高圧合成法を利用した 熱電変換材料の製造技術 室蘭工業大学 大学院工学研究科 教授 関根 ちひろ 室蘭工業大学 大学院工学研究科 助教 川村 幸裕 産業技術総合研究所 主任研究員 李 哲虎 1 従来技術とその問題点 【SPS, 従来型ホットプレス法】 方法:粉末原料を数10気圧程度の圧力下で加熱焼結 特徴:常圧で粉末試料を作成した後、焼結を行う 【問題点】 ・純良な単一相試料が得られにくい ・焼結性が悪い,稠密度が低い ・常圧下で合成可能な物質のみ作成可能 2 従来技術とその問題点 【従来材料の問題点】 Bi2Te3系材料は 300 K ~ 400 K で ZT > 1 を実現して いるが 600 K 以上の高温域で ZT > 1となる材料は実 用化されていない 3 新技術の概要 ・ 高温高圧(1000~2000℃、数万~十数万気圧)の条 件下で材料合成ができるマルチアンビル型高圧プレス を用いたホットプレス法とパルス通電によって自己発熱・ 焼結ができる放電プラズマ焼結(SPS)法を組み合わせ た製造システムを利用し、常圧では合成不可能な熱電 変換材料を開発した ・ 本技術を用いることで、モジュール化に必要な均質か つ大型多結晶の形で、熱電変換材料の候補であるスク ッテルダイト化合物の合成に成功し、新規高性能熱電 変換素子の実用化が期待される 4 試料合成プロセス ① 大型プレスを用いた高温高圧合成 ② 試料の純良部分のみを粉末化 ③ 放電プラズマ焼結(SPS)法で焼結 5 高圧合成装置 上側 ガイドブロック 制御用PC ダイヤルゲージ WC製アンビル スライドブロック 加熱電源 下側 ガイドブロック キュービックアンビル型高圧発生装置(6方向から加圧) (数万気圧、1000~2000℃までの条件下で材料合成可能) 6 キュービックアンビル型高圧合成装置用 試料容器 BN製の試料容器を外側の グラファイトヒーターに通電 することにより加熱 パイロフィライト製の圧力媒体 をキュービックアンビル型高圧 発生装置により6方向から加圧 7 川井式2段アンビル型超高圧発生装置 数万気圧~十数万気圧、1000~2000℃ の条件下で材料合成可能(8方向から加圧) 8 川井式2段アンビル型高圧発生装置用 試料容器 ZrO2 disk MgO Medium ZrO2 sleeve BN disk BN sleeve Sample Thermocouple Graphite heater Graphite disk Au electrode マグネシア製の圧力媒体を8方向から加圧 9 次世代熱電変換材料 スクッテルダイト化合物 無次元性能指数 ZT = S2T / rk T : 絶対温度 結晶構造 S : ゼーベック係数 r : 電気抵抗率 k : 熱伝導率 (特徴) ラットリング効果により低格子熱伝導率 10 希土類充填による格子熱伝導率 の大きな低減 kL (W/m K) 100 10 高温高圧合成法(2~3GPa, 600℃)により,CoSb 3 に Yb を高い充填率(60%)で充填 させることに成功 x 0 0.1 0.2 0.4 0.6 1 YbxCo4Sb12 10 格子熱伝導率が大きく低減 100 T(K) YbxCoSb3 の格子熱伝導率の温度依存性 11 310 安価で、資源供給に不安のない元素を 用いた熱電変換材料の開発 (ミッシュメタル(Mm)の利用) 9.12 Mm0.6Co4Sb12 格子定数a[Å] 9.10 30 40 50 60 035 442 532 024 332 422 431 330 321 Intensity[arb.unit] a=9.085 Å 70 9.08 9.06 MmxCo4Sb12 9.04 80 2θ [degree] Mm0.6Co4Sb12の粉末X線回折 パターン 0.0 0.2 0.4 0.6 仕込み値x 0.8 1.0 MmxCo4Sb12の格子定数 12 安価で、資源供給に不安のない元素を 用いた熱電変換材料の開発 (ミッシュメタル(Mm)の利用) 0.3 8 ● ● ● ● ● 7 5 0.25 Mm xCo4Sb12 0.2 4 ZT 熱電特性評価用 試料サイズ (SPSで焼結) κ 格子 [W/K-m] 6 x=0 x=0.4 x=0.6 x=0.8 x=1.0 3 0.15 0.1 Mm0.6Co4Sb12 2 0.05 1 0 0 100 200 T [K] 300 0 300 400 500 600 700 800 Temperature [K] Mm充填による熱伝導率 高温域で高い性能指数 の低減 (出力因子は実用レベル) 13 新技術の特徴・従来技術との比較 • 本技術により、常圧下では得られない新規な結晶構 造、組成を有する高性能材料が合成可能となった 14 想定される用途 • 本技術を用いて合成した充填スクッテルダイト化合物 は、中高温度域(500~700℃)での温度差発電用の熱 電変換材料への応用が期待できる • 大気圧下では得られない物質の製造が可能で、 これま でにない高性能熱電変換材料を開発可能 廃熱・未利用熱 温度差発電用熱電変換素子 冷却用ペルチェ素子 電気エネルギー 15 想定される用途 • 温度差発電用熱電変換素子 • 冷却用ペルチェ素子 • 上記以外に、光学材料や超硬材料の開発 にも利用可能 16 産業界へのアピールポイント • 高温高圧合成法は、人工ダイヤモンドのように、大気 圧下では合成不可能な新物質を合成しうる方法 • 本技術を用いることで、熱電変換材料、超伝導材料、 超硬材料、傾斜材料、触媒などの新規高機能材料を 開発可能 • 本技術を用いて合成した、 充填スクッテルダイト化合 物は、出力因子が実用レベルに達しており、新規高性 能熱電素子の実用化が期待できる 17 実用化に向けた課題 ・ 本製造システムを用いて、中温域(300~500℃)の温 度差発電に利用可能な、安価な熱電変換材料 MmxCo4Sb12を開発することができたが、さらなる性能向 上のためには、化合物組成の最適化を行う必要がある ・ 実用材料とするためには、モジュール化に向けた耐熱 性の向上や、機械加工強度の向上をあわせて行うこと が必要である 18 企業への期待 • • • • 高温高圧合成法による新機能性材料の開発 温度差発電用モジュールの試作と性能評価 熱電モジュールの製品化に向けた量産化技術の開発 熱電変換材料の性能向上に関する研究 以上のテーマについて、素材メーカー、電子デバイス開発 メーカーとの共同研究を希望します また、従来の基礎的研究を踏まえ、民間企業等との交流 を推進することにより、本技術の応用性および基礎科学 としての発展を推進するため民間企業との共同研究、 受託研究への発展を期待します 19 お問い合わせ先 室蘭工業大学 地域共同研究開発センター センター長 鴨田 秀一 TEL 0143-46-5861 FAX 0143-46-5879 e-mail [email protected] 20
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