ポーランド共和国 - 日本格付研究所

14-I-0081
2015 年 2 月 25 日
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
ポーランド共和国
(証券コード:−)
【据置】
外貨建長期発行体格付
格付の見通し
自国通貨建長期発行体格付
格付の見通し
債券格付
A
安定的
A+
安定的
A
■格付事由
(1) 格付は、外部環境の変化にも耐えうる多様な経済構造、財政健全化の進展と政府債務残高の抑制、さらに
は多額の EU 基金の有効活用などを評価している。他方、比較的重い対外債務負担などが格付の制約要因
となっている。格付の見通しは安定的。財政健全化の推進や経済回復が強まったことから財政赤字は緩や
かに縮小しており、政府債務残高も年金制度改革などから削減されている。地政学的リスクや国際金融市
場の先行きは依然不透明ながら、経済は内需を中心に安定した成長を続ける見通しである。15 年秋には
総選挙を控えているが、エバ・コパチ政権は EU 過剰財政赤字是正手続きの早期解除を目指して、引き続
き財政健全化を進めていくとみられる。多額の対外債務返済にかかる資金調達リスクは潤沢な外貨準備高
や予防的措置として IMF の弾力的与信枠(Flexible Credit Line)を引き続き確保するなど抑制されている。
(2) ポーランドは 13 年の名目 GDP が 3,960 億ユーロ、人口 3,850 万人を擁する中東欧諸国最大の国。一人当
たり GDP(購買力平価)は 2.3 万ドルを超え比較的発展した経済であり、産業構造も製造業を中心に多様
化している。国際金融市場が不安定となった中でも慎重な経済財政政策や安定した内需によって一貫して
成長を続けており、過去 5 年の平均実質 GDP 成長率は 3%近い。14 年の成長率も良好な雇用・賃金情勢
を反映した個人消費や EU 基金を有効に活用したインフラ投資などの内需に牽引されて 3%を超えたとみ
られる。他方、14 年の消費者物価上昇率は 0.1%(燃料や季節食品を除いたコア:0.4%)と財価格を中
心に 13 年の 0.8%(同 1.1%)からさらに低下している。15、16 年経済は引き続き内需を中心に 3%程度
の成長が続くと JCR ではみている。ロシア経済(輸出の 4.4%を占める)の悪化や EU からの食品輸入禁
輸などによる影響はこれまでのところ軽微であり、燃料安が継続すればこれらの影響は十分吸収可能であ
る。しかしながら、同国を取り巻く地政学的リスクや国際金融市場の先行きは依然不透明であることから
引き続き注視していく。消費者物価の下方圧力が続くものの需給ギャップの縮小から徐々に緩和していく
とみている。
(3) 金融システムは比較的安定している。銀行は主に国内預金で調達した資金を通じて貸出残高を緩やかに増
やしている。不良債権比率は中小企業や消費者金融を中心に依然高いが、14 年末は 8.1%と 13 年末の
8.5%から緩やかな低下が続いているほか、貸倒引当金もある程度まで計上されている。外貨建住宅貸出
残高は全体の 5 割近くを占めるが(外貨建の 8 割がスイスフラン建)
、資産の質は比較的健全に保たれて
いる(不良債権比率:3.1%)。これは厳格な金融監督によってリスクの高い外貨建貸出が制限されてきた
ことが大きい。15 年 1 月からのスイスフラン高などから信用コストが増加する可能性があるものの、銀
行はこうしたリスクにも対応可能な財務基盤を有している。全銀行の 14 年 9 月末の自己資本比率は利益
の蓄積から 14.9%と堅固な資本基盤を有しているほか、14 年の純利益は過去最高を記録している。
(4) 「市民プラットフォーム」と「ポーランド農民党」の連立政権は、安定した政治基盤を背景に経済回復に
も配慮し緩やかな財政健全化を進めている。14 年の一般政府財政赤字(ESA2010)は GDP 比 3%をやや
超える程度にとどまるとみられ 13 年の同 4.0%から小幅ながら縮小する。特に利払費や公共投資の縮小、
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公務員給与の伸び率引き下げなど歳出の抑制が寄与している。一般政府債務残高(ESA2010)も財政法上
(同法は政府定義による公的債務が対象)の政府債務残高の上限規制を遵守するため GDP 比 50%程度に
に抑えられてきた。14 年末の一般政府債務残高は民間が管理する年金基金資産の約半分(GDP 比 9%相
当)を政府所管の社会保険機関に移管し、国債償還に充当したことから 13 年末の GDP 比 55.7%から同
50%を下回ったとみられる。コパチ政権は EU 過剰財政赤字是正手続きの早期解除を目指して、財政健全
化を進めていく方針である。15、16 年の財政赤字は歳出全体の伸び率の上限を設定する安定化歳出ルー
ルや年金改革による効果さらには安定した経済成長などから緩やかに縮小していくとみている。
(5) 14 年 9 月末の対外債務残高は GDP 比 70%を超えており、外国からの資金調達は国際金融市場の影響を受
け易い。14 年の経常赤字は GDP 比 1%程度に抑えられ、FDI や EU 基金などの資金流入によって充分カ
バーされている。これにより対外債務残高は小幅な増加にとどまっている。対外債務残高のうち政府部門
が 4 割を占めるが、政府の資金調達にかかるリスクは債務償還構造が比較的長いこと、投資家層の多様化
などから抑制されている。これまでのところ、不透明な国際金融市場の中でも、15 年の資金調達の 4 割
以上を既に実施している。14 年末の外貨準備高は 774 億ユーロ、月間輸入の 5.0 倍、短期対外債務残高
(14 年 9 月末)の 2.3 倍と外貨繰りには支障がない状況である。また、17 年 1 月まで IMF から 230 億米
ドル相当額の弾力的与信枠を確保しており必要な場合には引き出しが可能である。
(担当)内藤 寿彦・佐伯
春奈
■格付対象
発行体:ポーランド共和国 (The Republic of Poland)
【据置】
対象
外貨建長期発行体格付
自国通貨建長期発行体格付
対象
第 4 回円貨債券
第 5 回円貨債券
第 6 回円貨債券
第 7 回円貨債券
第 10 回円貨債券
第 11 回円貨債券
第 12 回円貨債券
第 13 回円貨債券
第 14 回円貨債券
第 15 回円貨債券
格付
見通し
A
A+
安定的
安定的
発行額
500 億円
250 億円
600 億円
500 億円
250 億円
250 億円
560 億円
100 億円
500 億円
100 億円
発行日
償還期日
2005 年 11 月 18 日
2006 年 11 月 14 日
2006 年 11 月 14 日
2007 年 11 月 16 日
2011 年 7 月 29 日
2012 年 5 月 30 日
2012 年 11 月 8 日
2012 年 11 月 8 日
2013 年 11 月 15 日
2013 年 11 月 15 日
2021 年 2 月 18 日
2016 年 11 月 14 日
2026 年 11 月 13 日
2037 年 11 月 16 日
2015 年 7 月 29 日
2017 年 5 月 30 日
2017 年 11 月 8 日
2027 年 11 月 8 日
2018 年 11 月 15 日
2020 年 11 月 13 日
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利率
2.24%
2.06%
2.62%
2.81%
1.25%
1.49%
1.05%
2.50%
0.67%
0.91%
格付
A
A
A
A
A
A
A
A
A
A
格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 2 月 20 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本
主任格付アナリスト:内藤 寿彦
幸一
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類
と記号の定義」
(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、
「ソブリン・準ソブリンの信用格付方法」
(2014 年 11 月 7 日)として掲載している。
5. 格付関係者:
(発行体・債務者等)
ポーランド共和国(The Republic of Poland)
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので
はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外
の事項は含まれない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
・ 格付関係者が提供した経済・財政運営方針などに関する資料および説明
・ 経済・財政動向などに関し中立的な機関が公表した統計・報告
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、当該方針が求める要件
を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ
を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ
スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部
TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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http://www.jcr.co.jp