熱力学基礎 Thermodynamics 2014 (第2回) 9月29日(月) メールアドレス:[email protected] HPアドレス : http//www.msre.kumamoto-u.ac.jp/ process/ Thermo/home.html エネルギーを媒介するもの 物質に対するエネルギーの流れとは,対象としている物質とそれを取り巻く環境(外界)の間のエネルギー のやりとりである。ここでやりとりに使われるエネルギーの形態は本講義では熱と仕事に限定する。今回は 熱についてしっかり理解する。 応用 G=H-TS 物質の温度と熱の関係 物質は分子や原子で構成されており,それぞれが,並進運動,回転運動,振動運動をしている。これらの運 動エネルギーはトータルとして物質の内部エネルギーUとしてカウントされ,一般的にそのエネルギーとそ の物体の温度Tには正の相関がある。外界から熱が与えられると,内部エネルギーが増加し,温度が上昇す る。その上昇の仕方は物質によって異なっていて,物質の持つ運動エネルギーの種類(受け入れ先)が多い ほど温度は上昇しにくくなる。この温度上昇のし難さは比熱とよばれ、物質に固有の値(物性値)である。 (熱量) = (比熱) (温度変化) ΔQ = C ΔT H S Q. W 不可逆 1st 2nd C:比熱(熱容量) 物質の温まりにくさ,冷めにくさをしめす。 Δ:差を示す。 気体の比熱 例えば,単原子分子 2原子分子 2つの回転運動 状態の変化 温度上昇,体積増加 外界から熱 を与える 単原子分子では 並進運動のみ 1つの振動運動 速度エネルギーが増加 エネルギー等分配の法則 1つの原子,分子に対して1つの自由度に 等量のエネルギーが分配される。 2つのエネルギー 1 kT 2 B 並進 1原子分子(He, Ne, Arなど) 回転 3 2原子分子(H2, O2, N2など) € 3 1 kT 2 B 振動 0 € 2 0 € kB T € 1 N A :アボガドロ定数 kB N A = R 1molの U = €3 RT 2 U = 7 RT 2 温度を上昇させるために自由度に比例する分のエネルギーが必要になると考える。気体 € 分子の運動や振動のエネルギーはそのすべてを包括して,内部エネルギー, Uとする。 原子や分子などの小さい粒子に対しては,大量数の粒子 に対する分布とその平均値で考える(統計力学の入口)。 Maxwell-Boltzmann 分布 (速度がv∼v+dvの範囲にある分子の個数)/(全粒子数) 3/2 € 分子運動論より 並進の自由度3に対して€ 3R 定積比熱 CV = 3 R 2 CV = 7 R 2 1molの 定圧比熱 CP = 5 R 2 CP = 9 R 2 € € R :気体定数=8.31 J/K mol 1 mv 2€= 3 k B T 2 2 € 1つの自由度 1 2 kBT 速度vの粒子の存在確率は温度に依存し,遅い粒子から速い粒 子まで広範囲に分布する € € ! m $ ! mv 2 $ 2 N(v)dv 8k B T 平均速度は v a = F(v)dv = = 4π # exp & #− & v dv N πm " 2 π k BT % " 2kBT % v 2 = v 2 + v 2 + v 2 x y z 固体の比熱 2原子分子で は並進運動に 加えて、回転 運動、振動運 動がカウント される。 3方向の 並進運動 Dulong-Petit の法則(CV=3R) あまり差がない ので,等分配則 に正当性がある v= 3k B T m Debye比熱を簡単に表現 物質 Debye温度θD 3x 90 CV = 3R 4D(x D ) − xD D€ T >> θ D CV → 3R € Pb 3 e −1 Ag 213 € CV 12π 4 R T Al € 389 3 xD x 3 θD T << θ C = D V D(x D ) = 3 ∫ 0 x dx Diamond 1890 5 θ D Debye比熱 e −1 xD 電子比熱 3 € T C ∝ T € C xD = €V ∝ T €V 液体の比熱 液体は固体に近い θD € € 0 € θD 温度,T € € € 物質の比熱を表す式 配布資料1 温度の依存性は多項式で近似 € CP = a + bT + cT −2 + dT 2 € データブック等から物質の比熱を引用する。この場合,後出の定圧比熱が主流である € E € € 問題2* 左に示すボルツマン分布を用いて速度に対する速度エネルギーの存在確率を I(E) ∝ exp− 導出して Maxwell-Boltzmann分布(配布資料2)を導きましょう。 kB T A € 問題3 600Kのヘリウムガス(単原子分子)1molを容器に密封して7kJの熱を与えました。温度は何度になるで hν θD = D kB θD しょうか。 問題4 温度800Kの物体A(1mol)を温度1100Kの熱源に接触させました。物体Aの温度は最終的に熱源と同 € じ温度になります。物体Aの比熱はDulong-Petitの法則に従うとして,熱源から物体Aに移動した熱量を計算 して下さい。 熱 熱源 1100K 注意! 本講義で登場する熱源とは,無尽蔵に熱を蓄えていて,熱の出入りがあっても温度が変化しない仮想的な物体です。
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