11/25の出席確認シートに記載されていた質問に回答します。 まだ不明なところがあれば、 go_chiba(a)eng.hokudai.ac.jp まで連絡のこと。 WthやWhなど出力の単位が多々あってよく分からない: W: ・ワット。J/s。毎秒あたりの発生エネルギー量。 ・イメージとしてはエネルギー発生「密度」のようなもの Wth: ・熱(thermal)出力。We(電気(electric)出力)と区別して使う。 ・一般的に、発電は熱エネルギーから電気エネルギーの変換により行うが、熱エ ネルギー全てを電気エネルギーに変換することは出来ないので、熱出力(Wth)と 電気出力(We)は異なる(Wth>We)。 Wh: ・ワット時。1Wで1時間(hour)エネルギーを出した場合は「1Whのエネルギーを出 した」と言う。1Wは1[J/s]なので、1[Wh]=1[J/s]×(60×60)[sec]=3,600[J]。 ・イメージとしてはエネルギーの「総量」「積分量」のようなもの。 Wd: ・Whと同様の概念だが、この場合は1Wで1日エネルギーを出したときのエネル ギー量。1[Wd]=1[J/s]×(24×60×60)[sec]=86,400[J]。 ・0.5Wで2日間のエネルギーの総量:0.5×2=1.0[Wd] MWDの計算/意味が分からない、MWD(日毎)なのに10年間に発生するエネルギーとは?: 前のスライドを参照のこと。 MWDは、「一日あたり」ではなくて、「MW×Day」。原発10基を50年動かしたときに、 「10×50=500(基年)の運転をした」というのと同じような話。 もっと分かりやすい例だと、道路を作るために500人が10日間働いたとき、「この道 路は5000人日の労働で作られた」というのと同じような話。 燃焼度が難しい/理解しずらい: 原発の燃料(核燃料)は、使用に伴い、核分裂性物質(U‐235)が減っていくので、 核分裂しにくくなります。従って、核燃料が「どれくらい燃えたか(核分裂したか)」を 把握する必要があります。そのためのパラメータが「燃焼度」です。 ある原発に10[t]の核燃料が装荷されたとします。100日運転したとすると、その期 間を通してある量のエネルギーを出したことになります。それが[MWd]で示されま す。例えば1,000[MW]の出力で運転したとすると、100日の運転なので、 100,000[MWd]のエネルギーを合計で出したことになります。10[t]の核燃料が 100,000[MWd]のエネルギーの分だけ「燃焼した」ことになりますが、これを1[t]あた りに直したものが「燃焼度」になり、この例では10,000[MWd/t」となります。 燃焼度についての問題の解説: 1gのU‐235が全て核分裂したときの燃焼度: 1gのU‐235が全て核分裂したときのエネルギーはおおよそ1MWです。従って、「1g のU‐235」が1MWのエネルギーを放出したとすると、この「1gのU‐235」の燃焼度は、 1[t]あたりに直すことで、1,000,000[MW/t]となります。 1gのウラン燃料(3%濃縮)中のU‐235が全て核分裂したときの燃焼度: 1gのウラン燃料にはU‐235が0.03g含まれているので、これが全て核分裂したとき のエネルギーはおおよそ0.03MWです。従って、「1gのウラン」が0.03MWのエネル ギーを放出したとすると、この「1gのウラン」の燃焼度は1[t]あたりに直すことで、 30,000[MW/t」となります。 「ウラン燃料」や単に「燃料」と書かれたときにU‐235で考えるのか、U‐238、UO2で考えるの か?: 燃焼度の場合には、核燃料に含まれる「重核種」の重量で考えます。軽水炉の核 燃料は一般的にはUO2、つまり酸化物燃料ですが、酸素の重量は考えません。 原子炉の定格出力についてよく分からない: 電力需要 時間 上のように電力需要が時間とともに変動する場合、常に電力を供給で きるように原発の出力は赤線のように決めます(少し余裕をもたせてい ます)。これが「定格出力」。 ただ実際は、つねにこの定格出力で動かすわけではありません。 もし需要に沿って出力を変動させて運転させた場合、「平均出力」は黄 緑の線になります。「燃焼度」を計算する場合は、この平均出力で計算 すべきです。 ちなみに(日本の)原発ではこのように需要に応じて出力を変動させる ということはしません。 1グループで原発を複数体作っても大丈夫でしょうか?: 大丈夫です。 バックリングとは?バックリングの値の大小は何を表す?: (幾何学的・形状)バックリングは、原子炉内の中性子数(と速度の積)の 空間分布のひずみの程度を示すパラメータです。空間分布のひずみが大 きいとバックリングが大きくなりますが、この場合は空間的な勾配が大きい ことを意味しますので、中性子の原子炉からの漏れが大きくなっていきま す。逆に、ひずみが「ゼロ」、つまり、バックリングがゼロになった場合は、 空間的な勾配がない、つまり空間的な情報を持たない無限の原子炉となり、 中性子の体系外への漏れはゼロとなります。 詳しくは学部4年前期の「原子炉物理」で解説しますが、「どうしても今理解 したい」という人は、連絡して下さい。別資料を準備します。 中性子拡散方程式について理解できていない: 原子炉の中を飛び交う中性子は、それぞれあるエネルギー(速度)を有し ています。また、原子炉内の位置に、その存在量(確率?)は依存します。 つまり、エネルギーと位置に依存する量ですが、これを記述するのが拡散 方程式となります。 詳しくは学部4年前期の「原子炉物理」で解説しますが、「どうしても今理解 したい」という人は、連絡して下さい。別資料を準備します。 拡散方程式からの臨界条件の適用がよく分からない: これは「幾何学的バックリングと材料バックリングが同一となる」という臨界 条件についての質問だと思いますが、、、1枚のスライドでは難しいですね。 詳しくは学部4年前期の「原子炉物理」で解説しますが、「どうしても今理解 したい」という人は、連絡して下さい。別資料を準備します。 燃料集合体の出力と濃縮度、燃焼度の関係が分からない: 出力ではなくて、「中性子増倍率」と濃縮度、燃焼度の関係のことだと思いますので、その 前提で回答します(出力は「任意」です。出力を増加させたかったら、中性子束のレベルを 高くしてやればよいです)。 中性子増倍率は核分裂連鎖反応の起こり易さに対応するパラメータです。ウラン燃料に含 まれるU‐235の量が多くなる(濃縮度が高くなる)と、逆に中性子を無駄食いするU‐238が少 なくなるので、核分裂連鎖反応は起こり易く、つまり中性子増倍率は大きくなります。 また、核燃料を使い続けると、U‐235の量が減っていきますので、相対的にU‐238の量が多 くなり、核分裂連鎖反応が起こりにくく、つまり中性子増倍率は小さくなっていきます。 濃縮度高 U‐235濃縮度を高くすると 増倍率は全体的に高くなります。 増倍率 核燃料が使われるのに従い 中性子増倍率は減少します 濃縮度低 燃焼度 Keffとk∞と10年間の関係がよく分からない: 無限増倍率 実効増倍率 1.0 10年運転に相当 燃焼度 ・原子炉を運転する(臨界を達成する)ためには実効増倍率が1.0より大きくなければなり ません(1.0より大きい分は制御棒挿入等で対応可能)。 ・原子炉の核燃料は運転に伴って性能が悪化(増倍率が低下)するため、運転期間の最 後に実効増倍率が1.0程度になるようにすればOKです。 ・実効増倍率は無限増倍率と中性子の漏れない確率の積なので、無限増倍率は上のよ うなカーブになります。 AP1000では制御系により空冷から水冷に切り替わっているが、制御系が機能しなかった場 合、冷却が空冷のみに依存し、冷却が間に合わなくなると思うが、どのような対策がとってあ るのか?: 格納容器冷却のことかと思います。論文の該当部分を貼り付けておきます。 濡れぶち長さがあまり理解できていない: 流体が接する壁面の長さが濡れぶち長さの定義です。 流体の流路の形状は複雑になりますが、それを等価な円筒に置き換えられるなら ば、非常に具合が良くなります(いろいろな流体基礎実験は円筒で行われ、その データから経験式等がつくられるので)。 円筒では、面積Aと周長P、直径Dの間に、D=4A/Pの関係が成り立ちます。そこで、 任意の流路について、面積と周長(=濡れぶち長さ)は分かりますから、この式を 便宜的に使うことで、「円筒と等価な」直径を求めることができます。これが「水力 等価直径」です。 流路の周長、すなわち濡れぶち長さですが、計算の目的に応じて、加熱されてい る壁面のみ考える場合もあります。 核分裂連鎖反応の過程の確率表示がよく分からない: 以降のスライドに補足資料を追加します。 無限体系中の核分裂連鎖反応 U235の核分裂により生まれ 240個 た高速中性子 [~2MeV] 高速中性子によるウラン 238の核分裂で加わる +10個 250個 高速中性子は減速を始める [数keV~数eV] -20個 230個 減速して熱中性子になる [~0.025eV] 326個 ウラン238の共鳴吸収 で食われる -40個 減速材、その他の構成 材にムダ食いされる -54個 捕獲吸収反応でムダ 食いされる 190個 ウラン235に吸収される ウラン235の核分裂反応 よって平均2.4個の高速 中性子を生む 136個 無限体系中の核分裂連鎖反応 240個の中性子から326個の中性子が生成: U235の核分裂により生まれ 240個 た高速中性子 中性子増倍係数=326/240=1.358 [~2MeV] 高速中性子によるウラン 238の核分裂で加わる +10個 250個 高速中性子は減速を始める 中性子増倍係数 =(次の世代の中性子数)/(今の世代の中性子数) [数keV~数eV] ウラン238の共鳴吸収 -20個 で食われる 230個 減速して熱中性子になる (次の世代の中性子数) =(今の世代の中性子数) [~0.025eV] ×(高速核分裂により増える率)-40個 減速材、その他の構成 材にムダ食いされる 326個 190個 ウラン235に吸収される ×(ウラン238の共鳴吸収を逃れる確率) ×(燃料核種に吸収される確率) 捕獲吸収反応でムダ ウラン235の核分裂反応 ×(燃料核種が核分裂を起こす確率) -54個 食いされる よって平均2.4個の高速 ×(核分裂あたりに発生する中性子数) 中性子を生む 136個 無限体系中の核分裂連鎖反応 U235の核分裂により生まれ 240個 た高速中性子 [~2MeV] 高速中性子によるウラン 238の核分裂で加わる +10個 250個 高速中性子は減速を始める [数keV~数eV] -20個 230個 減速して熱中性子になる [~0.025eV] 240個が250個になる: 250/240=1.042 ウラン238の共鳴吸収 で食われる 250個が230個になる: 230/250=0.92 減速材、その他の構成 材にムダ食いされる (次の世代の中性子数) -40個 326個 =(今の世代の中性子数) 190個 ウラン235に吸収される ×(高速核分裂により増える率) ×(ウラン238の共鳴吸収を逃れる確率) 捕獲吸収反応でムダ ウラン235の核分裂反応 ×(燃料核種に吸収される確率) -54個 食いされる よって平均2.4個の高速 ×(燃料核種が核分裂を起こす確率) 中性子を生む 136個 ×(核分裂あたりに発生する中性子数) 無限体系中の核分裂連鎖反応 (次の世代の中性子数) =(今の世代の中性子数)U235の核分裂により生まれ 240個 た高速中性子 ×(高速核分裂により増える率) [~2MeV] ×(ウラン238の共鳴吸収を逃れる確率) +10個 ×(燃料核種に吸収される確率) 250個 高速中性子は減速を始める ×(燃料核種が核分裂を起こす確率) ×(核分裂あたりに発生する中性子数) [数keV~数eV] -20個 230個 減速して熱中性子になる -40個 190個 ウラン235に吸収される ウラン235の核分裂反応 よって平均2.4個の高速 中性子を生む 減速材、その他の構成 材にムダ食いされる 190個のうち136個: 190/230=0.716 -54個 136個 ウラン238の共鳴吸収 で食われる 230個のうち190個: 190/230=0.826 [~0.025eV] 326個 高速中性子によるウラン 238の核分裂で加わる 捕獲吸収反応でムダ 食いされる 無限体系中の核分裂連鎖反応 (次の世代の中性子数) =(今の世代の中性子数) ×(高速核分裂により増える率) ×(ウラン238の共鳴吸収を逃れる確率) ×(燃料核種に吸収される確率) ×(燃料核種が核分裂を起こす確率) ×(核分裂あたりに発生する中性子数) (次の世代の中性子数) =(今の世代の中性子数) ×高速核分裂因子ε ×共鳴吸収を逃れる確率p ×熱中性子利用率f ×中性子再生率η k=(次の世代の中性子数)/(今の世代の中性子数)なので、 k p f
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