FX Weekly(2015年2月6日)-「欧州債務危機再来の

FX Weekly
平成 27(2015)年 2 月 6 日
GLOBAL MARKETS RESEARCH
チーフアナリスト
内田 稔
三菱東京 UFJ 銀行
A member of MUFG, a global financial group
Table of contents
1
今週のトピックス
1. 今週のトピックス
(1) 欧州債務危機再来の可能性は現時点では低い
アナリスト
2
来週の相場見通し
3
来週の経済指標・イベント
4
マーケットカレンダー
(2) 米国金融政策
天達 泰章
利上げの意向を言い続ける忍耐強さ
シニアマーケットエコノミスト
鈴木 敏之
(3) 豪中銀利下げ実施、経済成長に豪ドル安が必要
リサーチアシスタント
福島 由貴
2. 来週の相場見通し
(1) ドル円:雇用統計後も方向感は出づらいと予想
115.50 ~ 119.00
予想レンジ
(2) ユーロ:良好な経済指標を受けて堅調な推移を予測
予想レンジ
対ドル:
1.1350 ~ 1.1650
対円:
132.00 ~ 138.00
(3) 豪ドル:追加緩和織り込み済、横ばい圏にて推移しよう
予想レンジ
対ドル:
0.7700 ~ 0.7950
対円:
90.00 ~ 93.50
(4) 人民元:人民元は現水準を中心としたレンジ推移を予想
予想レンジ
1
FX Weekly | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
対ドル:
6.2300 ~ 6.2700
対円:
18.50 ~ 19.00
(1) 欧州債務危機再来の可能性は現時点では低い
ECBは 2 月 4 日にギリシャ国債を適格担保から外すことを決定し
た(2 月 11 日より実施)。ECBは適格担保要件をBBB-格以上とし
ているが、ギリシャ国債については、欧州債務危機以降、特例措置
として適格担保としてきた。しかし、ECBは「ギリシャはEUやIMF
による金融支援プログラムの評価に合格するか不透明」として、ギ
リシャ国債を適格担保から外す決定をした。
ギリシャでは、1 月 25 日の選挙によって、トロイカ(EU、IMF、
ECB)が進める緊縮財政路線に反対する政権が発足した。ギリシャ
の新政権はトロイカに債務減免を求めるなど、前政権の緊縮財政路
線からの転換を模索している。チプラス・ギリシャ首相は「もはや
欧州の命令には従わない」と発言している。そのため、トロイカか
ら金融支援を受けられずにギリシャが財政破綻に至り、欧州債務危
機が再来する可能性が一部で指摘されている。
本稿では、ECBによるギリシャ国債の適格担保除外の意図と、欧
州債務危機の再来の可能性について整理する。
① ECB はギリシャに 緊縮財政路線の保持を促す
ECB には「国債等資
産買入が財政規律を緩
める」との批判を逸ら
す意図も
1
2
2
ECBによるギリシャ国債の適格担保除外の決定により、金融機関
はギリシャ国債を担保としてECBの資金供給オペや限界貸出ファシ
リティー(翌日物貸出)による資金調達が出来なくなる。そのため、
ギリシャの金融機関は、ギリシャ国債を適格担保に使用しているた
め、ECBから低利での資金調達ができなくなる1。
ギリシャの金融機関は、短期金融市場から資金調達をする必要が
あるが、困難な場合には、ギリシャ中銀による緊急流動性支援
(ELA)で資金調達することになる。ここで、ELAは、ユーロ圏各
国中央銀行が設ける「最後の貸し手機能(LLR)」として、各国中
央銀行の責任(リスク負担)で金融システム不安を抑えるために、
金融機関に資金供給するシステムである。このため、ギリシャの金
融機関の資金調達コストは高くなると考えられる 2 。加えて、プ
ラートECB理事は「支払い能力がある健全行に限定すべきだ」と発
言しており、ギリシャでは金融システム不安が高まろう。
また、ギリシャ国債はECBの適格担保として需要があったが、そ
の需要が剥落するため、ギリシャ国債利回りは上昇しよう。
このようにギリシャにとってやや懲罰的な施策を実施することで、
ECBは新政権に緊縮財政路線の保持を促したと考えられる。背景に
は、「1 月ECB理事会で決定された国債等資産買入がユーロ圏諸国
の財政規律を緩める」とのECBへの批判を逸らす意図もあろう。
1 週間物資金供給オペ(MRO)と 1 ヶ月物等資金供給オペ(LTRO)は 0.05%、限界貸出ファシリティーの金利は 0.30%。
ELA による貸出金利の上乗せ金利は 1~2%と指摘されている。
今週のトピックス | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
② 欧州債務危機の再来の可能性は現時点では低い
QQE は長期戦に
ギリシャ新政権は国民の支持を背景にトロイカに債務負担の軽減
や緊縮財政の見直しを求める一方、バイトマン独連銀総裁が「ギリ
シャは支援条件の順守が必要。一国を救済すれば信認問題が他の加
盟国に波及する恐れがある」と発言するなど、トロイカはギリシャ
の要請を強く拒否している。トロイカによる金融支援の期限切れは
今月末に迫っており、交渉が決裂すればギリシャが財政面で苦境に
立たされる恐れもある。
仮にギリシャ国債がデフォルトする可能性が高まった場合には、
2011 年の欧州債務危機の再来が懸念されよう。欧州債務危機時に
は財政リスク(財政不安)の伝播からGIIPS諸国(ギリシャ、イタ
リア、アイルランド、ポルトガル、スペイン)の国債利回りが大き
く上昇した(第 1 図)。
しかし、現在では欧州債務危機時とは異なって、GIIPS諸国は財
政健全化を進めてきたことから、財政収支が改善している(第 2
図)。加えて、ポルトガルやアイルランドは既に金融支援プログラ
ムを卒業している。更に、ESM(欧州安定メカニズム)/EFSF(欧
州金融安定ファシリティ)やEFSM(欧州金融安定メカニズム)に
よってセーフティーネットも構築されている。こうしたことから、
財政リスクの伝播は生じないと考えられる。実際に、ギリシャ国債
利回りは上昇している一方、その他のGIIPS諸国の国債利回りは低
下している。
第 1 図:GIIPS 諸国 10 年国債利回り
第 2 図:GIIPS 諸国等財政収支
(%)
(%)
(%)
20
40
15
30
10
20
予測
5
0
-5
-10
5
10
-15
0
0
08/1
09/1
10/1
11/1
12/1
13/1
14/1
15/1
-20
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
(年/月)
イタリア
スペイン
ポルトガル
アイルランド
ギリシャ〈右目盛〉
(資料)Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成。
ギリシャ
フランス
アイルランド
イタリア
ポルトガル
2016
2018
(年)
スペイン
(資料)Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
また、欧州債務危機時には、フランスの銀行を中心にギリシャ向
け対外与信を相応に有していたことから、ギリシャ国債がデフォル
トした場合には、金融機関が大きな損失を受けて破綻するかもしれ
ないとの懸念が高まった。そのため、金融システム不安も各国に伝
播し、世界の金融市場に大きな混乱をもたらした。
だが、現在ではギリシャ向け対外与信は先進国で 0.2%に低下、
フランスでも 0.1%に低下している(第 4 図)。更に、ECBによる
資産査定(AQR)で、自己資本不足が生じているイタリアも 0.1%
3
今週のトピックス | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
に低下している。こうしたことから、金融システム不安の伝播も生
じないと考えられる。実際に、ユーロ圏短期金融市場の金利はマイ
ナス圏で安定している(金融システム不安が高まる場面では、短期
金利は信用リスクが意識されて上昇する)。
第 3 図:GIIPS 諸国 10 年国債利回り
第 4 図:為替先物インプライ金利
(%)
(%)
6月理事会
2.5
9月理事会
1月理事会
0.4
2.0
0.2
1.5
0.0
1.0
-0.2
0.5
-0.4
0.0
05/3
06/9
08/3
先進国
09/9
スペイン
11/3
フランス
12/9
イタリア
(資料)BIS より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成。
14/3
(年/月)
14/1
14/3
14/5
14/7
1W
14/9
1M
14/11
15/1
(年/月)
3M
(資料)Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成。
従って、仮にギリシャの財政破綻が意識される場合でも、各国に
財政リスクと金融システム不安の伝播は生じないと考えられ、欧州
債務危機の再来の可能性は現時点では低いと考えられる。
③ 結語
ECBはギリシャ政府に緊縮財政路線の保持を促すために実施した
と考えられる。しかし、ギリシャ新政権はトロイカに債務負担の軽
減や緊縮財政の見直しを求める姿勢は崩していないことから、トロ
イカとの金融支援の交渉が決裂し、ギリシャが財政面で困難な状況
に陥る恐れもある。
だが、ギリシャを起点とした欧州債務危機のような財政リスクの
伝播、金融システム不安の伝播の可能性は現時点では低い。ギリ
シャ一国の問題に終始し、ユーロの信任も維持されることがメイン
シナリオである。実際に、ユーロ圏の短期金融市場や債券市場は一
貫して安定している。
もっとも、ユーロドルについては、ギリシャ問題を短期的にユー
ロ売り材料視する市場参加者もいると考えられる。加えて、スペイ
ンでは、緊縮財政に反対する 10 万人規模のデモ(主催者は 30 万人
と発表)が実施され、反緊縮を掲げる野党ポデモスの支持率が首位
に立つことがある。ユーロ圏諸国に緊縮財政に反対する機運が伝播
していくと、5 月のポルトガル選挙や 11 月のスペイン選挙で政治
リスクが強く意識され、ユーロ売り材料視される可能性にも留意し
たい。
アナリスト
4
今週のトピックス | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
天達 泰章
(2) 米国金融政策 利上げの意向を言い続ける忍耐強さ
各国中銀が積極的に金
融緩和の動きに出てい
るが、Fed は、利上げ
開始の意向を保持
世界各国で協調利下げが始まったのだろうかと思うほど、金融緩
和のニュースが相次いでいる。事前に予想されていない政策変更も
あり、何が起きているのだろうか? また、その各国中銀の積極的
な緩和の動きの中でも、Fed高官たちは、利上げに進む意向を言っ
ている。Fedは利上げ開始、米国以外ROW(Rest of the World)は緩
和という構図は変わらないとみてよいのかについて、見方を示して
おきたい。
第 1 表: 相次ぐ金融緩和の動き
日付
国名
政策の動き
1/8
英国
全会一致で政策金利据え置き決定(利上げ主張消滅)
1/15
インド
政策金利を 25Bp 利下げ、7.75%に=緊急会合=
1/15
スイス
マイナス金利▲0.75%に拡大、対ユーロ相場 1.20 上限撤廃
1/19
デンマーク
15Bp 利下げ CD▲0.2%。1/22、1/29 に 15Bp 追加利下げ
1/20
トルコ
1 週間のレポ金利を 50Bp 引き下げて 7.75%、
1/21
カナダ
25Bp 利下げ 0.75%に=予想外=
1/21
ブラジル;利上げ
政策金利を 50Bp 引き上げて 12.25%へ
1/22
ユーロ圏(ECB)
国債購入含む QE 開始決定
1/28
シンガポール
政策バンドの上昇の傾斜をより緩やかに変更=異例=
1/29
ニュージーランド
声明の利上げ文言削除(引き締めから中立への政策変更)
1/30
ロシア
政策金利を 5%へ 200Bp の引き下げ
2/3
オーストラリア
政策金利を 2.5%から 2.25%に 25Bp 利下げ=半分は予想せず
2/4
中国
預金準備率 0.5%引き下げ、大手金融機関標準で 19.5%に
2/4
ユーロ圏(ECB)
ギリシャ国債を担保として認める特例措置停止を発表
(資料)各中銀の公表資料、諸報道にもとづき、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成
① 相次ぐ金融緩和
世界経済に米国以外の
成長が弱すぎる問題
5
ROWの中銀が、急いで金融緩和を始めている。この動きに、先
般の国際通貨基金(以下、IMF)の世界経済見通し(以下、WEO:
World Economic Outlook)の改訂をみると違和感はない。
WEOは、10 月に発表された 2016 年の成長予測の数字が世界全体
で 3.8%であったが、1 月の改訂幅が▲0.3%という大きめの下方改
訂で、3.5%とされた。たった 3 ヶ月で、こうした下方改訂がなさ
れることが、緊張をもたらすのは当然である。世界経済の中立とさ
れる 4%にはるかに足りない。しかも、内容がかなり悩ましい。
今週のトピックス | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
第 2 表: IMF の世界経済見通し(WEO)
2015 年
(10 月予測比)
2016 年
(10 月予測比)
3.5
▲ 0.3
3.7
▲ 0.3
先進国・地域
2.4
0.1
2.4
0.0
米国
3.6
0.5
3.3
0.3
ユーロ圏
1.2
▲ 0.2
1.4
▲ 0.3
ドイツ
1.3
▲ 0.2
1.5
▲ 0.3
フランス
0.9
▲ 0.1
1.3
▲ 0.2
イタリア
0.4
▲ 0.5
0.8
▲ 0.5
日本
0.6
▲ 0.2
0.8
▲ 0.1
新興・途上国
4.3
▲ 0.6
4.7
▲ 0.2
▲ 3.0
▲ 3.5
▲ 1.0
▲ 2.5
中国
6.8
▲ 0.5
6.3
▲ 0.5
インド
6.3
▲ 0.1
6.5
0.0
ブラジル
0.3
▲ 1.1
1.5
▲ 0.7
南アフリカ
2.1
▲ 0.2
2.5
▲ 0.3
世界全体
ロシア
(資料)IMF のデータにもとづき、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成
まず、米国が大きめの上方改訂で 3.6%成長が見込まれ、ROWは
軒並みの下方改訂である。米国の 3.6%成長というのは、一般の予
測よりも高い。この米国の高い成長が実現できるかについて懐疑的
にみられるところがあろう。仮に世界経済が 3%台前半の成長に留
まるとなると、世界全体では、供給能力余剰(スラック)を抱え続
けることになる。それが、インフレ率の押し下げになることもみて
おかなくてはならない。
また、ROWの中でも、資源輸出に頼る国は、改訂幅が大きい。
こうした国々の中には、資源輸出で歳入が左右されるところがあり、
財政運営面の問題を持つことになる。
今回のWEOでの注目のひとつは、2016 年の中国の経済見通しで
ある。2015 年の 6.8%の数字も、おそらく中国の公式目標を下回る
だろうが、2016 年の 6.3%という数字は、中国の減速がさらに進む
ことを見込ませる。中国の経済成長に依存する国は、調整を求めら
れる可能性がある。
世界経済がやや急に減速し、近年の成長のエンジンであった国々
に弱い面があるとなると、迅速に政策対応が動くことに違和感はな
いといえる。加えて、ECBの果敢な緩和政策が為替相場を動かすこ
とへの対応も要るであろうし、各国中銀が次々に行動を起こすこと
は、首肯できる。
6
今週のトピックス | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
② 変容する Fed の忍耐強さ
利上げに進めるのに、
利上げを待っている
「忍耐強さ」から、世
界経済の雲行きが怪し
い中で利上げの意向を
言う「忍耐強さ」への
変容
FOMCが言う忍耐強さ(patient)は、資産購入プログラムの購入
を終えて(俗にいうQE終了)、次は利上げであるが、その利上げ
開始を急がないというのが、その意味するところである。ところが、
ここへきて、それが、変容している。
米国の経済指標の中には、軟化方向のものが出ている。ROWの
経済状態は、上述の通りである。米国が利上げをすれば、それが
ROWへのストレスをかけることになりかねない問題がある。
PCE指数でみたインフレ率は、目標が2.0%に対して12月分で
0.7%である。予想インフレ率(注:FRBが示す5年先のブレーク
イーブンインフレ率)も、利上げ見通しを示した昨年の最後の
FOMCのときの12月17日に2.00%であったのが、1.75%まで低下し
ている。
第 3 図: 原油価格とともに低下している予想インフレ率
(ドル/バーレル)
(%)
125
2.70
110
2.50
95
2.30
80
2.10
65
1.90
50
1.70
35
14/1
14/2
14/3
14/4
14/5
14/6
原油価格(WTI) 〈左目盛〉
14/7
14/8
14/9
14/10
14/11
14/12
1.50
15/1
(年/月)
5年先の予想インフレ率=BEI= 〈右目盛〉
(資料)FRB、ブルームバーグのデータにより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成
1月27-28日のFOMC後のブラックアウトがあけて、地区連銀総裁
の発言が始まったが、セントルイス連銀のブラード総裁、クリーブ
ランド連銀のメスター総裁と、利上げ開始に進むことを前提とする
発言をしている。今のFedの忍耐強さは、こうした状況下でも、利
上げ開始を放棄しないという意味になっている。
米国経済は着実に成長していて、相応に雇用も増えている。副作
用を伴う懸念のある強過ぎる緩和を続ける必要はない。それが、最
大の忍耐強さの源であろう。もうひとつ勘案すべきことがある。こ
こで、正常化を放棄すると、この後、何かあったときに金融緩和の
手段が乏しいことである。米国経済に対応手段がなく、立ち往生す
る事態は、ROWにとっては極めて厳しいものであろう。それは、
米国にも悪影響が戻ってくる。それを回避するためにも、米国の金
融政策の正常化は必要である。忍耐強く、Fedは、正常化、すなわ
ち、利上げ開始を言い続けるとみられる。
シニアマーケットエコノミスト
7
今週のトピックス | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
鈴木 敏之
(3) 豪中銀利下げ実施、経済成長に豪ドル安が必要
政策金利の引き下げを
決定
オーストラリア準備銀行(以下、RBA)は定例理事会を開催し、
政策金利(キャッシュレートの誘導目標)を 2.5%から 2.25%に引
き下げた。利下げは 2.75%から 2.50%に引き下げた一昨年 8 月以来
のこと。政策金利の引き下げを受けて、豪ドルは発表前の 0.78 台
前半から、一時は 2009 年以来となる 0.76 台半ばまで下落して推移
し、対円でも 91 円台後半から 89 円台まで約 2 円も急落した。(第
1 図)
第 1 図: 豪ドルと政策金利の推移
8
(米ドル)
(%)
1.2
1.1
7
1
6
0.9
5
0.8
4
0.7
3
0.6
政策金利<左目盛>
2
2008
豪ドル<右目盛>
0.5
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年)
(資料)Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
RBAは声明文で、2014 年の消費者物価指数(以下、CPI)につい
て、「ここ数年で最も伸びが鈍化した」とし、その主な理由として
原油価格の下落や炭素税廃止をあげた。また、前回と同様に「賃金
価格が抑えられていることから為替相場が下落したとしても、CPI
は今後もターゲットレンジに沿って推移する」との見方を維持した。
また、労働市場について、前回の会合では、「失業率が一貫して
低下するには時間を要する見込み」としていたが、今回は「失業率
のピークは従来の予想よりやや高くなる見込み」と評価を引き下げ
た。
豪ドル水準については、「豪ドルはこの数ヶ月、米ドルの上昇に
より著しく下落したが、通貨バスケットでは対米ドルほどではない」
としている。また、「特に、主要商品価格の下落を踏まえると、豪
ドルはファンダメンタルから得られる水準を依然として上回ってい
る」と言及。「バランスの取れた経済成長には更なる通貨安が必要
になる可能性がある」とした。
8
今週のトピックス | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
第 2 図: 豪ドル(対ドル)と豪ドル貿易加重平均指数の推移
0.9600
(米ドル)
(指数)
0.9400
74.00
72.00
0.9200
70.00
0.9000
68.00
0.8800
66.00
0.8600
0.8400
64.00
0.8200
62.00
0.8000
豪ドル(対ドル)<左軸>
豪ドル貿易加重平均指数
60.00
0.7800
0.7600
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
58.00
(月)
(資料)Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
そして、「今日の理事会では、最新の情報や更新された見通しを
考慮して追加利下げが適切だと判断した」としている。
今後の見通し
9
28 日に発表された第 4 四半期のCPIは前年比 1.7%上昇とオースト
ラリア準備銀行(以下、RBA)が定めるインフレターゲット(2~
3%)を下回った。一方、コアインフレ率を示すトリム平均値は前
年比 2.2%上昇と伸び率の鈍化こそみられたものの、大幅な下落と
はならなかった。また、直近の豪ドルは対ドルで 0.77 台まで下落
するなど、RBAのスティーブンス総裁が下落可能性を示した「0.75」
という数字に近づいており、当方では現時点で利下げを強いられる
ような状態ではないと予想していた。
しかし、今回の声明ではCPIや雇用統計に加え、鉄鉱石価格下落
による交易条件の悪化を示し、バランスとのれた経済成長のために
は更なる豪ドル安の必要性を挙げた。加えて、最近はあまり言及さ
れることがなかった通貨バスケットにおける豪ドル水準についても
注意を払うなど、豪ドル水準への言及が目立った。原油価格下落に
よる物価低下を理由に世界的に金融緩和が行われているなか、RBA
もその例外ではなく相対的評価により通貨高を嫌う姿勢がみられた
と言ってよいだろう。また、豪州の主要輸出品である鉄鉱石価格は
引き続き下落しており、これまで下落を続けてきた豪ドル水準でさ
えも補えない状況になっていることが示された。軟調な豪州経済を
理由に、引き続き豪ドル安を志向する可能性があり、市場でも年前
半の追加利下げを織り込んでいる。引き続き緩和的な姿勢を強める
とみられ、豪ドルは軟調に推移しよう。
もっとも、豪ドルは利下げ発表直後の下落幅をすでに戻している
ことに加え、従前より豪ドルの軟調推移を見込んでいたため予想レ
ンジは維持する。
今週のトピックス | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
今後、鉄鉱石を始めとする商品価格の動向次第では緩和姿勢を強
める可能性もあり、その際は予想レンジの見直しを実施する。
AUD/USD
AUD/JPY
2 月~3 月
4 月~6 月
7 月~9 月
10 月~12 月
0.73~0.83
87~97
0.71~0.81
86~96
0.70~0.80
85~95
0.68~0.78
84~94
リサーチアシスタント
10 今週のトピックス | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
福島 由貴
(1) ドル円:雇用統計後も方向感は出づらいと予想
今週のドル円は 117.18 で寄り付いた。今週は予想を下回る米国
の経済指標が散見されたため、為替相場への影響が強い米国の 2 年
物国債の利回りは概ね 0.5%近傍で推移。為替市場でドル高の動き
に一服感もみられる中、ドル円の上値も抑えられ、週間高値は 118
円ちょうどにとどまった。ギリシャを巡る報道を受け、時折リスク
回避姿勢が強まる場面がみられると、円買いが優勢となり、ドル円
が軟化する場面もみられた。特に、市場予想に反してオーストラリ
ア準備銀行(中銀)が利下げを決定すると、豪ドル円相場が急落。
その影響から、ドル円も 117 円を割り込み、116.87 の週間安値を記
録している。とは言え、今週は市場参加者が重大な関心を寄せてい
る原油先物相場が不安定ながらも、下げ渋る動きもみられたため、
市場心理に一定の安心感も広がった(第 1 図)。実際、米国では
S&P500 株価指数が 1 月の下げ幅を概ね取り返し、VIX指数も 20%
割れへ低下。米国債も 10 年債は、先週末の 1.6%台半ばから 1.8%
台まで上昇し、円買いも迫力を欠いた。結局、上下ともに攻め手を
欠く中、雇用統計を控え、週末にかけては動意が乏しくなった。
(2 月 6 日正午のドル円スポット相場:117.39~41、第 2 図)。
今週のレビュー
第 1 図:WTI 原油先物相場
120
第 2 図:今週のドル円相場の動き
(ドル)
(円)
119.0
↑円安
110
100
118.0
90
80
70
117.0
60
50
↓円高
40
116.0
2/2
30
14/1
14/3
14/5
14/7
14/9
14/11
15/1 (年/月)
(資料)NYMEX より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
来週の見通し
2/3
2/4
2/5
2/6
(月/日)
(資料)米労働統計局より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
来週のドル円は、本日発表される米国の 1 月雇用統計の影響によ
り、左右されるだろう。ただ、雇用統計が予想を上回った場合も、
以下 2 点の理由からドル買いの勢いはそれほど続かない可能性が高
い。まず、市場の高い期待に反し、今月に入ってからだけでも、
ISM製造業景気指数や製造業受注、ADP雇用報告など予想を下回る
経済指標が相次いでいる。相対的にみれば、好調を維持している米
経済ではあるが、雇用統計だけを以って、一段のドルの上値追いと
はなりにくいだろう。また、雇用統計に対する市場の目線も高い。
例えば、12 月分も失業率が 5.6%(予想中央 5.7%)まで低下した
うえ、非農業部門の雇用者も 25.2 万人増(予想中央 24 万人)とい
ずれも予想より良好な結果となった。加えて、11 月分も 32.1 万人
11 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
から 35.3 万人へと上方修正されている。ただ、米国の物価や金融
政策の動向を占ううえで注目されたのは平均時給の伸びだが、こち
らについては、前月比が▲0.2%(予想中央は+0.2%)と強いネガ
ティブサプライズ。前年比も同様にプラス 1.7%と予想中央 2.2%を
大きく下回った(第 3 図)。このため、物価の伸びの鈍さを象徴す
る結果とも受け取られ、雇用統計後、米国債利回りは低下。ドル円
相場も 119 円台から 118 円台へと反落し、その影響は翌週まで続い
ている。このため、値幅が広がるとすれば、やはり雇用統計が予想
を下回った場合のドル安円高サイドだろう。
雇用統計のほか、来週は米国の小売売上高にも注目が集まる。前
月 12 月分は、良好なクリスマス商戦から高まった期待に反し、予
想を下回り、ドル円を 116 円割れ目前へと押し下げている。これま
での原油価格の急落は、総合的にみればガソリン価格などエネル
ギーコストの低下を通じた消費へのプラス効果が大きいとされるな
ど、消費は好調な米経済の牽引役として期待が高い(第 4 図)。
2 ヶ月続けて予想を下回ると、ドル売りが強まるだろう。
尤も、米国の今後の金融政策を占ううえでは、今月予定されてい
るイエレン議長の議会証言(日程未定)への関心が高い。それまで
は、「年央にも正常化(利上げ)開始」との期待から、ドル円は底
堅さもみせるだろう。ギリシャ情勢を巡るヘッドラインリスク、原
油相場、米国の株式相場の不安定化の可能性、注目度が高い経済指
標を控えていることなどを念頭に置けば、来週のドル円は今週より
も値幅が広がる可能性を想定する必要はある。ただ、方向性が出る
までには至らないと予想する。
第 3 図:米国の失業率と平均賃金の伸び(前年比)
5.0
第 4 図:米国のレギュラーガソリン価格の推移
(%)
(%)
平均時給の伸び
失業率(右目盛)
4.5
11
10
(ドル/ガロン)
4.5
4.0
4.0
9
3.5
8
3.0
7
2.5
6
2.0
5
2.0
1.5
4
1.5
3.5
3.0
1.0
08
09
10
11
12
13
14
3
15 (年)
(資料)International Continental Exchange より、三菱東京 UFJ 銀行グローバル
マーケットリサーチ作成
2.5
1.0
08
09
10
11
12
13
14
15 (年)
(資料)米労働統計局より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
尚、来週はG20(20 カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)が開
催される。メディアからのインタビューに対し、これまでのドル高
に関して、ルー財務長官が特に問題視していない様子がこれまで報
じられている。しかし、米財務省が昨年 10 月にまとめた為替報告
書(Report to Congress on International Economic and Foreign Exchange
Policies)の中で、過去 20 年平均よりもまだ低位だとした米ドルの
12 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
名目実効相場は、その 20 年平均を上回ってきた。ドル高は、米国
の輸出競争力の低下や貿易赤字の拡大、物価の伸びの一段の鈍化と
いったマイナス面も少なくないだけに、為替相場に関する要人発言
には、注意が必要だろう。
第 5 図 :米ドルの名目実効相場(点線は過去 20 年間の平均線)
140
(ドル高)
130
120
110
100
90
(ドル安)
80
94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
(資料)FRB(Nominal indexes の Broad)より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
予想レンジ
13
14
15(年)
ドル円:115.50 ~ 119.00
チーフアナリスト
13 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
内田 稔
(2) ユーロ:良好な経済指標を受けて堅調な推移を予測
今週のレビュー
今週のユーロドル相場は、ECBによるギリシャ国債の適格担保除
外によって下落する場面もあったが、当面の材料出尽くし感から、
上昇した(第 1 図)。
第 1 図: 今週の為替相場推移
(ドル)
1.155
↑ユーロ高
1.150
1.145
1.140
1.135
1.130
↓ユーロ安
1.125
2/2
2/3
2/4
2/5
2/6
(月/日)
(資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
週初にユーロドルは 1.13 付近で寄り付いた。1 月ECB理事会での
国債等資産買入の決定など当面の材料出尽くし感からユーロが買い
戻された流れを受けて、週初はユーロ高方向に推移した。3 日には、
原油価格上昇を受けた欧州株価上昇や、独財務省がギリシャとの財
務相会談の日程調整をしているとの報道を受けてギリシャ支援期待
が高まったこと、ギリシャの債務減免要求撤回発言などを手掛かり
に、ユーロドルは 1.1485 まで上昇した。
4 日にECBがギリシャ政府の発行または保証する証券を対象とす
る特例措置の解除(ギリシャ国債の適格担保除外)を発表したこと
を受けて急落し、ユーロドルは 1.1304 まで下落した。
しかし、5 日には、独 12 月製造業受注の予想比上振れや、欧州
委員会による 2015 年ユーロ圏経済見通しの上方修正(実質GDP+
1.3%<11 月+1.1%>)、ECBによるギリシャ中銀の緊急流動性支
援の上限拡大報道などが買い材料視され、ユーロドルは 1.1499 ま
で上昇した。
第 2 表: 相場に影響した主な経済指標
発表日
2/5
経済指標名
独 12 月製造業受注(前月比)
結果
+4.2%
市場予想
+1.5%
前回
▲2.4%
(資料) Bloombeg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
来週の見通し
来週は、独 12 月輸出(2/9)、ユーロ圏 12 月鉱工業生産(2/12)、
ユーロ圏 4QGDP速報(2/13)等の経済指標が発表される。独 12 月
製造業受注は、ユーロ安を受けた輸出の増加もあって良好な結果と
なった。また、欧州委員会によるユーロ圏経済成長見通しはユーロ
安と原油安を受けて上方修正されている。来週発表される景気指標
もユーロ圏景気の持ち直しを示す良好な結果となることが期待され
る。
ECBは、ギリシャ政府に緊縮財政路線の保持を促すことを企図し
て、2 月 4 日にギリシャ国債の適格担保除外を実施した(詳細は今
14 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
週報トピックス「欧州債務危機再来の可能性は現時点では低い」を
参照)。トロイカ(EU、IMF、ECB)はギリシャの新政権による債
務減免等の要請を受け入れない姿勢を示している。一方、チプラ
ス・ギリシャ首相は「もはや欧州の命令には従わない。宿題をやり
なさいとの説教を聞き入れる惨めなパートナーでもない」と発言す
るなど、トロイカとギリシャ政府の主張は平行線にある。2 月 12
日の欧州閣僚理事会(ブリュッセル)等を受けた各国要人の発言を
材料にしたユーロ売りには留意したい。
従って、来週のユーロドルは、ギリシャ問題を受けたユーロ売り
仕掛けから下落する場面もあろうが、良好なユーロ圏経済指標を受
けて堅調な推移を予測する。ユーロ堅調地合いの中では、本日の米
雇用統計が予想を大きく下回った場合に、ユーロ買いが一時的に上
伸することも考えられる。なお、中期的には、ドルとユーロの金利
差拡大から、ユーロドルはパリティ(1 ユーロ=1 ドル)を下回る
可能性をみている。
予想レンジ
ユーロドル:1.1350 ~ 1.1650
ユーロ円:132.00 ~ 138.00
アナリスト
15 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
天達 泰章
(3) 豪ドル:追加緩和織り込み済、横ばい圏にて推移しよう
今週のレビューと
来週の見通し
今週の豪ドルは、0.778 近辺で寄り付くと、0.78 台までじり高に
推移した。そうしたなか 3 日に開催されたオーストラリア準備銀行
(以下、RBA)定例理事会では、一昨年 8 月以来の利下げを決定。
政策金利を 2.5%から 2.25%に引き下げた(トピックス参照)。こ
れを受けて、豪ドルは発表前の 0.78 台前半から、一時は 2009 年以
来となる 0.76 台半ばまで下落し、対円でも 91 円台後半から 89 円台
まで約 2 円も急落する場面がみられた。しかし、豪ドルは対ドル、
対円共に下げ幅を戻すと利下げ発表前の水準まで上昇する展開と
なった。その後 5 日に発表された 12 月の豪州小売売上高が市場予
想を下回った場面でも、豪ドルは 0.77 台半ばへと下落したものの、
再び値を戻すと 0.7800 を挟んだ値動きが続いている。
(6 日正午のスポット相場:0.7815-0.7816、第 1 図)。
第 1 図: 今週の為替相場推移
(ドル)
0.790
↑豪ドル高
0.785
0.780
0.775
0.770
0.765
0.760
↓豪ドル安
2/2
2/3
2/4
2/5
2/6
(月/日)
(資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
RBAは 6 日に発表した四半期金融政策報告の中で、成長率やイン
フレ率の見通しを下方修正した(第 2 表)。成長率については非鉱
業部門への投資や消費の伸び悩みを、インフレ率については原油価
格の下落や軟調な労働市場を下方修正の要因として挙げた。また、
労働市場についても、失業率は今後も上昇する見込みで、ピークを
つけるのが後づれする見通しであることを示している。こうした理
由から 2 月 3 日の利下げは適切であり、利下げが需要を創出すると
言及した。
第 2 表: RBA の見通し
(資料) RBA より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
16 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
また、豪ドル水準についても、商品価格の下落からすると依然と
して高いと繰り返している。2 月 3 日の理事会後に発表された声明
文でも、商品価格の下落を懸念材料としており、鉄鉱石価格を始め
とする価格下落が以前にも増して豪州経済の懸念事項となっている
ことが伺える。スティーブンス総裁は、豪ドル水準について一昨年
は 0.85 近辺が望ましいと発言していたが、昨年は 0.75 近辺が望ま
しいと水準を下げた。当方は、2 月 3 日の理事会で金利を据え置く
と予想していたが、その理由の一つに当時の豪ドル水準が 0.77 近
辺とスティーブンス総裁の言及した水準に近づいていたことを挙げ
ていた。しかし、今回の一連の内容を踏まえれば、更なる豪ドル安
を志向する可能性が低くない。その後も鉄鉱石価格は下落を続けて
おり、商品価格の動向次第では緩和を強める可能性もあろう。
もっとも、豪ドル相場に関して言えば年前半の追加利下げを既に
織り込んでいるものの、安値から反発し 0.78 を挟んで推移してい
る。来週は 1 月の豪州雇用統計を控えているが、RBAの声明や四半
期金融政策報告のなかで失業率が当面高水準にて推移することが示
されており、織り込み済みと言えよう。豪ドルへの影響は限定的と
みられ、来週の豪ドルは横ばい圏での推移を予想する。
予想レンジ
対ドル:0.7700 ~ 0.7950
対円:90.00 ~ 93.50
リサーチアシスタント
17 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
福島 由貴
(4) 人民元:人民元は現水準を中心としたレンジ推移を予想
今後のレビューと
来週の見通し
今週の人民元は 6.26 付近で寄り付いた。前週、ドル高局面にお
ける香港オフショア市場(CNH)の動きにつれて 6.25 近辺へ水準
を切り下げた流れを引き継いで、週初の人民元も 1 月の製造業PMI
の冴えない結果を嫌気した上海総合指数の下落を材料に、6.26 挟み
の軟調推移が続いた。だが、6.26 付近では底堅く次第に上昇。6 日
には対ドル基準値が前日比元高水準となる 6.1261 へ設定されたこ
とを受け、6.24 近辺での推移となっている。
第 1 図:人民元相場推移
(元)
6.30
6.25
6.20
6.15
6.10
6.05
対ドル基準値
一日の変動許容制限
6.00
5.95
11/1
12/1
1/1
2/1
(資料) Reuters、Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
1 月の製造業PMIは 49.8 となり、景況の分岐である 50 を割り込
んだ。50 を下回るのは 2012 年 9 月以来となる。項目別では、生産
(52.2→51.7)、新規受注(49.1→48.4)など主要項目が総じて低下。
但し、製造業PMIはGDP成長率との相関はそれほど強くない。その
為、今後の景気鈍化を指しているとは一概に言えないが、少なくと
も景況感が改善しないことで、市場では中国景気先行きへの懸念が
強まることとなった。
第 2 図: 製造業 PMI 推移
(%)
65
製造業PMI
生産
新規受注
雇用
60
55
50
45
10/1
10/9
11/5
12/1
12/9
13/5
(資料) 国家統計局より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
18 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
14/1
14/9
(年/月)
こうしたなか、中国人民銀行は 4 日に預金準備率の 0.5%引き下
げを発表した。これまで中国人民銀行は小型・零細企業向け貸出残
高が一定割合以上の商業銀行を対象にするなど、部分的な預金準備
率の引き下げは実施してきたが、全体の引き下げは 2012 年 5 月以
来となる。中国の準備預金残高は約 23 兆元と推計される為、0.5%
の引き下げは約 6000 億元の流動性供給効果があると推察される。
引き下げの実施の背景として、主要国の中銀が相次いで金融緩和
に舵をきったことが影響したとの見方がある。新華社は、中国人民
銀行幹部による、今回の引き下げは金融政策スタンスのシフトでは
なく、資金の流動性や経済の状況を踏まえた措置であるとの見方を
報じている。
加えて、当方は製造業PMIが冴えない結果となった他、景気鈍化
を受けて低インフレが続いていることも理由であると見ている。中
国人民銀行による金融政策の緩和スタンスがより明確になったと言
うことが出来よう。
第 3 図:預金準備率推移
23
第 4 図: マネタリーベース推移
(%)
30
(兆元)
マネタリーベース-M0
マネタリーベース
25
21
20
19
15
17
10
5
15
10/1
10/7
11/1
11/7
12/1
12/7
13/1
13/7
14/1
14/7 15/1
(年/月)
(資料)中国人民銀行より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
0
2004年
2006年
2008年
2010年
2012年
2014年
(資料)中国人民銀行より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
もっとも、社会融資総量や固定資産投資の推移からは、企業の設
備投資が伸び悩んでいる様子が伺える為、今回の預金準備率引き下
げによる経済効果には疑問が残る。中国ではこれから春節や全国人
民代表大会(全人代)が控えており、次の金融政策変更のタイミン
グは 3 月後半以降となろう。第 1 四半期の経済指標が出揃う 4 月上
旬の動向には注意が必要だ。
足もとの人民元は軟調推移が続いているが、対ドル基準値は 6.13
台での設定が続いており、当局は人民元相場の安定推移を望んでい
ると見られる。来週の人民元は対ドル基準値が現水準で安定推移す
るなか、現水準を中心とした推移が継続すると見ている。
予想レンジ
ドル人民元:6.2300 ~ 6.2700
人民元円:18.50 ~ 19.00
アナリスト
19 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
関谷 菜摘
来週の主な経済指標
9 日 (月)
10 日 (火)
8:50
15:00
15:00
10:30
10:30
0:00
0:00
4:00
8:50
9:30
9:30
19:00
22:30
22:30
0:00
19:00
19:00
22:30
0:00
経常収支(12 月・億円)
景気ウォッチャー調査-現状(1 月)
景気ウォッチャー調査-先行き(1 月)
消費者物価指数(前年比、1 月)
生産者物価指数(前年比、1 月)
マネーサプライ M2(1 月)
市場休場
卸売売上(前月比、12 月)
卸売在庫(前月比、12 月)
財政収支(1 月・億ドル)
機械受注(前月比、12 月)
雇用者数変化(1 月・万人)
失業率(1 月)
鉱工業生産(前月比、12 月)
新規失業保険申請件数(2/7・万件)
小売売上高(前月比、1 月)
企業在庫(前月比、12 月)
貿易収支(季調済、12 月・億ユーロ)
GDP(前年比、4Q 速報)
輸入物価指数(前年比、1 月)
ミシガン大消費者信頼感指数(2 月速報)
9:30
18:00
22:20
22:00
19:30
7:30
3:30
豪
ユ
米
米
英
豪
米
スティーブンス・オーストラリア準備銀行総裁講演
コスタ・ポルトガル中銀総裁 / プラート・ECB 専務理事講演
ラッカー・リッチモンド連銀総裁講演
フィッシャー・ダラス連銀総裁講演
インフレーションレポート
スティーブンス・オーストラリア準備銀行総裁挨拶
フィッシャー・ダラス連銀総裁講演
ユ
G20 財務相・中央銀行総裁会議(~10 日)
欧州議会本会議(~12 日)
米
ユ
米
ユ
ユ
米
日
3 年債入札
2 年債入札(ドイツ)
10 年債入札
EU 首脳会議(~13 日)
3 年債入札(イタリア)
30 年債入札
5 年債入札
11 日 (水)
12 日 (木)
13 日 (金)
14 日 (土)
予想
3,586
45.5
日
日
日
中
中
中
日
米
米
米
日
豪
豪
ユ
米
米
米
ユ
ユ
米
米
1.0%
▲ 3.7%
12.1%
0.1%
▲ 26
2.3%
▲ 0.50
6.2%
0.3%
▲ 0.4%
0.2%
0.8%
98.1
中央銀行関連
9 日 (月)
10 日 (火)
11 日 (水)
12 日 (木)
13 日 (金)
14 日 (土)
その他
9 日(月)
10 日(火)
11 日(水)
12 日(木)
13 日(金)
3:00
19:35
3:00
19:00
3:00
12:45
※市場予想は Bloomberg 調査中央値
時刻は日本時間
*印は作成日(2/6)現在で未確定のもの
20 来週の経済指標・イベント | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
前回
4,330
45.2
46.7
1.5%
▲ 3.3%
12.2%
▲ 0.3%
0.8%
19
1.3%
3.74
6.1%
0.2%
27.8
▲ 0.9%
0.2%
200
0.8%
▲ 5.5%
98.1
マーケットカレンダー
月
火
2015/2/9
水
10
中/貿易収支(8 日、1 月)
米/卸売在庫・売上(12 月)
日/国際収支速報(12 月)
中/消費者物価指数(1 月)
対外対内証券売買契約
生産者物価指数(1 月)
状況(1 月)
マネーサプライ M2(1 月)*
木
11
米/財政収支(1 月)
米/小売売上(1 月)
企業在庫(12 月)
ユーロ圏/鉱工業生産(12 月)
英/インフレーションレポート
日/機械受注(12 月)
豪/雇用統計(1 月)
景気ウォッチャー調査(1 月)
G20 財務相・中央銀行総裁会議
(~10 日) 米・リッチモンド連銀総裁講演
欧州議会本会議(~12 日)
米・3 年債入札
16
日/GDP 速報(4Q)
米・ダラス連銀総裁講演
米・10 年債入札
東京市場休場
17
金
12
米・30 年債入札
EU 首脳会議(~13 日)
18
13
米/輸出入物価指数(1 月)
ミシガン大消費者信頼感
指数速報(2 月)
ユーロ圏/貿易収支(12 月)
GDP 速報(4Q)
米・ダラス連銀総裁講演
19
20
米/NY 連銀景況指数(2 月)
米/FOMC 議事要旨
米/フィラデルフィア連銀景況
ユーロ圏/製造業 PMI 速報
証券投資収支(12 月)
(1/27,28 分)
指数(2 月)
(2 月)
独/ZEW 景況指数(2 月)
住宅着工件数(1 月)
景気先行指数(1 月)
サービス業 PMI 速報(2 月)
日/日銀金融政策決定会合
建設許可件数(1 月)
ユーロ圏/ECB 理事会議事録
(~18 日)
生産者物価指数(1 月)
(1/22 分)
鉱工業生産(1 月)
経常収支(12 月)
豪/RBA 議事要旨(2/3 分)
設備稼働率(1 月)
日/日銀金融経済月報(2 月)
貿易収支速報(1 月)
英/MPC 議事録(2/4, 5 分)
日/日銀金融政策決定会合
日銀総裁定例会見
ユーロ圏財務相会合
米市場休場
EU 経済・財務相理事会
23
中国春節休暇(~24 日)
24
米・30 年 TIPS 債入札
25
米/中古住宅販売(1 月)
米/ケース・シラー住宅価格
米/新築住宅販売(1 月)
独/Ifo 景況指数(2 月)
指数(12 月)
日/日銀金融政策決定会合
CB 消費者信頼感指数(2 月)
議事要旨(1/20, 21 分) ユーロ圏/消費者物価指数
確報(1 月)
米・2 年債入札
3/2
米/個人所得・消費支出(1 月)
建設支出(1 月)
ISM 製造業景気指数(2 月)
ユーロ圏/失業率(1 月)
消費者物価指数速報(2 月)
27
米/GDP 改定(4Q)
シカゴ PM 景況指数(2 月)
FHFA 住宅価格指数(12 月) 日/完全失業率(1 月)
ユーロ圏/マネーサプライ M3
家計調査(1 月)
(1 月)
消費者物価指数
欧州委員会景況指数(2 月)
(東京都区部 2 月、全国 1 月)
鉱工業生産速報(1 月)
住宅着工件数(1 月)
米・アトランタ連銀総裁講演
米・7 年債入札
米・5 年債入札
3
26
米/消費者物価指数(1 月)
耐久財受注(1 月)
4
米・クリーブランド連銀総裁講演
5
6
米/自動車販売(2 月)*
米/地区連銀経済報告
米/製造業受注指数(1 月)
米/雇用統計(2 月)
ユーロ圏/生産者物価指数(1 月)
ADP 雇用統計(2 月)
ユーロ圏/ECB 理事会
貿易収支(1 月)
加/GDP(4Q)
ECB 総裁定例会見
消費者信用残高(1 月)
ISM 非製造業景気指数(2 月)
豪/RBA 理事会
ユーロ圏/小売売上(1 月)
英/MPC(BOE 金融政策委員会) ユーロ圏/GDP 速報(4Q)
英/MPC
日/景気動向指数速報(1 月)
中/製造業 PMI(1 日、2 月)
日/法人企業統計(4Q)
米・フィラデルフィア連銀総裁退任
(1 日) 米・クリーブランド連銀総裁講演
*印は作成日(2/5)現在で日程が未確定のもの
21 マーケットカレンダー | 平成 27(2015)年 2 月 6 日
(BOE 金融政策委員会、~5 日)
豪/GDP(4Q)
米・カンザスシティ連銀総裁講演
中・全国人民代表大会開幕
米国夏時間(8 日~)
照会先:三菱東京UFJ銀行 市場企画部 グローバルマーケットリサーチ
チーフアナリスト 内田 稔
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22 FX Weekly | 平成 27(2015)年 2 月 6 日