短角牛のはなし - 七時雨マウンテントレイルフェス

短角牛って?
短角牛は「日本短角種」という和種の一種。旧南部藩の頃、内陸と沿岸の
物資輸送に使われていた「南部牛」がルーツといわれています。
東北3県と北海道のみで飼育され、飼育頭数は和牛全体の1%未満という
希少な種です。暑さ寒さに強く、北東北のきびしい気候や草地条件に適応
できるように改良されているため、放牧に適しています。
七時雨山のふもとでも、古くから短角牛の放牧が行われてきました。
黒毛和牛
前沢牛、松阪牛などのブランド牛のほとんどが黒毛和種。
全国で飼育されている。
褐色和牛
主に高知県と熊本県で飼育される。
無角和種
山口県でごくわずかに飼育されている。
日本短角種
北東北(岩手県、青森県、秋田県)と北海道で飼育されている。
緑の大地・七時雨の景観をまもる
短角牛のはなし
放牧でつくられる草原の景観
短角牛の放牧によって維持されてきた七
時雨の景観は、北東北ならではの大切な
文化資産です。
しかし、近年では牛肉の輸入自由化や、
BSE の発生、畜産の担い手の高齢化など
の影響を受け、飼育頭数が減少していま
す。たとえば、七時雨山の西麓一帯の新
町牧野では、多いときで 400 頭もの牛
が放牧されていましたが、現在は約半数
( 田代山からのぞむ七時雨山)
200 頭に落ち込んでいます。
放牧頭数の減少に伴って、徐々に木が伸び始め、草原が森と化しているとこ
ろもみられます。現在の畜産業の担い手のほとんどが 70 代。短角牛を担う
次世代が途絶え、短角牛の放牧がなくなれば、この草原景観も維持できなく
なるかもしれません。
(七時雨山中腹からのぞむ田代平高原と田代山)
編集:七時雨マウンテントレイルフェス実行委員会
2013 年 10 月
短角牛は、こんなにすごい!
ヘルシー!
おいしい!
環境に
やさしい!
短角牛は、霜降り肉とはちがって、赤身が多くて低カ
ロリー。牧草地でのびのびと運動し、食べるものは草
が中心だから、よけいな脂身がなく、肉本来のうまみ
を楽しめます。
放牧によってカルニチン(脂肪燃焼促進成分)やビタ
ミン E などが増加することも示されています。
また、赤身肉にはグルタミン酸やアラニンなどのうまみ成分が多く含
まれているので、とっても美味。でも、霜降りを重視する日本の格付
けでは、短角牛のおいしさを評価する項目がありません。
春∼秋の放牧中、短角牛の餌は、自然に生えている牧草
だけ。肥育期間中も、乾草やサイレージなど、地域で自
安全・
給できる粗飼料を中心に与えられ、濃厚飼料の利用量が
安心!
少なくてすみます。
また、広い牧草地で適度な運動を行い、ストレスの少な
い・衛生的な環境で育った短角牛は、病気に強く、抗生
物質の投与も不要です。(一般的な狭い畜舎での密飼い
は、感染病や病気のリスクを高めることから、病気予防のための抗生物質
の投与などが行われます。)
鶏肉
豚肉
黒毛和種
短角牛
0
20
40
60
その土地の草を食べ、糞尿は草地に還元される放牧のスタ
イルは、地域の資源を無駄なく利用する循環型畜産です。
現在主流となっている輸入飼料に依存した畜産では、飼料
は輸入するものの、糞尿は輸出ができないため、家畜排せ
つ物ばかりが増加し、環境への悪影響をもたらします。
それに対し、放牧を活用した飼育方式は、環境負荷が少な
く、持続可能な畜産といえます。
80
※草飼料(粗飼料):牧草やサイレージ、稲わらなど。
※穀物飼料(濃厚飼料):穀物(トウモロコシ、大豆、小麦など)を配合した栄養価の高いエサ。
約 90% 以上を輸入に頼っています。畜産業が世界の穀物相場に左右される、遺伝子組み換えの
有無が確認できないなどの問題があります。
食肉中の遊離 L- カルニチン含量(mg/100g)
出展:独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構
東北農業研究センター資料(H16.4)
こうやって育ちます
夏山冬里方式
短角牛の飼育方法は、「夏山冬里方式」とよばれます。春
∼秋は、母子ともに牧場に放牧され、広大な草原でのび
のびと過ごします。放牧期間には、自然交配も行われます。
秋に山下げ(里におりてくること)を行い、子牛は市場
へ売りに出されます。その後 14 ヶ月間は、肥育農家のも
とで飼料を与えられ、肥育されます。一方、母牛は冬の間、
牛舎で過ごし、3 月頃に子供を生みます。そしてまた、
春には母子で放牧というサイクルを繰り返すのです。
畜舎
前年の 5 ~ 7 月に自
然交配した子牛が誕生
します。
放牧地
春から夏まで山のふと
ころで、自然のままに
のびのびと育ちます。
母牛と一緒(8 ヶ月間)
畜舎
放牧後、畜舎にいるのは
14 ヶ月程度という短さ。
赤身の多い健康的な牛に
なるよう、飼料にも十分
に気を配ります。
肥育(14 ヶ月間)
出展:「いわて牛」http://www.iwategyu.jp/about_tankaku/