平 成 2 7 年 2 月 関東農政局生産部生産技術環境課 群馬県嬬恋村における鳥獣被害対策実施隊に係る活動等について 1 鳥獣被害対策実施隊の設置の経緯 平成8年にニホンカモシカとツキノワグマによる農作 物被害が確認されて、平成11年にはサルとイノシシに よる被害も確認され、農作物被害が徐々に増えていった。 このことから、平成19年度に嬬恋村は、基幹産業で ある農業の被害対策を最重要課題と捉え、嬬恋村有害鳥 獣対策協議会を設置するとともに、有害鳥獣の捕獲を専 門とする捕獲対策部会が有害鳥獣捕獲隊として捕獲活動 ニホンカモシカの食害 を受けたキャベツ を始めた。 その後、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止の ための特別措置に関する法律(以下「特措法」という。) に基づく被害防止計画を平成20年度に作成し、平成2 4年4月に有害鳥獣捕獲隊を特措法に基づく鳥獣被害対 策実施隊へ移行した。 ニホンカモシカの出没の様子 2 実施隊員の構成 平成26年12月現在、隊員数29名であり、村役場職員、農林業者、猟友会員などで構成 されている。また、嬬恋村では、平成24年度に鳥獣被害対策に対応するため、嬬恋村農林振 興課に鳥獣害対策係を新設し、担当職員(3名のうち2名)は、銃猟、わな猟等の免許を取得 し、対象鳥獣捕獲従事者として活動している。 さらに、平成25年度には猟友会員2名を有害鳥獣対策専門員として嬬恋村の臨時職員とし て雇用し、現地の鳥獣被害対策の指導を行う等支援体制の充実を図っている。 3 実施隊員の補償等 ①民間の実施隊員の報酬及び活動経費は、村の財政で 負担している。 ②一斉捕獲活動は年約5回実施している。 ③実施隊員の中には、注 狩猟目的以外の隊員(農業者 等)がいることから、嬬恋村は有害鳥獣捕獲に係 る損害賠償保険の仲介を行っている。 注 鳥獣保護法の規定により、狩猟により生ずる損害 一斉捕獲活動前の打合せ 賠償について、3,000万円以上の損害賠償保険等に加入しなければならない。 -1- 4 実施隊員の活動 ①ニホンザル群(現在、嬬恋村内4群約 150頭)の管理として、平成21年 度にサル接近警報システムを導入し、 平成22年度には当該システムと連動 したメールシステムを導入したことに より、出没情報を基に合理的な追払い 活動を実施している。加えて、平成2 5年度から村の臨時職員として雇用し 発信器を付けたニホンザルと 警報システム ている有害鳥獣対策専門員が現地での 鳥獣被害対策を行うとともに、地域の区長と連携して、巡回、追払い活動及び行動把握を 行っている。 ②ニホンカモシカ、イノシシ及びニホン ジカの一斉捕獲を行っている。 ③一斉捕獲時に捕獲されたニホンカモシ カのサンプルを、生態や食性などの研 究のために、群馬県の研究施設等に提 供をしている。 5 捕獲したニホンカモシカの計量 研究施設にサンプル送付 実施隊活動による効果(農作物被害軽減) 農作物被害のピークである平成23年度の被害額約3億6千万円から、平成25年度の被害 額が約2億5千万円まで減少(約30%減)している。その内、嬬恋村の被害額の約8割を占 めるニホンカモシカによる被害は、約2億7千 万円から約1億9千万円に減少(約30%減) した。 特に、ニホンザルの農作物被害については、 約160万円から約8万円と大きく減少(約9 5%減)し、イノシシの農作物被害についても、 約7千900万円から、約4千800万円と減 少(約40%減)した。 -2- 6 今後の課題等 ①生息頭数が増加し広域に移動するニホンジカについては、隣接する長野県と情報交換及び 生息状況の把握などの連携を行い、広域捕獲に向けた検討の必要がある。 ②鳥獣被害対策の担い手(実施隊員)の確保として、農業者の後継者等に対してわな猟、銃 猟の免許取得を勧めていく必要がある。 7 その他(嬬恋村鳥獣被害対策協議会の活動) ①被害状況の把握、対策実施地域の優先付け、 対策方法の検討及び効果検証に用いるため、 全農家を対象としたアンケートによる被害調 査を実施。 ②鳥獣の侵入経路や隠れ場所及びえさ場等地域 の問題点を洗い出した上での耕作放棄地の刈 り払いと侵入防止柵の設置。 ③動物の生態把握と対策手法及び地域住民の理 解を得るため、鳥獣による被害対策の研修会 の開催などを実施。 -3- 鳥獣被害対策研修会
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