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国による異なる給湯・暖房機器の仕様
2015/02/13
コラム
山藤 泰
YSエネルギー・リサーチ 代表
英国の市場調査会社のリサーチャーから日本の給湯・暖房機器について問い合わせを受けた。日本の家庭部門
のエネルギー消費関連資料と、一般的な給湯・暖房機器に関する能力、効率、価格等である。
世帯単位の給湯・暖房用エネルギー消費量などは別として、機器についてカタログデータなどを参照して返事
をしようとして、これに関しては単なる数字を伝えるだけでは解答にならないと思うに到った。
寒い地域の多い欧州では家全体を暖めるのが普通であるのに対して、北海道などの寒冷地を除く日本では部屋
単位に暖房が行われ、しかも、ファンヒーターのような、灯油やガスを使った移動可能な暖房機が普及している
からだ。
欧州では、換気がされていない部屋の中で直火を使って暖房することは法律で禁止されているところが殆どだ。
また、日本の風呂浴槽の大きさと、入浴の仕方は、言葉で説明してもなかなか理解しては貰えない。気候風土の
違いが大きく出ているのだが、極めて日常生活に関わるものが判断基準となるだけに、どうしても違いの大きさ
を理解し難いことになる。
日本で風呂に入るのは、身体をお湯で温め、手足を伸ばしてくつろぐことが主目的であって、身体は浴槽の外
で洗うのが通常。ところが欧米では、浴槽に身体を浸して石けんで洗えれば良いのであって、その後シャワーで
洗い流すのが通常だ。
シャワーを浴びるのは頻繁だが、風呂に入ることは週に一度あれば良い程度の人が多い。浴槽の水はその都度
流してしまう。そのような生活習慣の中に生きる人にとって、風呂向けに大容量の給湯器や追い炊きができる機
器が商品として存在することは想像しにくいだろう。
日本で商品化が進んだ電気ヒートポンプ給湯器の場合でも、風呂給湯に使えるだけの機能があるはずだから、
給湯能力は欧米のそれよりはるかに大きいはず。
さらに日本では、瞬間式給湯器が主流となっており、それも精緻な制御を
するコンパクトなものになっているために、結果としてコストは欧米から見
れば相対的に大きくなる。
日本では水道水が軟水である地域が殆どであるために瞬間式が普及する
ようになっているとも言える。
筆者は 4 年間ロンドンに駐在したことがある
が、赴任当初、水道からの水で湯を沸かしたら、一度で薬缶の内側が真っ白
になってしまい驚いたことがある。硬水のせいだった。
この住宅に設置されている貯湯式給湯・暖房器を調べてみたら、貯湯槽の
中には硬水の軟水化システムが組み込まれていた。ロンドンの水道を軟水化
しないで瞬間湯沸器に使えば、短時間のうちに析出物で詰まって故障してし
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まうだろう。だから洗濯機も、軟水化剤を加えた温水を使うのが標準仕様になっている。
そうしなければ石けんの効果が全く出ないからだ。英国全ての水が硬水であるわけではなく、スコットランド
では軟水だそうだが、欧州の主要都市には硬水地域が多い。だから硬水利用を前提にした機器になっているのだ
と言える。
また、日本の瞬間式給湯器がコンパクトであることには、日本で供給され
る都市ガスの品質が極めて厳密に管理されていて安定しているために、燃焼
の精密な制御がやりやすく、燃焼室スペースを小さくできるということもあ
るようだ。
欧米の場合、ガス田から供給されるガスの組成変動がかなり大きく、その
変動に対応する余裕ができるように燃焼室を大きくし、結果として簡単な燃
焼制御で済ませることができるのだという。
そのため、欧米のガス給湯器などの価格は日本のものに比べて安い。一方
サイズは大きくなるが、住宅がそれを受け入れる余裕があるために大きな問
題とはならない。
このような風土の違いから来る違いを、メールだけで説明することは自分の能力ではできないと諦めた。まず
日本の日常生活について理解する必要があると返事したが、納得して貰えるかどうかは分からない。
一度日本に来ることを勧める方が解答になるかもしれない。
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