無線システム報告 19 モデム要素技術実験開始 2015年2月18日 kikyouya 1.モデムの構成要素について モデムは「モジュレータ・デモジュレータ」の略で、変調・復調をするもの、となる。 デジタル信号をアナログ信号などを使って送信する系をモジュレータ(変調器)、受信した信号をデジタル信号に戻 す系をデモジュレータ(復調器)とよぶ。 2.必要なハードウェア 簡単な変調信号を作るのはさほど難しくない。ワンチップマイコンで十分可能なで、回路的にはアッテネータと簡単 なCRフィルタを作ればよいだけだ。規格では正弦波をベースとしているが、伝送ラインの帯域が3400Hzなどに制 限されているため、方形波でかまわない。たとえばBELL202規格の状態1を示す1200Hzも方形波の高調波成分 は最低でも3600Hzになるため、受信側には伝達ざれない。 受信側は少し複雑になる。まず、伝送ラインの減衰分を補うことが必要になるが、どれだけ減衰したかは普通わか らない。そのため、信号を一定のレベルにまで増幅する必要がある。方法としてはリミッティング増幅(増幅器が飽和 する限界まで増幅する)ものと、増幅率を変えられる増幅器(VGA)で一定のレベルまで増幅するものがある。 その後、信号を分析・解析してデジタルデータに戻すのだが、信号に含まれる周波数成分とデジタルデータの信号 レートに相関がある場合(BPSKなど)では同期回路が必要になる。 モデム送信(モジュレータ)回路はマイコンでも作りやすいが、受信系(デモジュレータ)はけっこう大変になる。 実際には符号器など、もうすこし複雑なのだが、今回は触れない。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ FSK以外の方式 周波数偏移変調(FSK)以外にもOOK(ON/OFF変調)、PSK(位相変移変調)、QAM(象限振幅変調)などがある。 OOKはノイズが少ない場合は大変有効だが、デジタル伝送速度は上げにくい。 PSKは基本的に周波数が一定で、位相が反転したら1、しなかったら0のようにするもので、回路は比較的単純にできる。 QAMは位相と振幅の両方を使って0と1の2値を越える多重変調をかけるもので、電話回線を使った高速通信網などはこの方 式がよく用いられた。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 3.実験 3.1.可変ゲイン増幅器(VGA) 実際にVGA(電圧制御可変増幅器)を作ってみた。使用したキーデバイスは東芝のFET、2SK30ATM(現行だと 2SK118など)で、ゲート・ソース間電圧、つまりバイアス電圧によって相互コンダクタンス(ゲート電圧の変化に対す るドレイン電流の変化)が大きく変化することを利用する。ただし、FET単独ではドレイン内部抵抗・動作点も変化して しまい、きれいな特性が得られないので、バイポーラトランジスタとカスケード接続を行ってドレイン電圧を一定にする ことで特性を改善する。 2SK30ATMなどのFETはドレイン特性が抵抗変化を示す領域があるので、FETの動作点はそのエリアを狙うよ うに設計する。ただし、領域は広くないので大きな振幅は取れない。実測値で出力振幅は100mV程度まで、ゲイン は最小-50dB以下(計測困難)、最大+15dB程度で変化幅は60dB以上あることが確認できた。高周波回路な ら100dB程度の変化が必要になる場合もあるが、モデムの受信用なのでこれで十分な性能となる。 3.2.同期用PLL 非同期のAFSK(BELL202など)では不要だが、モデム信号の周波数とデジタル信号の伝送速度が同期してい る場合(BPSKなど)ではモデム信号に対する「同期」が必要になる。これにはPLLを用いるが、高周波用PLLとは 違う動作をするので注意が必要になる。 高周波PLLのほとんどは「PLL周波数シンセサイザ」で、水晶などの安定した信号源を使って、特定の周波数を合 成する目的で使われるが、モデム用PLLは入ってきた信号と同期した「クロック再生」を行う。そのため、周波数が安 定しているとは限らない。衛星との通信の場合、衛星の軌道によって無線周波数がドップラー変移するが、これを追 いかける場合も同様のPLLは使われる。 今回は予備実験ということでCMOSのPLL、CD74HC4046を使ってみた。同期用PLLは条件をうまく設定する と受信信号周波数の整数倍でのクロック再生が可能になる。今回は2400Hzを中心としたBPSKを想定したので、 4倍の9600HzでVFOを発振させる定数を求めてみた。 実際のロック動作確認まではできていない。 追記:2月14日前後、体調を崩したため報告等遅れている。みなさまもご自愛を。 質問事項等あれば [email protected] まで。
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