【提案】中学校部会 分科会⑤ 言語活動 朗読や群読を通して

【提案】中学校部会 分科会⑤
言語活動
─朗読や群読を通して音声言語表現の楽しさを味わい,読みを深める─
安芸高田市立吉田中学校 教諭 村上 恵崇
1 はじめに
本校は広島県の中央部に位置する,安芸高田市内で最大の生徒数(286名)を擁する中規模校である。
かつて激しい荒れの時代を経験し,多くの生徒・保護者・教職員が苦しみながら,悩みながらも共に取
組みを行い,現在の落ち着いた学校を築いてきた経緯をもつ。そのため,生活面に限らず,授業でも行事
でもあらゆる場面で生徒指導,集団作りを根幹とした取り組みを行う伝統がある。研究主題は「学ぶ意欲
の育成 ~自己指導能力の涵養~」である。研究主題達成のためにユニバーサルデザイン化した授業や,
生徒指導の三機能(①自己存在感を与える ②自己決定の場を与える ③共感的人間関係を育てる)を活
かした授業づくりを全教科(音楽→合唱 体育→集団行動 等)で意識し,取組みを進めている。
2 研究の概要
(1) 研究課題の設定
国語科における「生徒指導の三機能」を意識した取り組みとして群読を取り入れれば,集団の中で協力
して学習することで学習意欲を高め,自己指導能力のある生徒を育成することができるであろう。
(2) 研究内容
①生徒実態の分析 ②年間指導計画の中での群読の設定 ③仮説の検証
3 実践例
①生徒実態の分析
平成25年度「基礎・基本」定着状況調査,平成26年度3年第1回ベネッセ実力テストの分析
②年間指導計画の中での群読の設定
平成25年10月(2年生時) 作品:あめ(山田 今次) 群読への入門として
平成25年11月(2年生時) 作品:走れメロス(太宰 治) 意欲を高める発表の題材として
平成26年 5月(3年生時) 作品:伊勢物語 芥川(未詳) 作品の読みを深める手法として①
平成26年 8月(3年生時) 作品:挨拶ー原爆の写真によせて(石垣 りん) 同上②
その他,授業 の 分
を
て や
,
作品の 読や群読
③仮説の検証
平成26年度3年第2回ベネッセ実力テスト
と生徒 ン ートの分析
前 5 ほど 使っ 詩 短歌 古典
朗
結果
ア ケ
4 成果と課題
○古典や詩の読解を助ける,音読への意欲付けとして,また作品の読みを深める手法としての効果は,
手ごたえを感じた。
「どのように発声すべきか」
「どの群読の工夫を入れるべきか」
「なぜそう考えるの
か?」という思考の流れは,自然と根拠を作品内容に求めるため,作品を読み返し,読みを深めてい
る生徒の姿があった。
○一人一人が役割を負うので,自分が発言したり発声したりしないと集団の作品が仕上がらないため,
取組みを重ねることで自然,仲間と相談したり,役割をきちんと果たしたりする姿が増え,それに伴
って自分の意見を伝えたり,または伝えようとしたりする姿が増えた。
○合唱祭や市民文化祭といった華やかな発表の舞台をもらったことで,学年全員で成功させるという意
識が生まれた。その中で一人一人の役割があり,それを尊重し合うことの大切さを実感させることが
できた。
不登校傾向生徒が群読の練習の期間は皆勤賞で,授業もすべて受けて学習することができた。
●実力テストの得点としては大きな変容は見られず,学力の向上に繋がったという明確な結果が出なか
った。(実力テスト国語科平均得点 51.1→51.9)
しかしながら学習に臨む態度は向上しており,今後に期待している。
●群読のシナリオを生徒に作成させるためには多くの時間と支援が必要であり,年間の授業で頻繁に取
組むことは難しかった。群読に適した単元も,教科書では学年によってばらつきがある。今後は年間
指導計画を見直したり,適切な教材を精選する中で改善していく。