特集 オピニオン!機械設計の課題と展望 8.CFRP の採用動向と課題 ―自動車への採用拡大にむけて リンツリサーチエンジニアリング 小松 隆* *こまつ たかし:代表取締役 URL : http://lre.co.jp はじめに A350 も CFRP が 50%を占め,それぞれ金属材料 を超えるまでになった。 自動車分野では,最重量パーツであるボディの 2006 年 10 月に英国財務省が公表した気候変動 軽量化を中心に採用が進んでいる。 問題の経済的側面に関するレビューいわゆるスタ 産業・エネルギー分野では,大型化が進む風力 ーンレビューでは「現在の大気中の温室効果ガス 発電用ブレードや高い内圧にも耐えられる圧力容 濃度は 430 ppm(CO2 換算)であり,大気中の濃度 器など広い範囲で採用が拡大している。 は早ければ 2035 年には産業革命前の 2 倍の濃度 となり,気温上昇幅は 2℃を超える」と報告して 自動車の CFRP 採用動向 いる。気候変動や生物への影響がすでに大きく現 れている中で,産業革命前の大気状態に戻そうと 自動車の CO2 削減と燃費を向上させる主な項目 世界規模で CO2 削減の取り組みが行われている。 を表 2 にまとめた。車体系の軽量化ではボディの こうした中で,毎年 6000 万台以上も生産して ハイテン化やアルミ化,樹脂化に加えて,CFRP いる自動車を軽量化し,燃費の改善や CO2 を削減 を採用する車種も登場している。 する開発に期待が集まっている。本稿では,今後 次に,ボディの構成材料を,①スチール,②ア の軽量化材料として注目されている CFRP(炭素 ルミ合金,③ CFRP,④その他樹脂の 4 つに分類 繊維強化熱硬化性プラスティック)と CFRTP(炭 し,それぞれの車種例について表 3 にまとめた。 素繊維強化熱可塑性プラスティック)の採用状況, レクサス LFA は CFRP を 41%,アルミ合金を 課題,展望などについて述べる。 40%使用している。BMW i3 ライフモジュール(ド 表 1 産業分野別の CFRP 製品例 CFRP の採用状況 CFRP を採用している主な産業分野と製品例を 表 1 に示した。 分 野 ・機体(主翼,尾翼,胴体など) 自動車 ・ボディ(外板,骨格など) ・プロペラシャフト ・ステアリングホイール 産業 エネルギー ・風力発電ブレード ・圧力容器 スポーツ ・ゴルフクラブ(シャフト) ・自転車フレーム ・テニスラケット・ヘルメット 航空機分野では,1960 年代後半に誕生したプ ラスティック基材の複合材料により CFRP の構造 部材への採用が進んでいく。1960 年代後半のボ ーイング 747 ではアルミニウム合金が機体全体の 80%を占めていたが,787 になると 20%まで激減 し,代わりに CFRP が 50%に増えた。エアバス 第 59 巻 第 4 号(2015 年 4 月号) 採 用 例 航空機 41
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