会長意見書 公益社団法人日本青年会議所 東北地区宮城ブロック協議会 2015年度 会長 高橋 政則 自信と誇りに満ち溢れた宮城の実現 【はじめに】 せん だつ 私たちが先達から受け継いだこの宮城は、奥羽山脈を背に広大な平野と三陸漁場を有す る豊かな自然に囲まれた、豊富な農産物や水産資源をはじめとする多くの資源に恵まれた 地域であり、日本屈指の食材の大国とも称されております。しかし、時として私たちに恵 もたら みを 齎 してきた自然が突如、試練を与えるかのごとく大切なものを奪い取ってしまいます。 ひ も と じんだい 宮城は歴史を紐解いてみても周期的に大地震や津波に襲われ、その度に甚大な被害に見舞 せん だつ われてきました。私たちは今後起こりうる災害に備え、先達が幾度となく試練を乗り越え てきた歴史から得た学びと向き合い、今この時代にJCの現役として地域の未来や様々な いしずえ せん 課題に向き合える環境が有る事に感謝すると共に、そこに住み今の 礎 を築き上げてきた先 だつ 達が未来を生きる人のために何を考え行動してきたのかをもう一度見つめ直す必要があり ます。かつて仙台藩主伊達政宗公が慶長大地震からの復興を願い仙台藩士支倉常長ら慶長 けん おう ほ 遣欧使節団をヨーロッパ外交の先駆けとして、強い覚悟と未来への希望を乗せ、帆を広げ しゅっぱん 出帆 させた様に、今を生かされている我々責任世代が未来を生きる大切な人のために強い 覚悟と使命感を持って考え行動する時が来たのです。近年、東日本大震災(以後震災)を はんらん 始め台風や集中豪雨による河川の氾濫・土砂災害といった、地球温暖化に伴う異常気象の 影響と見られる自然災害が相次いでおります。さらに、政治に目を向ければ、アベノミク ス効果によって明るい兆しが見えてきたかに思われる地域経済も、消費税増税等による消 費の低迷といった多くの中長期的な課題解決に向けた対応が求められております。地域経 やしな 済を支える我々青年経済人としても様々な視点で知識や見識を 養 い、さらなる地域社会の 発展に向けて行動して参ります。 震災によって多くを失う事となった私たちは、皮肉にも震災から多くを学び、気づきを 得る事となりました。古来より受け継いだ日本人が内に秘めたる国民性を再認識した人々 は多く、日本人であることに自信や誇りを感じずにはいられなかったのではないでしょう おもんばか ふるさと か。誰かに言われるでもなく無条件に人々を突き動かした人を 慮 る気持ちこそ、故郷の 再興に必要な原動力となり、自信と誇りに満ち溢れた宮城を実現すると確信しております。 【ブロック協議会の目的】 青年会議所(以後LOM)は世界各国に存在し、日本国内696LOM35,000名 のメンバーが日々地域において同じ志と信条のもと「明るい豊かな社会」の実現に向けて 率先して行動しております。「人が人によって磨かれる」まさに青年会議所は人との出会い の中で様々な形のつながりを創り、多くの視点や立場で人や物事に対する接し方や考え方 を学ぶ事が出来るのです。まず自分自身の意識が変わり仲間の意識に刺激をあたえ変革を もたら やが 齎 し、軈ては地域の人々の意識を変える運動を1世紀にわたり続けて来る事が出来たのは、 れんめん 連綿と受け継がれてきた高い志と、創世記より現在に至るまで国や地域が違えども、世代 を超えて受け継がれた「決め事」が確実に守られてきたからであります。我々は青年会議 所の「決め事」に誠実に向き合う事によってJAYCEEとして成長し、時代を牽引する たゆ リーダーとして人々の模範となるべく弛まぬ努力と挑戦、己を磨き続ける向上心をもって 地域社会発展のために日々、運動を続けることが出来ると考えます。宮城ブロック協議会 は各地会員会議所に最も近い公益社団法人日本青年会議所(以後日本JC)として、日本 JCが提唱・発信する運動を確りとLOMに伝え、同時に各地域の最前線で運動を発信し ているLOMが求める期待に対応するため、日本JCとの連絡調整機関としての役割を最 大限かつ効果的に果たして行かなくてはいけません。また、LOMの発展と強化を軸とし た最大限の支援を行って参ります。 ふるさと 【故郷の再興】 震災後、一部地域を除き人口流出に歯止めがきかず、追い打ちをかけるかの様に過疎化 が進み限界集落化している地域も見受けられ、地域経済は停滞から衰退へと様相を呈して ふるさと きょうど あい あつ おります。こうした現状を鑑みても故郷に誇りをもって郷土愛を篤く語れる若者がどれだ ふるさと けいるでしょうか。我々は、故郷に新たな可能性を見出す事で、次代の子供達へ自信をも ふるさと って引き継がれる故郷の再興へ導ける様、当事者意識をもって責任ある行動を示して行か なくてはいけません。 私たちが暮らす宮城には、11の青年会議所(以後11LOM)が存在しており宮城県 全域を活動エリアとして「明るい豊かな社会の実現」に向け積極果敢に運動を続けており ます。しかし、いまだ関わりきれず青年会議所の運動に対する理解が薄い地域も多々ある ふるさと 事は否めません。それぞれの故郷には有形無形の文化や歴史といった人々の心の拠り所が ふるさと あり、そこには故郷を再興へ導く無限の可能性と、きっかけとなる地域資源がまだ見ぬ光 を待っている様に思えてなりません。また日頃活動している地域においても人口減少によ る後継者不足によって埋れかけたままの、新たな価値を見出せる可能性を秘めた地域資源 が多く見受けられます。それらを扱う企業や、管理する自治体・関係機関と意見を交わし、 さらなる可能性の発掘に向けた関係強化と繋がりを積極的に開拓して行かなくてはいけま せん。そして、プライメイトシティーである仙台都市圏に人や財源が集中する事で、周り の圏域が衰退していくと考えられがちですが、逆転の発想をもって物事を考え見定める事 で相互発展への道を切り拓く事が大切であり、仙台都市圏があるからこそ周りの圏域に人 が流れ、距離感を活かしたまちづくりの理想形を検討し実現へ向けた行動が必要であると 考えます。そして、その地域のたからが秘める可能性をもう一度見つめ直し、そこにしか ない価値、そこだから魅力を感じることが出来る「地域のたから」に自信と誇りを持って、 ふるさと 11LOMの故郷をさらなる活性化と再興に導くために、各種媒体やブロック事業の中で ふるさと 自信を持って広く発信し、郷土愛に溢れる人々が集まる懐かしくも新しい故郷の実現に向 けた運動を行って参ります。 じょうせい 【主権者意識の醸成 】 私たちが義務教育の中で、当たり前の様に学んできた教えは必ずしも真実ばかりでは無 いと言う事に気づき始めている人は少なくないと感じます。昨今、政府で閣議決定された 集団的自衛権の行使容認や憲法解釈の変更などによって、憲法についての報道が多く見受 けられます。現行憲法は67年間一度も変わる事無く現在まで守られてきました。しかし、 考えてみれば今の憲法は日本人によって作られたのではなくGHQの統治下によってアメ リカ人が短期間で作った憲法であります。日本人に宿る精神性や地域で育まれた伝統や文 う 化はこの国で育った我々だからこそ理解し得 るものであり、国の根幹とも言える憲法も日 本の文化や歴史的背景に基づいたものが理想であると考えます。ニュース番組や新聞を見 いささ ても 聊 か違和感を覚える報道が多く見受けられ、報じられている内容が本当に正しいかを 確りと判断できるだけの知識や見識が必要であると考えます。特に自分たちが住む地域の 未来を考え語る上で、国の方針や各自治体の動きに対する情報に無関心や無知である事は 致命的であり地域を衰退させる要因でもあります。我々は地域に住み暮らす責任世代のJ AYCEEとして、率先して学び地域の人々により判りやすい正しい情報を発信する事が 必要であると考え、自己の責任ある判断をもって物事の真意を追求し行動して頂くために、 憲法への関心と知識を高めて頂ける機会として、理想の国家像とは何かを議論し様々な角 度で検証を重ねる専門的な意見やお話を交えた国民参加型の憲法事業を開催いたします。 そして、政治においても同じことが言えると考えます。特に若い世代を中心に多く見ら れる選挙への無関心が投票率にも表れております。どの候補者が何を考えどの様な政策を 掲げているか判らない有権者も多い中、政府に対する期待感の低さや誰が当選しても同じ へいそくかん といった政治に対する閉塞感が投票に向かう有権者の足を重くしている事も事実でありま す。我々は、候補者の政策や地域の抱える問題への具体的な対策を生の声で聞く機会を創 り、立候補者それぞれの政策の違いだけでなく、人となりまでもが感じる事の出来る公開 討論会を開催いたします。また、どうしても参加出来なかった有権者や内容を聞き逃して しまった方、そして若い世代にも選挙への関心を高めて頂くために、後日ネット上の「eみらせん」を最大限に活用し見て頂ける様に広く発信して参ります。政府の質は有権者に たく よって左右されると言っても過言ではありません。地域の未来を託せる政府や自治体を築 くために一役を担っているという主権者としての自覚をもって選挙に積極的に関わって頂 く様に働きかけて参ります。 【核心を追求する人材の育成】 すべ えい この世に存在するものには総て陰陽があり、目に見えるものと影となって肉眼では映ず えい ることの出来ないものとが有り、それは心眼をもって映ずるものであると言われておりま いそが かげ えい す。しかし 忙 しい現代社会の中で目に見えるものを尊重し陰となって肉眼では映ずること が出来ないものを見ようとする人が少なくなっております。東日本大震災では世界各国か おもんばか ら日本人の利他の精神である「人を 慮 る心」を持つ国民性に対し賞賛の声を耳にして参 りました。日本固有の精神性や道徳心を呼び覚まし見えないものを察する美徳は、その地 これ 域の之 からを支える責任感溢れた青年によって守り受継がれるべきであり、そこに住む 人々が安心して暮らせる「明るい豊かな社会」を実現する為の人材育成が必要であります。 しっか 本年、アカデミー委員会では復興の先を 確 りと見据えた街づくりの先頭に立つリーダー となる、強い使命感と覚悟を行動力に変え、多くの知識と見識を磨き続ける向上心を養い、 将来各LOMのリーダーとなるメンバーを育成して参ります。そして、そこに集う仲間が 思いを共有し、互いの立場で見聞きできる感受性や目的遂行への探究心を、人とのつなが りの中で養い、みやぎJCの強固な横のつながりを形成し、より高い人間力を養って頂き ます。 見えない影の部分に物事の核心が隠されており、その核心を追求する事で人は成長を得 られるのです。私達自身もJCに入会し多くの人々とのつながりの中で学びと気づきを頂 きました。自己の利益の追求から、他人の利益を優先する人間へと意識が変わり地域社会 の発展を願い力強く行動するJAYCEEによって地域を明るく照らして参ります。 【LOMへの力強い協働支援】 震災から4年、復興に向けて歩み出した地域もある中、いまだ復興への糸口を見いだせ ていない地域もあり、自治体によって様々な課題が浮彫となってきております。被災地と 一口で言っても進捗状況が異なり、抱えている課題も様々であります。歯止めのきかない 人口流出や被害が小さい地域への人口集中による新たなコミュニティの形成、仮設住宅で の近隣住民との摩擦、仮住いである事で就業先を決められずにいる若者達や移転先が決ま らない事での不安、教育環境や医療環境への不満等、人が暮らす為に必要なニーズが時間 と共に多様化して行く事での復興計画の見直し等、復興への道を険しくしております。国 や県、各自治体の対応に不満を口にする人も多く見られます。また、直接的に被害を受け た地域に留まらず、被災地に予算や労働力が集中することで内陸部や被害の小さかった地 域は仕事の減少や物価の高騰といった、経済的な2次的被害を受けた第2の被災地と言え るのではないでしょうか。思い起こせば戦後の復興を成し遂げる事が出来たのは「新日本 の再建は我々青年の使命である」と立ち上がった地域経済を支える青年経済人や、そこに 住む若者が未来を見据えた強い覚悟と使命感をもって自立し、行動したからであります。 し ん し 運動発信の最前線で活躍する11LOMにとっても、地域の様々な課題と真摯に向き合 い地域の未来を見据えた運動を展開しております。宮城ブロック協議会は各LOMと寄り 添い側面的に確りとサポートする事でさらなるLOMの発展と強化につなげるため、各地 で開催される事業に人的支援を行い効果的な運動発信の場にして頂くと共に、課題解決に つながる日本JCのプログラムを提供し最大限の支援を行って参ります。 沿岸部や内陸部全ての地域が被災地であると考えるならば、それぞれの地域に住む多く の若者たち一人ひとり自らが、人の目となり耳となる思いやりを持って、自立への一歩を 踏み出す勇気と希望を見出すための意識改革を広めて行く必要があると考えます。未来を すなわ 生きる人々、 即 ち私たちの子供達が大人になったとき、今抱えている課題を負の遺産とし て残してはいけないのです。そして、残すべきは地域を誇れる高い志を持った人材と、地 域を支える人材を育成できる仕組みや決め事を継承し続けてきた青年会議所なのです。被 災地で活動するブロック協議会として各LOMとのつながりをさらに強固にし、みやぎJ C一丸となってさらなる宮城の発展に努めてまいります。 【みやぎJCの魅力発信】 みやぎJCにとって最大の運動発信の機会であるブロック大会では、昨年に続き被災L OMであった一般社団法人石巻青年会議所が主管のもと、一般社団法人あぶくま青年会議 そ う ご ふ じ ょ 所の想いを引継ぎ、相互扶助の精神をもって新たな人とひととのつながりを創出し、参加 者とJEYCEEが心とこころをつなぎ共鳴する事で、JC運動を理解して頂き、身近に 感じて頂けるブロック大会を開催いたします。さらに、その地域から生まれた新たな学び や気づきを宮城全体へ波及させる運動の機会にすると同時に、大会を契機に地域再興に向 ともしび みちしるべ けた 灯 となり 道標 となるよう、主管LOMと連携を図り主催である宮城ブロック協議会 として最大限の支援を行うと共に、地域の皆様と触れ合う貴重な機会でも有りますので石 巻圏域から広く宮城の魅力、そしてみやぎJCのメンバーの魅力を発信し、参加者にとっ ても有意義な時間を提供し、それぞれの地域に対する意識へ刺激を与え地域の魅力を再確 認して頂くことで、被災地の人々が、未来を生きる人の為に自立に向けた意識変革につな がる運動発信の場にして参ります。 【次代を担う子供達の為に】 とうと 全国で 尊 い運動を展開してきた先輩諸兄が青年期に、次代を担う子供たちのために、明 るい豊かな社会を実現する事を理想とし、地域の人々とのつながりや信頼を築き上げて来 られました。今まさに我々世代は次代を担う子供達であった世代であり、自分達の親世代 が築き上げてきたJC運動を継承し、さらに次の世代へ引き継いで行こうとしている責任 世代となったわけであります。地域の存続・発展のために無くてはならない組織である事 しっか を 確 りと自覚し、地域の人々の模範となり憧れの存在であり続ける事が仲間を一人でも多 つの く募る為の条件であると考えます。JCの特性でもある単年度制や定年制は、限られた時 間の中で様々な機会や経験を積み重ね、与えられた役職を忠実に全うし、その役職でしか 経験出来ない気づきや学びによって成長し、経験者は次の挑戦者の貴重な機会を奪う事が 無い様に立ち振る舞う事で自分自身の更なる成長が得られるのです。JCはいつの時代も しっか 礼節や秩序を重んじ創立から変わらぬ決め事を 確 りと継承してきた組織であります。しか し、そんな素晴らしい組織でありながら会員減少という大きな課題は拭えない現実であり、 きっきん このままでは数年で大幅な会員の減少が見込まれており、会員の拡大が喫緊の課題となっ ております。時代の担い手である我々が、次代を担う子供達のために何を残し伝えて行け るかを真剣に考え行動できる仲間を一人でも多く募って行く事、それが地域の未来を明る く照らす希望となり可能性の発掘へとつながり会員の増強に転じていくと信じております。 地域の人々から見て魅力があり必要とされる人材溢れる組織であり続けるために人材の発 きっきん 掘と育成が喫緊の課題であります。その地域が抱える課題や問題を的確に抽出し、知識と 見識を深め強い意志と実行力を持ち合わせた人材を増やすために、日本JCと連携し会員 拡大へ覚悟をもって臨むために事業やセミナーを行って参ります。 【結びに】 人の価値とは、その人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる ~アインシュタイン~ 人は自分の為に出せる力は大きくはないが、人の為なら想像以上の力を出す事が出来る。 これ 之は誰もが人生の中で感じたことが有るのでは無いでしょうか。そこに仲間が加わること で加わった人数の何倍もの力となり大きな可能性となるのです。青年会議所は多くの機会 を与えられますが、自分から率先して掴みに行くか否かは人生の岐路と言っても過言では ない大きな選択となっている人は多いかと思います。確かに大きな選択かもしれませんが、 いばら 出来るならば 茨 の道であっても自分自身の可能性、人間力を高めてくれる機会を大切にし これ て頂きたい。私も之までの人生の中で幾多の岐路に立たされて参りました。その度に多く の人々に支えられ今があると感謝しております。支えてくれた誰かのために感謝の気持ち と恩返ししたいと思う気持ちが、私の背中を常に押してくれていると感じております。時 には遠回りをした事もありましたが、それも人生であり無駄な事は何一つ無かったと核心 しております。 想いが言葉に代わり 言葉が光を呼ぶ 光が影を作り 影で人は強くなれる 強さが優しさに代わり 優しさが出会いを呼ぶ 出会いが道を創り この道にまた想いを刻む ~コブクロ~ 2011年3月11日14時46分、私たちは誰も経験したことのない未曾有の大災害 もたら を経験する事となりました。第二の国難とも言われるこの震災が 齎 した幾多もの課題を、 しっか 次の世代へ絶対に残してはいけない。今我々責任世代が 確 りと自立に向けた行動を取って し ょ し いかなくてはならないと同時に、戦後先輩諸兄が掲げた初志を心に刻み次の世代が安心し て住み暮らす自信と誇りに満ち溢れた宮城を実現して参りましょう。
© Copyright 2024 ExpyDoc