ジオシンセティックス技術情報 1 9 9 9 . 3 開催報告 シンポジウム開催報告 rQ&Aコーナー」 俊郎寄 英二喜 合野田 落桑宮 学 大校 学業学 大工大 州京衛 九東防 1.はじめに 3回目を数えるが、ジオシンセティックスに関 ジオシンセティックス・シンポジウムは今回で 1 する fQ&Aコーナー」が開催されたのははじめである。質問は、シンポジウム会場において、 各セッション間の休み時間に質問箱を設置して募集した。最終的には、 20を超える質問が集まっ た。シンポジウム 2日目の最終セッションで開催された fQ&Aコーナー」では、それらの質問 を分類して、質問の内容を専門とする方々に解答していただいた。途中、盛んな議論も生まれる など、終始盛会だ、った。今回は、その内容を簡単に紹介したいと思う。なお、質問と解答の内容 は、本人に無断で要約させていただいたことを、はじめに断っておく。 2. ジオシンセティックスを用いた補強土工法一般に関する質問と解答 (Q1)ジオシンセティックスを用いた補強土工法は、どういった状況で効果的になるでしょう か?また、ジオシンセティックスを用いるとなぜ土は強度を増すのですか? (コンサルタント) 内村太郎(東京大) :補強土の強度は、補強材が土に作用する力を分担し、土の変形を拘束す ることによって増加するので、補強材と土の問に摩擦が働くように補強材を配置することが重要 だと思います。そして、ある程度補強材が伸びるところで利くということになります。また、盛 土材料が良く締まることの重要性も指摘しておきたいと思います。 福岡正巳 (1G S日本支部前支部長) :内村先生の説明でほぼ良いが、ジオシンセティックス の排水機能による効果は非常に重要です。 (Q2) 補強盛土の設計において、ジオシンセティックスの引張り強度は重要な設計定数です。 しかし、実際の盛土の挙動に及ぼす影響は小さいように感じます。その原因として考えられる事 を教えて下さい。(メーカー) 岩崎高明(三井石化産資) :それほど強い引張り強度は補強材に必要なく、補強材の敷設間隔 を密にするほうが重要だと思います。 福岡正巳:テールアルメ工法とジオテキスタイル補強土壁工法の、どちらの設計基準が補強材 の強度を重視しているのか、今後 ISOへの対応という問題を含め、質問者のご指摘の問題を考 えることは重要だと思います。 (Q3) テールアルメ工法では、細粒分含有率が 25%未満の盛土材について適用可能としていま す。一方、多数アンカー工法では、盛土材の液性限界が 50%以上の場含、細粒分含有率が 50%未 phu A斗 A 満であれば適用可能とされています。ジオシンセティックスを用いた補強土工法において、同様 な規定はないのでしょうか? (コンサルタント) (同じ趣旨の質問,他 1件) 福田直三(復建調査設計) :膨張性土や有機質土を除けば有効性は確認されているようです。 福岡正巳:多数アンカー工法に以上のような制約があるのを知って驚きました。粘性土を用い た試験施工で、その有効性を既に確認しています。 3. ジオシンセティックスの機能評価に関する質問と解答 (Q1)不織布やジオメンブレンの引張り強度は、それらが敷設される地盤に生じるひずみの大 きさを考慮、して評価されるべきではないでしょうか? (メーカー) 熊谷浩二(前田建設工業) :質問者のご指摘のとおりで、海外の基準同様、伸びひずみ 10%時 の強度をひとつの指標としても良いのではと思います。 福田直三:材料が地盤の局所変形に追従できることを確認する意味では、高いひずみレベルま で評価の対象にする価値があると思うのですが、いかがですか? 熊谷浩二:廃棄物処分場の設計を例にすれば、ジオメンブレンにそのような局所変形を生じさ せないように基礎地盤の安定を図るような設計の考え方を確立することが重要だと思います。 (Q2) ジオシンセティックスの引抜き試験は乾燥砂で行われることが多いようです。実際の現 場のように水分を含む場合、含水比は結果にどのように影響してくるのでしょうか?また、引抜 き試験を乾燥砂で行うのは、単に試験を行いやすいからですか?それとも、湿潤砂での試験に何 か問題があるのでしょうか? (学生) 平井貴雄(三井石化産資) :若干の差が生じるのは確かですが、現段階では、試験の行いやす さから、乾燥砂を使用しているのが現状です。湿潤状態の土を用いた試験では、防水など特別な 処理が必要になるでしょう。ただし、乾燥砂を用いた実験結果と現場引抜き試験の対応は比較的 良いことが確認されています。 岩崎高明:グリッドの目合いが小さいと、湿った砂にはサクションが作用するので、グリッド 内へ砂が入り込まなくなり、上下の土がつながらず、グリッド表面で滑るような形になりやすい です。実際、そのようなことが事故原因になった現場もあります。 桑野二郎(東工大) :室内試験で岩崎氏御指摘の現象が見られました。 (Q3) ジオシンセティックスを盛土内に敷設すると、盛士荷重の影響などによってその面内方 向通水性能が低下すると考えられます。そのような持性を評価する基準はあるのでしょうか? (メーカー) 平井貴雄:ジオシンセティックスの面内方向通水性能に関する試験法は、地盤工学会から基準 案として示されています。 FhU にU 嘉門雅史(京都大) :土を介して拘束圧が作用すると、通水性能の低下がより顕著となりま す 。 4. 設計法に関する質問と解答 (Q1)水平排水材を入れて施工しますと波打つてしまうと思います。どの程度の波ができる か、解析例でもよいので教えて下さい。また、実際にどのような制限をすれば効果に差がないの でしょうか? (顧問) 嘉門雅史:多少波打つでも、排水機能は保たれると思い、現場実験の解析ではそのことを無視 しています。ただし、施工管理では、所定の締め固め管理を設けるなどの対策は必要だ、と 思いま d す 。 (Q2 ) 粘性土を用いた盛土を不織布など排水機能を有するジオシンセティックスで安定化す る工法の設計法として、敷設間隔や排水材に必要となる通水性能などを合理的に評価できる設計 法として、どのようなものが提案されていますか? (ゼネコン) (同じ趣旨の質問、他 1件) 福田直三:土研センターから設計法が提案されています。 5. その他の賢問と解答 (Q1)今後、構造物の改築・更新に伴い、ジオシンセティックスの廃棄が必要になる状況も考 えられます。現在取りうる処分方法、文、将来実用可能になると予想される処分方法について教 えて下さい。(ゼネコン) 赤木俊允(東洋大) :ジオシンセティックスの寿命は 1 0 0 " ' 4 0 0年といわれており、それほど深 刻な問題にはならないと思います。 岩崎高明:油の流出事故では、ジオシンセティックスが油吸着材として使用され、その後浜辺 で焼却処分されました。材質がポリプロピレンの製品は、燃焼時に有毒ガスの発生を伴わず、紫 外線による自然分解も期待できます。 (Q2) PL'PS補強盛土工法の施行可能な限界高さはどの程度でしょうか? (ゼネコン) 内村太郎:橋脚のようなものを作る場合、あまり細長いと座屈してしまいますので、どれくら い細長くできるかということになります。これまでの実績で、高さと幅の比が、実施工で 1:1、 実大模型で 2 :1までは大丈夫でした。また、タイロッド 1本当たりの張力に限界があり、これ から断面積(幅)が決まるため、高さの上限も決まってくると思います。 6. 当日扱うことができなかった質問 時間の都合上、以下の質問は扱うことができませんでしたが、いずれも基本的かつ本質的な内 ρhU Fhu 容を含んでいます。ここでは紹介だけに止めさせていただきます。 「ジオシンセティックス」と「土木安定シート」の違いはどこにあるのですか? (コンサル) ・製品のカタログ等で、 J 1S規格「ジオテキスタイル試験法」による材料特性の評価値は見ら れない場合が多いようです。以上の試験法は実際に使用されているのでしょうか? (ゼネコン) ・ジオシンセティックスの引張強さの単位は、 kN/5cmなど試験片の幅当りで表示されています。 応力表示する場合は、試験片の厚さで除して kN/m2などとして良いのでしょうか ? (ゼネコン) -地下水位以下の地盤中において(淡水 o r海水)、ジオシンセティックスは何年くらい所定の 品質を保つことができるのですか?張力が作用している状態と張力が作用していない状態では異 なるのでしょうか? (コンサル) ・ジオシンセティックスのクリーフ特性を室内試験で評価する場合、どの程度のクリープ荷重 (例えば、引張強度に対する割合)で行うのが適切なのでしょうか?盛土中で実際に作用する引 張力よりかなり大きい荷重が用いられているのではないでしょうか? (メーカー) -ジオグリッドの適度な目合いほどの程度なのでしょうか? (ゼネコン) ・ジオグリットを用いた引抜き試験において、引抜き力が材料の引張り強度を超える場合があり ます。これは、湿気や気温による影響だけでなく、供試土がグリッドを埋めるために、材料の引 張り強度が高くなることも影響していると考えられるのでしょうか? -凹凸のあるプラスチック製の芯材の両面を不織布などで、覆つであるドレーン材と土の摩擦特性 を評価する場合、両者の接触状態は複雑になると思われます。このような場合、応力計算に必要 な接触面積をどのように評価すればよいのでしょうか? -最近、溶接金網タイフの補強材が開発され物件に応じて、テールアルメ工法の設計基準やジオ テキスタイル補強土工法の設計基準などが使用されているようです。以上のような材料を用いた 場合、どのような設計基準に従うべきなのでしょうか? (メーカー) ・コンクリートを壁面とする補強土壁工法において、コンクリートパネルがしばしば用いられて いるようです。コンクリートパネルの構造設計を行う場合、どの程度の土圧を考慮すれば、良い のでしょうか? (コンサル) ・ジオシンセティックスによる土の変形を拘束する効果が車越すると、ジオシンセティックスに 発生する引張力も小さくなるのでしょうか?言いかえると、拘束効果とジオシンセティックスに 生じる引張力の関係はどうなっているのでしょうか? (大学) -ジオシンセティックスの材料試験の結果は S 1単位 (kN/mなど)で表記されるようになりまし たが、ユーザー側との打ち合わせ資料(検討書、報告書の類)では重力単位 (kgf/cm2など)での表 記が要求される場合が多々あります。 S1単位への移行の過渡期とは思いますが、いつごろ実務 での移行が完了するのでしょうか?現状とともに教えて下さい。(ゼネコン) 7. おわりに fQ&Aコーナー」では、コーディネータの役割を忘れて、質疑応答に耳を傾けた。以上の紹 介した質問については、当日の解答の有無に関わらず、技術情報誌や学会のホームページ上で解 答するなどの方法を考えている。興味深い質問を投げかけてくださった方、その場で適切に解答 していただ、いた皆様に感謝の意を表します。 ﹁ ﹁U ウ t
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