一斉配信 集 自治体 特 防 災 防災・危機管理のNTTグループ連携ソリューション 災害情報伝達手段の多様化に向けた国の動きと 防災情報伝達制御システム 近年の気象現象の極端化により,災害時における自治体からの迅速な情 報伝達が必要不可欠となってきています.さらに,地域住民へより確実に 災害情報を伝達するために,複数の伝達手段を活用することが求められて います.しかし,災害時に複数の伝達手段への配信操作を個々に対応する のは非常に困難であることから,NTTアドバンステクノロジではさまざま なメディアに対する情報配信を一元化する「防災情報伝達制御システム」 を中心とした防災ソリューションを提供しています. 防災情報伝達制御システムとは 「防災情報伝達制御システム」は総 (1) 務省消防庁 の全国瞬時警報システム (J-ALERT)や気象システム,自治 体システム,各種センサなどから情報 を受け取り一元的に集約し,自動的ま 災害 つとむ 平林 勉 NTTアドバンステクノロジ や登録制メール,TV,FMラジオ,デジ 達の確実性が向上し,迅速性が増す効 タルサイネージ,Twitter,Facebook, 果があります. Lアラート(公共情報コモンズ)など メーカを問わず多くのメディアと接続 防災情報伝達制御システムの できる柔軟性を有しています.接続メ 果たす役割 ディアを随時追加していく拡張性も持 防災情報伝達制御システムは防災行 ち合わせているため,ICTの発達や 屋外設備 音声 防災行政無線 MCA無線 屋外拡声器 IP網 放送卓 サイネージ端末 観光客 全国瞬時警報システム (J-ALERT) ホームページ,Facebook閲覧 手動配信 発生 災害 気象システムなど 災害情報・国民保護情報を 自動的に一元集約 画像 PC スマート フォン 情報公開 Twitter 収集 文字 PC,スマートフォン,携帯電話 操作端末 気象協会 かずしげ (図 1 ) .これにより,住民への情報伝 庁舎・役場 伝達 防災情報 伝達制御システム 各サービス エリアメール・緊急速報メール・ 地域防災メール サーバ 音声 発生 文字 IP告知端末 配信サーバ 音声告知端末 高齢者 TV,ラジオ,スマートフォン,携帯電話 災害 警告灯 多様なメディアへ情報を 自動的に一斉配信 既存メディアにも柔軟に対応 文字 携帯電話 屋内設備 IP網 庁舎・役場 既存システム ひらばやし くりばら /栗原 一茂 政無線をはじめ,自治体のWebサイト 管理端末から文字や音声を 手動で送ることも可能 発生 ただふみ 古林 忠史 しての一斉配信を可能にしています たは 1 回の操作で多様なメディアを通 消防庁 こばやし 地デジ・ワンセグ・エリアワンセグ スマート FMラジオ フォン FM 放送局 (Lアラート) CATV 画像 音声 文字 画像 TV 図 1 防災情報伝達制御システムの概要 NTT技術ジャーナル 2015.3 59 防災・危機管理のNTTグループ連携ソリューション 住民のニーズに合わせたメディアと り情報を取得するため,防災行政無線 の接続をタイムリに行うことができ やコミュニティFM,IP告知等の音声 ます. 系メディアへの情報配信と,自治体 中心となる役割を果たしています. 近年の災害状況と自治体の課題 気象現象の極端化(2)により,従来の Webページや登録制メール,Twitter, また,J-ALERTなどにも対応し自 動起動が可能なため,緊急を要する防 Facebookといったテキスト系メディ 運用体制では対応しきれない事態が増 災情報を迅速に住民に届けられるよう アに対する情報配信が防災情報伝達制 え,過去に大きな災害を経験していな になっています. 御システム 1 台で一元的に行えます. い自治体で,近年になり初めて避難準 このように本システムは, 「情報収集」 特に,J-ALERT受信装置との連携 備情報,避難勧告を発令したという では,同報無線自動起動インタフェー と「配信」という 2 つの業務をつなげ ケースも増えてきています.近年の災 ス,およびソケットインタフェースよ て一元化する,自治体災害対応業務の 害や東日本大震災の事例から図 2 の 夜間,職員が登庁するまで 情報配信が行えなかった 用意した情報伝達手段が 使えなかった 庁舎内設備 夜間のため避難勧告を 出すことを躊躇した 防災行政無線 制御卓 制御卓の操作 FAXで送られてきた 気象情報を見逃した ログイン ファイル配置 自治体担当者 断線,故障 IP音声告知 システム など 緊急速報メールの入力については, 携帯 3 社(NTTドコモ,KDDI, ソフトバンクモバイル)それぞれ 操作する必要があり,配信に時間 がかかった ログイン メール送信 ログイン 住民対応に手間取り, 情報配信作業が行え なかった メール送信 複数のメディアを用意していたが, 一度に複数のサービスを操作する ことが困難であったため,うまく 活用することができなかった 緊急速報・エリアメール サービス 地域防災メール サービス など 外部サービス 図 2 災害現場で発生した情報配信に関する課題例 60 NTT技術ジャーナル 2015.3 特 集 ような課題もみえてきました. 旭市の実証実験は,郊外型 ・ 沿岸部 たいと考えています. これらを踏まえ,総務省消防庁では の事例として実施されたもので,海水 また,情報配信だけではなく事前の 「災害情報伝達手段の多様化」を積極 浴客に対する防災行政無線やデジタル 備え,情報収集 ・ 分析,判断など多岐 サイネージでの警告,J-ALERTとの にわたる自治体の災害対応業務全般を 自動連携により市内の小学校にも迅速 サポートし, 「防災まちづくり」の観 かつ確実に情報を届けることで有効性 点で積極的に展開していきます. 的に推進しています. 総務省消防庁の動き 2012年度に行われた総務省消防庁 が確認されました. の「住民への災害情報伝達手段の多 本実証実験を通じて,多様な情報伝 様化実証実験」においては,フィー 達手段を利用して迅速かつ確実に必要 ルドとなった 6 自治体のうち東京都豊 な情報を住民に届けることができ,防 島区,千葉県旭市,宮城県気仙沼市の 災担当職員が本来の業務である,情報 3 自治体で総合型自動起動装置として 分析 ・ 判断に集中できる本システムの 本システムが採用されました. 特長が評価されています. ■参考文献 (1) http://www.fdma.go.jp/ (2) http://www.jma.go.jp/jma/menu/menureport.html 豊島区の実証実験は,都市型 ・ 繁華 これらの実証実験の成果は総務省消 街の事例として実施されたもので,災 防庁が「災害情報伝達手段の整備に関 害時に区民はもとより駅利用者など, する手引」としてまとめています.さ 区内への来訪者にも必要な情報を配信 らに,総務省消防庁は実証実験の成果 し,避難所への移動など,適切な行動 を浸透させるため,2013年より「災 を促す情報伝達手段の有効性が確認さ 害情報伝達手段に関するアドバイザー れました. 派遣事業」を行い,直接市町村へのア ドバイスを実施している状況です. 近年の災害は,地震だけでなく,風水害, 火山噴火,雪崩など多様化しており,対応 する自治体の負担も大きくなっています. 今後も自治体をサポートし,住民の安心 ・ 安全につながるソリューションを提供して いきます. 気仙沼市の実証実験は,郊外型 ・ 港 湾部の事例として実施されたもので, 配信作業の一元化ならびに自動化と, 今後の取り組み 魚市場も含めた避難場所に対する二次 多くの自治体における災害対応の現 避難の誘導や救助連絡などの情報を迅 場では,まだまだ防災担当職員の手に 速に届けることで,有効性が確認され 頼った情報配信をしているのが実態で ました.特に導入前は15〜20分かかっ す.災害時において迅速に,より確実 ていた複数のメディアに対する配信作 に住民へ情報を届けるためにも,防災 業が,導入後は 1 分以内に操作が完了 情報伝達制御システムをきっかけと するようになり,極めて短い時間で情 し,NTTグループの一員として地域 報伝達が実現できます. の防災力の強化のお手伝いをしていき (左から) 古林 忠史/ 平林 勉/ 栗原 一茂 ◆問い合わせ先 NTTアドバンステクノロジ ネットワークソリューション事業本部 営業SE部門 TEL 044-589-6429 FAX 044-541-1335 E-mail nw-sales ml.ntt-at.co.jp NTT技術ジャーナル 2015.3 61
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