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物理チャレンジ・オリンピックの報告を見ての感想
宇田英才教室
教室主 宇田雄一
How I think of the Report of Physics Challenge and Olympiad
Uda School
Yuuichi Uda
実験問題については私には評価眼が無い。理論問題について出題傾向の
批判を述べる。オリンピックという言葉に恥じない難しさの問題が出題
されているという点は認める。しかしどういう方向に難しくするかの選
択が間違っている。そのためむしろ行き過ぎた難しさも感じる。物理オ
リ ン ピッ クの 方 はほ とん ど の理 論問 題 が理 論物 理 学の 問題 に 成っ てい
ない。具体的な現象や装置に理論を適用する問題ばかりだ。理論物理学
は理論を問題に適用する営みではなく理論を構築する営みだ。物理チャ
レ ン ジは 物理 オ リン ピッ ク に比 べる と 理論 問題 が 理論 的だ が それ でも
ま だ 試験 され る 対象 が理 論 物理 学の 特 定の 能力 に 偏っ てい るし学 習進
度の観点から言って行き過ぎている(そういうテストで高得点を上げた
生徒も素晴らしいとは思うが)。高校までは理論の適用であり理論の組
み立てを学ぶのは大学からだという見切りはそれなりに妥当だと思う。
物 理 オリ ンピ ッ クは その 意 味で 高校 物 理の 試験 だ とい う事 な らそ れは
それで良い。しかしそれならば大学入試問題とは質的に違うんだとは言
う べ きで ない し 物理 に関 し て最 も将 来 性の ある 高 校生 を決 定 する 試験
とも言うべきではない。逆に受験物理とは違う本物の物理を標榜しそれ
に 関 して の高 校 生チ ャン ピ オン を決 め ると 言う な らま ず理 論 物理 学の
能 力 とは 何と 何 かを 最も 抽 象的 なレ ベ ルで 特定 し それ に基 づ いて それ
らの能力やそれらの能力を獲得できる素質(才能)を多面的に測定する問
題(IQ 試験とは違う)を作成・出題するべきだ。それなのに物理チャレン
ジ の 理論 問題 で は理 論家 の 賢さ に当 た る部 分は 全 て問 題文 に 書か れて
いてそのような賢さを被験者に要求する問題が全く無い。これでは問題
文が賢いのであって答案が賢いのではない。確かにこれぞ理論家の賢さ
だ と 言わ れる べ き考 えは 一 生か かっ て 一つ 出る か 出な いか だ から 高校
生に対してのしかも即日的な試験や競技で競える類のものではない。そ
の分難度を演出するために上の学年の問題に走る気持ちは分かる。しか
し 賢 さの 完成 品 は無 理で も その 予兆 を 検出 する 事は出 来る か もし れな
い。それをコンテストの中心に据えるべきだ。例えばどの高校生にとっ
て も 見飽 きた 教 科書 の記 述 につ いて 何 でも 良い か ら一 つで も 新し い事
を言えるかみたいな事だ。これは ネタ切れや防犯上の問題を伴なうが。