質の向上 介護現場の 第5回 総合介護施設 ありがとう 総施設長 妹尾 弘幸 プログラムの質の向上 内容の異なるデイを8ヶ所、グループホーム、複合型サー ビス、訪問介護・看護、居宅支援を各1ヶ所、サ付き2棟を 運営。介護職員数は約150名(うち常勤職員割合76%)。 プログラムの質の向上は、デイ全体の質の向上に欠かせない重要 ほぼ全員(99%)が全国レベルの学会発表経験者。正社 な因子である。今号ではプログラムの質を向上させるためにすべきこ 員の9割が国家資格保持者であり、ほかにも認知症介護 とについて、以下の項目にそって解説する。 名と質の高い職員を確保することでサービスの質を上げて 指導者5名、DCM30 名以上、専門職向け講師経験者35 いる。 <プログラムの質を向上させるためのポイント> (1)一人ひとりに合わせた評価を行う (5)生活機能(主に活動・参加)改善のための (2)適切な目標を設定する 複数のプログラムを提供する (3)正しいプログラムを実施する (6)効果的なプログラムを提供する (4)評価−目標・目的−実施内容の整合性を図る (7)効果を分かりやすく提示する (1)一人ひとりに合わせた評価を行う 利用者全員に対して同じ評価をしているデイも多い るため、状態を把握しやすい評価、変化を把握しや が、個別ケアを実施する以上は、評価も一人ひとりに すい評価であれば、スタッフが自由に作成・実施して 合わせた内容にするべきである。 構わない。当法人のリハビリセンターでは、ADL を 評価の目的は、利用者の状態把握や変化把握であ 評価する方法の1つ「バーセルインデックス」 (資料1) 資料1 BI(バーセルインデックス) (ADLを評価する方法の1つ) 点数 得点 1 食事 10 5 0 自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える 部分介助(たとえば、おかずを切って細かくしてもらう 全介助 2 車イスから ベッドへの移動 15 10 5 0 自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(非行自立も含む) 軽度の部分介助または監視を要する 座ることは可能であるがほぼ全介助 全介助または不可能 3 整容 4 トイレ動作 5 0 10 5 0 自立(洗面、整髪、歯磨き、ひげ剃り) 部分介助または不可能 自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む) 部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する 全介助または不可能 5 入浴 5 0 6 歩行 15 10 5 0 45M以上の歩行、補装具(車イス、歩行器は除く)の使用の有無は問わず 45M以上の介助歩行、歩行器の使用を含む 歩行不能の場合、車イスにて45M以上の操作可能 上記以外 7 階段昇降 10 5 0 自立、手すりなどの使用の有無は問わない 介助または監視を要する 不能 8 着替え 10 5 0 自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む 部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える 上記以外 9 排便コントロール 10 5 0 失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能 ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む 上記以外 10 排尿コントロール 10 5 0 失禁なし、収尿器の取り扱いも可能 ときに失禁あり、収尿器の取り扱いに介助を要する者も含む 上記以外 バーセルインデックス 生 活 動 作 に か か わ る10 項目を、それぞれ自立、部 分介助など数段階の自立 度 で 評 価する。自立 度に 応じて点 数を設 定してお り、完 全 に自 立して い る 場合は100点になる。 自立 部分介助または不可能 合計得点 100 Vol.22 デイの経営と運営 83 を、利用者の自立度評価に用いている。 評価の際に留意する点は、場所・時間帯・気温な ど、できるだけ同じ環境下で行うことである。特に測 定値に影響を与える要因については、できるだけ同じ 状態にすることが求められる。 (4)評価−目標・目的−実施内容の 整合性を図る 全体としての整合性、すなわち、評価−目標・目的 −実施内容の整合性が取れていることも重要である。 すべてのメニューについて、 「何のために行われてい (2)適切な目標を設定する るのか」をチェックするといいだろう。 例えば、 「お孫さんに巾着を作成し、家まで届ける」 介護では、長期目標を立て、その目標達成のため が目標であれば、 「裁縫を行うための指先可動域訓 にさまざまなメニューが実施される。従って、介護で 練」 「外出できるよう歩行訓練を行う」といった実施 最も重要なのは長期目標ともいえる。介護は生活を 目的を定め、目的に合ったデイのプログラムを実施す 支援するサービスであるため、介護の長期目標は生 る必要がある。 活行為でなければいけない。各利用者の生活状況や 症状は異なるため、長期目標も一人ひとりで異なる。 例えば、A氏の長期目標はB氏やC氏には適合し ない。目標内容が複数の人に当てはまる場合、それ 評価−目標・目的−実施内容の整合性 は長期目標ではなく、ケアとして当たり前にしなけれ ばならないことだと考えた方が良い。 例:Aさん 女性 80 歳 片麻痺あり 目標は、次の6つの因子を満たす必要がある。 <目標を決める際に満たすべき6つの因子> 評価 ① 生活に密着していること ・片麻痺があり、両手を使う作業が難しい (麻痺側 Br/SⅢ) ・歩行はできるが、長い距離は困難 (○○mの屋外歩行可) ② 具体的であること ③ 利用者のニーズに合うこと ④ ケアとして当たり前ではないこと 目標 お孫さんのために巾着を作成し、 ○月○日に家まで届ける ⑤ すぐには達成できないこと ポイント ⑥ 達成できること (3)正しいプログラムを実施する 実施目的 何のために行われている のか、目標と合っている のかを確認 ! 適切な評価が行われ、適切な目標と実行計画が立 てられても、正しい方法で実施しなければ、望まれ る効果は得られない。 お孫さんの家を訪問する ために、下肢の筋力・ 歩行能力の向上 など お裁縫を行うための 基礎的動作 など <不適切な実施例> ・本来の動きとは違う代償運動(ある動作を 行うことが難しい場合、別の筋肉などでカ バーする動作や運動)で行われている プログラム ・筋力強化が目的なのに、負荷量(抵抗の 量)が少なすぎる ・足踏み運動 ・デザイン選び ・歩行トレーニング(屋内) ・型取り ・片麻痺の悪い運動パターン(麻痺のある部 位のみを集中的に訓練する など)でトレー ニングしている など ・屋外歩行訓練(○m/ 日) ・手縫い 84 デイの経営と運営 Vol.22 つづきは本誌にてご覧ください
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