る 弊 。 風 」 ( 『 俳 文 学 大 辞 典 』 ) を 打 破 し 、 近 代 俳 句 の 扉 を 押 し 開 い た と い う の で あ 作 品 を 好 み 続 け た 、 と な ろ う か 。 す な わ ち 、 俳 句 革 新 は 「 写 生 」 を 軸 に 「 旧 派 の 陥 る こ と な く 新 鮮 な 句 を 得 た の に 対 し 、 宗 匠 た ち は 旧 弊 な 類 想 通 り の 「 陳 腐 」 な に 先 の 「 写 生 」 を 関 連 付 け る と 、 子 規 達 は 「 写 生 」 を 心 が け る こ と で 「 陳 腐 」 に が 、 宗 匠 の 「 月 並 句 」 は 「 陳 腐 を 好 み 、 新 奇 を 嫌 ふ 傾 向 」 が あ る と い う 。 こ の 論 子 規 派 と 俳 諧 宗 匠 ら 「 旧 派 」 に は 差 異 が あ り 、 子 規 派 は 「 意 匠 の 陳 腐 」 を 嫌 う 七 彼 日 は ) 陳 腐 を 好 み 、 新 奇 を 嫌 ふ 傾 向 あ り 。 ( 新 聞 「 日 本 」 明 治 二 十 九 年 七 月 二 十 も 、 彼 ( = 月 並 句 、 引 用 者 注 ) は 意 匠 の 陳 腐 を 嫌 ふ こ と 我 よ り も 少 し 、 む し ろ 答 新 俳 句 と は 新 派 俳 句 の 事 を 謂 ふ か 。 ( 略 ) 我 は 意 匠 の 陳 腐 な る を 嫌 へ ど る も の な り や 。 ば 、 新 俳 句 は 如 何 な る 点 を 主 眼 と し 、 月 並 句 は 如 何 な る 点 を 主 眼 と し て 句 作 す 問 新 俳 句 と 月 並 俳 句 と は 句 作 に 差 異 あ る も の と 考 へ ら る 。 果 し て 差 異 あ ら 子 規 の 俳 論 「 俳 句 問 答 」 ( 新 聞 「 日 本 」 明 治 二 十 九 年 五 ~ 九 月 ) を 見 て み よ う 。 - 1 - に し た と い う の で あ る 。 で は 、 彼 ら は 「 旧 派 の 弊 風 」 を い か に 「 打 破 」 し た の か 。 爆 剤 と な っ た 、 つ ま り 子 規 達 は 実 景 の あ り の ま ま を 詠 む 「 写 生 」 を 革 新 の 原 動 力 子 規 派 が 「 近 世 末 以 降 の 旧 派 の 弊 風 を 打 破 」 す る に は 「 新 時 代 の 写 実 説 」 が 起 偉 業 を 達 成 し た 。 ( 『 俳 文 学 大 辞 典 』 〔 角 川 書 店 、 平 成 七 年 〕 「 正 岡 子 規 」 項 ) 新 ・ 短 歌 革 新 ・ 写 生 文 の 提 唱 に 写 生 の 平 淡 味 を 実 践 し 、 近 代 短 詩 型 文 学 革 新 の 近 世 末 以 降 の 旧 派 の 弊 風 を 打 破 し 、 明 治 新 時 代 の 写 実 説 を 深 め て 、 俳 句 革 正 岡 子 規 の 俳 句 革 新 は 、 次 の よ う に 評 さ れ る こ と が 多 い 。 は じ め に 【 執 筆 者 】 青 木 亮 人 ( あ お き ま こ と ) ― ― 高 浜 虚 子 「 遠 山 に 日 の 当 り た る 枯 野 か な 」 の 分 析 を 通 じ て ― ― 【 論 題 】 明 治 期 に お け る 俳 句 革 新 と 「 写 生 」 の 内 実 に つ い て 後 に 近 代 俳 句 の 大 黒 柱 と な っ た 「 写 生 」 の 内 実 を 検 討 し て み よ う 。 を 探 り つ つ 、 子 規 派 の 「 写 生 」 が 当 時 な ぜ 革 新 的 た り え た の か も 併 せ て 考 察 し 、 を 検 証 し て み た い 。 そ し て 、 明 治 期 に お け る 虚 子 句 の 具 体 的 な 「 新 俳 句 」 の 特 徴 の 俳 句 観 に 沿 っ て こ の 句 及 び 子 規 派 が 目 指 し た 「 新 俳 句 」 及 び 「 写 生 」 の 斬 新 さ が 発 表 時 に い か に 新 鮮 で あ っ た か を 、 明 治 期 「 旧 派 」 の 句 群 と 比 較 分 析 し 、 当 時 そ こ で 本 稿 は 、 現 在 か ら 振 り 返 っ て 虚 子 句 を 鑑 賞 す る の で な く 、 「 遠 山 に 」 句 つ つ 検 証 し た 論 は 見 当 た ら ず 、 そ の た め 不 明 点 が 少 な く な い 。 し え た の か 、 子 規 達 の 「 新 俳 句 」 と 宗 匠 ら の 「 陳 腐 」 な 句 の 双 方 を 実 際 に 比 較 し け た が 、 あ り の ま ま の 実 景 を 詠 む 「 写 生 」 が な ぜ 「 月 並 」 句 に な い 斬 新 さ を 獲 得 子 規 派 の 「 写 生 」 が 「 月 並 句 」 と 異 な る 斬 新 さ を 獲 得 し た 、 と は 従 来 語 ら れ 続 子 句 の 新 鮮 さ を 具 体 的 に 指 摘 し た 評 論 等 は 従 来 ほ ぼ な さ れ な か っ た と い え る 。 に 陥 ら な い 斬 新 な 点 が 存 在 し た は ず だ が 、 当 時 の 「 陳 腐 」 な 句 群 と 比 較 し つ つ 虚 な く な い 。 こ の 句 が 「 写 生 」 を 軸 に し た 「 新 俳 句 」 と す れ ば 、 「 旧 派 」 の 「 陳 腐 」 派 ら し い 「 新 俳 句 」 ( 子 規 「 俳 句 問 答 」 ) で あ っ た の か 、 具 体 的 に は 不 明 点 が 少 例 句 に 挙 げ ら れ る こ と も 多 い 。 し か し 、 こ の 句 は 発 表 時 に ど の 点 が 新 鮮 で 、 子 規 - 2 - 現 在 、 「 遠 山 に 」 句 は 虚 子 の 代 表 作 の 一 つ と さ れ 、 近 代 俳 句 の 「 写 生 」 を 示 す と 高 く 評 価 さ れ た 句 で あ る 。 書 い て い る 」 ( 『 近 代 俳 句 大 観 』 〔 明 治 書 院 、 昭 和 四 十 九 年 〕 、 大 野 林 火 解 説 ) 支 え に な る 。 ( 略 ) 虚 子 傑 作 の 一 で あ り 、 虚 子 は 晩 年 好 ん で こ の 句 を 短 冊 色 紙 に 枯 野 の 中 に そ の 遠 山 だ け が 日 が 当 た っ て い る の だ 。 そ れ が 心 の 救 い と な り 、 心 の ま か な 写 生 の う ち に 深 い 趣 を 蔵 し て 句 品 高 き 一 句 と な っ て い る 。 ( 略 ) 荒 涼 た る 清 崎 敏 郎 解 説 ) 。 同 時 に 、 「 唯 そ れ だ け 」 の 景 色 を 詠 ん だ 句 で あ り な が ら 、 「 大 れ だ け の こ と で あ る 」 ( 『 新 訂 俳 句 シ リ ー ズ 高 浜 虚 子 』 〔 桜 楓 社 、 昭 和 五 十 五 年 〕 、 は 一 脈 の 山 が 亘 っ て い て 、 其 の 遠 山 に だ け は 、 明 か に 日 が 当 っ て い る 。 景 は 唯 そ 解 さ れ る の が 一 般 的 で あ る 。 「 一 面 の 枯 野 が 、 眼 前 に 広 が っ て い る 。 遠 方 の 方 に の 風 景 を 想 起 し つ つ 詠 ん だ 「 写 生 」 句 と い う ( 三 章 で 後 述 ) 。 句 意 は 次 の よ う に 明 治 三 十 三 年 十 一 月 に 虚 子 庵 例 会 で 詠 ま れ た 句 で 、 虚 子 自 身 に よ る と 故 郷 松 山 ( 初 出 は 「 ホ ト ト ギ ス 」 明 治 三 十 三 年 十 二 月 号 ) あ ろ う 遠 か 山 。 に 日 の 当 り た る 枯 野 か な 高 浜 虚 子 で は 、 例 え ば 次 の 「 写 生 」 句 は ど の よ う に 「 陳 腐 」 を 打 破 し た 作 品 だ っ た の で た 陽 。 光 よ り も 、 暮 れ 方 に 赤 み を 帯 び た 夕 日 が さ し こ む 場 所 と 詠 ま れ る こ と が 多 か っ こ の よ う に 孤 独 と 淋 し さ を か き た て る 「 枯 野 」 は 、 清 々 し い 朝 日 や 昼 の 明 る い は い ず れ も 早 足 な の で あ る ( ⑥ ) 。 も の で あ り ( ⑤ ) 、 人 々 は こ の よ う な 「 枯 野 」 を 後 に し た い た め 、 「 行 違 ふ 人 」 つ 」 の 孤 影 、 そ れ を 眺 め る 自 身 も ま た 独 り で 「 枯 野 」 を 歩 く 寂 寥 感 は 「 淋 し き 」 っ て 哀 切 じ み た 心 細 さ を 感 じ さ せ る ( ④ ) 。 は る か 彼 方 に 見 え る 「 か さ ( 笠 ) 一 遠 く か ら 聞 こ え る 「 馬 子 の 歌 」 は 吹 き す さ ぶ 「 風 」 で 途 切 れ が ち に な り 、 か え ⑥ 行 違 ふ 人 足 は や き 枯 野 か な ( 「 俳 諧 明 倫 雑 誌 」 九 十 七 号 、 明 凸 治 二 十 邨 二 年 五 月 号 、 八 頁 ) ⑤ か さ 一 つ 見 へ て 淋 し き 枯 野 哉 ( 「 俳 諧 新 誌 」 五 十 六 号 、 明 治 雲 二 十 九 哉 年 十 二 月 、 三 丁 裏 ) ④ 馬 子 の 歌 風 に と ぎ る ゝ 枯 野 哉 ( 「 俳 諧 一 日 集 」 六 十 五 号 、 明 冬 治 二 十 月 七 年 十 月 、 二 十 頁 ) そ の た め 、 「 枯 野 」 を 通 る 人 間 は 次 の よ う な 心 情 を 抱 く の が 通 例 で あ っ た 。 く ( ② ) 、 小 ぶ り の 松 で す ら 目 立 つ ほ ど の 索 漠 と し た 空 間 な の で あ る ( ③ ) 。 そ の 「 枯 野 」 を 見 渡 す と 、 例 え ば 彼 方 に 聳 え る 富 士 山 以 外 に 目 に 留 ま る も の も な - 3 - 荒 涼 と し た 、 生 命 の 存 在 し な い 世 界 に 自 分 が 居 る こ と を 実 感 さ せ て し ま う ( ① ) 。 た 。 人 の 住 む 「 寺 」 は 向 こ う に 見 え る も の の 、 そ の は る か さ は む し ろ 「 枯 野 」 の と も 異 な る 世 界 、 つ ま り 植 物 の 枯 れ 果 て た 、 よ る べ な き 孤 独 の 場 所 と し て 詠 ま れ 冬 の 「 枯 野 」 は 、 草 花 の 生 い 茂 る 「 夏 野 」 や 一 斉 に 秋 の 花 が 咲 き 乱 れ る 「 花 野 」 ③ 小 さ う て も 松 の 眼 に た つ 枯 野 哉 ( 「 俳 ( 諧 「 矯 俳 風 諧 雑 黄 誌 鳥 」 集 」 三 十 十 号 八 、 号 明 、 明 寸 治 二 治 十 二 十 光 四 五 年 十 年 二 十 月 二 、 月 十 、 七 九 頁 頁 ) ) ② 不 二 の 外 見 ゆ る 物 な き 枯 野 哉 ( 「 俳 諧 明 倫 雑 誌 」 三 十 四 号 、 尽 明 治 誠 十 堂 六 年 九 月 、 二 十 二 頁 ) ① 見 え て 居 る 寺 へ は 遠 き 枯 野 か な 宇 雀 倒 的 に 多 い 。 初 期 ~ 三 十 年 代 の 俳 誌 群 に は 芭 蕉 句 の 強 い 影 響 は 見 ら れ ず 、 次 の よ う な 句 群 が 圧 戸 期 の 芭 蕉 が 「 旅 に 病 ん で 夢 は 枯 野 を か け 廻 る 」 と 詠 ん だ 季 語 で も あ る が 、 明 治 ま ず 、 「 遠 山 に 日 の 当 り た る 枯 野 か な 」 の 季 語 「 枯 野 」 を 考 察 し て み よ う 。 江 一 、 明 治 期 の 「 枯 野 」 の イ メ ー ジ あ り 、 つ ま り 従 来 の 「 枯 野 」 の 類 想 を 乱 さ な い 句 が 優 れ て い る と 判 断 し た た め に う な 「 枯 野 」 の イ メ ー ジ を 共 有 し 、 そ れ に 沿 っ た 句 こ そ 「 俳 句 」 と 認 め た た め で 句 を 詠 み 続 け た の だ ろ う か 。 そ れ は 詠 者 や 選 者 、 読 者 の い ず れ も が 引 用 句 群 の よ て て 右 い お 記 た り の 。 、 そ よ の う 俳 な 誌 膨 群 大 は な 俳 雑 諧 誌 宗 に 匠 お ら い が て 発 、 行 多 し く た の も 俳 の 人 で は 、 な 全 ぜ 国 引 各 用 地 句 で の 大 よ 量 う に に 刊 類 行 型 さ 的 れ な こ れ ら は 一 例 で あ る が 、 当 時 の 俳 誌 に は こ の よ う な 「 枯 野 」 句 が 多 々 掲 載 さ れ し き 」 ( ⑤ ) 世 界 で あ り 、 人 間 に と っ て は 早 く 通 り す ぎ た い と 願 う 場 所 で あ っ た 。 れ た 二 句 と い え よ う 。 こ の よ う に 、 「 枯 野 」 は 夕 日 や 暮 れ の 鐘 が ふ さ わ し い 「 淋 詳 細 は 省 く が 、 月 光 に 照 ら さ れ た 「 枯 野 」 の 荒 涼 と し た 広 大 さ が 改 め て 実 感 さ 夕 月 の や ど る 樹 も な き 枯 野 哉 ( 「 俳 諧 友 雅 新 報 」 三 十 三 号 聴 、 明 治 濤 十 二 年 十 月 、 六 頁 ) 月 の 出 て 尚 広 さ ま す 枯 野 か な ( 「 俳 諧 明 倫 雑 誌 」 百 八 十 一 号 、 明 貞 治 三 十 雨 一 年 三 月 、 十 六 頁 ) う な 「 枯 野 」 の あ り よ う で あ る 。 つ い に 日 が 沈 み 、 空 を 上 る 月 が 「 枯 野 」 を 照 ら す 時 、 人 々 が 感 じ る の は 次 の よ っ た ( ⑪ ) 。 - 4 - の 物 寂 し さ に あ っ て は 「 鐘 」 の 音 も 消 え 入 り そ う に 漂 い 、 し ま い に は 絶 え て し ま 「 鐘 」 が 一 つ 、 ま た 一 つ と 鳴 り 響 く に つ れ 日 は 落 ち ゆ き ( ⑩ ) 、 「 枯 野 の 夕 」 ( 「 俳 諧 大 熊 手 」 六 号 、 明 治 十 二 年 十 月 、 一 丁 表 ) ⑪ 鐘 の 音 も か る ゝ 枯 野 の 夕 か な 寛 良 さ わ し く 、 そ れ を さ ら に か ( き 『 た 発 て 句 る 万 の 代 は 集 、 』 一 〔 日 弘 の 文 終 館 、 里 わ り 明 治 月 を 告 三 げ 十 る 年 「 〕 鐘 、 」 一 で 四 あ 四 っ 頁 た ) 。 ⑩ 鐘 ひ と つ 〳 〵 に く れ る 枯 野 か な 蔵 」 の 淋 し さ ( ⑨ ) … … 孤 独 と 侘 び し さ の 漂 う 「 枯 野 」 を 照 ら す の は 夕 日 こ そ ふ れ ゆ く 心 細 さ ( ⑧ ) 。 あ る い は 、 目 立 つ も の と て な い 夕 暮 れ の 荒 野 に 佇 む 「 石 地 吹 き さ ら す 凩 に 暮 れ ゆ く 夕 刻 の 侘 び し さ や ( ⑦ ) 、 一 本 の 「 松 」 影 が 徐 々 に 薄 ( 『 俳 諧 十 万 集 』 〔 積 善 館 、 明 治 二 十 九 年 〕 冬 部 、 一 四 四 頁 ) ⑨ 暮 淋 し 枯 野 に ひ よ ろ り 石 地 蔵 ( 無 署 名 ) ( 「 俳 諧 黄 鳥 集 」 十 九 号 、 明 治 二 十 六 年 一 月 、 十 丁 表 ) ⑧ 松 ひ と 木 夕 影 の ひ く 枯 野 哉 ( 「 筑 紫 俳 諧 清 風 草 紙 」 二 十 九 号 、 明 兎 治 三 十 月 三 年 七 月 、 二 十 六 頁 ) ⑦ 日 は 風 の 中 を く れ 行 枯 野 か な 琴 哺 終 わ っ た か の よ う な 印 象 が あ り 、 「 枯 野 」 の 類 想 か ら い さ さ か 外 れ た 、 奇 妙 な 作 が 高 い 。 同 時 代 の 「 枯 野 」 句 と 比 較 す る と 、 虚 子 句 は い わ ば オ チ の な い ま ま 句 が 趣 向 こ そ 「 俳 句 」 と 信 じ る 大 部 分 の 読 者 は 、 肩 す か し に 近 い 印 象 を 持 っ た 可 能 性 群 の よ う に 明 確 に 「 枯 野 」 ら し さ を 増 幅 さ せ る 内 容 で な い た め 、 ① ~ ⑪ の よ う な な い 蕭 条 と し た 「 枯 野 」 の イ メ ー ジ を 喚 起 す る か も し れ な い が 、 先 の 「 枯 野 」 句 断 し え た か ど う か は 微 妙 で あ る 。 確 か に 「 遠 山 に 日 の 当 り た る 」 は 、 日 の 当 た ら っ て い る 遠 山 」 を 眺 め た と い う 内 容 は 理 解 し え て も 、 こ れ を 「 俳 句 」 と 瞬 時 に 判 読 み 下 し た 際 、 「 寂 寥 そ の も の の 日 の 当 た ら な い 枯 野 」 か ら 「 冬 の 日 ざ し の 当 た る 点 で あ る 。 お そ ら く 、 多 く の 読 者 は 怪 訝 な 面 持 ち に な っ た の で は な い か 。 句 を そ の よ う に あ っ た と い う 内 容 に 近 く 、 趣 向 と し て 成 立 し て い な い よ う に 感 じ ら れ 山 に 日 の 当 り た る 」 が 「 枯 野 」 ら し い イ メ ー ジ を 強 調 す る た め と い う よ り 、 た だ こ れ ら の 当 時 の 「 枯 野 」 の 類 想 か ら す る と 、 虚 子 句 が い さ さ か 奇 妙 な の は 、 「 遠 い え よ う 。 が 枯 れ 果 て た 荒 野 で あ る こ と を 強 調 す る 措 辞 で あ り 、 先 の ① ~ ③ と ほ ぼ 同 趣 向 と 寂 寥 た る 「 枯 野 」 に 佇 む と 「 遠 山 」 さ え 「 あ り 〳 〵 」 見 え る と い う 句 で 、 「 遠 山 」 っ た 。 遠 山 の あ り 〳 〵 見 ゆ る 枯 野 か な ( 「 俳 諧 一 日 集 」 六 十 六 号 、 明 治 二 宝 十 七 船 年 十 一 月 、 三 十 七 頁 ) - 5 - 仮 に 「 遠 山 」 と 「 枯 野 」 を 取 り 合 わ せ る と す れ ば 、 次 の よ う に 詠 む の が 定 番 だ 情 で あ る こ と を 詠 む の が 句 作 り の 要 点 だ っ た の で あ る 。 で 、 そ れ は 夏 野 や 花 野 で も な い 、 上 五 ・ 中 七 の 内 容 が 他 な ら ぬ 「 枯 野 」 独 特 の 風 な 心 情 や 状 況 で あ る こ と を 強 調 す る と と も に 、 「 枯 野 か な 」 と 切 字 を 用 い る こ と と を 明 確 な 因 果 関 係 で 結 び つ け る 場 合 が 多 い 。 「 枯 野 」 ゆ え に 上 五 ・ 中 七 の よ う 理 由 は 「 枯 野 」 ゆ え に そ う な る の だ … と 詠 む な ど 、 上 五 ・ 中 七 の 内 容 と 「 枯 野 」 あ る の は 「 枯 野 」 ゆ え に そ う 感 じ る の だ … と 詠 ん だ り 、 「 行 違 ふ 人 足 は や き 」 ( ⑥ ) 通 常 の 「 枯 野 」 句 は 、 例 え ば 「 小 さ う て も 松 の 眼 に た つ 」 ( 引 用 句 ③ ) 景 色 で て い る こ と を 告 げ る の み で あ る 。 し た り 、 鐘 が 鳴 る わ け で も な い 。 た だ 、 向 こ う の 「 遠 山 」 に 冬 の 日 ざ し が 当 た っ わ け で な く 、 足 早 に 通 り す ぎ る 人 と す れ 違 う こ と も な く 、 夕 日 が 「 枯 野 」 を 照 ら 野 」 の 類 想 か ら い さ さ か 外 れ た 句 と は い え な い だ ろ う か 。 「 枯 野 」 の 孤 独 を 託 つ こ こ で 虚 子 句 を 振 り 返 る と 、 「 遠 山 に 日 の 当 り た る 枯 野 か な 」 は 、 当 時 の 「 枯 句 」 と 認 め ら れ た の で あ る 。 他 な ら な い 。 引 用 し た 「 枯 野 」 句 の よ う に 、 類 型 的 な 内 容 や 趣 向 を な ぞ れ ば 「 俳 ( 「 俳 諧 新 誌 」 六 十 三 号 、 明 治 三 十 三 年 十 月 、 十 頁 ) 穂 の 上 に 遠 山 の せ る 薄 か な ( 「 俳 諧 矯 風 雑 誌 」 二 十 号 、 明 蛙 治 二 十 窓 四 年 二 月 、 二 十 二 頁 ) 遠 山 に ゆ ら り と か ゝ る 柳 か な 茂 翠 ま た 、 彼 方 に 見 え る 「 遠 山 」 は 近 景 の 事 物 と と も に 詠 ま れ る こ と も 少 な く な い 。 「 秋 」 「 小 春 日 」 そ れ ぞ れ の 季 感 を 増 幅 さ せ る 措 辞 と し て 用 い ら れ た の で あ る 。 う る ( ③ ) 。 「 遠 山 」 の 眺 め と 季 節 感 は 連 動 し て お り 、 つ ま り 「 遠 山 」 は 「 炎 暑 」 冬 に な れ ば 雪 催 い の 日 も あ る が 、 晴 れ た 「 小 春 日 」 に は 「 四 方 の 遠 山 」 を 一 望 し い が ( ① ) 、 空 気 の 澄 む 「 秋 」 に は 「 は つ き り 」 姿 を 確 か め る こ と が で き ( ② ) 、 照 り つ け る 日 ざ し と 熱 気 ゆ え に 「 炎 暑 」 の 「 遠 山 」 は 「 か す か 」 に し か 見 え な ( 「 芭 蕉 新 聞 」 二 十 一 号 、 明 治 三 十 三 年 十 二 月 、 十 一 頁 ) ③ 小 春 日 や 四 方 の 遠 山 よ く 見 ゆ る ② 遠 山 の は つ き り 見 え て 今 朝 の 秋 ( 「 俳 諧 一 日 集 」 六 十 六 集 、 明 ( 治 『 二 刀 宝 俳 十 諧 七 十 涯 年 船 万 集 十 』 一 月 夏 、 部 三 、 十 百 七 二 頁 頁 ) ) ① 遠 山 の 眼 の か す か な る 炎 暑 哉 ( 無 署 名 ) - 6 - の よ う に 詠 ま れ る 傾 向 に あ っ た 。 る た 俳 。 い 春 も 霞 句 の た に だ な 目 … び を と く 移 古 「 す 典 遠 と 和 山 、 歌 」 「 以 を 遠 来 越 山 の え 」 景 ゆ の を く 眺 織 雁 望 り の は な 群 季 す れ 節 も 、 や の そ 天 と の 候 し 美 に て し 左 「 さ 右 遠 は さ 山 一 れ 」 幅 る を の た 詠 絵 め ん に 、 だ 描 ま 歌 き ず で 留 は あ め 次 ( 「 文 庫 」 明 治 二 十 九 年 五 月 号 、 二 十 五 頁 ) 遠 山 こ ゑ て か へ る 雁 金 山 村 長 芳 絵 に か き て と ゞ め や お か ん 霞 た つ も 和 歌 等 で 多 々 詠 ま れ る 措 辞 だ っ た 。 「 遠 山 」 は 漢 詩 文 や 和 歌 、 連 歌 や 謡 曲 等 で 詠 ま れ 続 け た 措 辞 で あ り 、 明 治 期 に 二 、 「 遠 山 」 の イ メ ー ジ か 。 今 度 は 「 遠 山 」 を 軸 に し つ つ 、 虚 子 句 と 同 時 代 俳 誌 の 句 群 を 比 較 し て み よ う 。 で は 、 虚 子 句 の 今 一 つ の 素 材 「 遠 山 」 は 、 当 時 ど の よ う に 詠 ま れ た の で あ ろ う 品 で あ っ た と い え る 。 「 遠 山 」 と 「 雨 」 を 取 り 合 わ せ た 句 に は 、 虚 子 句 に 近 い 作 品 も 見 ら れ る 。 る ― ― 詠 ま れ た の で あ る 。 し て ― ― 「 遠 山 」 に 降 る 雨 は い ず れ こ ち ら に 来 る か も し れ な い 予 感 を 漂 わ せ て い 里 と 異 な る 雨 模 様 が 見 受 け ら れ る と と も に 、 天 気 の う つ ろ い や す さ を 示 す も の と 雨 が 降 り 始 め た 「 遠 山 」 を 眺 め な が ら 「 落 葉 」 を 掃 除 す る ( ⑦ ) … 「 遠 山 」 は 人 青 空 に 舞 い 上 が る 凧 の 向 こ う に 見 え る 「 遠 山 」 に は 春 雨 が 降 り 始 め ( ⑥ ) 、 秋 ⑦ 遠 山 の 雨 を 見 て 掻 く 落 葉 か な ( 「 俳 諧 明 倫 雑 誌 」 一 号 、 明 野 治 十 三 紅 年 十 二 月 、 十 九 頁 ) ⑥ 遠 山 の 雨 脚 立 つ や い か の ぼ り ( 『 明 治 新 選 俳 諧 一 万 集 』 〔 博 文 館 、 明 湖 治 二 十 月 四 年 〕 、 四 十 四 頁 ) は そ の 様 子 を 詠 ん だ 句 群 で あ る 。 ま た 、 人 里 や 平 地 に は 降 ら な い 雨 が 「 遠 山 」 の 方 で 降 り 始 め る こ と も あ り 、 次 っ 「 た 遠 。 山 」 と 春 の 季 語 と を 詠 み こ ん だ 季 重 な り の 句 は 多 々 見 ら れ 、 当 時 の 定 番 で あ 訪 れ を 告 げ て い る ( ⑤ ) 。 寒 い 冬 を 乗 り 越 え 、 春 の 到 来 を 喜 ぶ 心 情 も あ り 、 雪 の み 」 が す で に 立 ち ( ④ ) 、 川 に は 「 遠 山 」 か ら の 雪 解 け 水 が 勢 い よ く 流 れ 、 春 の 「 遠 山 」 に は 「 雪 」 が い ま だ 積 も っ て い る が 、 麓 の 人 里 や 平 野 部 に は 「 初 か す - 7 - ( 「 越 路 の 雪 」 二 号 、 明 治 三 十 三 年 六 月 、 七 頁 ) ⑤ 遠 山 の 雪 を 根 に し て 春 の 水 ( 「 俳 諧 鴨 東 新 誌 」 八 十 六 号 、 明 竹 治 二 十 保 五 年 十 二 月 、 三 丁 裏 ) ④ 遠 山 は ま だ 雪 な が ら 初 か す み 酔 月 詠 ま れ る よ う に な る 。 寒 さ も 緩 み 始 め 、 冬 か ら 春 へ 移 り つ つ あ る 時 期 に な る と 、 「 遠 山 」 は 次 の よ う に 平 野 よ り 早 く 白 雪 を 被 り 、 冬 の 到 来 を 告 げ る 存 在 と し て の 「 遠 山 」 。 そ の 冬 の 遠 山 に は や 雪 見 せ て 散 る 紅 葉 ( 「 俳 諧 明 倫 雑 誌 」 四 十 一 号 、 久 明 治 十 尾 七 年 四 月 、 十 八 頁 ) れ る 傾 向 に あ っ た 。 そ の 薄 や 芭 蕉 が 枯 れ る 晩 秋 に な る と 、 彼 方 に 聳 え る 「 遠 山 」 は 次 の よ う に 詠 ま / 遠 景 」 を 組 み 合 わ せ た 句 で あ る 。 あ る 情 景 を 詠 ん だ も の で 、 江 戸 期 の 安 藤 広 重 や 葛 飾 北 斎 ら の 浮 世 絵 に 近 い 「 近 景 春 の 柳 や 秋 の 薄 、 破 芭 蕉 等 の 植 物 に は る か 向 こ う の 「 遠 山 」 を 重 ね て 奥 行 き の ( 「 俳 諧 一 日 集 」 六 十 五 集 、 明 治 二 十 七 年 十 月 、 五 十 一 頁 ) 破 れ た れ ば 遠 山 見 ゆ る 芭 蕉 哉 田 二 の あ る 一 句 で あ っ た と い え る 。 に 合 致 し な い 部 分 が 多 く 、 い わ ば 首 を か し げ た く な る よ う な 、 類 想 か ら 外 れ た 観 句 作 基 準 に し て 「 俳 句 」 で あ っ た が 、 虚 子 句 は 多 く の 俳 人 が 是 と す る 「 俳 句 」 観 子 句 と を 比 較 し た 結 果 、 量 と し て は 圧 倒 的 に 多 い 宗 匠 ら の 作 風 が 当 時 の 一 般 的 な こ こ で 「 枯 野 」 「 遠 山 」 に つ い て 整 理 す る と 、 明 治 期 宗 匠 達 の 俳 誌 の 句 群 と 虚 ら れ た 措 辞 だ っ た と い え よ う 。 あ り 、 つ ま り 「 遠 山 」 は 春 夏 秋 冬 そ れ ぞ れ の 季 節 感 を よ り 増 幅 さ せ る た め に 用 い も の も な い 「 枯 野 」 ゆ え に 彼 方 の 「 遠 山 」 が 「 あ り 〳 〵 見 ゆ る 」 と 詠 む の が 通 常 で に は 「 遠 山 の あ り 〳 〵 見 ゆ る 枯 野 か な 」 ( 前 章 掲 出 ) の よ う に 、 遮 る も の も 目 立 つ 澄 ん だ 空 気 を 実 感 し た い 時 で あ っ た 。 そ の 「 遠 山 」 に 「 枯 野 」 を 取 り 合 わ せ る 際 う 心 情 も 漂 っ て い よ う ― ― 場 合 で あ っ た り 、 ② の よ う に 夏 が 過 ぎ 去 っ た 後 の 秋 の 向 こ う の 「 遠 山 」 が 目 立 つ ― ― 早 く 「 時 雨 」 が 去 っ て 天 気 が 回 復 し て ほ し い と い 当 時 、 「 遠 山 」 を 眺 め る の は 、 ⑧ の よ う に 「 時 雨 」 が こ ち ら を 薄 暗 く し た た め 「 俳 句 」 と 認 め ら れ に く い 作 品 だ っ た の で は な い か 。 山 」 ら し い 「 俳 句 」 で あ り 、 そ こ か ら い わ ば は み 出 た 虚 子 句 は 、 多 く の 読 者 に は れ な い 。 た だ 、 当 時 の 一 般 的 な 句 作 感 覚 か ら す る と 、 ① ~ ⑧ の よ う な 句 こ そ 「 遠 の が 「 遠 山 に 」 句 と す れ ば 、 同 時 代 の 俳 諧 宗 匠 ら の 句 作 と 異 な る の は 当 然 か も し - 8 - 無 論 、 作 者 の 高 浜 虚 子 は 正 岡 子 規 一 派 の 主 要 俳 人 で あ り 、 「 写 生 」 を 実 践 し た い る こ と の み を 詠 ん だ 点 が 異 な っ て い よ う 。 ら 眺 め て い る 状 況 に 対 し 、 原 因 や 結 果 等 を 付 さ ず に た だ そ の よ う な 状 況 を 眺 め て と 結 果 が 明 瞭 だ が 、 虚 子 句 は 「 遠 山 に 日 の 当 り た る 」 状 況 と 、 そ れ を 「 枯 野 」 か が 降 り 始 め た た め に こ ち ら は 曇 り 、 彼 方 の 遠 山 に の み 日 が 当 た っ て い る … と 原 因 こ と と 「 枯 野 」 に は 明 瞭 な 結 び つ き が あ る わ け で は な い 。 ⑧ で あ れ ば 、 「 時 雨 」 関 係 を も た せ て い る 。 一 方 、 虚 子 句 は 前 章 で 見 た よ う に 「 遠 山 に 日 の 当 り た る 」 と 趣 向 を 立 て 、 「 遠 山 」 に 「 日 を 追 に が す 」 張 本 人 は 「 時 雨 」 で あ っ た … と 因 果 状 況 を 「 他 な ら ぬ 時 雨 が せ っ か く の 冬 の 日 ざ し を 遠 山 の 方 へ 追 い 逃 が し た の だ 」 り 始 め た た め に こ ち ら は 薄 暗 く な っ た が 、 遠 山 の 方 に は ま だ 日 が 当 た っ て い る 」 た だ 、 両 者 は 中 七 の 措 辞 の 働 き が 異 な っ て い よ う 。 ⑧ は 、 「 時 雨 が に わ か に 降 る が 、 向 こ う の 「 遠 山 」 に は 冬 日 が 当 た っ て い る と い う 句 意 で あ る 。 た っ て い る ( ⑧ ) … 虚 子 句 同 様 、 「 遠 山 」 を 眺 め る 主 体 の 近 景 に は 日 が 翳 っ て い こ ち ら に 降 り 始 め た 「 時 雨 」 の た め 空 が 曇 り 、 向 こ う の 「 遠 山 」 に の み 日 が 当 ( 「 俳 諧 新 報 」 十 七 号 、 明 治 十 三 年 一 月 、 十 頁 ) ⑧ 遠 山 に 日 を 追 に が す 時 雨 か な 英 父 で は 済 ま な い 奇 妙 な 事 物 や 、 予 定 調 和 に 収 ま ら な い 突 発 的 な 出 来 事 … 子 規 達 は 、 実 の 世 界 に は 従 来 の 「 空 想 」 で は 捉 え き れ な い 多 様 な 姿 が あ る は ず だ 、 き れ い 事 品 、 そ の た め に は 「 実 景 」 ( 「 俳 諧 大 要 」 ) を 重 視 せ ね ば な ら な い 、 な ぜ な ら 現 う な 作 品 こ そ 「 俳 句 」 と 判 断 し た の で あ る 。 類 想 を 揺 る が し 、 打 ち 破 る よ う な 作 観 を 保 持 し 続 け よ う と し た の に 対 し 、 子 規 派 は 従 来 の 「 俳 句 」 観 か ら は み 出 る よ 宗 匠 達 は 従 来 通 り の 類 想 や パ タ ー ン を 遵 守 し つ つ 、 そ れ を 洗 練 さ せ る 形 で 「 俳 句 」 こ の 点 、 子 規 達 と 同 時 代 の 俳 諧 宗 匠 達 で は 「 俳 句 」 観 が お よ そ 異 な っ て い た 。 実 を 発 見 す る 認 識 に 他 な る ま い 。 の 前 の 事 実 を 報 告 す る こ と で は な く 、 「 陳 腐 = 月 並 」 に 陥 ら な い よ う な 眼 前 の 現 斬 新 な 世 界 と し て 「 写 実 」 す る こ と を 提 唱 し た の で あ り 、 つ ま り 「 写 生 」 と は 目 と 述 べ た の で な く 、 「 空 想 の 陳 腐 」 を 打 破 す る よ う な 「 実 景 」 を 見 出 し 、 そ れ を 大 要 」 ) と い う 一 節 で あ る 。 子 規 は 単 に 現 実 の あ り の ま ま を 「 写 実 」 す れ ば よ い た だ 、 こ こ で 留 意 す べ き は 「 空 想 の 陳 腐 を 悟 り 、 写 実 の 斬 新 を 悟 る 」 ( 「 俳 諧 新 奇 」 を 求 め る 、 と な ろ う か 。 り 「 彼 = 旧 派 」 は 「 空 想 = 陳 腐 」 を 好 み 、 「 我 = 新 派 」 は 「 写 実 ・ 写 生 = 斬 新 ・ 腐 を 嫌 ふ こ と 我 よ り も 少 し 、 寧 ろ 彼 は 陳 腐 を 好 み 、 新 奇 を 嫌 ふ 傾 向 あ り 」 。 つ ま 「 俳 句 問 答 」 を 重 ね て み よ う 。 「 我 は 意 匠 の 陳 腐 な る を 嫌 へ ど も 、 彼 は 意 匠 の 陳 - 9 - 「 空 想 = 陳 腐 / 写 実 = 斬 新 」 と 区 別 し た こ の 俳 論 に 、 本 稿 冒 頭 で 引 用 し た 子 規 十 八 年 十 二 月 八 日 ) 実 の 斬 新 を 悟 る ま た こ の 時 に あ り 。 ( 子 規 「 俳 諧 大 要 」 、 新 聞 「 日 本 」 明 治 二 得 る に 至 れ ば 、 写 実 ほ ど 面 白 く 作 り 易 き は な か る べ し 。 空 想 の 陳 腐 を 悟 り 、 写 に つ か ま え 処 な き 心 地 し て 、 何 事 も 句 に な ら ず 、 度 々 経 験 の 上 写 実 も 少 し 出 来 ろ う 。 は じ め の 程 は 空 想 な ら で は 作 り 得 ぬ を 常 と す 。 や が て 実 景 を 写 さ ん と す る し え た か と い え ば 、 正 岡 子 規 の 「 写 生 」 観 が 強 く 影 響 し て い た こ と は 明 ら か で あ っ た 。 そ の 中 で 虚 子 が な ぜ 「 遠 山 に 日 の 当 り た る 枯 野 か な 」 を 「 俳 句 」 と し て 示 加 え 、 十 七 字 内 で 因 果 関 係 や オ チ を 付 け て 詠 む も の と 信 じ る 俳 人 が 圧 倒 的 に 多 か 明 治 期 は 、 「 俳 句 」 と い え ば 一 、 二 章 の 引 用 句 の よ う に 趣 向 や 措 辞 に ひ ね り を 三 、 虚 子 句 と 「 写 生 」 に つ い て ろ う か 。 次 章 で 考 察 を 進 め て み よ う 。 で は 、 作 者 の 高 浜 虚 子 は な ぜ そ の よ う な 作 品 を 「 俳 句 」 と し て 提 示 し え た の だ 虚 子 が な ぜ こ の よ う な 句 作 を 行 っ た か と い え ば 、 「 実 景 」 の 膨 大 な 情 報 を 僅 か 五 で 急 に 近 景 が 現 れ た と い う 印 象 が 強 い 。 野 」 は こ の よ う な 関 係 で な い た め 、 中 七 ま で は 遠 景 が な だ ら か に 詠 ま れ た 後 、 下 見 え る よ う に 配 す る の が 当 時 一 般 の 句 作 感 覚 で あ っ た が 、 虚 子 句 の 「 遠 山 」 「 枯 に ― ― 「 遠 山 に ゆ ら り と か ゝ る 柳 か な 」 な ど ― ― 「 遠 山 」 と 「 柳 」 と が 重 な っ て い 可 能 性 が あ る 。 仮 に 「 遠 景 ― 近 景 」 を つ な げ る 場 合 は 、 二 章 の 引 用 句 群 の よ う 野 」 に 分 散 す る た め 、 先 の 「 広 野 」 句 の よ う に は 瞬 時 で 一 幅 の 風 景 を 想 起 し に く 野 か な 」 と 近 景 ( 及 び 中 景 ) を 配 し て お り 、 そ の 結 果 、 下 五 で 視 点 が 「 遠 山 」 「 枯 る 。 一 方 、 虚 子 句 は 「 遠 山 に 日 の 当 り た る 」 と 遠 景 を ま ず 示 し た 後 、 唐 突 に 「 枯 冬 の 『 広 野 』 で あ っ た 」 と 瞬 時 に 一 望 し る う 風 景 と し て 把 握 す る こ と が 可 能 で あ て お り 、 下 五 ま で 読 み 下 し た 際 、 「 ( 松 ば か り 枯 残 っ た 場 所 は ど こ か と い え ば ) 引 用 句 は 「 広 野 」 に 生 え る 「 松 」 を 詠 ん で い る た め 「 広 野 」 に の み 焦 点 が 絞 ら れ 虚 子 句 同 様 に 「 ~ 残 り た る / 広 野 か な 」 と 中 七 で 軽 い 切 れ を 用 い た 作 品 だ が 、 ( 「 俳 諧 一 日 集 」 六 十 八 号 、 明 治 二 十 八 年 一 月 、 十 六 頁 ) 松 ば か り 枯 残 り た る 広 野 か な 朝 寝 / 枯 野 か な 」 に お け る 中 七 の 切 れ の 部 分 で あ る 。 引 な 、 唐 突 と も い え る 箇 所 と 関 係 す る た め で あ り 、 そ れ は 「 遠 山 に 日 の 当 り た る - 10 - 会 で 出 さ れ た も の ) 。 こ の 回 想 が 興 味 深 い の は 、 「 遠 山 に 」 句 に 存 在 す る や や 強 ろ 、 虚 子 は 郷 里 松 山 の 風 景 を 元 に 詠 ん だ 句 と 答 え た ら し い ( 作 品 自 体 は 東 京 の 句 虚 子 の 子 息 で あ る 高 浜 年 尾 が 、 あ る 時 虚 子 に 「 遠 山 に 」 句 に つ い て 話 し た と こ 日 新 聞 社 、 昭 和 四 十 九 年 〕 収 録 「 解 説 」 、 高 浜 年 尾 執 筆 ) り に な る も の が あ つ た 。 そ れ が あ の 句 な の だ 。 ( 『 高 浜 虚 子 全 集 』 第 一 巻 〔 毎 ぽ つ か り 冬 の 日 が 当 つ て ゐ る の が 見 え た 。 そ の 日 の 当 つ て ゐ る と こ ろ に 何 か 頼 松 山 の 御 宝 町 の う ち を で て 道 後 の 方 を 眺 め る と 、 道 後 の う し ろ の 温 泉 山 に と こ ろ で 、 虚 子 の 「 遠 山 に 」 句 は 、 次 の よ う な 「 実 景 」 が 元 に な っ た と い う 。 た 通 り で あ り 、 そ れ ゆ え に 虚 子 は こ の 句 を 「 俳 句 」 と 判 断 し え た の で は な い か 。 当 時 一 般 の 「 枯 野 」 「 遠 山 」 の イ メ ー ジ か ら ず れ て い た こ と は 一 、 二 章 で 確 認 し 子 規 派 の 「 写 生 」 を こ の よ う に 捉 え る と 、 「 遠 山 に 日 の 当 り た る 枯 野 か な 」 は た の で あ る 。 そ 「 俳 句 」 と 見 な し た の で あ り 、 そ れ を 可 能 と す る の が 「 写 生 」 と い う 認 識 だ っ 宗 匠 達 の 安 定 し た 類 想 に 支 え ら れ た 「 俳 句 」 観 を 揺 る が す よ う な 「 実 景 」 の 句 こ り 。 ( 角 田 竹 冷 「 聴 雨 窓 漫 話 」 、 「 秋 の 声 」 一 号 、 明 治 二 十 九 年 十 一 月 ) 自 然 を 愛 し 細 工 を 許 さ ず 、 而 し て 往 々 平 凡 に 了 る 。 こ れ 近 時 の 達 人 の 作 句 な う だ 。 習 作 に 近 い も の と 感 じ ら れ た の で は な い か 。 次 の 同 時 代 俳 人 の 一 言 を 見 て み よ お そ ら く 俳 諧 宗 匠 達 か ら す る と 、 虚 子 句 は 未 完 成 作 か 、 素 人 が 見 た ま ま を 詠 ん ほ ぼ し な い ま ま に 句 を プ ツ ッ と 終 わ ら せ た に 等 し い 。 は な ぜ そ の 景 色 を わ ざ わ ざ 選 び 、 芸 も ひ ね り も な く 詠 ん だ の か 、 こ れ ら の 説 明 を ば 、 虚 子 句 は 見 た ま ま の 景 色 を そ っ け な く 、 趣 向 も 何 も 加 え ず 淡 々 と 詠 み 、 作 者 す る 季 節 感 を よ り 膨 ら ま せ る 句 作 こ そ 「 俳 句 」 と 信 じ て い た 。 そ の 彼 ら か ら す れ 内 で 明 確 に 理 屈 を 付 け 、 趣 向 を 加 え よ う と 措 辞 に 磨 き を か け 、 作 者 と 読 者 が 共 有 以 外 の 、 明 治 期 俳 誌 に 掲 載 さ れ た 膨 大 な 「 枯 野 」 「 遠 山 」 句 群 は 、 十 七 字 の 詩 型 は な ぜ そ の よ う な 風 景 に 目 を 留 め 、 詠 も う と し た の か 」 と 読 者 を 誘 う こ と 。 虚 子 あ 調 一 ろ す 見 う る す 。 と こ る ろ と に 取 、 る 同 に 時 足 代 ら の な 俳 い 諧 、 宗 何 匠 気 た な ち い 風 の 景 句 を と あ 異 え な て る 詠 虚 む 子 こ の と 「 で 写 、 生 「 」 作 句 者 の = 特 主 徴 体 が - 11 - 気 な い 風 景 を 詠 む こ と で 、 か え っ て そ の 平 凡 な 風 景 を 眺 め る 主 体 の ま な ざ し を 強 を 強 調 し よ う と 趣 向 を 凝 ら す の で な く 、 む し ろ 趣 向 や ひ ね り を 放 棄 し て 淡 々 と 何 な 表 現 と い え る 。 同 時 代 の 句 群 の よ う に 、 春 や 秋 で も な い 、 冬 の 「 枯 野 」 の 風 情 日 の 当 り た る 」 風 景 を 眺 め て い る 主 体 の 存 在 感 や ま な ざ し を 優 先 さ せ た か の よ う の 当 り た る 」 は 「 枯 野 」 ら し い 季 節 感 を 増 す こ と よ り も 、 「 枯 野 」 か ら 「 遠 山 に う と 類 想 に 沿 っ た 措 辞 を 使 用 し て い た ( 一 章 参 照 ) 。 し か し 、 虚 子 の 「 遠 山 に 日 点 に 他 な ら な い 。 当 時 、 多 く の 作 品 は 冬 の 「 枯 野 」 ら し い イ メ ー ジ を 増 幅 さ せ よ 加 え て 、 虚 子 句 で 注 目 さ れ る の は 、 ご く 何 気 な い 、 平 凡 な 風 景 を 淡 々 と 詠 ん だ 「 実 景 」 を 元 に し た 作 品 特 有 の 力 業 と も い え る 跳 躍 が 感 じ ら れ な い だ ろ う か 。 す れ ば 、 嫌 が 上 で も 省 略 や 飛 躍 が 求 め ら れ る 。 虚 子 句 に お け る 中 七 の 軽 い 切 れ は 、 な い 、 多 様 で 意 外 な 姿 を 見 せ 続 け る 「 実 景 」 を 僅 か 十 七 字 の 有 季 定 型 で 詠 も う と 七 字 に 綺 麗 に 収 ま る 情 報 や 趣 向 の み で 句 を 詠 め ば 事 足 り る が 、 予 定 調 和 に 収 ま ら か つ 類 想 に 沿 っ た 句 作 で あ れ ば 、 夾 雑 物 や 莫 大 な 情 報 量 は 最 初 か ら 存 在 せ ず 、 十 景 」 を 十 七 字 に 整 え る 必 要 が あ っ た た め で は な い か 。 「 空 想 」 ( 子 規 「 俳 諧 大 要 」 ) の 切 れ で も っ て 他 の 情 報 全 て を 大 胆 に 省 略 し つ つ 一 気 に 飛 躍 を 行 う こ と で 、 「 実 十 七 字 で 表 現 す る の は 不 可 能 の た め 、 「 遠 山 に 日 の 当 り た る / 枯 野 か な 」 の 「 / 」 覚 は 一 種 の 諧 謔 味 も 伴 っ て お り 、 こ れ も 虚 子 句 の 大 き な 特 徴 と い え よ う 。 ま ま 、 あ っ け な く 句 を 終 わ ら せ る こ と 、 つ ま り 先 ほ ど 指 摘 し た 「 肩 す か し 」 の 感 十 七 字 に 押 し こ め よ う と さ り げ な く 強 引 で 、 し か も 類 想 の イ メ ー ジ か ら は み 出 た ま 句 が 閉 じ ら れ た と い う 肩 す か し に 近 い 印 象 を 抱 い た 可 能 性 が あ る 。 「 実 景 」 を に ず れ つ つ 、 そ れ ら を 回 収 せ ず に 句 が 終 わ っ て し ま う た め 、 い わ ば オ チ が な い ま に 視 点 が 移 動 す る 上 に 、 従 来 の 「 遠 山 」 「 枯 野 」 の イ メ ー ジ や 取 り 合 わ せ と 微 妙 の 当 り た る 」 と 上 五 ・ 中 七 を 緩 や か に 読 み 進 め た 後 、 下 五 で 「 枯 野 か な 」 と 唐 突 章 の 引 用 句 群 の よ う な 類 想 の イ メ ー ジ を 期 待 し た 一 般 の 俳 人 た ち は 、 「 遠 山 に 日 同 時 に 、 「 遠 山 に 」 句 は あ る 種 の ユ ー モ ア を 湛 え て は い な い だ ろ う か 。 一 、 二 「 実 景 」 の 一 句 だ っ た と い え よ う 。 の と し て 保 持 し 続 け た 「 遠 山 」 「 枯 野 」 の 類 想 を お よ そ 無 視 し た よ う な 、 過 激 な で あ り 、 句 の 風 景 は 一 見 地 味 で 何 気 な い が 、 従 来 の 俳 人 達 が 培 い 、 遵 守 す べ き も い 小 い 。 説 の ず 大 れ き に な せ 特 よ 徴 、 で 虚 あ 子 る 句 「 は 描 同 写 時 」 代 の の あ 俳 り 諧 よ 宗 う 匠 と 達 ほ の ぼ 「 同 俳 時 句 代 」 に 観 発 と 生 は し 相 た 容 可 れ 能 な 性 い が 作 高 品 - 12 - 本 稿 で は 紙 幅 の 都 合 も あ り 、 触 れ る に 留 め る が 、 子 規 や 虚 子 ら の 「 写 生 」 は 近 代 発 見 」 ( 『 日 本 近 代 文 学 の 起 源 』 〔 講 談 社 、 昭 和 五 十 五 年 〕 ) と 似 通 う 点 が 多 い 。 木 田 独 歩 「 忘 れ 得 ぬ 人 々 」 ( 明 治 三 十 一 年 ) 等 の 分 析 を 通 じ て 指 摘 し た 「 風 景 の こ の よ う な 「 写 生 」 句 に お け る 読 者 の 誘 導 の あ り 方 は 、 批 評 家 の 柄 谷 行 人 が 国 を あ え て 詠 も う と し た 作 者 の 心 情 や 感 慨 を 探 り た く な る の だ 。 味 を 深 読 み し よ う と す る 。 そ の 景 色 が 何 気 な い も の で あ る ほ ど 、 さ さ や か な 日 常 意 識 し 、 句 中 に 永 遠 に 漂 う 謎 に 魅 入 ら れ た よ う に 作 品 を 何 度 も 反 芻 し 、 様 々 な 意 て 「 蕭 条 た る 枯 野 に 佇 む 主 体 は 、 な ぜ 日 の 当 た る 遠 山 を 見 つ め て い る の か ? 」 と の 当 り た る 」 風 景 が 黙 っ て 示 さ れ た ま ま 句 が 終 わ っ て し ま う た め 、 読 者 は か え っ や 「 遠 山 」 の イ メ ー ジ を 放 棄 す る 点 に あ っ た 。 平 凡 な 、 取 り 柄 の な い 「 遠 山 に 日 し か し 、 虚 子 句 の 狙 い は 、 ま さ に 一 、 二 章 の 引 用 句 群 の よ う な 「 枯 野 」 ら し さ 無 技 巧 か つ 「 平 凡 」 な 作 品 と 映 っ た で あ ろ う こ と が う か が え る 。 か っ た 。 そ の 竹 冷 か ら す る と 、 子 規 派 の 「 写 生 」 句 は 趣 向 も 措 辞 の ひ ね り も な い 、 と 同 様 に 「 新 派 」 を 目 指 す 一 方 、 著 名 な 俳 諧 宗 匠 ら と も 親 し い な ど 交 際 範 囲 が 広 る 。 執 筆 者 の 角 田 竹 冷 は 小 説 家 の 尾 崎 紅 葉 ら と 懇 意 だ っ た 俳 人 で 、 虚 子 や 子 規 ら そ れ と は 名 指 し し て い な い が 、 お そ ら く 正 岡 子 規 一 派 を 暗 に 諷 し た と 推 定 さ れ 【 所 属 】 公 益 社 団 法 人 俳 人 協 会 会 員 、 「 参 」 所 属 る 「 写 生 」 の あ り よ う も 示 唆 し て は い な い だ ろ う か 。 た 俳 句 革 新 の 特 徴 と そ の 内 実 を 明 ら か に す る と と も に 、 大 正 期 か ら 昭 和 期 へ と 至 こ と は 、 明 治 期 の 子 規 派 に お け る 「 写 生 」 が 「 月 並 ・ 陳 腐 」 の 打 破 と 連 動 し て い つ 、 同 時 代 の 今 や 忘 れ ら れ た 膨 大 な 俳 誌 の 句 群 と 比 較 し つ つ 「 写 生 」 を 考 察 す る そ の 内 実 は 異 な る で あ ろ う 。 虚 子 の 「 遠 山 に 」 句 と い う 具 体 的 な 俳 句 を 例 に し つ が 重 な り 、 ど の 点 が 異 質 で あ っ た か を 当 時 の 資 料 を 調 査 し て 分 析 す る 立 場 で は 、 類 型 と は ど の よ う な も の だ っ た の か 、 そ し て 子 規 派 の 虚 子 句 は そ の 類 型 と ど の 点 か ら 振 り 返 っ て な ぞ る 立 場 と 、 双 方 の 作 品 を 実 際 に 比 較 し 、 「 遠 山 」 「 枯 野 」 の 並 」 で あ っ た 、 と は 多 く の 指 摘 す る と こ ろ で あ る 。 た だ 、 こ の 結 論 を 現 在 の 立 場 明 治 俳 句 に お い て 、 子 規 派 の 「 写 生 」 は 斬 新 で 、 か た や 俳 諧 宗 匠 達 の 句 は 「 月 と し て 、 明 治 期 の 虚 子 句 を 検 証 し て き た 。 「 写 生 」 の 概 念 が 息 づ い て い た で あ ろ う こ と は 想 像 に 難 く な い 。 本 稿 は そ の 一 例 う な 句 こ そ 「 俳 句 」 で あ る と 判 断 し た 虚 子 の 背 後 に は 、 明 治 期 に 子 規 が 提 唱 し た 内 部 で の 類 想 句 と は 相 容 れ な い 、 奇 妙 な 特 徴 を 持 つ 作 品 が 多 々 存 在 す る 。 そ の よ - 13 - く の 作 品 を 取 捨 選 択 し た 際 、 上 位 に す え た 句 に は 同 時 代 の 他 誌 や 「 ホ ト ト ギ ス 」 多 い 。 虚 子 自 身 の 句 も さ る こ と な が ら 、 彼 が 「 ホ ト ト ギ ス 」 雑 詠 欄 選 者 と し て 多 時 代 の 類 型 や イ メ ー ジ か ら は み 出 る よ う な 「 実 景 」 の 痕 跡 が 刻 ま れ て い る こ と が う 近 。 代 俳 句 の 中 心 と な っ た 「 写 生 」 句 は 、 本 稿 で 取 り 上 げ た 虚 子 句 に 限 ら ず 、 同 し て 詠 み え た と こ ろ に あ り 、 ま た そ こ に 虚 子 の 力 量 が あ っ た と 見 な す べ き で あ ろ う よ り 、 「 陳 腐 ・ 月 並 」 に 陥 ら な い 「 実 景 」 を 発 見 し 、 そ れ を 有 季 定 型 の 俳 句 と な わ ち 、 「 遠 山 に 」 句 の 特 徴 は 「 実 景 」 を 詠 ん だ た め に 「 写 生 」 句 で あ っ た と い 腐 ・ 月 並 」 か ら 逃 れ え た 「 写 生 」 句 で あ っ た 点 に 斬 新 さ が あ っ た と い え よ う 。 す 野 」 の イ メ ー ジ と は 微 妙 に 外 れ た と こ ろ で 成 立 し た 作 品 で あ る こ と 、 つ ま り 「 陳 明 治 三 十 三 年 に こ の 句 が 持 ち え た 特 徴 や 意 義 を 考 慮 す る と 、 従 来 の 「 遠 山 」 「 枯 わ い う る 魅 力 を 持 つ 一 句 と い え る か も し れ な い 。 た だ 、 そ れ と は 別 に 、 発 表 時 の 「 遠 山 に 日 の 当 り た る 枯 野 か な 」 は 、 現 在 の 私 た ち も 「 写 生 」 の 佳 句 と し て 味 お わ り に
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