青野浩美さんと清水明彦さんを迎えて コンサート&講演会を開催 1月10日・11日の両日、「コンサート&講演会」を開催しました。 お招きしたのは、難病のため気管切開で一度は声を失いながらも、現在はソプラノ歌手である青 野浩美さん(京都府)と重い障がいがある方の地域生活を切り拓いてきた西宮市社会福祉協議会事 務局長の清水明彦さん(兵庫県 青葉園前園長) 。 今回、「重度障がい者の地域生活を考える会」という実行委員会を立ち上げ、市内の重度障がい 者の支援に関わる事業者や団体が一体となり広報活動や当日の運営などに取り組みました。 当日は、参加された方々に深い感動を与えたようです。 <寄稿> 障がい者も支援者も、自分の物語の主体者になろう! 青野さんの登壇を前にして緊張が走る。気管切開をした方の全 身からしぼり出す、悲鳴にも近いような声と発声しかイメージで きなかった私にとって気管切開された方と声楽家がどうしても結 びつかなかった。どのような姿でどのような声でどのような発声 をされるのか、不安ともいえる緊張感であった。これは私ひとり ではなかったはずだ。しかし、その場の緊張を彼女はすぐつかみ、 逆に聴いている者の不安を払拭するかのような伸びやかに響く歌 声は、まさに驚きだったし、自分の胸が震えているのを感じた。 気管切開を行うと発声が不可能になってしまう。それを解決するためにスピーチカニューレを使 うが、そのためには訓練が必要といわれている。声楽家を目指していた彼女に突然の難病発生。生 きるか死ぬかの選択の中で決断した気管切開、目の前にいる彼女の姿になるまでにはどれだけの挫 折と苦悩があっただろうか。彼女の天真爛漫な表情の裏には、今でも人には言えない闘いがあるこ とは容易に想像できた。医者からも歌うことは無理だと宣告されながらも「前例を作ります」と諦 めずに闘い続けてきた彼女、何がそうさせたのだろうかと考える。やはりそこには自分が自分であ るための、人間が人間らしく生きようとする誰にも奪うことのできない要求や願いがあったと思う。 後半は清水さんの講演だった。 「どんなに障がいが重くても、当事 者が地域で役割を持って活躍できる場を作る」という理念のもとに 様々な活動を展開されているが、簡単なことではない。支援してい く側が、どれだけ、過去に前例がないとして当事者本人の意思決定 の場を奪っているのか、地域の中で必要な人だと感じさせきれてい るのか、本人がここにいることを実感できているのか。支援する側 に求められていること、それは「一緒に喜んだり、悲しんだり、悩 んだりしながら希望を持ってともに立ち上がること」。そして、障がい者も支援者も「今ここで自 分らしく自分の物語を生きていく主体者になること」だと思う。まさに、前半の青野さんの生き方 に重なる講演だった。 (小学校教員 4 坂井 寿一郎)
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