アジア到着スポット価格をいかに読むべきか

アジア到着スポット価格をいかに読むべきか
Masaki Mita
Head of Japan
Argus Media Group
7 October 2014, Tokyo
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論点
• アジア着スポット価格の変動
• スポット価格は需給を反映しているか
• 日本の需要を反映する価格
illuminating the markets
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アジア着スポット価格の変動要因
4
長期契約価格とはことなる値動き
• アジア着のスポットLNG価格と日本の財務省CIF価格との連動性は顕著に
見られない。
• 13年9月以降はその非連動性がより顕著に。
ANEA vs JLC ($/mn Btu)
25
20
15
10
5
ANEA (des NE Asia)
JLC
0
Source: Argus LNG Daily Service, MOF
illuminating the markets
5
原油との連動性も見られない
• アジア着のスポットLNG価格と原油価格の連動性も弱い。
ANEA vs Dubai (in % vs value of 2 Jan 2013)
140%
120%
100%
80%
60%
40%
20%
0%
ANEA (% vs 1 Jan 2013)
Dubai (% vs 1 Jan 2013)
Source: Argus LNG Daily Service, Argus Crude
illuminating the markets
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他地域のLNG価格とは連動
• 水準の差は大きいが、値動きの傾向はほぼ一致する。
ANEA vs Dubai (in % vs value of 2 Jan 2013)
25
20
15
10
5
ANEA (des NE Asia)
Des NE Europe
Des Brazil
0
Source: Argus LNG Daily Service, Argus Crude
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NBP先物とは連動も、Henry Hubとは連動せず
• 欧州のパイプライン価格はアジアのLNG価格とも連動性を見せる。
• 米国のパイプライン価格は連動性を見ない。
Spot LNG vs Natural gas futures ($/mn Btu)
25
20
15
10
5
0
ANEA (des NE Asia)
Des NE Europe
Des Brazil
NBP futures
Henry Hub futures
Source: Argus LNG Daily Service, Argus European Natural Gags,
Argus Natural Gas Americas
illuminating the markets
8
示唆
アジア着スポットLNG価格は・・・
•
•
•
•
•
日本の長期契約とは無関係に変動する。
原油価格とは無関係に形成されている。
世界各地のLNG価格と影響し合う。
LNG輸入依存が一定水準にある欧州のパイプライン価格と影響し合う。
国際的なLNG需給を反映して変動しているのではないか?
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スポット価格は需給を反映しているか
10
LNGの需給とはなにか?
• 長期的な需給バランスと短期的な需給バランスが併存する。
– 長期契約の需給バランスは長期的な(10~20年間の)価格変動の要
因に。
– スポット契約の需給バランスは短期的な(日次の)価格変動の要因に。
• 現在の価格と10年後、あるいは20年後の価格の比較考察はLNGというエ
ネルギーの有用性の考察と等しい。
• 今日の価格と明日の価格の比較考察は、事業運営の最適化の議論と等し
い。
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重要性を増す短期的視点
• 経済のグローバル化にともない、エネルギー供給の巧拙によっては国内顧
客の逸失、国外顧客の獲得にもつながる。
• 国内に形成されるエネルギー相場がその国の経済の国際競争力を直接的
に左右する。
• エネルギー資源の獲得競争に参画する国の数は過去とは比較にならな
い。
• 10~20年は、需要家企業がエネルギーコストの下落を待つ時間としては長
すぎる(待てない)。
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アジアの輸入量は毎月大きく変化する
• 最低月の数量を超える部分は、長期期契約では満たされない需要である
ことが示唆される。
• 14年1月は最低月を450万トン上回る。
Asian LNG imports (1,000t)
20,000
15,000
10,000
5,000
0
India
Thailand
Taiwan
China
S Korea
Japna
Source: Argus Global LNG
illuminating the markets
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欧州の月間変動はさらに大きい
• 14年5月は最低月を147万トン上回る。
European LNG imports (1,000t)
3,000
2,500
UK
2,000
Spain
1,500
Portugal
1,000
Italy
500
Greece
0
France
Belgium
Source: Argus Global LNG
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北米の月間変動も大きい
• 13年9月は最低月を557万トン上回る。
Americas LNG imports (1,000t)
1,000
800
600
Purto Rico
400
US
200
Canada
0
Brazil
Source: Argus Global LNG
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世界全体では月間最大500万トンの追加需要
• 14年1月は最低月を522万トン上回る。
World LNG imports (1,000t)
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
Americas total
Europe total
Asia total
0
Source: Argus Global LNG
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スポット価格は追加需要との連動性を示す
• 各地のスポット価格は世界全体の需給変動を反映している。
Spot LNG prices vs addtional demand ($/mn Btu, 1,000t)
6,000
25
5,000
20
4,000
3,000
2,000
15
10
1,000
5
0
0
World total
additional demand
(on Left)
ANEA (des NE Asia)
Des NE Europe
Source: Argus Global LNG, Argus LNG Daily Service
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各地のスポット価格はアジアの追加需要の影響受ける
• アジアのスポット価格は同地域の追加需要と強く連動。
Spot LNG vs additional demnad ($/mn Btu, 1,000t)
5,000
25
4,000
20
3,000
15
2,000
10
1,000
5
0
0
Asia total additional
demand (on Left)
ANEA (des NE Asia)
Source: Argus Global LNG, Argus LNG Daily Service
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各地のスポット価格はアジアの追加需要の影響受ける
(つづき)
• 欧州スポット価格は同地域の追加需要と連動せず、むしろアジアの追加需
要と連動。
Spot LNG vs additional demnad ($/mn Btu, 1,000t)
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
16
14
12
10
8
6
4
2
0
Europe total additional
demand (on Left)
Des NE Europe
Source: Argus Global LNG, Argus LNG Daily Service
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各地のスポット価格はアジアの追加需要の影響受ける
(つづき)
• 南米スポット価格は同地域の追加需要と連動せず、むしろアジアの追加需
要と連動。
Spot LNG vs additional demnad ($/mn Btu, 1,000t)
600
500
400
300
200
100
0
20
15
10
5
Americas total additional
demand (on Left)
Des Brazil
0
Source: Argus Global LNG, Argus LNG Daily Service
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20
示唆
• 世界各地のLNG需要はいずれも短期的に大きく変動する。
• アジアの変動が世界全体の変動と一致している。つまり、他地域の変動は
アジアの変動を相殺しきれていない。
• 変動部分は追加需要と考えられ、その増減がスポット価格に反映される。
• ANEAはLNGの短期的な需給変動を的確に反映する指標となり得ている。
• つまり、アジアの輸入事業者は、調達戦略を工夫することでスポットLNG価
格の上昇を抑制する、あるいは下げることが可能であることが示唆される。
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日本の需要を反映する価格
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日本だけの国際価格は存在し得ない
• 日本はアジア太平洋市場、つまり国際市場の構成要素。
• 日本は天然ガスのほぼ全量を国際LNG市場から調達。
• 裏を返せば、国際市場には日本の需要を色濃く反映した価格が形成され
ている。
⇒ しからば、国際価格の形成に積極的に参画するべき。
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日本だけの価格は国内価格
• 日本の需要だけを反映する価格を形成するには、競争的な国内市場を実
現する必要がある。
– Henry Hub価格もNBP価格も競争的な国内市場に形成される国内価
格。
– ただし、日本の国内価格は輸入コストの水準と大きくかけ離れることが
できない。
– また、取引所を創設するだけでは市場は実現しない。競争的な現物取
引が実践されることが不可欠。
illuminating the markets
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日本の追加需要とアジア着スポットは概ね連動
• 日本が追加を調達しない時期のANEAは確実に下落している。
ANEA vs Japan's additional demand ($/mn Btu, 1,000t)
1,800
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
25
20
15
10
Japan additional demand
(on Left)
5
ANEA (des NE Asia)
0
Source: Argus Global LNG, Argus LNG Daily Service
illuminating the markets
25
韓国の影響も小さくない
• 14年2月は韓国需要がスポット価格を支えた。
ANEA vs S Korea's additional demand ($/mn Btu, 1,000t)
2,500
25
2,000
20
1,500
15
1,000
10
S Korea additional
demand (on Left)
500
5
ANEA (des NE Asia)
0
0
Source: Argus Global LNG, Argus LNG Daily Service
illuminating the markets
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中国は上昇要因になるも下落要因ではない
• 13年12月と14年1月は価格を押し上げる需要源となったが、他の月におい
ては日韓需要の後退による価格下落を享受。
ANEA vs China's additional demand ($/mn Btu, 1,000t)
3,000
25
2,500
20
2,000
1,500
15
10
China
500
5
ANEA (des NE Asia)
0
0
1,000
Source: Argus Global LNG, Argus LNG Daily Service
illuminating the markets
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台湾は日韓需要の隙をついて安価調達を実現
• 価格が低い時に多く追加調達し、上昇局面では調達していない。
• 反対に、台湾の逆張りがアジア価格の上昇を幾分か抑制。
ANEA vs Taiwan's additional demand ($/mn Btu, 1,000t)
500
25
400
20
300
15
200
10
Taiwan additional
demand (on Left)
100
5
ANEA (des NE Asia)
0
0
Source: Argus Global LNG, Argus LNG Daily Service
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インドも台湾同様の動き
• ただ、インドの追加需要が日韓のそれと重なると価格への上方圧力が大きく
かかる。
ANEA vs India's additional demand ($/mn Btu, 1,000t)
500
25
400
20
300
15
200
10
India additional demand
(on Left)
100
5
ANEA (des NE Asia)
0
0
Source: Argus Global LNG, Argus LNG Daily Service
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示唆
• 日本は国際市場の重要要素であり、価格に強い影響力を持つことが可能。
• アジア着スポット価格は既に、日本の追加需要を色濃く反映している。
• 日本の調達動向と逆張りする国は比較的容易に調達コストを抑制すること
ができている。
• 然るべきパートナーと然るべき協調体制を構築すれば、日本はより強い価
格コントロール能力を得ることができる。
• 「日本の価格」にこだわるならば競争的な国内市場の構築と国内価格の形
成が不可欠。
illuminating the markets
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ご清聴ありがとうございました。
三田 真己
+81 3 3561 1805
[email protected]
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