14-I-0079 2015 年 2 月 19 日 株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。 アイシーアイシーアイ・バンク・リミテッド 【見通し変更】 外貨建長期発行体格付 格付の見通し (証券コード:−) BBB+ ネガティブ → 安定的 【据置】 債券プログラム格付(優先債)BBB+ ■格付事由 (1) 格付は、インド最大の民間商業銀行としての当行の強固な営業基盤、安定的な収益力と高い自己資本比率 により支えられている。他方、格付は、主に海外支店の預金獲得に課される監督規制を主因とする高い市 場借入比率により制約されている。格付の見通し変更は、インド国の金融規制や経済の影響を強く受ける ことから、2 月 13 日に公表したインド政府の格付の見通し変更を反映している。 (2) 当行は、インド政府及び世銀等の主導によりインド産業界への中長期資金の提供を目的に 55 年に設立さ れた開発金融機関である Industrial Credit and Investment Corporation of India Limited(1999 年には ICICI Lmited に変更)が、94 年に設立した銀行子会社 ICICI Bank、ならびに他の 2 つの子会社と 02 年に合併し て誕生したインドの民間商業銀行である。旧 ICICI は、92 年以降のインドにおける金融セクター改革の進 展にあわせ、貸出の量的拡大と共に、子会社設立などによる経営の多角化・効率化を推進してきた。その 結果、投資銀行業務、商業銀行業務、資産運用、個人向け金融サービスといった新分野への進出を果たし、 さらには保険分野への参入も果たすなど、他行に先駆けてユニバーサルバンクを指向した展開を図ってき た。合併後は、証券会社、プライベート・エクイティ、資産運用会社、生命保険、損害保険などの子会社 を通じて ICICI Bank グループとして、ユニバーサルバンク戦略をさらに強化し、英国やカナダ、ロシア に現地銀行法人も有している。ロシアの子会社に関しては、14 年 12 月に売却案を発表している。 (3) 14 年末の総資産は、単体で 6.2 兆ルピー(約 11.7.兆円) 、連結で 7.9 兆ルピー(約 14.9 兆円) 。インドで は 14 年 3 月末時点において、国営銀行が貸出総額の 72.6%を占め、上位行もほとんどが国営銀行である 中、14 年末時点で当行は株式の 71%を外国人投資家が、また 29%を国内投資家が保有する、インド最大 の民間商業銀行である。預金に占める当座預金及び普通預金の割合は、14 年末には 44%まで上昇してお り、SBI の 43%を僅かながら超える水準となっている。また、大口与信先上位 20 社の与信残高に対する 割合は、14/3 期末時点で 15.21%となっている。他方、海外支店の高い市場借入比率を主因に、負債に占 める借入の割合は 24.8%(14 年末、単体)と、国営大手行に比べて高い水準にある。当行は海外支店の 資金調達方法の多様化や様々な通貨での資金獲得にも注力しており、今後、当行が資金調達構造の強化・ 拡充をどのように進めていくのか注目される。なお、インドの商業銀行として当行は、調整済みネット貸 出総額の 40%を農業や中小企業などに優先的に割り当てることや、法定流動性比率として預金・借入の 少なくとも 21.5%を主に国債など流動性の高い資産で保有することが義務付けられている。 (4) 当行は近年、「流動性預金(当座及び普通預金)の拡充」、「コスト管理の徹底」、「資産の質の改善」、「貸 出資産の拡大」、「顧客満足度の向上」の 5 大方針を打ち出し、財務体質の強化に取り組んできた。「コス ト管理の徹底」については、支店網が大幅に拡充される中、経費の抑制を続けた結果、経費率は 14 年末 には 37%(単体)にまで低下した。 「資産の質の改善」については、貸出残高の拡大(14 年末現在、前年 比 12.8%増の 3.8 兆ルピー(約 7.1 兆円))や 13/3 期までの無担保リテール貸付の抑制継続を背景に (14/3 期から一部を再開) 、不良債権比率は、インド経済が減速する中、前年同期の 0.81%(ネット、単 1/3 http://www.jcr.co.jp 体)よりやや悪化したものの 14 年末時点で 1.12%と依然低位に保たれている。自己資本比率は 14 年末 現在 16.4%、TierⅠ比率は 11.8%(単体)と高水準に維持されている。 (5) 収益面では、低金利の当座及び普通預金の獲得に伴う資金調達コストの低下や国内の利ざやの改善により、 15/3 期第 3 四半期の純金利マージン(NIM、単体)は 3.5%と前年同期の 3.3%より拡大。加えて、貸出 資産の増加により 15/3 期 4-12 月の純金利収入は前年同期比 15.2%増の 1,396 億ルピー(約 2,624 億円) となり、純利益も同 15.2%増の 825 億ルピー(約 1,551 億円)を記録した。連結ベースでも、純金利収入 の拡大を背景に、同 10%増の 916 億ルピー(約 1,722 億円)となっており、当行の業績は引き続き堅調 に推移している。 (担当)田村 喜彦・利根川 ■格付対象 発行体:アイシーアイシーアイ・バンク・リミテッド(ICICI Bank Limited) 【見通し変更】 対象 外貨建長期発行体格付 格付 見通し BBB+ 安定的 【据置】 対象 債券プログラム(優先債) 発行限度額 500 億円 発行予定期間 格付 2014 年 6 月 18 日から 1 年間 BBB+ 2/3 http://www.jcr.co.jp 浩司 格付提供方針に基づくその他開示事項 1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 2 月 16 日 2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本 主任格付アナリスト:田村 喜彦 幸一 3. 評価の前提・等級基準: 評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類 と記号の定義」 (2014 年 1 月 6 日)として掲載している。 4. 信用格付の付与にかかる方法の概要: 本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、 「コーポレート等の信用格付方法」 (2014 年 11 月 7 日)、 「銀行等」 (2014 年 5 月 8 日)として掲載している。 5. 格付関係者: (発行体・債務者等) アイシーアイシーアイ・バンク・リミテッド(ICICI Bank Limited) 6. 本件信用格付の前提・意義・限界: 本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。 本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性 の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外 の事項は含まれない。 本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入 手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。 7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者: ・ 格付関係者が提供した監査済財務諸表 ・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明 8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要: JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、 独立監査人による監査、発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、 当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。 9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし ■留意事項 本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、 的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、 金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因 のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として 発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。 ■用語解説 債券プログラム格付:プログラム格付はプログラムに対する信用格付です。個別の債券の信用力はプログラム格付と同等と判断されるケースもあり ますが、クレジット・リンク債やエクスチェンジャブル債など、元利支払いが第三者の信用状況に依存する債券などではプログラム格付と異なると 判断されることもあります。JCR では、発行体から依頼がある場合などを除き、通常、プログラムに基づき発行される個別の債券に対する信用格付 は行っていません。 ■NRSRO 登録状況 JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。 ■本件に関するお問い合わせ先 情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026 3/3 http://www.jcr.co.jp
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