東京電力株式会社福島第一原子力発電所に係る

第9回事前対策等検討チーム会合
資料4
東京電力株式会社福島第一原子力発電所に係る
原子力災害対策の在り方について(案)
平成26年12月22日
1.背景と目的
東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「東電福島第一原子力発
電所」という。)に設置されている原子炉施設は、施設の状況に応じた適切
な方法により管理を行うことが特に必要であるとして、平成24年11月、
原子炉等規制法第64条の2第1項の規定に基づき、特定原子力施設に指
定された。原子力災害対策指針(以下「指針」という。
)は、当該特定原子
力施設について、実用発電用原子炉施設に対して適用される項目の全てを
一律に適用することはできず、個々に適用可能か否か吟味し、適用できな
い項目については個別に内容を検討する必要があるとしている。
このため、東電福島第一原子力発電所の現在の状態を踏まえ、同発電所
に係る原子力災害対策の在り方を検討する必要がある。
2.検討課題と論点
今回の会合において検討いただきたい課題と論点は以下のとおり。
(1)東電福島第一原子力発電所に係る原子力災害対策の基本的考え方
原子力規制委員会は、平成24年12月に東京電力株式会社から提出
された「福島第一原子力発電所 特定原子力施設に係る実施計画」を
認可するにあたり、全体としてリスク低減が図られていると評価した。
しかしながら、廃炉に向けた作業工程においては、依然としてリスク
が存在し、その態様も変化することから、さらに全体としてリスクが
低減できるよう取り組んでいく必要があるとしている。
東電福島第一原子力発電所の周辺では、同原発から遠方の一部地域に
おいても、いまなお避難指示などの防護措置が継続されているほか、
同発電所5号機及び6号機は停止中の他の実用発電用原子炉と概ね同
1
じ状態にあることを考慮することが必要。
こうした現状を踏まえると、東電福島第一原子力発電所に係る災害対
策としては、当面、当該特定原子力施設に係る原子力災害対策重点区
域(以下「重点区域」という。)の目安を他の実用発電用原子炉施設に
係る重点区域と同程度とした上で、緊急時に講ずべき防護措置を同発
電所の状態や周辺区域の実情に応じて最適化することが適当ではない
か。
また、施設の状態に基づき予防的な防護措置を講じるとともに、緊急
時モニタリング結果等の実測値に基づき追加的な防護措置を講じるな
ど、原子力災害対策の基本形を適用することが適当ではないか。
(2)住民の防護措置と事前対策
現状、東電福島第一原子力発電所周辺の避難指示区域、特に帰還困難
区域には定住する住民がいない一方で、当該避難指示区域に一時立入
している住民等がいることを考慮することが必要。
また、当該避難指示区域における社会インフラの状態や住民の生活環
境等を踏まえると、緊急時に屋内退避による防護措置を安全に継続し
て実施することが困難となる場合もあると考えられる。
これらを踏まえ、EALに基づく防護措置としては、避難指示区域へ
の一時立入を直ちに中止し、当該区域からの退去を実施することが適
当ではないか。また、避難指示区域となっていない地域については、
住民の防護措置としては屋内退避が考えられるのではないか。
重点区域内にある関係自治体の事前対策としては、緊急時にこれらの
防護措置を実施できる準備が考えられるのではないか。
東電福島第一原子力発電所に係る残存放射性ヨウ素量等の評価結果に
よれば、同発電所の各号機炉内及び使用済み燃料プールの放射性ヨウ
素の残存量1は僅小であり、仮にその全量が敷地外に放出されるような
1
本年5月に原子力規制委員会が公表した試算結果における放射性ヨウ素の放出量と比較した場合、残存量は約
2
著しく異常な状態を想定したとしても、屋内退避等の防護措置に加え
て安定ヨウ素剤の服用が必要となるような事態には至らないと考えら
れる。また、炉内燃料デブリについては温度や組成の変化等によって
も未臨界の状態が維持されることから、住民の防護措置を考える上で、
臨界により放射性ヨウ素が生成される可能性は除外できる。
これらを考慮すると、住民が安定ヨウ素剤を服用するような状況は想
定されないが、念の為の事前対策として、重点区域内の住民等に対し
て安定ヨウ素剤を配布できるよう備蓄しておくことが望ましいのでは
ないか。
(3)緊急事態区分を判断するEALの設定
東電福島第一原子力発電所の現在の状態に鑑み、緊急事態区分を判断
するEALの見直しが必要。
①
全号機共通
東電福島第一原子力発電所の敷地境界におけるモニタリングポストの
値は、現在、約4μSv/h となっているものがあり、追加的な1μSv/h
程度の放射線量により、原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」
という。)の通報基準に至る可能性がある。
原子力災害に至る可能性という観点から5μSv/h の放射線量が通報の
基準とされてきたところであるが、バックグラウンドの放射線量が約
4μSv/h といった高い値となる状況は考慮されていなかった。
これらを考慮し、通報基準を『バックグラウンド(3ヶ月平均)+5
μSv/h』に変更することが合理的ではないか。
②
1~4号機
現在の東電福島第一原子力発電所1~4号機については、通常の沸騰
水型軽水炉とは大きく形態が異なっており、通常の沸騰水型軽水炉に
係るEALをそのまま適用することは適切ではない。
1~4号機の現在の状況を勘案し、使用済燃料プールの異常について
0.2%程度と評価される。http://www.nsr.go.jp/committee/kisei/h26fy/data/0009_03.pdf
3
のみ緊急事態区分を判断するEALとして設定することが適当ではな
いか(別表)
。
③
5号機及び6号機
5号機及び6号機については、停止中の他の実用発電用原子炉施設と
概ね同じ状態にあることから、沸騰水型軽水炉と同様のEALを用い
ることが適当ではないか。
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表 東京電力株式会社福島第一原子力発電所に係る住民防護措置と緊急事態区分を判断する基準について
別 紙
住民防護措置
(1)警戒事態レベル
(2)施設敷地緊急事態レベル
(3)全面緊急事態レベル
<国の体制整備>
・要員参集
・情報収集、連絡体制の構築
・現地派遣の準備
<国の体制整備>
・要員追加参集
・現地派遣の実施
・現地追加派遣の準備
<国の体制整備>
・要員追加参集
・現地追加派遣の実施
<重点区域内の避難指示区域>
・一時立入を直ちに中止し、避難指示区域からの立退きの準備
<重点区域内の避難指示区域>
・避難指示区域から立退き
<重点区域内の避難指示区域>
―
<重点区域内のその他の区域>
―
<重点区域内のその他の区域>
・屋内退避準備
<重点区域内のその他の区域>
・屋内退避
緊急事態区分を判断する基準
○東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設のうち、1号炉、2号炉、3号炉及び4号炉に係る原子炉の運転等のための施設
(1)警戒事態レベルを判断するEAL
① <燃料プールに関する異常>
使用済燃料貯蔵槽の水位を維持できないこと、又は当該貯蔵槽の水位を維持でき
ていないおそれがある場合において、当該貯蔵槽の水位を一定時間以上測定できな
いこと(使用済燃料集合体が使用済燃料貯蔵槽内に存在しない場合を除く)。
(解説)
通常直ちに貯蔵槽への注水操作が実施され水位の回復が図られるが、当該貯蔵槽
の水位が低下し、その水位を維持できない場合には貯蔵槽への注水機能に何らかの
異常があると考えられることから、警戒事態の判断基準とする。また、このような状態
が疑われる状況において、当該貯蔵槽の水位を一定時間以上測定できない状況にあ
ることは、上記と同様な状況にある可能性があること及び水位を測定できないという何
らかの異常が発生していると考えられることから併せて該当する事象とする。
なお、一定時間は、事前に準備している当該状況を解消するための措置を実施する
までに必要な時間とする。
② <外的な事象による原子力施設への影響>
地震、津波その他原子炉施設以外に起因する事象が原子炉施設への影響を及ぼ
すおそれがあることを認知した場合など原子力規制委員会委員長又は委員長代行が
警戒本部の設置が必要と判断した場合。
(2)原災法第10条に基づく通報の判断基準、施設敷地緊急事態レベルを判断するEAL
① <放射線量等の検出>
原子力事業所の区域の境界付近等において原災法第10条に基づく通報の判断基
準として政令等で定める基準以上の放射線量又は放射性物質が検出された場合(事
業所外運搬に係る場合を除く)。
※現在、敷地周辺の線量は約4μSv/hとなっている。
5μSv/h以上=測定値-三ヶ月平均の線量 として、差分の5μSv/hの線量に
より、通報基準とする(5,6号炉も含む)。
② <燃料プールに関する異常>
使用済燃料貯蔵槽の水位が照射済燃料集合体の頂部から上方2メートルの水位ま
で低下すること(使用済燃料集合体が使用済燃料貯蔵槽内に存在しない場合を除
く)。
(解説)
上記の場合、直ちに燃料集合体の冷却性が喪失するわけではないが、何らかの異
常の発生により、水位が低下し続け遮蔽能力の低下が起こり、現場へのアクセスが困
難になるおそれがあるという事象の重大性に鑑み、施設敷地緊急事態の判断基準と
する。
(3)原災法第15条に基づく原子力緊急事態宣言の判断基準、全面緊急事態レベルを判断するEAL
① <放射線量等の検出>
原子力事業所の区域の境界付近等において原災法第15条に基づく緊急事態宣言
の判断基準として政令等で定める基準以上の放射線量又は放射性物質が検出され
た場合(事業所外運搬に係る場合を除く)。
② <燃料プールに関する異常>
使用済燃料貯蔵槽の水位が照射済燃料集合体の頂部まで水位が低下すること(使
用済燃料集合体が使用済燃料貯蔵槽内に存在しない場合を除く)。
(解説)
上記の場合、直ちに燃料集合体の冷却性が喪失するわけではないが、何らかの異
常の発生により、水位が低下し続け遮蔽能力の低下が起こり、現場へのアクセスが困
難になるという事象の重大性に鑑み、全面緊急事態の判断基準とする。
③ <外的な事象による原子力施設への影響>
③ <外的な事象による原子力施設への影響>
その他原子炉施設以外に起因する事象が原子炉施設に影響を及ぼすおそれがある
その他原子炉施設以外に起因する事象が原子炉施設に影響を及ぼすこと等放射性
こと等放射性物質又は放射線が原子力事業所外へ放出され、又は放出されるおそれ
物質又は放射線が異常な水準で原子力事業所外へ放出され、又は放出されるおそれ
があり、原子力事業所周辺において、緊急事態に備えた防護措置の準備及び防護措
があり、原子力事業所周辺の住民の避難を開始する必要がある事象が発生するこ
置の一部の実施を開始する必要がある事象が発生すること。
と。
5
現在の避難指示区域
6
参考