油価下落下の カナダオイルサンドの状況 2015年2月19日 調査部 舩木 弥和子 1 原油価格推移(2014~2015年)別添カラー資料1あり 2 高いオイルサンド供給コスト 別添カラー資料2あり 出所: CERI Canadian Oil Sands Supply Costs and Development Projects(2012~2048) 注:カナダドルで表示 3 オイルサンドプロジェクトへの投資減少 出所:CAPP January 2015 Capital Investment & Drilling Forecast Update 4 在来型ほどの投資落ち込みはない ●Dundee Capital Markets ◎オイルサンドは長期の見通しに基づいて投資しており、 進行中、計画中のプロジェクトが遅延や中止に追い込 まれることはないだろう。 ●Andrew Leach氏(University of Alberta) ◎オイルサンド産業はその歴史の大部分をUS$80/bbl 以下の油価と戦ってきた。オイルサンド事業への投資 決定には、現在の油価よりも今後5年間の油価のほう が重要である。 5 主な企業の戦略、投資状況 ●Imperial Oil (2014年4Qオイルサンド生産量:29.1万b/d) ◎長期的に恵まれた資産を保有しており、開発計画は 短期の油価変動に大きな影響を受けない。 ●Suncor Energy (2014年4Qオイルサンド生産量:41.9万b/d) ◎2015年の資本支出を2014年のC$68億からC$72~78 億に引き上げるとしていたが、C$62~68億に引き下げ。 ◎承認を得ていないプロジェクトを遅らせる可能性がある。 6 主な企業の戦略、投資状況 ●Canadian Natural Resources (2014年3Qオイルサンド生産量:19.7万b/d) ◎2015年の予算$86億を$62億に削減する。 ◎進行中のプロジェクトは継続。油価下落ですぐに 生産を削減しない。将来のプロジェクトは生産削 減か遅延を計画。 ●Cenovus Energy (2014年4Qオイルサンド生産量:14.2万b/d) ◎資本支出をC$25~27億からC$7億削減。 ◎対象は在来型と新規オイルサンドプロジェクト。 Christina LakeやFoster Creekの拡張プロジェクトは 計画通りに進める。 7 掘削井数減少 出所:CAPP January 2015 Capital Investment & Drilling Forecast Update 8 掘削井数減少 ●Petroleum Services Association of Canada ◎油価下落で2015年の掘削井数は7%減少する見通し。 (2014年11月) ●Canadian Association of Oilwell Drilling Contractors ◎パイプラインの能力不足、油価下落、LNGプロジェクト 稼働の遅れから、カナダ西部での掘削井数は2014年 の11,495 坑から2015年は10%減少し10,354坑となる 見通し。(2014年11月) ◎カナダ西部で稼働中のリグ数は油価下落で2014年の 370基から2015年は203基に41%減少、坑井数は36% 減少する見通し。(2015年1月) 9 カナダの石油生産量の伸びは鈍化 出所:CAPP January 2015 Capital Investment & Drilling Forecast Update 10 オイルサンド生産量の伸びも鈍化 出所:CAPP January 2015 Capital Investment & Drilling Forecast Update 11 生産量伸びの鈍化も在来型ほどではない 出所:CAPP January 2015 Capital Investment & Drilling Forecast Update 12 主要オイルサンドプロジェクトの動向 年月 プロジェクト オペレーター 生産法 生産量 動向 2014/9 Corner Statoil SAGD 4万b/d 少なくとも3年延期。 2014/10 Firebag Suncor SAGD 18万b/d 生産開始。 2014/11 Hangingstone Athabasca Oil SAGD 1.2万b/d 第1期、間もなく生産開始。 第2、3期は当面保留。 2014/12 Kinosos‐1A Nexen SAGD 2万b/d 生産開始。 2014/12 Sunrise第1期 Husky SAGD 6万b/d 水蒸気圧入開始。 2015/1 Sunrise第2期 Husky SAGD 14万b/d 計画保留。 2015/1 Kirby North CamadianNatu ralResources SAGD 10万b/d 油価が安定するまで第1期を 延期。 2015/1 Telephone Lake Grand Rapids Narrows Lake Cenovus SAGD SAGD SAGD 9万b/d 18万b/d 9万b/d Telephone Lakeは14/11に開 発承認。投資ペースを遅らせ る。生産開始は2017年以降。 2015/3 Nabiye Imperial Oil CSS 4万b/d 3月末までに生産開始。 2015 Surmont第2期 ConocoPhillips SAGD 11万b/d 生産開始予定。 2015 Kearl Imperial Oil 露天掘り 11万b/d 生産開始予定。 2015 Christina Lake MEG Energy SAGD 7.6万b/d 20%増産予定。 各種資料より作成 青字はプロジェクトの進展、赤字は保留、延期等を示す。 新規プロジェクトや小規模企業への影響は大きい ●Canadian Energy Research Institute ◎新規オイルサンドプロジェクトの採算分岐点は、露天 掘り$100/bbl、地層内回収法$85/bbl ●小規模企業 ◎Connacher Oil and Gas、企業ごと、あるいはオイルサン ド資産の売却手続きを開始 ◎Penn Growth、Lindbergh オイルサンドプロジェクト第2 フェーズ(18,000 b/d)を少なくとも1年遅らせると発表 ◎Sunshine Oil Sands、Ellsプロジェクト(2万b/d)の遅延を 発表 14 油価以上に問題 パイプライン輸送能力 パイプライン建設・拡張計画 カナダ 太平洋岸 パイプライン 送油能力 Kinder Morgan Trans Mountain拡張 59万b/d 状況 2017年4Q稼働予定、投資額51億ドル Enbridge Northern Gateway 52.5万b/d 2018年3Q稼働予定、投資額71億ドル カナダ 東部 TransCanada Energy East 110万b/d 2018年4Q稼働予定、投資額120億ドル 米国メキ シコ湾岸 TransCanada Keystone XL 83万b/d 2014年3QにNEBに申請予定 2017年稼働予定、投資額54億ドル 各種資料より作成 15 出所: CAPP Crude Oil Forecast, Markets & Transportation 16 不足するパイプライン輸送能力 別添カラー資料3あり 出所:CERI CANADIAN ECONOMIC IMPACTS OF NEW AND EXISTING OIL SANDS DEVELOPMENT IN ALBERTA (2014‐2038) 17 まとめ ●油価下落により ◎在来型ほどでないがオイルサンドプロジェクトへの投 資額減少 ◎生産中のプロジェクトは生産を継続、建設中のプロジェ クトは生産を開始するので、生産量の伸びは縮まるが、 増加を続ける見通し ◎オイルサンドプロジェクトの傾向に変化 オイルサンドプロジェクトへの投資は、「露天掘り +アップグレーディング」から、「SAGD法+希釈に よる輸送」に移っていく傾向 SAGD法含め新規のプロジェクトは延期 ●パイプラインの建設・拡張計画にも注目 18
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