14-I-0088 2015 年 3 月 12 日 株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。 ブラジル連邦共和国 (証券コード:−) 【見通し変更】 外貨建長期発行体格付 格付の見通し 自国通貨建長期発行体格付 格付の見通し BBB 安定的 → BBB+ 安定的 → ネガティブ ネガティブ ■格付事由 (1) 格付は対外ショックに対する一定の耐性や豊富な天然資源を有する 2 億人の大国であることを主に反映し ている。他方、格付は高い一次産品依存、経常収支赤字構造の定着、比較的高めの公的債務負担、不十分 なインフラに代表される課題の多い投資環境などにより制約されている。見通しは安定的からネガティブ に変更した。ブラジル経済は、中国経済の減速や一次産品価格の下落など外部環境の悪化に直面している。 景況感の悪化による設備投資の減少や高いインフレ率による個人消費の低迷などから、経済は 14 年に続 き、15 年もゼロ成長を余儀なくされる見通しである。財政面でも、14 年の基礎的財政収支は赤字に転落 し、公的債務残高も GDP 比で大きく悪化した。対外面では、貿易収支の赤字化などから経常収支赤字は 拡大している。対内直接投資は底堅く推移しているものの、その規模は経常赤字を下回っている。ルセフ 政権は財政再建を優先課題に掲げており、各種対策を講じているが、経済が低迷する中で実現は容易では ない。JCR は第二次ルセフ政権の財政健全化や投資環境の改善に向けた取り組み、外国からの投資状況な どを注視していく。 (2) ブラジルは 2 億人の人口を有する中南米最大の国であり、世界有数の資源国である。プレサル油田の開発 により 20 年には原油の生産量が現在の 2 倍超に拡大する計画もあるが、原油価格の急落を受けて計画に 遅れが出る可能性が高い。また、13 年の一人当たり GDP(PPP ベース)は 15,000 ドル程度となっている。 経済は、製造業の長期的な低迷が続く中で、サービス業や鉱業の比率が高まっている。輸出の半分程度を 鉄鉱石や大豆といった一次産品が占めており、コモディティー価格の下落により輸出は伸び悩んでいる。 金融システムについては、不良債権比率がおおむね 3%程度で推移しており、相対的に高い自己資本比率 を維持している。総貸付残高は GDP 比で 60%程度と低水準にとどまっており、金融セクターの深化・多 様化が低い貯蓄率の引上げなどにとって重要となっている。 (3) 14 年の基礎的財政収支は景気減速に伴う税収の伸び悩みや景気対策の実施などにより GDP 比 0.6%の赤 字となり、13 年の同 1.9%の黒字から悪化した。00 年に財政責任法が制定されて以来、基礎的財政収支 は初めて赤字となった。財政収支は、高い利払い負担から同 6.7%の赤字となり、14 年末の公的債務残高 は GDP 比で 63.4%と前年末の 56.7%から悪化した。一方、債務構造については、平均償還期間の長期化、 固定金利による資金調達の拡大、金利が高い債券の買入消却を進めており、徐々に改善が進んでいる。財 政のファイナンスは国内での国債発行が中心であり、国債の国内投資家の保有割合は近年ではやや低下し ているものの 80%程度と高い。政府は、基礎的財収支の黒字目標を 15 年 GDP 比 1.2%、16 年同 2.0%と しており、年金・失業手当の支給額削減や金融取引税の引き上げを実施する方針である。ペトロブラスの 汚職事件などによりルセフ政権の支持率は低迷しており、財政健全化を着実に推進し、基礎的財政収支を 黒字化できるかその進捗を注視していく。 (4) 経常収支は、08 年以降赤字が継続している。貿易収支の赤字化やサービス収支の赤字拡大を主因に 14 年 の経常収支赤字は GDP 比 4.2%と 13 年の同 3.6%から拡大した。一次産品が輸出の半分程度を占めてお り、輸出はコモディティー価格の変動の影響を受けやすい構造にある一方、輸入は比較的底堅く推移する 1/3 http://www.jcr.co.jp ことが見込まれ、経常収支の赤字傾向の反転は容易ではない。2 億人の巨大な市場や豊富な天然資源など を背景に、対内直接投資は堅調に推移しているが、近年その規模は経常赤字を下回っている。外貨準備は 高い水準を維持しており、14 年末の外貨準備は 3,740 億ドルと総対外債務比で 107%、短期対外債務比で 317%となっており、対外ショックに対する一定の耐性を有すると評価できるものの、外貨準備の額は、 流入した証券投資残高を下回っている。第 2 次ルセフ政権は政治的なリーダーシップを発揮し、財政健全 化と構造改革を着実に推進し、国際的な信認を維持・向上させることができるか JCR は注目している。 (担当)増田 篤・幾島 真 ■格付対象 発行体:ブラジル連邦共和国(Federative Republic of Brazil) 【見通し変更】 対象 外貨建長期発行体格付 自国通貨建長期発行体格付 格付 見通し BBB BBB+ ネガティブ ネガティブ 2/3 http://www.jcr.co.jp 格付提供方針に基づくその他開示事項 1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 3 月 9 日 2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本 主任格付アナリスト:増田 篤 幸一 3. 評価の前提・等級基準: 評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類 と記号の定義」 (2014 年 1 月 6 日)として掲載している。 4. 信用格付の付与にかかる方法の概要: 本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、 「ソブリン・準ソブリンの信用格付方法」 (2014 年 11 月 7 日)として掲載している。 5. 格付関係者: (発行体・債務者等) ブラジル連邦共和国(Federative Republic of Brazil) 6. 本件信用格付の前提・意義・限界: 本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。 本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性 の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外 の事項は含まれない。 本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入 手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。 7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者: ・ 格付関係者が提供した経済・財政運営方針などに関する資料および説明 ・ 経済・財政動向などに関し中立的な機関が公表した統計・報告 8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要: JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、 発行体または中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、当該方針が求める要件を 満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。 9. 非依頼格付について: 本件信用格付は格付関係者からの依頼に基づかない信用格付である。国に対する信用格付である場合を除き、依 頼に基づく格付と区別するため格付記号の後に「p」を表示している。格付関係者からは、信用評価に重要な影響を及 ぼす非公表情報を入手している。 10. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし ■留意事項 本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、 的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、 金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因 のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として 発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。 ■NRSRO 登録状況 JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。 ■本件に関するお問い合わせ先 情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026 3/3 http://www.jcr.co.jp
© Copyright 2024 ExpyDoc