Construction newsletter April 2014 - Japanese

建設ニュースレター
(第 62 号)
シンガポールにおける最近の動向
シンガポールは、多くの重要な建設・インフラプロジェクトの
2014 年 4 月 | 東京および
シンガポール・オフィス
実施地として知られていますが、近年ではアジア地域をはじめと
する国際的な建設関連の紛争解決地としての認識も高まる傾向
にあります。このような背景に鑑み、本号ではシンガポールでの
建設関連分野での動向をいくつかご紹介いたします。
当事務所のニュースレター
東京オフィスでは、定期的に以下の
各分野に関するニュースレターも発行
しております。配信をご希望の場合は、
下記よりご希望の分野を明記の上、
こちらまでご連絡ください。
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国際商事調停のハブとしてのシンガポール
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シンガポールの最新判例動向
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紛争回避
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およびテレコミュニケーション
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しての地位を築いたシンガポール国際仲裁センターの成功に倣い、シンガポールを国
•
ラテン・アメリカ*
際商事調停の中心地として発展させるべきとする提言書を歓迎する旨の報道発表を行
•
競争法*
いました。様々な建設関連の紛争において調停が有効な紛争解決手段となり得る
•
雇用法*
国際商事調停のハブとしてのシンガポール
2013 年 12 月に、シンガポール法務省は、アジア地域における紛争解決のハブと
ことを考慮すると、このことは同地域における建設セクターにとっても歓迎すべき進展と
言えます。
* 不定期発行
法務省が現在その実施について検討を行っている同提言書では、シンガポール国際
調停機関(「SIMI」)とシンガポール国際調停センター(「SIMC」)の設立が提唱されて
関連リンク
います。SIMI が調停人の認定および調停人自身の職務に対する意識や倫理の確保
>
Herbert Smith Freehills
を担う一方、SIMC は調停に関する商品やサービスの提供を行うことになります。SIMC
>
Our construction and
engineering disputes practice
>
Our Tokyo office
>
Our South East Asia practice
は既存のシンガポール調停センターと並存することになりますが、前者が国際調停の
発展に重点を置いて活動するのに対し、後者は従来通り国内の調停や建設関連の
紛争裁定を中心に取り扱うことになります。
提言書では、シンガポールにおける調停の枠組みを、とりわけ調停による和解の執行
可能性に関して強化することを目的とした法律制定の提案もなされています。また、アジアにおける国際仲裁の中心地としての
シンガポールの地位をさらに参考にして、現在仲裁に適用されている税制上の優遇措置を調停にも適用させることも提言されています。
これらの提言が立法化された場合には、発注者および請負者の双方にとって、建設関連の紛争を友好的に解決するために、一層
確固たる選択肢が増えることになるでしょう。
シンガポールの最新判例動向
地中に埋没したマンホールにクレーンが転落した事故に関する責任の分担が争点となった Jurong Primewide Pte Ltd v Moh Seng
Cranes Pte Ltd 事件([2014] SGCA 6)において、控訴院は、建設現場での労働環境の安全性に対し元請業者と下請業者が負う義務
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の範囲について、いくつかの指針を示しました。裁判所は、建設現場での作業は労働
安全衛生法に基づく制度(「WSH 制度」)の範疇に属する事項であると述べつつも、
バックナンバー
制定法上の義務が存在していれば、それ自体によりコモンロー上の注意義務やさらには
2014 年 3 月号
私的訴権が生じることにはならないと判断しました。裁判所はさらに、このような制定法上
の義務はむしろ、コモンロー上の過失責任を補完するものであると述べました(実際、
契約上の曖昧な点に対処する手段
としての優先順位条項の効果とは
WSH 制度が適用される場合には、ほぼ必ずコモンロー上の過失責任が適用可能となる
2014 年 2 月号
傾向にあります)。控訴院は、下級裁判所の第一審判決を覆し、元請業者と下請業者
双方の過失責任および WSH 制度に基づく義務違反を認めました。
イングランド高等法院、請求払
ボンドに基づく支払請求の差止め
を認める際の基準を追認
Qwik Built-Tech International Pte Ltd v Acmes Kings Corp Pte Ltd 事件([2013]
2014 年 1 月号
SGHC 278)では、高等法院は、モルディブにおける建築・建設プロジェクトに関する支払
期限が到来した種々の金銭債権を検討する際に、建設業界で一般に適用されている
契約法における二つの原則に依拠しました。その第一の原則は、請負者が契約に基づき
提供義務を負う資材の提供を怠った場合には、その資材の実際の原価に基づいて契約
価格が減額されるというもので、第二の原則は、請負者が特定の支払いを受ける権利を
有しているものの、当該支払いの金額について合意がなされていない場合には、請負者
には合理的な金額の報酬が支払われるべきであり、またそのような金額の合理性に
ついては請負者がこれを裏付ける証拠を提出する責任を負うというものでした。
Choi Peng Kum and another v Tan Poh Eng Construction Pte Ltd 事件([2013]
SGHC 272)において、高等法院は、支払請求の有効性やシンガポール建築家協会の
アジア季刊版:遅延分析手法-
後編
2013 年 12 月号
契約を有効に終了させる方法
2013 年 11 月号
カタールの大規模プロジェクト市場
で成功するために
2013 年 10 月号
アジア季刊版:遅延分析手法-
前編
建築契約約款("Articles and Conditions of Building Contracts")における特定の条項
2013 年 9 月号
の解釈を含め、広範にわたる問題について審理を行いました。これらのうち、制定法に
工事の完了
基づく紛争裁定制度において裁判所に対して供される担保の取扱いに関する裁判所の
2013 年 8 月号
判断は、特筆すべき興味深いものといえるでしょう。建築・建設業における安全な支払い
保留権
に関する法律("the Building and Construction Industry Security of Payment Act")
2013 年 7 月号
(「SOP 法」)第 27(5)条は、裁定取消の申請を行う当事者に対し、「当該手続の終局
アジア季刊版:目標コスト契約
判決」が言い渡されるまで、未払いの裁定額を裁判所に供託することを義務付けています
が、これに関し高等法院は、この場合における「終局判決」とは、第一審の終局判決のこと
を指しており、全ての上訴手段を使い尽くした後に言い渡される判決を意味するものでは
ないと判示しました。
2013 年 6 月号
都合による契約終了
2013 年 5 月号
英国化学工学協会の契約条件書
W Y Steel Construction Pte Ltd v Osko Pte Ltd 事件([2013] SGCA 32)においても、
高等法院は、SOP 法、とりわけ、裁定人は、裁定申請に対する答弁書に記載されている
支払留保の根拠のうち、支払請求に対する返答書で言及されなかったものについては
2013 年 4 月号
アジア季刊版:紛争委員会による
裁定の執行可能性
考慮してはならない、とする SOP 法第 15(3)条に定める要件について検討を行いました。
本件の判決によれば、この要件は、被申立人が支払請求に対する返答書をまったく提出
しなかった場合においても、裁定人は、自身が負う自然的正義の原則を遵守する義務にも拘わらず、支払留保の新たな根拠を述べた
被申立人による提出書面を検討する権限を有していないことを意味します。
最後に、近時の Tech-System Design & Contract (S) Pte Ltd v WYWY Investments Pte Ltd 事件([2014] SGHC 57)判決に
おいて高等法院は、シンガポール法に準拠する履行ボンドにおける受益者の支払請求を行う権利について、このような請求を認める
ことが非良心的であるとの強力な疎明がある場合に、これを制限することができる旨を追認しました。しかしながら、本件の事実関係のもと
では、申立人はこの基準を満たしてはおらず、支払請求に対する差止めは認められませんでした。本件では、履行ボンドに基づく支払
請求の差止めを認める基準が非常に高く、シンガポールの裁判所が請求払ボンドにおける受益者の権利を容易には制限しないことが、
改めて確認されました。
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ピーター・ゴッドウィン
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