加工の力学 演習 G (h27.2.26) _ _ _ 問 1 変形抵抗 Y = 600 + 200ε0.5 (MPa) で近似できる剛塑性体がある.(ここでε0.5 のεエプシ ロン バーは相当ひずみを表す.これをエプシロンのマイナス 0.5 乗だと思う人がいるので,注意 してください.)この剛塑性体から 1 辺が 10 mm の立方体を切り出した.これを平行で滑らかな二 つの金型の間で圧縮を開始した.金型が接触するのは Z 面で,z 軸方向に材料を圧縮する.ただし, 均一で一様な変形とする.以下の問に答えよ. 1) この材料の初期降伏応力(降伏点)の大きさを示せ. 2) この材料を圧縮して塑性変形が始まった瞬間の荷重の大きさを求めよ. 3) 塑性流動側を用いて,z 軸方向の厚みが 6 mm になった瞬間の x 方向ひずみ増分 dx と y 方向ひ ずみ増分 dy と z 方向ひずみ増分 dz との比を求めよ. 4) もしこの厚みまで変形する間,応力比が一定あるなら,x : y : z の比はいくつになるか示せ. 5) 上記と同様に応力比が一定あるなら,z 軸方向の厚みが 6 mm になった瞬間の相当ひずみを求め よ. 6)この瞬間の変形抵抗を算出せよ. 7) この瞬間の X 面と Y 面は同じ長方形となる.その面積を求めよ. 8) この瞬間の X 面の一辺の長さは****mm であり,もう一辺の長さは*******mm である.空欄を 適切な数字で埋めよ. 9) この材料が厚さ 6 mm になるまでの単位体積当たりの塑性仕事を求めよ. 10) この材料が厚さ 6 mm になるまでの平均変形抵抗を求めよ. 11) この材料が受けた塑性仕事は何 J になるか? 12)この材料の比熱が 480 J kg-1 K-1 (あるいは J / (kg・K)で,z 方向の厚みが 6 mm になるま で断熱的に圧縮し,塑性仕事は完全に熱になると仮定すると,この材料は何度の温度上昇が生じる と推定できるか. _ 1) 500 MPa, ε= 0 を Ludwick 型の近似式に代入すれば,降伏点が求まる.初期降伏応力のこと を降伏点と言う.降伏応力と変形抵抗と塑性流動応力,流動応力は言い方が違うけれど同じ意味で ある.2) z 方向単軸圧縮状態であるので,ここでは 500 MPa の圧縮応力が Z 面に作用すれば,降伏 する(塑性変形が始まることを降伏するという).Z 面の面積は 100 mm2 であるから,必要な荷重 は 500×100 =50000 N =50 kN となる.荷重はスカラー量なので,マイナス符号は不要である.運 動方程式とは異なることに注意.3) 今回は z 方向単軸圧縮状態であるので,明らかに dx : dy : dz = 0.5 : 0.5 : -1 である.しかし塑性流動則(または Flow rules)で確かめておくのも,基礎演習とし ては悪くない.z 方向単軸圧縮であるから,σx = 0, σy = 0, σz =-600 (all in MPa)で,しかもこ れらは主応力である.これらの平均垂直応力はσm = -200 MPa,だから偏差応力成分は Sx = 200, Sy = 200, Sz = -400 (all in MPa) となり,Flow rules によれば,これらの比がひずみ増分の比に なるので,dx : dy : dz = 0.5 : 0.5 : -1 となる.以上からも確かめられた.(4)比例負荷については, 教科書の p. 45~p.46 にあるので,参考にしてください.なんでもかんでもこれを適用すると正しい 答えはでないので,均一一様変形が定常的に(時間の経過に関係なく)続くときに適用できること に注意すること.比例負荷であれば,増分を表す d を取って,x : y : z = 0.5 : 0.5 : -1 となる. (5) ここでz = ln (6/10) =-0.511 である.(公称ひずみを使ってはいけません.)さきほどの比から _ x =y = 0.255,ε= √[(2/3)(x2 + y2 + z2)] = 0.511.(この公式は期末テストの問 1 で,教科書 p.42, 式(2.33)から,体積一定則x + y + z = 0 も使って,導きましたね.使い慣れてください.) _ (6) Y = 600 + 200ε0.5 (MPa) にさっき求めた 0.511 を代入して,Y = 743 MPa となり,加工硬化 (または,ひずみ硬化)しています.(7)体積一定だから,求めたい面積=√(6×1000) mm2 = 一辺が 6 mm ともう一つの辺は 12.91 mm となる. 77.46 mm2 . (8) 圧縮中の角柱の側面は長方形で, _ _ (9) 塑性曲線 Y = 600 + 200ε0.5 をεについて 0~0.511 の範囲で積分すれば,z 方向に 6 mm まで 圧縮した時の単位体積当たりの塑性仕事 w が求まる.単純に積分すると単位は MPa のままである が題意に沿って,×106 J/m3 (あるいは,MJ/m3 = MJ・m-3)にも注意せよ.w = 600×0.511 + (1/1.5) ×200×0.5111.5=355.3 MJ/m3.(10) 平均変形抵抗 Ym は単位体積当たりの塑性仕事をそこまでの トータルの相当ひずみで割ればよいので,Ym = 355.3÷0.511=695.3 MPa となる.さきほど,相当 ひずみが 0.511 となったときの変形抵抗が 743 MPa よりは小さく,初期降伏点 600 よりは大きいの で,良さそう(大きな計算ミスはない)と判断する.荒っぽく見積もる場合には,定義を無視して, (600+743)/2=672 MPa を使うこともあるが,この講義では正解と認めない.(11) 355.3 J. (12) 一度,自分で解いてみてください.やり方はノートにあります. _ 問 2 完全に焼きなました剛塑性体で変形抵抗が Y = 300ε0.3 (MPa) の丸棒を長さ方向に 5%だけ 引張った.ただし,均一で一様な変形とする.以下の問に答えよ. 1) この引張によって,材料の軸方向の真ひずみはいくつになったと言えるか. 2) この引張によって,相当ひずみはいくつになったか示せ. 3) その時の降伏応力はいくつになるか. 4) その時の断面積はいくつになるか. 5) その時の引張荷重はいつくになるか. 6) これを予ひずみとして,出荷した.納品された先において,この棒を引張ると降伏点はいくつか. 7) 納品された先においてこの棒の変形抵抗を近似すると,どうなるか示せ. 8) 納品された先で,引張試験をしたところ,最大荷重に達してからくびれて破断した.最大荷重に 達した時の真ひずみを推定せよ. 9) この最大荷重に達した時の公称ひずみは,いくつか. 10) この最大荷重に達した時の棒の断面積はいくつになるか. 11) この最大荷重を推定せよ. ヒント)機械物理工学実験で求めたように,指数型の塑性曲線の時には,引張試験の最大荷重点に おける相当ひずみ(真ひずみ)は加工硬化指数と一致します.公称ひずみと真ひずみの勘違いをし ないように,丁寧に計算をすすめてください. 問 3 剛塑性材料で 1 辺が 10 mm の立方体の各面の法線が x 軸,y 軸,z 軸と一致し,それらに対 応する面を X 面,Y 面,Z 面とする.これらの面に均一に一様に荷重して,変形させる.X 面に 80 kN の圧縮荷重を作用させ, (注意1:引張荷重ではない.引張荷重が好きな人が多いが,この問題 では圧縮荷重を作用させる.)同時に Y 面には 20 kN の引張荷重を作用させ,さらに Y 面の正の面 にはさらに x 軸のプラス方向に 40 kN のせん断荷重を作用させる.(注意2:共役なせん断応力も 発生している.)ただし,Z 面には荷重は作用しない. 1) この立方体に作用する応力成分を 3×3 の行列で表現せよ. 2)応力に関する(注意3:荷重に関するではない,ありえない)モール円を描け.X 面,Y 面,Z 面の位置も書き込め. 3) 紙面を Z 面として,横軸方向に x 軸,縦軸方向に y 軸をとって,この立方体の Z 面(正方形) を描くとき,代表的な最大せん断応力面(すべり線場で言うα線とβ線)を描き,それぞれの線(実 際には面を表している)にせん断応力の向きを正しく書き込め. ヒント)問題文中の注意に気を付けて解いてください.
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