知っておきたい研究開発税制の4つの制度

編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社
2014.12.22 第 1437 号
SMBC経営懇話会
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【知っておきたい研究開発税制の4つの制度】
研 究 開 発 に 関 わ る 税 務 上 の 優 遇 策
アタックス税理士法人 代表社員COO
税理士 磯竹 克人
1. 研究開発税制には(1)試験研究費の総額に係る税額控除制度、(2)特別試験研究に係る税額控除制度、(3)中
小企業技術基盤強化税制、(4)試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度の 4 つの制度があります。
2. 4 つの制度のうち、「(4)試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度」は他の 3 つの制度と併用が可
能です。
1.研究開発税制の概要
企業の行う研究開発を促進するために、青色申告法人に対して、一定要件の下、各種の研究開発税制が設
けられています。研究開発税制には、恒久的措置である(1)試験研究費の総額に係る税額控除制度、(2)特
別試験研究に係る税額控除制度、(3)中小企業技術基盤強化税制と、時限的措置である(4)試験研究費の
額が増加した場合等の税額控除制度の 4 つの制度があります。
これらの制度の適用を受けるためには、控除金額を確定申告書等に記載するとともに、その金額の計算明細
書を添付する必要があります。
2.試験研究費の総額に係る税額控除制度
(省庁発表資料等をもとに執筆者作成)
1.(1)の制度は、その事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合、その一定割
合の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。
対象となる試験研究費の額は、製品の製造や技術の改良、考案などのために要する原材料費や人件費、経
費のほか、他の者に試験研究を委託するために支払う費用も対象になります。ただし、試験研究に充てるため
に他の者から受け取る金額があれば、これを控除した金額になります。
(次頁に続く)
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この制度による税額控除限度額は次の通りですが、その事業年度の法人税額の 20%(平成 25 年 4 月 1 日
から平成 27 年 3 月 31 日までの間に開始する各事業年度については 30%)を超える場合は、その 20%相当額
を限度とします。
その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額 × 10%
(試験研究費割合が 10%未満の場合は、(試験研究費割合×0.2)+8%で計算した割合)
注 1)試験研究費割合=その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額÷平均売上金額
注 2)平均売上金額とは、適用年度及び適用年度開始の日前 3 年以内に開始した各事業年度の売上金額の平均額をいいます。
3.特別試験研究に係る税額控除制度
1.(2)の特別試験研究に係る税額控除制度は、その事業年度において損金の額に算入される試験研究費
の額のうち特別試験研究費の額がある場合、その一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除するこ
とを認めるものです。
対象となる特別試験研究費の額は、試験研究費の額のうち、国の試験研究機関や大学等との共同試験研
究、国の試験研究機関や大学等への委託試験研究などに係る試験研究費の額をいいます。
この制度による特別研究税額控除限度額は次の通りですが、その事業年度の法人税額の 20%(平成 25 年 4
月 1 日から平成 27 年 3 月 31 日までの間に開始する各事業年度については 30%)相当額から試験研究費の
総額に係る税額控除制度により控除された金額を控除した残額が限度となります。
その事業年度の損金の額に算入される特別試験研究費の額
× 特別研究税額控除割合(12%-試験研究費の総額に係る税額控除割合)
注)試験研究費の総額に係る税額控除割合=10%(試験研究費割合が 10%未満の場合は、(試験研究費割合×0.2)+8%で計
算した割合)
4.中小企業技術基盤強化税制
この制度は、中小企業者または農業協同組合等がその事業年度において損金の額に算入される試験研究費
の額がある場合、その一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。なお、1.
(1)試験研究費の総額に係る税額控除制度、または1.(2)特別試験研究に係る税額控除制度と重複適用はで
きません。対象となる試験研究費の額は、1.(1)と同じです。この制度における中小企業者等税額控除限度額
は次の通りですが、その事業年度の法人税額の 20%(平成 25 年 4 月 1 日から平成 27 年 3 月 31 日までの間に
開始する各事業年度については 30%)相当額が限度となります。
その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額 × 12%
5.試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度
この制度は、平成 20 年 4 月 1 日から平成 29 年 3 月 31 日までの間に開始する各事業年度(以下「適用年度」
といいます。)において、次の(1)または(2)に該当するとき((1)は設立事業年度を除く)には、いずれかの選択
適用により、上記 3 つの制度とは別枠で税額控除を認めるものです。この制度における税額控除限度額は次
の通りですが、その事業年度の法人税額の 10%相当額が限度となります。
(1) 増加試験研究費の額が、比較試験研究費の額の 5%を超え、かつ、適用年度に損金の額に算入され
る試験研究費の額が基準試験研究費の額を超える場合
(平成 26 年 4 月 1 日から平成 29 年 3 月 31 日までの間に開始する各事業年度の場合)
増加試験研究費の額 × 30% (増加試験研究費割合が 30%未満の場合には増加試験研究費割合)
注)平成 26 年 3 月 31 日までに開始する各事業年度における要件及び税額控除限度額は上記と異なります。
(2) 試験研究費の額が平均売上金額の 10%相当額を超える場合
(試験研究費の額 - 平均売上金額 × 10%) × 超過税額控除割合
注)超過税額控除割合 = (試験研究費割合 -10%) × 0.2
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