手話CG

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手話CG
人にやさしい
1.背景
2.日本語から手話へ翻訳
手話を第一言語とする方々
から、手話による放送サービ
スの充実を要望する声が多く
寄せられています。一方、ろう
者を中心に使われている「日
本手話」は,音声言語の日本
語とは語彙も文法体系も異な
る別の言語です。そのため、
任意の話題の文章を日本語
から手話に自動変換すること
は極めて難しい技術です。
翻訳の元となる日本語文
が入力されると、言語処理技
術で解析することで節・句に
分解します。次に、各文節に
ついて過去のNHK手話ニュ
ースのコーパス(手話ニュー
スのキャスターが演じた手話
を単語の列として書き起した
データベース)の用例を参照
して、手話単語の列に変換し
ます。このコーパスは 2014 年
末で約7万のデータを収集し
ました。
現在、使用される語彙や文
体がある程度定型化されてい
る気象情報ニュースを対象に
手話 CG(コンピューターグラ
フィクス)の研究を進めていま
す。気象情報は緊急性を有す
るため、放送現場に手話通訳
者が不在となる深夜や早朝で
も手話 CG の自動生成技術を
応用できれば緊急ニュースに
手話をお届けできるようにな
ると判断したからです。
研究アプローチは、日本語
から手話に変換する自動翻
訳技術と、人による自然な動
作のアニメーション映像を生
成する CG 技術の2つです。
3.TMVL による CG 制作
CG 制作には技研がこれま
で開発してきた番組制作記述
言 語 TVML (TV program
Making Language)を用いてい
ます。TVML は、カメラや照明
などテレビ番組制作をテキス
トで表現できるスクリプト言語
で、CG キャラクターの配置や
照明や仮想カメラの自由なア
レンジによる多彩な演出が可
能です。
CG 表現に必要な人の動き
のデータは、手話単語毎に、
手話通訳士が実際に演じた
動作をモーションキャプチャー
手話 CG 翻訳システムの構成
(体に特殊なマーカーをつけ
て一連の動作を記録する)技
術を用いて取得しました。
2014 年末で約 7,000 単語のデ
ータが蓄積されています。
前項の処理で得られた手
話の単語列のデータを元に、
単語のモーションデータを接
続し、TVML 上でキャラクター
の動きを制御することで手話
CG を制作できるのです。
4.手話 CG 評価サイト
制作した手話 CG の品質は
普段から手話を使われている
方々による評価が重要です。
現段階では国際的にも手話
CG 翻訳の品質やシステム性
能を系統的に比較評価する
手法は確立していません。そ
の評価の第1歩として、日本
語単語から手話単語の対訳
辞書システムを構築して 2013
年9月よりホームページ
( http://www.nhk.or.jp/signlan
guage/)上で公開し評価を収
集しています。
5.課題
上記の評価サイトに寄せら
れるものの約9割は「よくわか
る」「まあわかる」という意見で
す。ただし、これは単語レベ
ルの評価です。技研公開等で
展示した文章の翻訳例に対し
ては、ろう者から「単語の選択
や動作の自然さなどに改善
の余地がある」との指摘もい
ただいています。
今後、早期のサービス実現
に向け、手話に不可欠な表情
の表現をはじめ,翻訳品質を
高める研究を進めます。