据置】
債券格付
(証券コード:−)
A+
■格付事由
(1) 大韓民国の主要自治体のひとつである大田広域市の格付は同国の地方財政制度の特徴に基づき、韓国政府
(JCR 格付:外貨建「A+/安定的」
、自国通貨建「AA-/安定的」
)の信用力を強く反映している。格付の見
通しは安定的である。これは、韓国政府の外貨建および自国通貨建長期発行体格付の見通しを反映してい
る。一方、大田河岸高速道路建設事業に係る大田リバーサイド・エクスプレスウェイ・ファンディング・
ピーエルシー発行円貨債の格付は、その保証人である大田広域市の外貨建長期発行体格付を反映している。
(2) 韓国の地方財政は、税源の中央への偏在が顕著で、かつ中央政府によりかなりの規模の財政調整が行われ
ているという構造を有する。地方税は、取得税、登録税などの不動産関連税を中心とする 14 種の普通税
と 5 種の目的税とからなる。所得税は中央政府に集中しており、かつ課税自主権も地方税法によりかなり
制約されている。韓国の地方財政調整制度は、地方交付税、国庫補助金等によって構成される。これらを
通じて、中央政府は、広域自治団体の財政をコントロールすると共に広域自治団体間の経済力、財政力の
格差を是正し、その財政均衡を図っている。韓国の「地方自治法」では、財政均衡原則が規定されており、
地方自治団体はその財政を収支均衡の原則によって健全に運営しなければならない。一方、国家は地方財
政の自主性と健全な運営を助長しなければならず、国家の負担を地方自治団体に転嫁してはならないとさ
れる。この地方自治法および地方財政法に基づき、韓国の中央政府は広域自治団体の財政運営を直接監査、
管理している。
(3) 大田広域市は、ソウル特別市を含め韓国に 7 つある広域市の 1 つであり、行政上、9 つの道と同じ地位を
有する。同市は忠清南道の東部に位置し、鉄道、高速道路、国道の京釜線と湖南線が分岐する交通の要衝
地として急速に発展した。また、市内に建設された政府第三庁舎に中央政府から 11 の政府機関および政
府記録保存所などが 98 年に移転し、韓国の「第二の行政都市」としての位置付けを有することとなった。
市人口は 155 万人(13 年末)。同市の産業構造の特徴として 3 次産業の比重が高く、製造業の基盤は弱い
ことが挙げられる。これを背景に市の 1 人当たり地域総生産(GRDP)は全国平均の 7 割強にとどまる。
他方、市内の先端技術工業団地である「大徳テクノバレー」に研究機関を中心に企業誘致を進めてきた大
田広域市は、11 年 5 月、韓国地方経済開発計画の一環として中央政府により「国際科学ビジネスベル
ト」に指定された。関連政府機関、3 つの大学キャンパス、50 の研究機関の設立など今後の投資開発計画
の進捗と市経済発展への影響が注目される。
(4) 大田広域市の一般会計の歳入規模は 14 年度予算ベースで 2 兆 5,522 億ウォン。その主要財源は、不動産
関連税を中心とした地方税収入および税外収入である。同年一般会計歳入予算に占める自主財源(税収+
税外収入)の割合(財政自立度)は 46.5%。この他、中央政府から配分される地方交付税、国庫補助金
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http://www.jcr.co.jp
の同歳入予算に占める割合は 45.9%、地方債依存度 7.6%となっている。歳出構成を目的別に見ると、
「社会福祉」が 38.3%と最も大きく、次いで「一般行政費」11.4%、「教育」9.9%、「輸送および交通」
9.3%など。また、住宅事業、都市交通事業、産業団地造成など 14 の特別会計を含む総額ベースで見ると、
歳入規模は 13 年度最終予算ベースで 5.4 兆ウォン、財政自立度 54.7%、地方債依存度 6%となっている。
近年増加傾向にある市の債務残高は 13 年末現在 6,687 億ウォン。これは 13 年の市の歳入予算総額の
12.1%、同地域総生産額の 2.2%と低位に止まり、市の債務ポジションは比較的良好な水準に維持されて
いる。当債務残高は中期的に増加傾向が続くとみられるものの、債務ポジションは管理可能なレベルにと
どまると予測される。
(5) 大田河岸高速道路は大田広域市の西側に位置し、市の主要国道である 1 号線と 17 号線を結ぶ全長 28km
の半環状型道路である。6 つに分けられた区間のうち、第 3 および第 5 区間は 93 年 7 月に運営が開始さ
れた。当プロジェクトは第 4 区間の建設、運営、メンテナンスを行うもので 5.3km の道路と両端の 2 つの
インターチェンジ(Wonchon I.C.と Taedok I.C.)を含んでいる。同区間の工事は 04 年 7 月に完了した。
当該道路建設プロジェクトに関するコンセッション契約により大田広域市は、当プロジェクトに関して
様々な支援を行うことが定められている。主なものとして、同市は①当初発行された円貨債券の満期後の
リファイナンスに対して当該保証を 5 年間継続する②当該高速道路への交通量を増加させるために周辺の
既存道路インフラに様々な改良を行う③建設完了後の当該高速道路に関して回収された毎年の通行料金収
入が当該年度の合意済みの交通量のベースケースを下回った場合は、コンセッション・カンパニー
(Daejeon Riverside Expressway Co., Ltd.)の金融債務の履行を支援するために現金を支払うなどである。
なお、実際のプロジェクトの交通量が当初想定を大きく下回ったため、06 年以降、大田広域市は当プロ
ジェクトに対し補助金支援を行ってきた。ただし、11 年の既存円貨債の借換による支払金利負担削減効
果と 12 年 6 月 1 日付で実施された高速道路通行料引上げの効果により同プロジェクトの収支が改善した
ため、13 年以降、同市による補助金支援の必要性はなくなっている。一方、料金引上げの影響で交通量
は減少傾向となっているが、同市の北西に位置する世宗市への中央政府 36 省庁の移転や世宗市と当該高
速道路を結ぶ道路完成の影響により、今後、交通量が増加に転ずる可能性もある。JCR は交通量の動向と
収支への影響を引き続き注視する。
(担当)増田 篤・田村 喜彦
■格付対象
発行体:大田広域市(Daejeon Metropolitan City)
【据置】
対象
外貨建長期発行体格付
自国通貨建長期発行体格付
格付
見通し
A+
AA-
安定的
安定的
発行体:大田リバーサイド・エクスプレスウェイ・ファンディング・ピーエルシー(Daejeon Riverside
Expressway Funding Public Limited Company)
【据置】
対象
韓国大田広域市保証第 4 回円貨社債
(2011)
発行額
発行日
償還期日
4 億円 2011 年 11 月 10 日 2016 年 11 月 10 日
2/3
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利率
2.82%
格付
A+
格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 3 月 16 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本
主任格付アナリスト:増田 篤
幸一
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類
と記号の定義」
(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、
「ソブリン・準ソブリンの信用格付方法」
(2014 年 11 月 7 日)として掲載している。
5. 格付関係者:
(発行体・債務者等)
大田広域市(Daejeon Metropolitan City)
大田リバーサイド・エクスプレスウェイ・ファンディング・ピーエルシー(Daejeon
Riverside Expressway Funding Public Limited Company)
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので
はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外
の事項は含まれない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
・ 格付関係者が提供した発行体およびその出資法人等の決算・予算
・ 格付関係者が提供した発行体その出資法人等の決算・予算、財政運営方針などに関する資料および説明
・ 経済・財政動向などに関し中立的な機関が公表した統計・報告
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
独立監査人による監査、政府機関などによる検証、発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付
アナリストによる検証など、当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
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を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ
スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部
TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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