感染症ニュース(2015年1月20日号)発行

感染症ニュース
2015 年 1 月 27 日 14:50
感染症ニュース
2015 年 1 月 27 日 14:50
1. エボラ出血熱の感染拡大
西アフリカの感染拡大ペースは大幅減速。WHO は「感染拡大の抑制に十分な態勢が整った」と発表。
世界保健機関(WHO)は 2015 年 1 月 23 日、西アフリカのリベリア・ギニア・シエラレオネに
おける疑い例を含むエボラ出血熱感染者が計 21,832 人に達し、8,690 人が死亡したと発表した。
WHO の発表によると、この 3 カ国におけるエボラ出血熱の感染拡大のペースは大幅に減速し、
国際社会の支援等により、感染拡大の抑制に十分な態勢が整ったとしている。
■図表 1:エボラ出血熱発生状況(2015 年 1 月 23 日発表、単位:人)
国名
感染者
死亡者
リベリア
ギニア
シエラレオネ
米国
英国
マリ
スペイン
ナイジェリア
セネガル
計
8,524
2,873
10,400
4
1
8
1
20
1
21,832
3,636
1,880
3,159
1
0
6
0
8
0
8,690
感染状況の
分類
感染拡大2
感染拡大
感染拡大
限定的3
限定的
流行終息4
流行終息
流行終息
流行終息
-
感染症危険情報1
の発出有無
○
○
○
-
出典:WHO 発表より弊社作成

米国では 1 月 19 日、エボラ出血熱の流行国に最近渡航した乗客が、ベルギーからニュー
ジャージー(New Jersey)州のニューアーク(Newark)国際空港に向かう米ユナイテッ
ド航空(United Airlines)の機内で不調を訴え、医療従事者が対応した。到着後、この乗
客は同州のハッケンサック大学医療センター(Hackensack University Medical Center)
に入院し、同便に乗り合わせた他の乗客と乗員は許可が出るまで機内で待機したとされる。
なお、米疾病予防管理センター(CDC)は、エボラ出血熱の感染経路を考慮すると、感染
した人が飛行機に搭乗しても、機内でウイルスが拡散する可能性は低く、乗り合わせた乗
客が感染するリスクは極めて小さいとしている。

感染拡大のペースには鈍化傾向がみられるが、リベリアとシエラレオネでは依然として新
たな感染者が確認されている。また、WHO の対策資金が不足しており、2 月半ばで枯渇
するとの見方もあり、予断を許さない状況である。
外務省 海外安全ホームページ (http://www.anzen.mofa.go.jp/) アクセス日:2015 年 1 月 27 日
「感染拡大」
:医療従事者等に限らず、一般市民における感染が確認され、新たな感染者が継続的に確認されている。
3 「限定的」
:海外からの渡航者や医療従事者等、限定された範囲で感染が確認されている。
4 「流行終息」
:WHO が流行終息を宣言した国。WHO では、直近の患者が治癒または死亡して以降、42 日間新たな
感染者が出ない場合に流行終息を宣言している。
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2.その他の主な感染症
① マレーシア : 洪水被害の発生に伴うレプトスピラ症等に対する注意喚起
□
マレー半島東部のクランタン(Kelantan)
・トレンガヌ(Terengganu)
・ペラ(Perak)・
パハン(Pahang)・ジョホール(Johor)州等の地域で、2014 年 12 月に発生した洪水被
害により衛生環境が悪化し、レプトスピラ症5等の感染例が増加している。同国保健省の
統計によると、2015 年 1 月 1 日から 20 日までにレプトスピラ症への感染例が 126 件(感
染疑い例は 753 件)
、メリオイドーシス(類鼻疽)6への感染例が 20 件確認されている。
【図表 2:レプトスピラ症・メリオイドーシス(類鼻疽)の感染状況(2015 年 1 月 1 日~20 日)*】
(単位:件)
感染症
レプトスピラ症
メリオイドーシス
クランタン
62(538)
5
トレンガヌ
28(43)
-
ペラ
22(126)
1
パハン
14(46)
13
ジョホール
1
注*:カッコ内の数値は感染疑い例。
□
今次洪水被害は、2014 年 12 月 30 日に被災者が約 25 万人に達した後、被災者の支援活
動や各種インフラの復旧活動等が進められ、避難者数は 1 月中旬までに 4,000~5,000 人
に減少したとされる。しかしながら、避難者数の減少にもかかわらず、被災地域でのレプ
トスピラ症やメリオイドーシスの感染者は増加しており、当局では注意を呼び掛けている。
② 中国・香港 : 鳥インフルエンザ A(H7N9)の人への感染拡大
□
中国では 2014 年 11 月以降、鳥インフルエンザ A(H7N9)の人への感染報告例が急増し
ている。現地報道、中国国家衛生・計画出産委員会、香港衛生防護中心、および世界保健
機関(WHO)によると、11 月~12 月に感染例が報告された地域は広東省・浙江省・江蘇
省・福建省・上海市・新疆ウイグル自治区の 6 つの地域であり、11 月に 9 件、12 月に 19
件が報告されている。また、2015 年 1 月以降はさらに増加しており、広東省・浙江省・
福建省・上海市・江西省・山東省で 25 日までに少なくとも 41 件の感染例が確認され、こ
のうち特に感染例が急増しているのは、広東省 19 件・福建省 15 件となっている。
【図表 3:中国における月別鳥インフルエンザ A(H7N9)の感染状況*(2014 年 6 月~12 月)(単位:件)】
20
15
10
5
0
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
注:*月別の感染状況は、中国国家衛生・計画出産委員会により発表された感染確認件数。地域別の感染状況は、
WHO、各省・市・自治区衛生当局、香港衛生防護中心および現地報道により報告された感染確認件数。
以上
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レプトスピラ症のウイルスは、主にネズミ・豚・犬・牛等の排尿に汚染された土壌・水等に接触した場合に、傷口や粘膜から感染
する。感染すると、風邪等と類似した頭痛・筋肉痛・発熱等の症状が現れ、重症化すると黄疸や出血がみられる。早期に治療し
ない場合は致死率が 20~30%といわれている。予防接種を受けることが可能で、治療には抗生物質が有効である。
6 メリオイドーシスは、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)に起因する人獣共通感染症で、熱帯地域の土壌や水に分布し、
吸入・摂取や傷口から感染する。人から人への感染は稀だが、血液や体液を介して感染する可能性がある。感染しても発症しな
い事例が多いが、発症した場合は肺炎・髄膜脳炎・敗血症・結核等を起こす。潜伏期間は通常 1~21 日であるが、数ヶ月~数
年に及ぶこともある。適切な治療をしない場合は発症 48 時間以内の致死率が 90%に達するといわれ、特に、糖尿病・腎機能不
全・慢性肺疾患・免疫不全の基礎疾患がある場合は重症化しやすい。予防接種はなく、治療には抗生物質が有効である。
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