14-D-0799 2015 年 1 月 6 日 株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。 ケネディクス商業リート投資法人 【新規】 長期発行体格付 格付の見通し (証券コード:3453) A 安定的 ■格付事由 (1) 本投資法人は 14 年 10 月 3 日に設立され、現時点で 15 年 2 月 10 日に東京証券取引所(不動産投資信託証 券市場)に上場を予定している不動産投資法人(J-REIT)。資産運用会社であるケネディクス不動産投資 顧問(KFM)のスポンサー(出資比率 100%)は不動産アセットマネジメント会社であるケネディクスで ある。近隣を中心とした足元商圏を対象とする生活密着性の高い商業施設(本投資法人では「生活密着型 商業施設」と定義している)に重点的に投資を行う方針であり、ケネディクスのほかサポート会社 3 社か ら多様なサポートを享受しながら、中長期にわたる安定した資産運用を図る。 (2) 本投資法人が上場時に取得を予定している物件は 18 物件、取得金額総額約 808 億円であり、上場時に金 融機関からの借入金と公募増資(海外募集を含む)により調達した資金(総額約 850 億円を予定)で取得 する予定である。いずれの物件も商業施設であり、商業施設の中でも来店頻度が高い生活密着型商業施設 を中心としたポートフォリオを構築する。人口動態が比較的安定している四大都市圏を中心に、立地ポテ ンシャル、施設としての優位性、収益の安定性、テナント構成を検証したうえで、テナントの代替性が高 く、一定の競争力が保てると判断した物件に対して選別投資をするものとしている。上場時の資産規模は 他の上場 J-REIT と比べた場合には小さいものの、物件面およびテナント面において相応に分散化が企図 されており、複数のテナントが入居している物件については取得価格比で約 71.7%を占めており、賃料 ベースでの上位 5 位までの集中度は 28.5%となっていることから、上位テナントの退去がポートフォリ オ収益に与える影響は比較的限定されているものとみている。 (3) ケネディクス・グループにおいては、これまで商業施設を運用資産とする私募ファンド等の運用やアセッ ト・マネジメント事業において一定の経験・ノウハウを有する。また本投資法人は、スポンサーのケネデ ィクス以外にも、商業施設の開発・運営において一定の実績を有する三井住友ファイナンス&リース、日 本商業開発、ピーアンドディコンサルティングとの間でサポート契約を締結している。本投資法人では、 ケネディクスおよびサポート会社 3 社が有するパイプラインや商業施設における運用ノウハウ等を活用し ながら外部成長および内部成長を推進していく方針であるが、これらのサポート体制をどのように享受し つつ、本投資法人の運営がなされていくのか、その実現状況については注目している。 (4) 財務面については、安定性に力点を置いた財務戦略を基本方針としている。上場時に予定している新規借 入金は、スポンサーの主力行を中心に全額無担保、無保証での調達を予定し、平均調達年限は約 5 年と長 期化が図られている。LTV(敷金・保証金の返還等のために留保されている現預金を考慮した総資産ベー ス)については上限を 60%としてコントロールをしていくものとしており、上場直後の同 LTV は 40%台 前半、敷金・保証金を考慮しない総資産ベースの LTV についてはおおむね 40%程度の保守的な水準とな ることが予定されている。 (5) 以上の、①比較的来店頻度が高いとされている生活密着型商業施設への重点投資、②物件面およびテナン ト面において相応に分散化されたポートフォリオ、③スポンサーおよびサポート会社からの内部成長およ び外部成長に関わるサポート体制、④上場後の保守的なレバレッジコントロールを含めた財務方針―を総 合的に勘案して、本投資法人の長期発行体格付を「A」 、見通しを「安定的」と評価した。 1/5 http://www.jcr.co.jp 【ポートフォリオの分析】 本投資法人のポートフォリオのアロケーション方針は、人口動態が比較的安定的に推移することが見込ま れる四大都市圏を中心に生活密着型商業施設に対して 80%以上を投資する。生活密着型商業施設をテ ナント構成、立地および商圏等の要素から①NSC(ネイバーフッドショッピングセンター)、②SM(スー パーマーケット)、③CSC(コミュニティショッピングセンター)、④都市駅前型、⑤SS(スペシャリティ ストア)の 5 タイプに分類し、各タイプの特徴を生かしながら選別投資をしていく。また、サポート会 社である日本商業開発が注力している事業用借地による物件の開発を念頭に、商業施設の底地にも積 極的に投資を行う方針であり、キャッシュフローの安定化を図っている。 上場時の予定ポートフォリオは前述の通り、物件数:18 物件、取得金額総額:約 808 億円の資産規模で あり、いずれの物件も商業施設およびその底地である。また立地面から見た場合には、四大都市圏で約 85.1%(うち首都圏で約 60.3%、大阪圏で約 16.3%、名古屋圏で約 6.6%、福岡圏で約 1.9%) 、特例市等で 約 14.9%と四大都市圏への投資比率が高い。 物件の分散化については、物件面およびテナント面で相応に図られている。予定ポートフォリオのうち最 大物件である「フルルガーデン八千代」の取得価格比率は約 18.4%、最大テナントの賃料比率は約 11.2%と なっており、大型テナントの退去によるポートフォリオの期間収益に及ぼす影響や収益力の低下が本投資法 人のキャッシュフローおよびバランスシートに及ぼす影響は比較的緩和されている。また、予定ポートフォ リオの中にはシングルテナントの物件もあるが、これらの物件についてはテナントとの間で長期の賃貸借契 約を締結するなど、ポートフォリオ収益の安定化を図っている。 稼働率については、予定ポートフォリオ全体で 98.6%と高い水準である。プロパティ・マネジメント業 は KFM が一括して受託し、KFM においてアセット・マネジメント業務と一体的な推進を通じてテナン トリレーションの強化を図る方針である。人口動態、人口構成および競合物件の新規出店といった商 圏の動向や既存テナントの退去時において、スポンサーによるサポート体制を活用した一体的なマネ ジメント体制のもと、どのようなリーシング戦略が立案され実施されていくのかについて注目してい る。 【ケネディクスの概要】 当社は 95 年 4 月に米国不動産会社ケネディ・ウイルソン・インクの日本における不動産投資アドバイザ リー事業の拠点として発足。99 年から本格的にアセット・マネジメント事業に参入し、米国系の投資家と組 み不動産、債権への投資を開始した。01 年には初めて国内投資家からアセット・マネジメント業務を受託 し、以後受託残高は着実に増加し、14 年 10 月末時点の受託資産残高はグループ全体で約 1 兆 4,773 億円、 うち商業施設では約 1,888 億円となっており、独立系の不動産アセット・マネジメント会社としては国内最 大級の運用規模を誇る。投資家層は、政府系ファンド、外資系投資家、年金ファンド、国内機関投資家、 REIT、事業法人等、多岐にわたる。 REIT 事業にも積極的に取り組み、本投資法人の他に、中規模オフィスビルを主たる投資対象とするケネ ディクス・オフィス投資法人、賃貸住宅を主たる投資対象とするケネディクス・レジデンシャル投資法人、 物流施設を主たる投資対象とする日本ロジスティクスファンド投資法人(最大スポンサーは三井物産)、オ フィスビルと賃貸住宅を主たる投資対象とするプレミア投資法人(最大スポンサーはエヌ・ティ・ティ都市 開発)の 4 つの J-REIT に加え、私募 REIT のケネディクス・プライベート投資法人を運用するなど、REIT 事業がグループ全体における重要な柱となっている。 【三井住友ファインス&リースの概要】 07 年 10 月 1 日に、旧三井住友銀リースと旧住商リースが合併してスタートした業界トップクラスの大手 総合リース会社。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)と住友商事がそれぞれ当社株式の 60%、40% を保有しており、SMFG の連結子会社、住友商事の持分法適用関連会社となっている。68 年 5 月にリース事 2/5 http://www.jcr.co.jp 業を開始し、商業施設を中心に約 5,000 億円(簿価ベース)の不動産リース残高を有する。不動産リース事 業の一環として、建物を当社が、底地を J-REIT が所有する形で J-REIT との共同事業も展開している。 サポート契約に基づき本投資法人に対し、リース資産等の供給を通じたパイプライン・サポート、ウェア ハウジング機能および人的支援を提供する。 【日本商業開発の概要】 当社は 00 年 4 月に設立され、底地を対象とした「JINUSHI ビジネス」を基本戦略に、不動産投資事業、 サブリース、賃貸借・ファンドフィー事業を展開している。これまでに、食品スーパー・ホームセンター等 の生活利便施設を中心に、50 テナント以上との事業取組実績を有する。 サポート契約に基づき本投資法人に対し、「JINUSHI ビジネス」における JINUSHI 案件の供給を通じたパ イプライン・サポート、PM 業務やテナントリーシング業務を提供する。なお、当社では本投資法人へ年間 100 億円以上の物件売却を目標としている。 【ピーアンドディコンサルティングの概要】 当社は 98 年 8 月に設立され、商業施設開発・運営・商業コンサルティング業務等を主な事業としてい る。自社の商業施設ブランドである「UNICUS」の開発・運営やその他商業施設の開発実績を有し、これま でに他の J-REIT への物件供給実績もある。 サポート契約に基づき本投資法人に対し、自社開発案件の供給を通じたパイプライン・サポート、 「UNICUS」案件の PM 業務やテナントリーシング業務を提供する。 【上場時に取得を予定している物件の概要】 (1) フルルガーデン八千代 本物件は千葉県八千代市に所在する商業施設。施設タイプは生活密着型商業施設の中の CSC。店舗面積は 約 4.2 万㎡を有し、商圏内で最大規模の商業施設。対象地周辺は住宅地であり人口動態等の商圏マーケット としては安定した立地である。本物件は、幹線道路である国道 16 号線沿いに位置し自動車によるアクセス は良好で、国道 16 号線を軸に南北からの集客に強みを持つほか、東葉高速鉄道「村上」駅より徒歩 1 分に 所在しており、近隣商圏における優位性も高いものと考えられる。建物は 02 年 10 月に開業したイトーヨー カドー棟と専門店棟の 2 棟から構成され、総テナント数は 53。駐車施設については 2,300 台が収容可能であ り十分な台数が確保されている。本物件はスポンサーであるケネディクスの受託資産残高からの取得を予定 している。 取得予定日:15 年 2 月 10 日 取得予定価格:14,848 百万円(ポートフォリオ比:約 18.4%) (2) パサージオ西新井 本物件は東武伊勢崎線「西新井」駅西口駅前に位置する商業施設。施設タイプは生活密着型商業施設の中 の都市駅前型。10 年 4 月に開業し、テナントは家電量販店、衣料店、楽器店、100 円ショップ等、41 のエン ドテナントから構成されている。本物件は回遊性にやや懸念のあるレイアウトであるが、周辺には再開発に 伴い大規模な共同住宅が立地し、商業立地として底堅いポテンシャルを有する。本物件はスポンサーである ケネディクスの受託資産残高からの取得を予定している。 取得予定日:15 年 2 月 10 日 取得予定価格:5,850 百万円(ポートフォリオ比:約 7.2%) 3/5 http://www.jcr.co.jp (3)ロゼオ水戸 本物件は、茨城県水戸市中心市街地より南西方約 5 ㎞の郊外に所在する商業施設。施設タイプは生活密着 型商業施設の中の NSC。周辺は、99 年 3 月の茨城県庁の移転に伴い周辺の幹線道路や区画開発が行われ た。系統連続性については、本物件は 4 車線の県庁南大通線に接面し、また、水戸市内の主要幹線道路に接 続する市内を南北に走る県道 50 号線へのアクセスが良好である。 敷地はモール棟・スポーツ施設棟・飲食棟が存する画地、ホームセンター棟が存する画地、および底地か ら構成され、未消化容積を利用した新たな建物の建設が予定されている。本物件はスポンサーであるケネデ ィクスにより開発され、09 年 4 月に開業し、現在では食品スーパーとホームセンターを核テナントとし、21 のエンドテナントが出店している。本物件はスポンサーであるケネディクスの受託資産残高からの取得を予 定している。 取得予定日:15 年 2 月 10 日 取得予定価格:9,675 百万円(ポートフォリオ比:約 12.0%) (担当)杉山 ■格付対象 発行体:ケネディクス商業リート投資法人 【新規】 対象 長期発行体格付 格付 見通し A 安定的 4/5 http://www.jcr.co.jp 成夫・秋山 高範 格付提供方針に基づくその他開示事項 1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 1 月 6 日 2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本 主任格付アナリスト:杉山 成夫 幸一 3. 評価の前提・等級基準: 評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類 と記号の定義」 (2014 年 1 月 6 日)として掲載している。 4. 信用格付の付与にかかる方法の概要: 本件信用格付の付与にかかる方法(格付方法)の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)のストラク チャード・ファイナンス「格付の方法」のページに、 「J-REIT」(2014 年 6 月 2 日)の信用格付の方法として掲載し ている。 5. 格付関係者: (発行体・債務者等) ケネディクス商業リート投資法人 6. 本件信用格付の前提・意義・限界: 本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。 本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性 の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外 の事項は含まれない。 本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入 手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。 7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者: ・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明 8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要: JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、 いずれかの格付関係者による表明保証もしくは対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、当該方針が 求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。 9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし ■留意事項 本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、 的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、 金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因 のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として 発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。 ■NRSRO 登録状況 JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。 ■本件に関するお問い合わせ先 情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026 5/5 http://www.jcr.co.jp
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