2014/6/10 KUHEP colloquium 内藤大地

UCNを用いた重力で
の量子効果測定
2014/6/10 KUHEP colloquium
内藤大地
introduction 1-実験目的-
2014/6/10
KUHEP colloquium
・量子力学ではエネルギー凖位は量子化されている(電子と原子核の束縛系等)。
→重力による束縛系でもエネルギー凖位が量子化されているハズ。
・重力が他の力より弱いのは余剰次元にも伝播するため。by ひも
→余剰次元に伝播するため、弱い短距離力があっても良いのではないか?
→重力との束縛状態に、量子力学からの予測からのズレがないか見る。
・重力は非常に小さいため、重力の量子効果測定は困難。
・2002年に初観測(nature掲載)
→・精度が足りず、新物理探索までは行かなかった。
・実験方法を改良して精度を上げ、追試+新物理探索を目指す。
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introduction 2-重力による束縛系-
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・粒子が板の上を弾性散乱している系のシュレディンガー方程式 g(地球の重力で束縛)
・この方程式はAiry functionを仮定すると解析的に解く事ができて、
point!:zとEに対して量子化されている。
a :規格化定数
・測定量:束縛状態でのz位置毎のevent数分布
→量子効果で予測される存在確率分布と比較。
・問題点:
・不確定性原理の壁、ΔEΔt∼h
←peV orderのstate実現にはms orderの時間が必要。
・どうやって”重力以外無視できる”状態を作りだすか?
・どうやってz位置毎のevent数を測定するか?
・nが大きい所まで見ると分布が鈍ってしまう。
→なるべくnが小さい凖位だけみるには?
cf.n=1でz@最大確率∼6µm
存在確率分布の凖位とz依存性
Ultra Cold Neutron 1 -重力以外無視-
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・Ultra Cold Neutron:非常に遅い中性子(∼10m/s)
UCL
∼100neV
・ms orderの束縛状態を実現。
E
・波としての性質が強くなる
v
∼10m/s
λ
∼100nm
波動方程式の一般解
ポテンシャルVを伝わる波の散乱振幅fはグリーン関数を使って解くと
波数が0の極限(低い運動エネルギーの時)をとる(a = -f)
・UCLの場合ド・ブロイ波長が原子核の数百倍になり、原子核単体との相互作用ではなく
原子核群の核力の平均場(フェルミポテンシャル)との相互作用とみなされる。
N:原子核群の個数密度、b:a×mn/mµ 、mµ:有効質量
point!:低速中性子と原子核の散乱は波と井戸型ポテンシャルの散乱と同じ。
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Ultra Cold Neutron 2 -重力以外無視-
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・一方、波だと思うとエネルギー保存則は波数とポテンシャルの積分を用いて、
・k0が4πρ以下だと、kが虚数になる!!
真空
k0
k'
→中性子の波はポテンシャル中に入れず、境界で全反射される。
・例えばNiだと運動エネルギー200 neVに相当、UCLの運動エネルギーはそれより小さい。
→固い板の上を粒子が跳ねる描像に近似できる!!
・中性粒子なので電磁気の効果を無視できる。
・スピンが磁場から受けるポテンシャルも無視できる。
→地球からの重力によるポテンシャルは102 neV/mに対して60 neV/T
・長寿命で取り扱いが楽。
UCNは重力の量子効果を見る為の有力な手段!!
VF
実験原理-エネルギー凖位とz位置の測定100µmm
UCL
(Vx∼10m/s)
"粗い鏡"
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neutron converter
charged particle detector
Z
"スベスベな鏡"
200mm
X
・UCNは鏡への入射位置でvertical 方向の運動量が0になるよう設計、自由落下を捉える。
・vertical方向のエネルギーが大きい又はzが大きい奴:
・"粗い鏡"で散乱、最終的に”粗い鏡面”に吸着又は外に吐き出される。
・ vertical方向のエネルギーが小さくzが小さい奴:
・重力に束縛されつつ検出器に入射。
→・エネルギー凖位の低いeventだけ集める事が出来る。
・検出器でのz位置分布を測定する事で重力の量子効果を見る。
現在のlimit:検出器の位置resolution(∼数µm)→なんとか位置resolutionをあげる事は出来ないか?
←今回のコロキの実験(2011年8月、フランスのラウエ-ランジュバン研究所で測定)。
実験セットアップ 1-How to make UCN-
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ミラー(Ni蒸着0.15mm, 7cm幅690枚)
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exit
(Doppler Shifter)
中性子
0.8
鏡の付いたタービン
5m
中性子(3.4×7cm2)
回転
・鏡をビームと同じ方向に回し(∼25m/s)、
中性子を鏡に追突させて運動量を奪う(50m/s→∼10m/s)。
・7cm径、0.15mm Ni蒸着
・"バントの要領"で特定のmomentumのneutronを減速させ、
・パイプの長さ:13m
出口に導く
ブラッグ反射を用いることで、
位相空間上での密度を上げる。
原子炉からの中性子を
→単色UCNを生成。
非弾性散乱で減速させる。
flux
元の中性子
4.5×1014cm2/s
UCN
2.6×104cm2/s
実験セットアップ 2-UCN measurement-
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3Heを使ったガスチェンバー。
n + 3He→3H + 1H + 0.764 MeV
chopper
・V = 9.4±2.8 m/s
・速度の広がりはsystematicに
計上。
実験セットアップ 3 -z位置測定方法の改良-
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・実験セットアップは3つの部分から構成。
(1/100にreduction)
(10Pa)
1.重力による束縛状態を作り、
実験に必要ない高い凖位のUCNを排除。
2.凸面鏡で高さ方向の分布を拡大。
(Cd、検出器で
3.ピクセル検出器で位置を測定。
測定中は閉じる)
拡大図
・2番の手法が前実験からの大きな改良。
3
2
1
・3番についても高分解能CCDを新規開発。
・以下、3つをそれぞれ説明。
実験セットアップ 4 -重力束縛と高凖位排除-
ここを中性子が通過
・コリメータのサイズは200mm×50mm×100µm。
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実験セットアップ 5 -拡大ロッド-
・ロッドの底をカットして床と接着。
・100µmの分布を25倍の2.5mmに拡大。
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実験セットアップ 6 -CCD-
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・荷電粒子がCCD内でシャワー(electron-hole対)を起こし、クラスタとして検出される。
・クラスタの重心をhit位置として定義、位置分解能は3.4µm。
・重力による検出位置のズレは0.1µm以下(MC)、無視する。
・中性子に対するefficiencyは44.1%。
Wo/G Vmin Vmax
実際の写真
解析の流れ1
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得られたz位置分布(赤はMC)
・CCDでZ分布は取得できた。さて、どう味わうか?
→予想されるZ位置分布を計算、likelihood でfitして評価。
・4つの領域に分けて計算。
4番の手前での各凖位の存在確率
Pn(β, γ) を計算 β:床による吸収率、γ:1秒間に天井が吸収する数
解析の流れ2-ウィグナー関数-
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・検出器に当たる位置はzだけでなく、粒子の持つ速度にも依存する(x方向は一定とみなす)。
→確率分布を出すには位相空間を考慮する必要がある。
ウィグナー関数:ある位置、運動量での存在確率。
・古典論では粒子の運動はボルツマン分布に従う。
→シュレディンガー方程式を満たすように変更。
(P∝exp(-E/kBT)→P∝Q×exp(-H/kBT)、Q:オペレータ)
・線形ポテンシャルの場合、ウィグナー関数に従う運動は
古典力学での運動と一致する。
→左の分布を0.1µm×0.1m/s各に分割し、
それぞれの領域でのピクセルhit位置を計算、重みづけ。
→ピクセル上でのZ位置分布を作成。
前ページの確率分布を代入した際のz-vz分布
解析結果1
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・fittingの際のfree parameterは6つ。
Vz<0
s:シグナルの割合(一様BGが1-sあると仮定)
Vz>0
θ:CCDの水平面での回転角
Z0:検出器でのhit位置のオフセット(Zmeasured=Ztrue + Z0)
d:CCD、ロッドのz方向のズレ
γ: 1秒間に天井が吸収する中性子数
β:床による吸収率
Vz>0
Vz<0
fittingのχ2/NDFは
量子力学:377.6/394 (p = 0.715)
(a)分布全体
(b)1.2mm以下を拡大
(c)古典力学で計算した分布でfit
古典力学:439.2/395(p = 0.062)
重力の量子効果が強くfavor。
解析結果2
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・systematic errorの見積もり
UCNの速度のバラツキ
凸面鏡の収差(vzに起因)
CCD表面のデコボコ
!
レーザー顕微鏡での測定結果
UCN
・Δzのsystematicとしては前実験の半分程度に。
・systematicがまだ多く、新物理探索はまだ先。
今後のsystematic の軽減
・CCD表面のでこぼこ:レーザー顕微鏡でCCD側面を測定。
・現在の半分程度にsystematicを減らす。
CCD
まとめ
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・量子力学では重力による束縛状態も量子化されているはず。
・UCNは重力の量子効果をみる有力なプローブ。
・過去の実験を改良し、更なる精度向上を目指した。
→重力による量子化を確認。
・新物理探索には更なる感度向上が必要。
←systematic源を実測することで下げ、再度実験。
バックアップ
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KUHEP colloquium 19
Kaluza-Klein theoryによって記述される任意の短距離力:
g, Q1, Q2, µ(λ=1/µ)により記述。
現在のlimit
Airy function
t→∞で0に収束する。
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CCD性能評価
位置分解能:CCDの表面をmaskして濃淡を評価。
検出効率:He detectorでneutronをtagして評価。
・10B(44.1%), 6Li(21%) converterを試した。
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