4.道路橋の性能設計に関する研究小委員会

道 路 橋 の 性 能 設 計
平成27年2月23日
関西道路研究会 道路橋調査研究委員会
道路橋の性能設計に関する研究小委員会
contents
[発表者]
1.本小委員会について
(委員長)京都大学
2.性能設計基準に関する国内外の現状と今後
3.新設橋梁における性能設計
4.既存橋梁における性能設計
5.まとめ
八木知己
大阪市
中上貴裕
㈱建設技術研究所
塚田祥久
㈱IHIインフラシステム 坪田慎一
(副委員長)大阪市立大学
山口隆司
1
1.本小委員会について
本小委員会のメンバー
委員長
副委員長
幹事
委員
オブザーバ
八木 知己
京都大学
山口 隆司
大阪市立大学
中上 貴裕
大阪市
塚田 祥久
㈱建設技術研究所大阪本社
坪田 慎一
㈱IHIインフラシステム
荒木 健二
三菱重工鉄構エンジニアリング㈱
池田 直樹(前任:小枝 芳樹) 川田工業㈱大阪支社
Luiza Hiroko Ichinose
㈱日本工業試験所
柿本 貴紀
堺市
川内 康寛
宇部興産機械㈱
氏本 敦(前任:川平 英史)
新日本技研㈱
須藤 丈(前任:島 賢治)
日立造船㈱
高木 一彦
JIPテクノサイエンス㈱
多田 貴久
㈱オリエンタルコンサルタンツ
玉置 征二郎
日本橋梁㈱
冨 健一
パシフィックコンサルタンツ㈱
西川 敦士
㈱綜合技術コンサルタント
松本 道夫
神鋼鋼線工業㈱
松本 裕介
大日本コンサルタント㈱
村上 琢哉
JFEスチール㈱
片山和也(前任:山野 修)
片山ストラテック㈱
山本 貴之
高田機工㈱
吉浦 健太
㈱駒井ハルテック
成田 茂雄
堺市
高井 俊和
大阪市立大学
① 新設橋梁における試設計WG
② 既設橋梁の補強に関する試設計WG
③ 設計基準WG
①②
③
③
①
②
②
①
③
③
③
①
②
①
②
③
②
②
②
③
①
①
③
①
③
③
3
本小委員会の開催日時
第1回
平成24年9月25日(火)15:30~17:30
大阪市立大学文化交流センター
第2回
平成24年11月29日(木)14:30~17:30
大阪市立大学文化交流センター
第3回
平成25年1月25日(金)17:00~19:00
大阪市立大学文化交流センター
第4回
平成25年4月11日(木)14:30~17:30
大阪市立大学文化交流センター
第5回
平成25 年6 月3 日(月)14:30~17:30
大阪市立大学文化交流センター
第6回
平成25年7月9日(火)14:00~17:00
大阪市立大学文化交流センター
第7回
平成25年10月3日(木)14:00~17:00
大阪市立大学・杉本キャンパス
第8回
平成25年12月10日(火)14:00~17:00
大阪市立大学文化交流センター
第9回
平成26年2月10日(月)14:00~17:00
大阪市立大学文化交流センター
第10回
平成26年4月22日(火)14:00~17:00
大阪市立大学文化交流センター
第11回
平成26年7月28日(月)15:00~17:00
大阪市立大学文化交流センター
第12回
平成26年10月1日(水)14:00~17:00
京都大学桂キャンパス
勉強会
WG活動
4
勉強会の内容
目的: 同じ土俵で議論できるよう,性能設計に関する意識の統一
 性能設計に関する話題提供
 性能設計に関するフリーディスカッション
 性能設計に関するアンケート
① 性能設計のメリット・デメリットを述べよ.
② 性能設計について検討(勉強)したい項目を挙げよ.
③ 性能設計について,どのように考えているか.
橋梁の要求性能の受け渡し
「もし道路橋示方書が存在しなかったら?」
① 発注側 「橋梁の性能をどう記述して設計者に伝えるか」
② 設計側 「どんな性能を示されれば,橋梁を設計できるか」
勉強会の内容は,報告書に「橋梁技術者の性能設計に対する意識について」
として記載.
5
WG活動
① 新設橋梁における試設計WG
② 既設橋梁の補強に関する試設計WG
③ 設計基準WG
6
2.性能設計基準に関する 国内外
の現状と今後
はじめに
【性能設計基準の近年の動向】
• 我が国では、許容応力度設計法から限界状態設計法への転換を
目指し、盛んに研究等が行われる時代があったが、実際に転換さ
れるまでには至っていない。
• 一方で、海外では、EU諸国を中心に、部分係数設計法を基本とし
た限界状態設計法へ限界状態設計法が提示され、多くの構造物
に対して、この設計法が適用されつつある。
• この世界情勢を受け、我が国でも部分係数設計法を基本とした性
能照査型設計法のモデルが提示され、研究が再び盛んになって
きた。
(道路橋示方書や、鋼・合成構造標準示方書への部分係数法の導入など)
8
はじめに
【主な検討内容】
1.国内では、性能設計基準(限界状態設計法)について構造物ごと
に検討されているが、 横断的に検討され、公開されている資料
が見当たらない。
本小委員会にて、国内外の限界状態設計法の現状につい
て設計に重要なキーワードに着目して比較。
2.海外では限界状態設計法に加え、近年、構造ロバスト性や
リダンダンシーといった通常の設計で考慮しない事象に対する
構造物の安全性の担保を重要視する傾向にある。
本小委員会では、巨大災害を受ける可能性がある我が国
にとって今後重要な要素と捉え、性能設計基準の一部とし
て、構造ロバスト性等の考え方や事例を調査。
9
1.性能設計基準(限界状態設計法)に関する
国内外の現状
・国内外の設計基準の変遷
・海外の設計基準の変遷
・欧州の設計基準
・北米の設計基準
・国内の設計基準の変遷
・国内外の設計基準の比較
①設計法
②限界状態の設定
③部分係数の設定
④目標信頼性指標β
⑤設計寿命
・まとめ
10
国内外の設計基準の変遷
海外の設計基準の変遷
1990
1980
2000
2010
2014
ISO 2394第3版
【ISO2394】
他の設計基準の上位基準
◆ 制定
◆
原案 1998年
1986
Eurocode
ENV(欧州プレ規格)
【Eurocode】
◆
◆
2002~2007年にかけて制定 計10編
1992~1998年にかけて公表
【AASHITO-LRFD】
◆
◆
◆
荷重係数設計法
1994
1998
2004
◆
◆
◆
2007 2010 2012 2014
移行
【AASHITO-SSHB】
◆
◆
1931制定(許容応力度設計法) 1989
1973LFD荷重係数設計法の導入
1980
◆
1992
1990
◆ 2002以降改定なし
2002
2000
2010
2014
11
国内外の設計基準の変遷
欧州の設計基準
• ISO 2394 第3版 1998年
– 他の設計基準の上位基準で,設計の原則や基本的事項を
まとめる
– 部分係数法や安全性指標,破壊確率を使用
• Eurocode 2002~2007年にかけ全10編が制定
– 全般にかかわることは共通で,構造特性に依存するものは
構造種別ごとに定め,体系化されている
– NDP(国別係数)の規定により,地域の気候,文化を考慮で
きる
※ Nationally Determined Parameter
12
国内外の設計基準の変遷
北米の設計基準
• カナダ・オンタリオ州:OHBDC 1979年
(限界状態設計法)
• カナダ統一基準:CSA S6-00(CHBDC) 2000年
OHBDCを反映し全面改訂
• 米AASHTO-SSHB:許容応力度設計法
(LRFDと併存.ただし現在では2002年以降改訂されていない)
• 米AASHTO LRFD:荷重係数設計法
(欧州,カナダの限界状態設計法の概念を取り入れ制定)
※Ontario Highway Bridge Design Code
Canadian Highway Bridge Design Code
Standard Specifications for Highway Bridges
Load and Resistance Factor Design
13
国内外の設計基準の変遷
実線:性能照査,性能規定
国内の設計基準の変遷
1980
1980
点線:限界状態設計法
2010
2010
2000
2000
1990
1990
2014
2014
1998
1986
1986 ◆
【ISO 2394】
【ISO2394】
◆
↑性能照査,限界状態設計法として制定
1998
↑性能照査、限界状態設計法として制定
【土木・建築に関わる設計の基本】
【土木・建築に関わる設計の基本】
2002 ◆ 制定
2002
↑性能照査,限界状態設計法として制定
↑性能照査、限界状態設計法として制定
【道路橋示方書】
【道路橋示方書】
1972年制定
1972年制定
◆
1986
1986
◆
1990
1990
◆
1994
1994
◆
◆
2002
2012
2012
↑性能照査(みなし規定)に移行
↑性能照査(みなし規定)に移行
【コンクリート橋示方書】
【コンクリート標準示方書】
1949年制定
1949年制定
◆
◆
1986
1991
1986
1991
↑限界状態設計法の導入
↑限界状態設計法の導入
◆
1996
1996
◆
◆
◆
2002
2007
2012
↑仕様規定から性能規定に移行
↑仕様規定から性能規定に移行
【鋼・合成構造標準示方書】
【鋼・合成構造標準示方書】
2007 ◆
2007
↑性能照査,限界状態
↑性能照査、限界状態設計法として制定
設計法として制定
【複合構造標準示方書】
【複合構造標準示方書】
2009 ◆
2009
移行
2002 ◆複合構造物の性能照査指針(案)
↑性能照査,限界状態設計法として制定
【港湾の施設の技術上の基準・同解説】
【港湾の施設の技術上の基準・同解説】
1979年制定
1979年制定
【鉄道構造物等設計基準・同解説】
【鉄道構造物等設計基準・同解説】
◆
1994
1994
◆
1999
1999
↑限界状態設計法導入
◆
2007
2007
↑仕様規定から性能規定に移行
↑仕様規定から性能規定に移行
限界状態設計法の導入
1992
1992
◆ 制定
↑限界状態設計法の導入
↑限界状態設計法の導入
1983
移行
◆建造物設計標準
↑仕様規定,許容応力度設計法
↑仕様規定、許容応力度設計法
2009
2009
◆
↑仕様規定から
↑性能規定 に移行
性能規定に移行
14
国内外の設計基準の変遷
国内の設計基準の変遷
• 土木・建築にかかる設計の基本について(2002)
【道路橋の設計基準】
• 道路橋示方書(2002から性能規定に)
• 鋼・合成構造標準示方書(2007)
• 複合構造標準示方書(2009)
• コンクリート標準示方書
(1986から限界状態設計法に,2002から性能規定に)
【道路橋以外の設計基準】:
• 港湾の施設の技術上の基準・同解説
(1999から限界状態設計法を導入、2007から性能規定法に)
• 鉄道構造物等設計基準・同解説
(1992から限界状態設計法に,2009から仕様規定に)
15
国内外の設計基準の比較
①設計法
海
外
基
準
国
内
基
準
制定機関
制定年(最新)
設計法
複合構造標準示方書
土木学会
コンクリート委員会
2009
部分係数設計法
鋼・合成構造標準示方書
土木学会
複合構造委員会
2007
コンクリート標準示方書
土木学会
鋼構造委員会
2012
部分係数設計法
部分係数設計法
●信頼性設計法(ISO2394,Eurocode、国内)
・構造物が限界状態に達する可能性を確率論的に照査
・構造物の破壊確率の高い順にⅢ、Ⅱ、Ⅰの3レベルに区分
・信頼性理論のレベルⅠ(部分係数)を使用する場合が多いことから、
部分安全係数設計法(partial safety factor design)とも呼ばれる。
●荷重抵抗係数設計法(AASHTO LRFD)
・限界状態に対して、荷重に対する安全係数に対して、荷重係数・ 抵抗係数・
構造物係数を用いて構造物の安全性を照査
16
国内外の設計基準の比較
②限界状態の設定
設計基準
海
外
基 要求性能
準 (限界状態)
要求性能
( 限界状態)
国
内
基
準
ISO2394
①使用限界状態
②終局限界状態
複合構造標準示方書
安全性
Eurocode
AASHTO LRFD
①使用限界状態
①使用限界状態
②終局限界状態
②疲労限界状態
(破壊・安定・変形・疲労) ③終局限界状態
④偶発限界状態
鋼・合成構造標準示方書
コンクリート標準示方書
安全性
安全性
(断面破壊, 疲労破壊,構造物 (安全限界状態または終局限 (断面破壊, 疲労破壊,構造物の安
の安定)
界状態)
定)
使用性
使用性
使用性
(走行性・ 歩行性, 外観,騒音・ (使用限界状態)
振動,水密性)
( 外観, 騒音・ 振動, 走行 性・ 歩行
性,水密性,損傷)
復旧性
修復性
復旧性
(修復性)
(修復限界状態または損傷限 (修復性)
界状態)
耐久性
(疲労限界状態)
■ISO2394、Eurocodeでは、使用限界状態、終局限界状態が規定されている
■AASHTO-LRFDでは、これに加え疲労限界、偶発限界が規定されている
■国内基準は、要求性能ごとに各限界の定義(終局限界(安全限界)状態、
使用限界状態、修復限界状態)が示されている
17
国内外の設計基準の比較
③部分係数の設定
海
外
基
準
国
内
基
準
抵抗側の評価
部分係数
または
安全係数
複合構造標準示方書
材料係数アプローチ
●材料係数
●作用係数
●構造解析係数
●部材係数
●構造物係数
鋼・合成構造標準示方書
材料係数アプローチ
●材料係数
●作用係数
●構造解析係数
●部材係数
●構造物係数
コンクリート標準示方書
材料係数アプローチ
●材料係数
●作用係数
●構造解析係数
●部材係数
●構造物係数
■材料係数アプローチ(Material factor approach)
1.0以上の係数で材料パラメータを除し耐力を求める方法
■抵抗係数アプローチ(Resistance factor approach)
1.0以下の係数を抵抗パラメータの特性値に乗じることで耐力を求める方法
・Eurocodeは材料係数アプローチ、AASHTO-LAFDは抵抗係数アプローチ
・国内はEurocodeと同様、抵抗係数アプローチにより各部分係数を設定
18
国内外の設計基準の比較
④目標信頼性指標β
●受容可能な性能を確認するために必要な信頼性の目標値
●値が大きいほど構造物の破壊確率が小さいことを示す指標
●構造物が破壊した場合の影響が大きいものほど、
また、安全性向上対策費用が安いものほど大きな数値となる。
海
外
基
準
国
内
基
準
複合構造標準示方書
目標信頼性指標β
明確な記述なし
鋼・合成構造標準示方書
明確な記述なし
コンクリート標準示方書
明確な記述なし
【目標性信頼指標の一例(ISO2394)】
・海外の設計法では、終局限界状態に
対して、β=3.5および3.8を中心に、
β=3.1~4.3の範囲で設定
・ISO2394では、構造物の重要度に応じ
てβを大きくすることが提案されている
・国内基準には明示的な記述なし
19
国内外の設計基準の比較
⑤設計寿命
海
外
基
準
【 ISO2394,Eurocode 】
・構造物に応じ4クラスで規定。( Eurocode は仮設構造の規定なし)
・設計供用期間中は、耐久性を確保するよう規定。
(耐久性:信頼性の要求を満たすのに必要な条件)
【 AASHTO LRFD 】
・設計寿命(Design Life)として75年が設定
・供用期間( Service Life)に受ける荷重に対し耐久性を満足させる。
・設計寿命:荷重設定のための想定年数≠本来の構造物寿命
20
国内外の設計基準の比較
⑤設計寿命
国
内
基
準
鋼・合成構造標準示方書
設
計
寿
命
複合構造標準示方書
コンクリート標準示方書
道路橋や鉄道橋の実績よ
り
構造物に要求される供用期間
設計供用期間を100年に
設定するのが一般的であ
ると解説されている
環境条件,
維持管理の方法,
経済性等を考慮して定めると規定
国内の各示方書とも、具体的に設計寿命を規定していない
・海外基準では、対象とする構造物に応じて仮設構造物は1~5年、
交換構造要素は25年、その他の構造物は50年~100年と設定
・国内の設計基準には設計寿命が明示されていない
21
性能設計基準(限界状態設計法)に関する国内外の
限界状態設計法の現状 (まとめ)
• 設計法に関して、国内はEurocodeと同様、信頼性
設計法レベルⅠの部分係数法を採用
• 限界状態や部分係数の設定に関しても、国内基準
はEurocodeに近い考え方
• 目標信頼性指標βや設計寿命に関しては、海外で
は明確な基準があるが、国内基準は明示された記
述がみられない
22
2.巨大災害等の設計想定外の事象に対する構造安
全性の担保としてのリダンダンシーや構造ロバスト
性の考え方、事例調査報告
・リダンダンシーおよび構造ロバスト性の概要
・リダンダンシーの概要および事例
・構造ロバスト性の概要および事例
・まとめ
23
リダンダンシーおよび構造ロバスト性の概要
国内外の現状(概要)
・構造物の安全性をより向上させる特性として,リダンダンシー(冗長性)
やロバスト性(頑健性)の概念がある
・海外の設計基準ではAASHTO-LRFDにおいて橋梁の設計・製作・維持
管理に対しリダンダンシーが取り入れられている
・国内の複合構造標準示方書,コンクリート標準示方書ではそれらの概
念の紹介はされているが,設計手法の言及はみられない
今後、日本国内において、構造物の安全性を担保する構造ロバスト性や
リダンダンシーの概念を設計・製作・維持管理に取り込んでいくことは重
要課題と考えられる
24
リダンダンシーの概要および事例
○定義
・リダンダンシー(冗長性)とは、一般的に余分な部分を付け加えることで,機能
の安定化が図られていることを意味する
・ AASHTO-LRFDでは、部材の損傷もしくは破壊後でも構造全体系の耐荷力もし
くは機能を維持する能力と定義
・構造工学の分野では、静定構造より不静定構造の方が、2主桁橋より多主桁
橋の方がリダンダンシーがあると一般的に考えられている
○先進事例( AASHTO-LRFDの事例)
・世界的にみて,リダンダンシーの概念を本格的に橋梁の設計・製作・維持
管理に取り入れているのは米国のみ
・崩壊危険部位(FCM)を含む橋梁(FCB)は、リダンダンシーの無い橋梁に分類され、
以下の非常に大きなペナルティが課せられる。
1)設計時の安全率を通常の橋梁より5%大きくしなければならない
2)製作時の非破壊検査や高靭性の鋼材の使用の義務化
3)定期点検期間を通常の橋梁に比べて短く設定し、FCM部位は近接目視を義務化
4)既設橋の耐力評価においても、耐荷力を15%低く評価する
など
道路管理者は、新設橋梁においてはFCBを避ける傾向にある
25
構造ロバスト性の概要および事例
○構造ロバスト性の定義
ロバスト性はシステムが,予期しない,あるいは異常な状況下においても
システムを維持、存続することを可能にする特性
○構造ロバスト性の種類
・Eurocodeには、構造物を設計・施工する際は、爆発、衝撃、ヒューマンエ
ラーのような事象に耐えることができる構造とするよう記載されている。
【構造ロバスト性の種類(一例)】
■強度 (余剰な強度をもたせて構造システムが限界状態となるのを防ぐ方法)
■二次防御線 (二番目の荷重伝達経路(代替機能)で主な役割を果たす方法)
■複数の荷重伝達経路
(1つの荷重伝達経路に損傷が生じた場合、残りの経路で荷重に抵抗するなど)
■犠牲と保護装置
(構造要素に十分なロバスト性を与えることが不経済かつ不可能な場合、危険性
を有する衝撃等を遮る装置を別で設置する方法)
■ノックアウトシナリオ
(重大な損傷を引き起こさないよう、確実に壊れる部位を設ける方法)
■警告、モニタリング
26
(構造損傷が初期の段階で把握しやすい構造とし、早めの措置を講ずることもロバスト性の一つ)
構造ロバスト性の概要および事例
○構造ロバスト性が既に考慮されている国内の設計例
• 現設計において,既にロバスト性を確保した設計が数
多く実施されている.
• 例えば,橋梁においては,耐震性能の向上や耐久性
向上などを目的とした対策として新設橋,既設橋また,
付属物などに多く適用されている.
• 以降に、ロバスト性を考慮した設計の一例を挙げる
27
事例1
概 要
壁高欄の誘発目地構造
大きな拘束力を受ける構造物である壁高欄に
ひび割れ誘発目地を設け,温度変化や乾燥 分
収縮等によるコンクリートへの影響を予め考 類
慮する.
<構造の概要>
・壁高欄は底面に大きな拘束を受ける構造物である
ため,温度変化や乾燥収縮によるひび割れが発生
しやすい.そのため壁高欄に一定間隔(5~10m)に
目地を設け,ひび 割れを発生させる.
・設計段階で,ひび割れを発生させる位置を決め,人
為的にひび割れを生じさせることで,耐久性に影響
のあるひび割れを発生させない.
大分類
橋梁
小分類
附属物
ロバスト性
犠牲
一般図
平面図
<ロバスト性>
・ひび割れ誘発目地により,あらかじめ犠牲箇所を設
けることで耐久性に影響のあるひび割れを発生さ
せず安全性を確保するほか,維持管理性も向上す
る.
ひび割れ誘発目地の例
28
事例2
制震デバイスを用いた耐震補強
(座屈拘束ブレース,せん断パネル型制震ストッパー)
概 要
地震時の運動エネルギーを構造体が有する
機能にて抑制する技術.低降伏点鋼材を使
分
用することで塑性化を促し,弾塑性ダンパー
類
の履歴減衰型エネルギーの吸収を行う制振
装置
<構造の概要>
大分類
橋梁
小分類
既設橋
ロバスト性
犠牲
座屈拘束ブレース
せん断パネル型制震ストッパー
・低降伏点鋼材を使用した芯材,もしくはパネル材
を安定的に塑性化させることで地震時のエネル
ギーを吸収する構造.
・ 主要部材が一般鋼材で構成され,スリムでシ ン プ
ルな構造が多い.荷重・構造ともに任意性が高く
新設から既設に至る多くの構造に適用できるなど
汎用性に優れている.
・ 制震ダンパー系の構造体としては ,比較的低コス
トな構造といわれている.
<ロバスト性>
・芯材,もしくはパネル材自身が犠牲となり塑性化す
ることで,弾塑性ダンパーとして履歴減衰型エネル
ギーの吸収を行う.
各種制震デバイス
29
吊橋のケーブル設計(メインケーブルの破損防止対策)
事例3
吊橋のメ インケーブルと補 剛桁を繋 ぐセ ン
分
ターステイの設計に,ノックアウトの効果を持
類
たせ,メインケーブルの破損を防止
概 要
大分類
橋梁
小分類
新設橋
ロバスト性
ノックアウト
<構造の概要>
・センターステイとは,橋の中央部において主ケー
ブルと桁を繋ぎ止め,強風による桁のゆれを抑制
する装置.
主ケーブル
<ロバスト性>
・主ケーブルや桁への被害軽減対策として大きな
地震力に対して,センターステイのロッド部で破
断する設計.
塔
塔
メインケーブル
アンカレッジ
補剛桁
アンカレッジ
センターステイ
ハンガーケーブル
一般的な吊橋の構造と応力伝達
土木学会 2001 年3 月24 日芸予地震被害調査報告(補足)より抜粋
30
事例4
概 要
上下部剛結のラーメン構造
沓を廃止し,上下部一体構造とすることで,高
分
次の不静定構造体となることから荷重経路が
類
多岐にわたり耐震安定性が増す
大分類
橋梁
小分類
新設橋
ロバスト性
第2防衛線
複数の荷重経路
<構造の概要>
・上部工と下部工を一体に形成することから地震
時における変形や断面力を上部工にて拘束す
る効果がある.
・耐震性に優れた構造といえる一方で,上部工側
にも地震による耐震設計を求める必要がある.
・支承が不要となり,低コスト化が見込まれる.
・上部工と下部工の拘束による2次力が発生する
ため設計に当たってはこれらの2次力を適切に
評価する必要がある.
橋梁上部工
橋脚
基礎
<ロバスト性>
・高次の不静定構造体となることから複数の荷重経路
が発生し耐震安定性が増す.
高次の不静定構造体への変更例
31
事例5
付属物のモニタリング構造
(合成床版モニタリング孔,非排水伸縮装置水抜き装置)
概 要
合成床版の鋼板部の帯水状況を確認するた
めのモニタリング孔の設置及び,非排水型伸
分
縮装置に劣化状況を確認するための水抜き
類
孔の設置により,点検のしやすさの向上及び
深刻な劣化の事前抑制を図る.
大分類
橋梁
小分類
附属物
ロバスト性
警告
モニタリング
<構造の概要>
・合成床版にモニタリング孔を設置することで,
鋼板部の滞水状況を目視で確認することが
できる.
・非排水型伸縮装置に水抜き孔を設置すること
で,非排水構造の劣化状況を目視で確認する
ことができ,桁端部の漏水による劣化を抑制
できる.
モニタリング孔
<ロバスト性>
・警告表示として漏水状態をモニタリング孔に
より確認できることで,重大な劣化に進行する
前に予防的に処置を行うことができ,維持管
理性の向上及びライフサイクルコストの削減
に繋がる.
合成床版のモニタリング孔の設置例
32
リダンダンシーおよび構造ロバスト性の概要・事例(まとめ)
■構造物の安全性をより向上される特性として、リダンダンシー
(冗長性)やロバスト性(頑健性)の概念がある。
■AASHTO-LARDでは設計・製作・維持管理に対してリダンダシー
の概念が 取り入れられている
■Eurocodeでは、ロバスト性に関する定義づけがされている。
■国内では、これらの概念の紹介はあるが、設計手法の言及は
みられない。
■ただし、国内でも既にこれらの概念を潜在的に取り入れている
ものもある。
■今後、設計・製作・維持管理に取り込んでいくことは重要課題
と考えられる
33
3.新設橋梁における性能設計
発表構成
•
•
•
•
•
はじめに
検討内容と目的
検討対象とするシナリオ
検討対象橋梁の試設計
課題と今後の展望
35
はじめに
• 道路橋に性能設計を適用することにより,現在
用いられている仕様規定設計よりも合理的な設
計,施工および維持管理を行うことが出来ると
考えられている.
• 仕様規定設計では程度の差はあるが,設計上
多くの余裕が考慮される.
本検討
• 新設道路橋に適用可能な性能設計の検討を行
い,その有効性を試設計により確認
• 仕様規定設計として許容応力度設計法(見なし
規定)を検討する。
36
部分係数設計法の適用
検討内容と目的
① 性能設計の適用
• 一般的に設計項目は,上位から『目的』,『要求性能』,『性能規定』
に分類されることが多い.
• 『目的』に対する必要な性能およびその性能を確認する照査が,構
造物の設計,施工,維持管理の中で一連の関係性をもって明確とな
ることが,仕様規定との大きな相違点
• 性能照査においては,どのような個々の作用や組合せの作用を用い
ることは,その構造物が考慮している限界状態として整理される
信頼性の概念を用いる(信頼性設計)
図-性能の階層化及び性能照査の位置づけ (港湾の施設の技術上の基準・同解説 H19より)
37
部分係数設計法の適用
検討内容と目的
②部分係数設計法の適用
• 信頼性設計:照査方法によりレベルⅠ~Ⅲに分類
• 今回の検討:最も簡易であるレベルⅠの部分係数設計法を用いる
↑レベルⅡの信頼性指標βによる照査,レベルⅢの破壊確率Pfによる照査
では,許容応力度設計法との比較は困難となるため
↑βおよびPfによる照査の際,設計値および制限値の算出には,多大なサ
ンプルが必要となり,今回の検討においては,適していない.
精度
【高】
レベル
Ⅲ
Ⅱ
精度
【低】
Ⅰ
照査フォーマット
摘要
Pf ≦ PfT
Pf :構造物の破壊確率
PfT:目標破壊確率
β ≧ βT
β :信頼性指標
βT:目標信頼性指標
γi(Sd/Rd)=γi(γF・Sk/(Rk/γm) ≦ 1
Sd:荷重の設計値 γi:構造物係数
Rd:抵抗の設計値
備考
・確率論的に最も厳密な安全性照査
・設計変数の確率分布が既知であることが
前提
・確率論的な取扱いに一次近似を行う
・レベルⅠの部分安全係数を構成するため
の基礎としての意味を持つ
・各設計変数について設計値を指定し、この
値に関係づけられた部分安全係数を用い
て限界状態に対する信頼性を照査
(土木鋼構造物の性能設計ガイドライン H13.10 参考)
今回の
検討
38
試設計の対象構造
検討内容と目的
試設計の対象構造:上部工
•
•
•
•
形 式:鋼単純非合成I桁橋
橋 長:30m
有効幅員:4.5m
床 版:RC床版
39
試設計のながれ
検討内容と目的
• シナリオの作成
• 目的、橋の規模、交通条件、設計時の荷重条件を想定
• 発注者からの要求事項、発注者と設計者の合意事項の整理
✓要求性能を想定
✓設計で考慮する状況の整理(作用と抵抗について)
• 許容応力度設計法との比較
40
シナリオの概要①
検討対象とするシナリオ
①シナリオ1:社員駐車場予定地内を想定し,通勤
車両(普通車のみ)を考慮した設計⇐A活荷重との比較
• 目的:工場敷地内の社員駐車場予定地へのアクセス道路上
の橋梁建設
• 橋の規模:支間長:30m、有効幅員: 4.5m(車1台と自転車お
よび歩行者の通行が可能)
• 交通条件:新設駐車場の計画が100台分の規模より、200台
/日(往復)、通勤車両は普通車のみ
• 設計時の荷重条件の設定:p1荷重は考慮せず p2荷重のみ。
活荷重については有効幅員全面に載荷。
41
シナリオの概要②
検討対象とするシナリオ
②シナリオ2:工場内を想定し,総重量75tの車両の
走行を考慮した設計⇐B活荷重との比較
• 目的:工場から自社の港まで、多軸自走車により重量物(プラ
ント設備)の輸送を行う。その事業に伴う、橋梁建設。
• 橋の規模:支間長:30m、有効幅員:4.5m(多軸自走車の幅)
• 交通条件:多軸自走車は同時に1台のみ通行。輸送時以外
は、工場内の連絡用車両(数台/日)のみ。多軸自走車(7軸
)の自重+プラント設備:750kN
• 設計時の荷重条件の設定:主載荷長10m のp1荷重を16.7kN/
m2(総重量より)とし,多軸自走車以外の走行は無いため,p2
荷重は考慮しない。衝撃係数は、通行速度が遅いため,道路
橋示方書の値の1/2
42
要求事項と合意事項の整理
設計者と発注者の
合意事項
発注者の要求事項
●基本条件
・使用目的
・架橋位置
・設計供用年数
●要求性能
検討対象とするシナリオ
発
注
◆基本条件
・橋梁規模
・設計速度
・線形条件
・交通条件
・荷重条件
・使用材料
◆設計で考慮する状況
43
要求性能
発注者
●耐荷性能
設計供用期間中(100年)に
橋全体として部分的にも損傷
が生じておらず,かつ橋とし
ての機能が損なわれていな
い状態を保持できる耐荷性能
を確保
●耐久性能
疲労や腐食などが発生するこ
とに着目した耐久性能も確保
検討対象とするシナリオ
設計者
◆試設計では、道路橋示方
書の許容値を使うことによっ
て、確保することを仮定
合意
合意
◆試設計では、道路橋示方
書の許容値を使うことによっ
て、確保することを仮定
44
設計で考慮する状況の整理
検討対象とするシナリオ
①作用について
• 構造形式は非合成単純鈑桁であるため,鈑桁の断面構成に支配的な,
構造物の自重Dと活荷重L(衝撃iを含む)を考慮
• なお,活荷重は発注者と合意した荷重値であり,活荷重のばらつきは
生じないため,荷重組合せD+L(i)における各荷重の荷重係数は1.00とす
る.
②抵抗について
• 一般的に:①構造物係数 ②構造解析係数 ③材料係数 ④安全余裕
を考慮するための抵抗係数
■本検討では、
• 材料係数:現行の道路橋示方書程度の材料強度が確保できる0.60
• それ以外(構造物係数、構造解析係数、抵抗係数):1.00 (民地内で社
会的影響度が低い、実績の多い橋種より)
45
照査部位と照査項目
検討対象橋梁の試設計
①対象橋梁
•
•
•
•
形 式:鋼単純非合成I桁橋
橋 長:30m
有効幅員:4.5m
床 版:RC床版
②照査部位
• 断面決定される「支間中央」
46
活荷重の条件
検討対象橋梁の試設計
①シナリオ1:社員駐車場予定地内を想定し,通勤車両(普通車
のみ)を考慮した設計
A活荷重
性能設計
②シナリオ2:工場内を想定し,総重量75tの車両の走行を考慮
した設計
B活荷重
性能設計
47
設計ケース
設計ケース
シナリオ1
シナリオ2
ケース1-1
ケース1-2
ケース2-1
ケース2-2
検討対象橋梁の試設計
荷重の組合せ
死荷重+活荷重
死荷重+活荷重
活荷重の条件
A活荷重(従来設計)
p2荷重のみ載荷(性能設計)
B活荷重(従来設計)
2
16.7kN/m のp1荷重のみ載荷(性能設計)
48
試設計結果
検討対象橋梁の試設計
シナリオ1:A活荷重に対し,p2荷重のみで設計したケース2-2は
活荷重が1/2程度となるため,部材断面を15%程度小さくできる
結果となった.
シナリオ2:B活荷重に対し,p2荷重を考慮せず衝撃係数を低減
したことにより活荷重が従来設計と同等程度に抑えられ,断面
もほぼ相違が無い
シナリオ1の結果
シナリオ2の結果
シナリオ2
シナリオ1
項目
単位
ケース1-1
ケース1-2
従来設計
性能設計
項目
単位
ケース2-1
ケース2-2
従来設計
性能設計
死荷重
kN・m
3901
3901
死荷重
kN・m
3935
3935
活荷重
kN・m
2282
1125
活荷重
kN・m
2911
2684
死+活
kN・m
6183
5026
死+活
kN・m
6846
6619
断面
U.FLG
mm
500
x
29
500
x
23
WEB
mm
1771
x
9
1777
x
9
L.FLG
mm
500
x
35
500
x
27
Ag
cm
Iy
応力度
cm
σu
σL
2
479.39
4
N/mm
2
-200.1
202
<
<
210
-196.7
203.6
<
<
500
x
32
500
x
31
WEB
mm
1768
x
9
1769
x
9
L.FLG
mm
500
x
39
500
x
38
Iy
2442702
-210
mm
Ag
409.93
3002540
N/mm2
断面
U.FLG
-201.9
210
応力度
cm
2
514.12
504.21
cm
4
3282531
3201515
σu
N/mm2
σL
2
N/mm
-204.1
<
-210
-202.5
<
-210
203.9
<
210
201.7
<
210
49
性能設計の導入目的
課題と今後の展望
道路橋示方書に基づく仕様規定設計の問題点
• 発注者,設計者とも構造物の性能についての
把握が十分ではなく,他者への説明が可能とは
考え難い
• 設計上想定した各種状態が不明確(例えば,大
型車混入率などの活荷重の載荷状態)
50
性能設計の導入目的
課題と今後の展望
性能設計を導入することによる問題解決点
• 橋梁構造物の整備目的の明確化
• 橋梁構造物の要求事項,要求性能の明確化
• 要求性能を満足するための各種の考慮する設
計状態とそれら設計状態での性能評価内容の
明確化
51
性能設計シナリオの提示理由 課題と今後の展望
発注者
• 発注者として,利用者および設計者に説明できる橋
梁の要求事項の明確化
• 設計者と協議,合意形成すべき要求性能の提示
設計者
• 発注者が示す要求事項に基づいた設計構造物の要
求性能の明確化
• 発注者と協議,合意形成すべき要求性能の提示
52
性能設計の課題
課題と今後の展望
①設計与条件として具体的な要求事項の提示
②要求性能に基づく活荷重特性値の設定
③活荷重以外の設計用特性値の設定
④使用部材,使用材料の特性値,抵抗係数の設定
⑤各種文献による課題解決
53
今後の展望
課題と今後の展望
①交通量データの集積と供用期間を考慮した橋梁
設計用活荷重値としての整理
②性能設計にもとづく橋梁試設計実施による,発注
者・設計者双方の性能設計に関する技術的知見
の蓄積
③性能設計に関する知見の技術資料類への反映
④性能設計に関する設計システムの開発
⑤性能設計に関する法令整備
54
4.既存橋梁の補強に関する
性能設計
発表構成
•
•
•
•
はじめに
検討内容と目的
対象橋梁の諸元
試設計
①実載荷荷重を考慮して性能評価した事例
②新工法の採用および余寿命から性能評価した事例
③非合成桁の合成効果を考慮して性能評価した事例
④外ケーブルによる効果を考慮して性能評価した事例
• おわりに
56
はじめに
既存橋梁の老朽化
既存橋梁の延命化・長寿命化対策
限られた予算での大量な既存橋梁の維持管理
補強対策のさらなる合理化・最適化が求められる
「性能設計」 の導入が望まれる
57
検討内容と目的
既存橋梁の補強に関して性能設計の事例が少ない
既存橋梁を対象に、
活荷重の見直し(L-20→B活荷重)を想定し、
以下の事例について性能設計の導入を試みた
①
実 載 荷 荷 重 を考慮して性能評価した事例
②
新 工 法 の 採 用 および余 寿 命 から性能評価した事例
③
非合成桁の合 成 効 果 を考慮して性能評価した事例
④
外 ケ ー ブ ル による効果を考慮して性能評価した事例
58
対象橋梁の諸元(1/2)
・対 象 橋 梁 :S橋(昭和41年架橋)
・形
式 :鋼単純合成I桁(上下線分離構造)
・橋
長 :24.0m
・支 間 長 :23.6m
・設計活荷重 :L-20
59
対象橋梁の諸元(2/2)
主桁G3の支間中央部材に着目
60
①実載荷荷重の評価(1/3)
◆実載荷荷重の整理
大型自動車(2軸)
総重量 25t
大型自動車(2軸) 総重量 25t
12000
12000
12000
1400
8600
1750
2500
0.15W
0.15W
0.3W
0.7W
1400
8600
2000
大型自動車(3軸) 総重量 25t
大型自動車(3軸) 総重量 25t
大型自動車(3軸) 総重量 25t
12000
12000
12000
1400
6750
2500
1750
0.1W
0.1W
0.2W
1400
0.8W
6750
3850
セミトレーラ 総重量 40t
セミトレーラ 総重量 40t
トレーラ 総重量 40t
17000
17000
2500
1400
0.1W
3100
0.4W
3100
0.05W
0.2W
0.05W
0.2W
1750
1400
0.5W
9900
2600
61
①実載荷荷重の評価(2/3)
◆実載荷荷重を想定
車道幅 4350
CASE-1 支間中央着目
CASE-1 支間中央着目
載荷区間 24000
車両進行方向
CASE-2 起点側横桁位置着目
CASE-2 起点側横桁着目
車道幅 4350
載荷区間 24000
車両進行方向
車道幅 4350
CASE-3 終点側横桁位置着目
CASE-3 終点側横桁位置着目
載荷区間 24000
車両進行方向
62
①実載荷荷重の評価(3/3)
曲げモーメント
11.8
17.7
◆発生曲げモーメントの比較
曲げモーメント
0
5.9
11.8
23.6
17.7
23.6
0
500
L-20
1000
B活荷重
KNm
支間中央着目
L-20
L-20
1497.12
1500
1507.04
起点側横桁着目
終点側横桁着目
B活荷重
B活荷重
CASE-1
支間中央着目
CASE-2
起点側横桁着目
1497.12
2000
CASE-3
終点側横桁着目
1507.04
要求性能を実荷重とすることによって、補強は不要となる
2500
63
②新工法の採用および余寿命の評価(1/5)
◆代表的な補強方法である「当て板補強」の紹介
下フランジ当て板補強
出典:道路橋点検士技術研究会テキスト
補強前
補強後
出典:三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社
64
②新工法の採用および余寿命の評価(2/5)
◆対象とする補強法
上表の工法に部材の寿命を設定し、耐荷力照査に反映した。
65
②新工法の採用および余寿命の評価(3/5)
◆設計ケースと条件
試設計ケース 余寿命 対
ケース1
52年
ケース2(参考)
ケース3(参考)
52年
ケース4(参考) 100年
象
工
法
接着工法
(新工法)
接着工法
(新工法)
摩擦接合工法
(従来工法)
摩擦接合工法
(従来工法)
備
考
余寿命を考慮した照査
(性能設計)
余寿命を無視した照査
(性能設計)
余寿命を無視した照査
(性能設計)
余寿命を無視した照査
(性能設計)
66
②新工法の採用および余寿命の評価(4/5)
◆照査式
σa・φR ≧ γi・Mi/W
σa:応力度の制限値(N/mm2)
φR:部材の抵抗係数
γi:荷重係数
Mi:作用曲げモーメントの特性値(N・mm)
W:部材の断面係数(mm3)
◆照査に用いる安全係数(想定値)
部分安全係数
死荷重調整係数
記号
γD
係数値
1.00
備
死荷重のバラツキを考慮
考
活荷重調整係数(T=100年)
γL1
0.95
L-20荷重相当の作用頻度のバラツキを評価
γL1=γL2×95%を想定
活荷重調整係数(T=100年)
γL2
1.00
B活荷重(L)相当の作用頻度のバラツキを評価
活荷重調整係数(T=52年)
γL3
0.97
B活荷重(L)相当の作用頻度のバラツキを評価
γL1=γL2×97%を想定
耐力調整係数(T=100年)
φR1
0.60
荷重頻度や継続期間を考慮した耐力のバラツキを評価
耐力調整係数(T=52年)
φR2
0.66
荷重頻度や継続期間を考慮した耐力のバラツキを評価
φR2=φR1×110%を想定
67
②新工法の採用および余寿命の評価(5/5)
◆結果
項 目
合成前
合成後
B活荷重
合成後
死荷重
荷重係数
活荷重
床版
U.FLG
断面
WEB
L.FLG
補強板
合成前
断面定数
合成後
抵 抗 係 数
死荷重
応力度
(L.FLG)
単位
kN・m
kN・m
kN・m
----mm
mm
mm
mm
mm
mm3
mm3
---
合成前
(制限値)
N/mm2
合成後-死
合成後-活
N/mm2
N/mm2
死+活
N/mm2
補強前
785
91
1941
1.00
1.00
1878 x 170
300 x
18
1300 x
9
310 x
22
10968389
15597698
0.60
71.6
(236.3)
O.K
5.8
124.4
201.8
(189.0)
OUT
外桁(支間中央)
補強後
ケース1
ケース2(参考) ケース3(参考) ケース4(参考)
摩擦接合工法 摩擦接合工法
接着工法
接着工法
(2本孔引き) (2本孔引き)
(余寿命52年) (余寿命100年)
(余寿命52年) (余寿命100年)
785
785
785
785
91
91
91
91
1883
1941
1883
1941
1.00
1.00
1.00
1.00
0.97
1.00
0.97
1.00
1878 x 170 1878 x 170 1878 x 170 1878 x 170
300 x
18
300 x
18
300 x
18
300 x
18
1300 x
9 1300 x
9 1300 x
9 1300 x
9
310 x
22
310 x
22
310 x
22
310 x
22
310 x
5
310 x
2
310 x
11
10968389
10968389
10968389
10968389
15597698
17733459
16452487
20290667
0.66
0.60
0.66
0.60
71.6
71.6
85.3
85.3
(259.9)
(236.3)
(259.9)
(236.3)
O.K
O.K
O.K
O.K
5.8
5.8
7.0
7.0
120.7
109.0
114.2
94.7
198.1
186.4
206.5
187.0
(207.9)
(189.0)
(207.9)
(189.0)
O.K
O.K
O.K
O.K
新技術・余寿命を評価することによって、補強は不要となる68
③合成効果の評価(1/2)
◆不完全合成の応力度の算出式
出典:中島,溝江(不完全合成桁の不完全度の簡易推定法)
69
③合成効果の評価(2/2)
◆試設計ケースおよび結果
試設計ケース
活荷重
合成効果
現況
L-20
非合成
合成効果を無視した照査(従来設計)
ケース1
B活荷重
非合成
合成効果を無視した照査(従来設計)
ケース2
B活荷重
不完全合成
合成効果を考慮した照査(性能設計)
項目
単位
U.Flg
Web
L.Flg
死荷重
活荷重
床版
U.Flg
Web
L.Flg
KN・m
KN・m
mm
mm
mm
mm
応力度
(U.Flg)
死+活
N/mm2
応力度
(L.Flg)
死+活
N/mm2
材質
断面力
断面
現況
L-20
非合成
SM490A
SM490A
SM490A
909
1510
310
x
27
1300
x
9
310
x
27
-181.6
(-185.0)
OK
181.6
(185.0)
OK
備
ケース1
B活荷重
非合成
SM490A
SM490A
SM490A
909
2017
310
x
27
1300
x
9
310
x
27
-219.7
(-185.0)
OUT
219.7
(185.0)
OUT
考
ケース2
B活荷重
不完全合成
SM490A
SM490A
SM490A
909
2017
1858
x 170
310
x
27
1300
x
9
310
x
27
-26.9
(-185.0)
OK
166.4
(185.0)
OK
合成効果を評価することによって、補強は不要となる
70
④外ケーブルの評価(1/4)
◆外ケーブルによる補強例
71
④外ケーブルの評価(2/4)
◆そとケーブルによる補強例
72
出典:外ケーブルによる鋼橋の補強-設計と施工の手引き-
④外ケーブルの評価(3/4)
◆実載荷荷重を想定
安全率の考え方を検討した事例として、長大橋のアップリフト
対策用の負反力対策ケーブルがある。
73
④外ケーブルの評価(4/4)
◆実載荷荷重を想定
要求性能に応じた安全率を設定できれば、
さらなる合理化が図れる
74
おわりに
試設計結果 と 今後の課題
項目
試設計の結果
課題
① 実載荷荷重
補強無し
実荷重設定方法の確立
② 新工法の採用および余寿命
補強無し
各安全係数の設定の確立
③ 非合成桁の合成効果
補強無し
合成効果評価の確立
―――――
要求性能に応じた安全率の設定方法
④ 外ケーブルによる効果
各種パラメーターの設定が性能評価の結果に与える
影響が大きく、その確立が今後の課題と考える
75