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 資料1
第35回⾸都圏県都⾏政事務研究会報告
ICTとまちづくりについて
⽬
次
○はじめに·························································· 1
1
各市の現状や取組状況等について
(1)ICTを活⽤した政策の位置付け ················· 2
(2)検討体制、推進計画··································· 2
(3)ICTを活⽤して実施しているまちづくり ······ 5
(4)成果と課題 ··········································· 17
(5)最近の動向 ··········································· 18
2 課題及び取組の⽅向性等について ·············· ……23
○はじめに
少子高齢化の進行、人口減少社会の到来に伴い、コミュニティ再生、社会インフラ老朽
化等、多種多様、複合的な課題を抱える中、地方自治体は、将来にわたって住みやすいま
ちを築くために、効果的で計画的な行財政運営を行い、地域における公共サービスを持続
可能なものとしていくことが求められている。
そのような状況の中、ワイヤレスネットワーク、ブロードバンドネットワークやクラウ
ドサービス等の普及や、センサネットワーク、ビッグデータやID等の多種多様な情報の
利活用に関する最先端の技術の発展などを背景に、公共サービス、環境・エネルギー、医
療・健康、介護、育児、防災・減災、観光・交通、教育といった幅広い分野において、課
題解決のための重要な手段として、ICT(情報通信技術)の活用が大きく期待されてい
る。
ICTを活用することで、市民・団体・企業など様々な主体が、瞬時に、広い範囲で、
水平的な情報発信・コミュニケーションを行うことが可能となり、それにより、地域間や
業種間で情報がつながり、連携・共有され、市民の声や行動がまちづくりに反映されて、
市民間の情報共有が行き届いたまち、ニーズや感情を相互理解するまち、そして、誰もが
住みたく、訪れたくなる魅力的なまちづくりへの実現につながっていくと考える。
このような状況を踏まえ、首都圏県都市長懇話会では、平成 25 年度の議題として「IC
Tとまちづくり」を選定し、各市の状況や特色ある施策等について意見交換を行った。
-1-
調査結果の概要は次のとおりである。
1
各市の現状や取組状況等について
(1)ICTを活用した政策の位置付け
①市の政策としての位置付け及び目的、ねらい
●ICTを活用した政策を市の総合計画に位置付けているのは全7市
全7市がICTを活用した政策を市の総合計画に位置付けており、各市にお
いて、市民サービスの向上と行政運営の効率化などを目的としており、ICT
を活用した各種施策を推進している。
(2)検討体制、推進計画
①市役所内の推進体制
●全7市で情報システムを所管している部署がICT推進の中核を担っ
ている
部(局)、所属(課・室)と各市で組織の名称は異なるが、全7市で情報シス
テムの開発や管理運営に携わっている部署がICTの推進の中核を担っている。
●6市が各課横断的な組織を設置
情報化を総合的かつ効果的に推進するため、6市が市役所内に各課横断的な
専門の組織を設置しており、うち5市では、恒常的に組織を設置し、半年に1
回程度から年4回程度の頻度で会議等を開催している。
また、1市で臨時的に組織を設置し、年に1回程度会議等を開催している。
-2-
②市役所外部との連携体制(組織)の設置
●連携体制を設置(一部設置を含む)しているのは4市
民・産・学・官の全てと連携体制を設置している市が1市、民・産・学・官
の一部と連携体制を設置している市が3市あり、市内大学や他自治体、民間企
業などと連携し、専門的な助言を受けながら、諸問題の解決を図っている。
なお、組織を設置している4市のうち、3市では恒常的に、1市で臨時的な
組織形態となっており、年に1回程度又は随時に会議等を開催している。
また、設置に向け検討中の市が1市あり、設置していない市が2市あった。
③外部人材の活用
●外部人材を活用しているのは5市、検討中は1市
外部人材を活用しているのは5市であり、1市が検討中である。
活用内容については、外部有識者や期限付き民間人の雇用のほか、総務省か
らの派遣、コンサルタント事業者への支援業務の委託、業務委託事業者の責任
者を非常勤職員として委嘱するなどしている。
④実施方針(推進計画、推進プラン)の策定
●6市で実施方針を策定、1市が策定に向け検討中
情報化を推進するための実施方針等を策定しているのは6市であり、1市が
策定に向けて検討中である。
また、策定にあたっては、4市が組織を整備しており、情報部門に事務局を
置き、庁内関係部局・学識経験者・各種団体等により構成される組織を設置し
ている。
⑤取組効果の評価
●3市が指標等により取組効果を評価
上記実施方針等における指標の他、ホームページやツイッターのアクセス数
や市民アンケート調査、行動計画で設定している事業の進捗等により評価して
いる市をあわせて、3市が取組の効果を評価している。
-3-
⑥ICTを活用した事業のアイデア
●事業を担当している所属からアイデアが多く出ている
アイデアの出所として多いのは、事業を担当している所属であり、全7市が
挙げている。次いで、情報システム部門が5市、外部人材(民間企業など)が
3市で挙げられており、市長・副市長を挙げている市もあった。
-4-
(3)ICTを活用して実施しているまちづくり
①ICTを活用する意識
●ICTの活用を意識しているのは5市
ICTを活用する意識については、5市で「意識している(いつも意識して
いるを含む)
」と挙げている。
また、実施方針等で掲げているICTを活用した施策の認知度では、
「一部の
部署のみ知っている」が4市で最も多く、次いで「聞いたことがある程度で、
内容はあまり知られていない」が2市であり、
「ほとんど知られていない」が1
市となっている。
②市役所内各部署への周知・啓発
●各部署へ周知・啓発を実施しているのは6市
職員向けの研修を実施している市が4市、施策のグループウェアや文書など
で通知している市が3市あり、各部署へICT推進担当者を設置している市が
3市あった。
-5-
③まちづくりを進めるうえでの課題
●4市が防災・減災を挙げている
まちづくりの課題として、「防災・減災」が4市で最も多く、次いで、
「公共
サービス(窓口業務)
」が3市であり、
「環境・エネルギー」
、「市民活動・ボラ
ンティア」、
「医療・保健」、
「観光・交通」
、「産業・雇用」などを挙げている市
もあった。
項目
課題の内容
防災・減災
被害の最小化、安全に安心して生活できる環境づくりの推進。災害用
備蓄情報の管理、要支援者の状況把握。
公共サービス
(窓口業務など)
市民活動
ボランティア
医療・保健
窓口業務の更なる最適化。市民の利便性向上。
市民活動団体同士の連携・交流がなく、活動の広がりがない。互いに
支え合える関係の構築。
健康情報が様々な部署に散在し、情報を集約する仕組みがない。救急
搬送時における迅速な搬送施設を選定できる仕組みの構築。
観光・交通
観光客の増加。地域の自然、歴史、文化の魅力を生かした観光施策の
展開。
産業・雇用
その他
市内経済の活性化。地域経済の活性化に向けたにぎわい・交流創出。
人口減少社会に伴う諸課題。行政経営の効率化向上。
-6-
④ICTを活用したまちづくりの取組状況
●全7市がICTを活用したまちづくりを実施
防災・減災や公共サービス(窓口業務など)、医療・保健、観光・交通、産業・
雇用等といった分野のいずれかで、全 7 市がICTを活用したまちづくりを実
施している。
<横浜市>
○事 業 名:オープンデータの推進
○事業内容:オープンデータ推進の基盤となる本市 Web サイトの再構築と、本市
が保有する情報のうち、Web サイトに掲載されている情報を中心に
オープンデータ化を進める。また、民間におけるオープンデータ活
用に関する取組への支援を行うなど、利活用を促進している。
【オープンデータ利活用に関する取組への支援の例】
-7-
<水戸市>
○事 業 名:公共施設における公衆無線 LAN(Wi-Fi)環境整備事業
○事業内容:市内の公共施設(観光施設)へ Wi-Fi 環境を整備するとともに,水
戸市を訪れた外国人観光客に対して「ID/pass カード」を無料配布
し,本市の観光情報を積極的に提供していく。
-8-
<甲府市>
○事 業 名:総合窓口
○事業内容:
「書かせない・歩かせない・迷わせない」をコンセプトに市民サービ
スの質を高める行政運営の実現を図る。
-9-
<前橋市>
○事 業 名:母子健康ポータル
○事業内容:母子健康手帳の記載内容及び小学校時等の健康診断結果をWeb上
で閲覧できるようにするもの。
- 10 -
<宇都宮市>
○事 業 名:災害対策用画像伝送システム
○事業内容:災害現場の状況を映像と音声によるライブ中継が可能なシステムを
導入し、災害対策本部などが現場の情報を正確にリアルタイムで収
集するためのもの
携帯回線を利用し,いつでもどこからでもライブ中継ができるシステム
・映像と音声の中継により,リアルタイムで現場状況の把握が可能になり,災害対策本部と
現場の意思疎通が向上
・画像がデータ受信機器(PC)に保存され,報告書作成事務などの効率化が実現
・各現場から収集した情報を,各所管課は必要に応じて災害対策本部へ映像を転送できるた
め,情報の共有化が実現
[災害対策本部]
[現場]
・現場撮影
スマートフォン
SO-04E
+
・映像確認
・映像記録
・指示
映像中継システム
「Smart-telecaster」
○
5カ所に各機器を配備
データ送信機器(スマートフォン)各2台
データ受信機器(PC)
各1台
現場
現場
現場
現場
現場
災害対策本部等の設置に至
らない災害復旧時には所管
課で運用
道路所管課
河川所管課
災
害
地域センター 地域センター
対
策
本
部
- 11 -
被害が甚大であるなどの場
合は,災害対策本部が直接
現場で情報収集を行うか,
災害対策本部が情報を必要
とした場合に各所管課が収
集した情報を転送
<千葉市>
○事 業 名:ちば市民協働レポート(ちばレポ)
○事業内容:地域における様々な課題について、スマートフォンのアプリ等を活
用し、市民から位置情報及び写真付きレポートを送付してもらい、
Web 上にレポートを公開することで、可視化された地域の課題情
報を市民と市役所が共有し、協働で解決にあたるというもの。
- 12 -
<さいたま市>
○事 業 名:地域ICT人材育成
○事業内容:地域におけるICTの推進役や相談役として活動する地域ICTリ
ーダの育成と、地域ICTリーダを中心としたボランティアグループ
により地域の現状に応じたパソコン初級講座やパソコン相談会等を
実施し、情報格差の解消や地域の情報発信の手助けを行うもの。
・ 情報格差の解消
・ 地域の情報発信の
手助け
地域コミュニティ
地域ICTリーダ
高齢者等のICT初心者
地域ICTリーダの
育成・教育
ICT初心者への教育支援
NPO
さいたま市
全般的な方向付けと支援
- 13 -
⑤民(市民、NPO等)との連携
●3市が実施
上記事業実施にあたり、3市が民との連携により実施しており、そのうち、
2市が「NPO法人の活動が市民ニーズを代表しているのかの見極め」や「N
PO法人の財政的体力がない」といった課題を挙げている。
一方で、3市全てで、
「市民意識の改革の向上」
、
「新技術に詳しい人材とのパ
イプ役を担っている」、「地域に根ざした活動に結び付いている」などといった
取組効果を挙げている。
⑥産(民間企業等)との連携
●2市が実施
上記事業実施にあたり、2市が産との連携により実施しているが、課題や問
題点を挙げた市はなかった。
一方で、2市が「市内中小企業の活性化に繋がっている」
、
「民間による Wi-Fi
拠点の拡張」といった取組効果を挙げている。
⑦学(大学、専門学校等)との連携
●3市が実施
上記事業実施にあたり、3市が学との連携により実施しており、そのうち、
1市が「大学側の提案する新技術における実用性の見極め」といった課題を挙
げている。
一方で、3市全てで、
「システム開発や運用等に関する助言」、
「新技術活用に
あたってのアドバイスの提供、実証報告のとりまとめ」、「専門学校との連携に
よる事業がメディアに取り上げられた結果、ホームページのアクセス数が増加」
といった取組効果を挙げている。
- 14 -
⑧官(近隣市町村等)との連携
●4市が実施
上記事業実施にあたり、4市が官との連携により実施しており、そのうち、
2市から「連携事業に対する意義、目的等を共有して、互いに主体的に取組続
けること」、「互いの合意のレベル、首長の考え等が異なる」といった課題を挙
げている。
一方で、2市から「広域的な事業展開が可能となる」、「システム運用経費の
削減」といった取組効果を挙げている。
⑨市民や地域住民への情報提供手段
●広報紙、ホームページ、SNSに重点が置かれている
市民や地域住民向けの情報発信手段として最も多いのは、広報紙、ホームペ
ージ、SNS(フェイスブック、ツイッター等)であり、全7市が活用してい
る。次いで、ブログ、テレビ・ラジオ、パンフレット・チラシが3市、メール
マガジン、新聞が2市で活用されている。
●1市がICTを活用した行政サービスに係るイベントを実施
1市が将来のまちづくりのあり方等について議論を行うため、商工会議所や
地域づくり協議会等を対象にシンポジウムを実施している。
⑩市民と双方向の情報交換
●4市が情報交換を実施
4市がホームページや SNS(フェイスブック、ツイッターなど)を活用して、
市民からの提案の受け付けやインターネットモニター制度によるアンケート調
査などにより、市民と双方向の情報交換を実施している。
また、市へ寄せられた提案と回答内容をウェブで公開している市がある一方
で、返信・回答は原則行っていない市もあった。
- 15 -
⑪個人情報の漏洩やなりすましによる被害に対する備え、考え方
●各市において、情報セキュリティ対策は重要であると認識
各市において、職員研修やICTリテラシーを高めるための施策を検討、実
施している。
都市名
個人情報の漏洩やなりすましによる被害に対する考え方
横浜市
・個人情報の漏えいやなりすましによる被害が発生した際に、被害を
最小限にとどめる(早期に発見できる)よう監視体制を強化すべきと
考えます。また、外部サービスであるオンラインストレージやSNS
等、漏えいやなりすましの可能性が高いサービスの利用を必要最小限
にすべきと考えます。
水戸市
・なりすましや標的型攻撃に対する職員研修を実施予定。また、これ
らの対策のためのセキュリティ機器の導入を検討中。
甲府市
・ICTは便利な反面リスクも多い。リスクを回避して、その恩恵を
享受するにはICTのリテラシーを高める必要がある。なりすまし等
の行為を防ぐことは困難だが、利用者側が被害にあわないような対策
を施すことは可能だと考える。そのためにはリテラシーを高めること
が重要だと考えられる。
前橋市
・全職員に対し、セキュリティについての研修を行い、市の管理する
情報の重要度などを再確認させることで、情報保全に係る意識の底上
げを図っていく。
宇都宮市
・今後も、行政の各分野においては、市民の利便性の向上や行政事務
の効率化などを目的としたICTの活用が見込まれる中で、本人確認
や個人情報の取扱いなどの情報セキュリティ対策は重要であると認
識している。
・本人確認については、マイナンバーの活用が有効であると考えてお
り、今後、活用方策について検討していく予定でいる。
千葉市
・まずは個人情報の漏えい対策に万全を期し、今後導入されるシステ
ムにおいて、なりすまし被害の懸念があれば導入前に対策を検討して
いきます。
さいたま市
・市としてはICTリテラシー向上のために様々な意識啓発を行うこ
とが最初にできることであると考えます。そのためにも職員のICT
リテラシー向上と、地域ICTリーダを中心とした市民のICTリテ
ラシー向上を目指す必要があると考えます。
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(4)成果と課題
①ICTを活用したまちづくりの期待分野
●住民生活の維持・向上が図られる分野に期待
ICTを活用したまちづくりに期待する成果については、3市が「市民活動・
ボランティア」や「医療・保健」、
「観光・交通」、
「公共サービス(窓口業務な
ど)」といった分野を挙げており、次いで、2市が「環境・エネルギー」分野を
挙げている。
一方で、
「産業・雇用」や「インフラ・都市基盤」を挙げている市はなく、経
済的な効果を狙うよりも、住民生活の維持・向上のためにICTを活用するこ
とが伺える。
②課題
●5市が財政的に厳しい点を挙げている
取組を進める中で直面している課題としては、5市で「財政的に厳しい」と
の回答があり、次いで、3市で「具体的な利用イメージ・用途が明確でない」
や「効果・メリットが明確でない」
、「職員・市民等利用者の理解、能力が追い
ついていない」といった回答が続いており、
「部門・地域等で共通利用できるシ
ステムの整備が進んでいない」と回答した市もあった。
- 17 -
(5)最近の動向
①今後のICT活用の考え
●マイナンバーとの連携
多くの市において、条例制定による独自利用・多目的利用を検討しており、
マイナンバーとの連携を機に金融や医療といった分野との連携を行うことや、
事務の効率化を目指すなど、庁内検討組織で積極的な検討を進めている状況に
ある。
●人材育成
人材育成については、庁内における職員研修の実施や人材育成施策の拡充な
どが挙げられている。一方で、定期的な人事異動が行われる中で、専門的知識
が必要な情報部門職員の確保を課題に挙げる市が複数あり、既に専門的知識を
有する人材確保のため、民間事業者からの専門職登用を実施している団体もあ
る。
●災害に強いまちづくり
災害時における市民への情報伝達と情報取得手段の整備を検討している。気
象センサーなどの既存ICT機器を活用して、最近の課題となっている局地的
なゲリラ豪雨や竜巻などの予測方法を検討している市もある。
また、被災者支援システムの導入や災害に強い安心・安全な「エネルギーセ
キュリティが確保された低炭素型の都市」の実現を目指している市もある。
●地域経済の活性化・雇用の創出
ICT施策のシステム開発等を地元企業に発注し、地域経済の活性化を図る
ことを検討している。IT 関連企業の集積している市では、現在のIT企業の集
積を生かしたネットワーク構築支援等により、更なる企業集積を図ることとし
ている。
●オープンデータの推進
7市全てが、積極的にオープンデータの活用を検討しており、地域経済の活
性化につなげたいと考えている。また、オープンデータとして庁内にある行政
情報を積極的に公開することを検討している市もあり、公開する行政情報を市
民や民間による二次利用に結びつけたいと考える市もあった。
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●ビックデータの活用
多くの市において、行政や民間が保有するビックデータを効果的に活用して
いくことで、新たなまちづくりや新たな住民サービスの創出につなげたいと考
えている。また、課題抑制型事業※1に活用したいと考えている市もあった。
※1:課題抑制型事業:課題分野(市民の関心が高い社会的課題)に積極的に取り組むこ
とにより、市の歳出削減(及び収入増加)とビジネス機会創出の両方を狙う事業。
●ガバメント2.0
庁内調整や活用について調査・研究を行っていきたいと考えている市がある
中で、既に市としての「ガバメント 2.0」を定義している市もあった。
また、人口減少や税収が減少する中で、必要な取り組みであると認識してい
る市もあった。
●市民活動や地域コミュニティの活性化
6市がICTのツールを活用して、地域の課題解決や市民活動やコミュニテ
ィの活性化を図っていきたいと考えている。
●ICTインフラの整備
全7市において、Wi-Fi アンテナの整備や拡充を検討しており、市民や観光
客向けに利用環境の整備が必要と考えている。
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②具体的な取組内容
●マイナンバーとの連携
6市で庁内に検討会や準備室などの組織を設置し、マイナンバーを活用した
独自サービス等の検討を進めている。
●人材育成
7市で庁内職員向けの研修を実施し、人材育成に努めている。また、情報職
の採用や専門的知識の習得のため外部研修を実施している市もあった。
●災害に強いまちづくり
災害に備えて、学識経験者と検討組織を設置・検討したり、タブレット端末
を試験的に導入することを検討している市がある一方で、GIS 等を使用した机
上訓練を実施したり、災害被害を最小限に抑えるために行政からの情報を提供
するためのハード整備を行っている市もあった。
また、防災に関するオープンデータを活用し、活用事例が創出されている市
もあり、各市において様々な取組を行っている。
●地域経済の活性化・雇用の創出
IT 企業に展示会出展支援などの販路拡大についての支援のほか、市内ベンチ
ャー企業等に対し、オープンデータの活用の可能性等についての意見交換を行
っている市もあった。
●オープンデータの推進
オープンデータライブラリやデータカタログサイトの開設、市内の避難所等
のオープンデータ化など、オープンデータを利用できる環境整備の取組を行っ
ている市があった。また、J-LIS との調査研究事業や商工会議所などと連携し、
企業のニーズ調査を行いながら提供する行政情報の検討を実施している市もあ
った。
●ビックデータの活用
職員のスキル向上のため講習会等へ参加している市がある一方で、地元大学
との共同研究として、国民健康保険事業の医療費分析を実施している市もあっ
た。
- 20 -
●ガバメント2.0
市民とのワークショップの開催や市民協働レポートの推進のほか、市独自の
推進プランにおいて『電子自治体化「ガバメント 2.0」
』を推進している市もあ
った。
●市民活動や地域コミュニティの活性化
各市において、ワークショップの開催や地域活動ポイント制度の検討、地域
活動団体を対象にツイッターやフェイスブック等の SNS の講座の開催などを実
施している。また、実証実験した取組みの本格運用を開始する市もあった。
●ICTインフラの整備
公共施設や観光施設に Wi-Fi の整備・拡充を検討している市がある一方で、
災害時などの情報手段の確保のため、公衆無線 LAN の整備を検討している市も
あった。
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③ICTを活用した行政サービスを推進していく上での自由意見
●各市において、意見は様々
都市名
意見等
水戸市
・費用対効果が不明確という課題がある中,ICTを活用した市民サー
ビスの向上に向け,最先端の情報化技術を行政に活用していく必要性を
認識している。
甲府市
・ICTを活用しなくても、現状として業務が行われている状態では、
新たな業務が発生する可能性のあるICTの活用を推進することは非常
に難しい。また、ICTというだけで敬遠されてしまうことがある。
わかりやすいICT活用のメリットとしては、業務の効率化が挙げられ
るが、ある一定のレベルまで達するとそれ以上効率化は望めない状態に
なると考えられる。しかしながら、人々の意識の中には効率化が第一に
あるので、ICTを活用してサービス向上をさせることよりも、手間が
増えることに対して嫌悪感を感じるのではないか。ICTを利用するこ
とで「楽になる」ことだけを考えていてはICTを活用した市民サービ
ス向上は期待できず意識改革も必要なのではないかと考えられる。
前橋市
・オープンデータやビッグデータの活用にあたっては、必ず個人情報保
護関係法令の制約に突き当たる。先進自治体とも情報共有を図り、この
課題解決へ取り組んでいきたい。
宇都宮市
・ICTを効果的に活用していくためには、現在の業務を見直すことが
必須であり、所管課の意識改革が重要である。
・本市の情報化を推進していく中で、市民の利便性向上や行政の事務効
率化が図られると、まちづくりに携わっていることが実感でき、大変や
りがいを感じるとともに責任を感じている。
千葉市
・全ての市民がICTを利用するとは限らない中で、どのように費用対
効果を検証し、実現していけるかが課題と考えている。
・今後、ビッグデータを活用し、どのように、既存の事業を高度化して
いき、データ解析によって課題を未然に防いでいくかが課題と考えてい
る。
さいたま市
・市民ニーズと技術の進歩と庁内のルールがリンクしないと、どのよう
な技術でも導入が難しい。技術は陳腐化し、市民ニーズは変化する。こ
れらに庁内のルールをどのように合わせ、どのような技術を用いて「あ
るべき姿(目標)」に向かっていくかを常に考えなければならない。
- 22 -
2
課題及び取組の方向性等について
人口減少時代の到来に伴い、地方自治体においては、交流人口や定住人口を増やすた
めに、地域資源を生かした特性あるまちづくりを形成することが求められている。
総務省では、センサー、クラウド等の最先端のICTを地域の課題解決に総合的に活
用し、その運営ノウハウも含めシステムの全国展開・グローバル展開を図る実証プロジ
ェクト(ICT街づくり推進事業)を開始しており、実証プロジェクトで得られた成果
等を踏まえつつ、国内外へ普及・展開するための体制整備やグローバル展開方策の検討
等を行っている。
ICTを活用したまちづくりの実現にあたっては、持続可能な街に関する明確な経営
戦略の下、民・産・学・官による連携・協働により、クラウドサービスの利用や共通番
号制度を想定したID等と連携、センサー等によるリアルタイムデータや自治体保有デ
ータ等の多種多様なデータが活用されることを可能とするICTシステムが必要となる。
こうした社会を実現するためには、ビッグデータ等の新たなICTの活用に伴う課題
の抽出とその解決、その効果の見える化による関係者間の連携促進や個人に関するデー
タの取扱いに対する不安感の払拭等を図っていく必要がある。
今回のアンケート調査において明らかになった傾向として、ICT部門における充分
な予算確保ができない、専門性を持つ人材の確保に苦労しているという課題点が挙げら
れている。そうした中で、ビックデータやオープンデータを活用して、具体的に地域経
済の活性化や雇用創出の推進を図る目的で積極的に取り組みを図ろうとしている市が多
く見受けられ、また、市民の関心の高い課題であるが、民間では取組みにくい課題(取
組めない課題)に対して成果をあげている市があることも特筆される。
また、スマートフォンやタブレットなどの携帯型情報端末を持つ市民が増えているこ
とを背景として、参加するほぼ全市で Wi-Fi の拠点整備を検討又は拡充するなど、市民
の生活水準向上を図る取り組みを実施しており、携帯型情報端末を活用し、災害時の情
報伝達や地域活性化を図る仕掛けを行っている市も出てきている。
このようなことから、各市においては、本研究会での調査や情報交換を通じて明らか
となった取組状況や特色ある施策等を参考としながら、お互いに切磋琢磨し、各市の地
域資源を生かした実効性のある先導的な内容を構築していくことが重要である。
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