光電式住宅用防災警報器等の感度特性の検証結果

消防技術安全所報 44号(平成19年)
光電式住宅用防災警報器等の感度特性の検証結果
細谷昌右ぺ佐藤衛寿*
概 要
日本消防検定協会鑑定品及び UL規格品の各種光電式住宅用防災警報器等 (以下「住警器J とし、う。)
について、煙濃度及び風速に対する感度特性を検証した。
結果、煙濃度及び風速が大き くなるほど作動時間が短 くなる傾向があること、さらに、 UL規格品と日本
消防検定協会鑑定品の感度の違いを確認した。
1 はじめに
不作動試験条件(表 2参照)の値を参考に、表 3の値で
8年 6月 l日に改正予防条例が施行され、平成 2
2
平成 1
実施する。投入後
年には全ての住宅に住宅用火災警報器の設置が義務付け
15分経過して住警器が作動しなかった
場合、不作動とする。
風速調整については、風速測定箇所が 4点(写真 1参
られる。これに伴い、非火災報の発生や火災時の不奏功
5、 10、 15c
mの
3種類の深さで合
事例に対する調査を行なう機会の構加が予想される 。 こ
照)あり 、各点につき
れらの調査を行なうにあたって、基礎データとして住警
計
器の煙濃度及び風速に対する感知時間の把握が必要であ
容誤差の範囲に収まるようにする。本実験における風速
る。
調整は風速
そこで 、日本消防検定協会鑑定品と UL規格品の各製作
12点計測し、各点の風速が基準位置の風速に応じた許
10、
20、
40、
60c
m/sの 4 条件について行った。
4 条件のうち風速 10c
m/s時の調整を図 1 に示す。 なお、
60c
m/s時の風速許容誤差は、当該煙感度試験器の仕
会社製品に ついて、風速及び煙濃度に対する感知時間を
風速
測定し、各機種の感度特性について検証する。
織には示されていない。
2 検匝対象
煙濃度については、試験中一定にするために、手動に
検証対象住警器は表 lのとおり 。
て燃焼皿(写真 l参照)にろ紙を乗せ燃焼させて調整し
3 検匝方法
た。
感知部が中心にない住警器については、気流の吹いて
、2
日本消防検定協会が例示する煙感度試験器(写真 l
くる方向に感知部が向くように設定した。(図 2参照)
参照)で、風速及び煙濃度を変化させて、住警器を投入
当該煙感度試験器の主な構造等を図 3~5 に示す。
してから発報するまでの時聞を測定する。 風速及び煙濃
度は、
「住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係
る技術上の規格を定める省令Jにより定められた作動・
A点
1
0聞
c点
B点
1
0聞 1
1
0聞
1
0c
m
D点
1 0 1
表 l 検証対象住警器
呼称
規格等
N
l
日本消防検定飽会鑑定品 (
2種)
N
2
1
1
N
3
1
1
U
l
1
1
U
3
1
1
x
x
x
1
0
.
0聞 /
s
1
0
.
0c
m/
s
1
0.
0c
m/
s
9
.
0c
m/
s
‘'聞 /s
1
0.
0
x
x
x
1
1
.0聞 /
s
1
0
.
0凹 /
s
1
0.
0c
m/
s
》
ぽ
1
2
.
0
c
m
/
s
U
L規格
U
2
x
X
図
a
.
位
置
x
x
x
1
0
.
0c
m
/
s
1
1
.0酬 /
s
1
0.
0聞 /
s
一一~
15cm
測定ポイント、単位 :
c
m
/
s
、風向は写真 1.照
1
*装備安全課
95
風速
10c
m/s調整時の風速分布(許容誤差:t2 c
m
/
s
)
写真 l 煙感度試験器本体
写真 2 煙感度試験器操作盤
表 2 省令で定められた作動・不作動試験条件
お司王
1種
2種
作動鼠験
滅光率
不作動鼠験
感知時間
(以内)
風速
2
0c
m
/
s以上
7
.
5首1
m
4
0c
m
/
s以下
2
0師 I
s以上
1
5
.
0首1
m
4
0c
m
/
s以下
風速
滅光率
時間
2
0c
m
/
s以上
4
0c
m
/
s以下
2
0c
m
/
s以上
5首1
m
4
0c
m
/
s以下
2
.
5弘1
m
6
0秒
6
0秒
5分以上
感知しない
5分以上
感知しない
表 3 測定条件
1
oc
m
/
s
2
.5'
1
6
1
m
、
「
一
気流の向き
2
0c
m
/
s
5
.
0'
1
6
1
m
4
0c
m
/
s
7
.5も1
m
1
5略 m
感知部
l
口
,
,
' }oo
ロ
日E 二 二 二 二 二 三 〉
日
ロ
=
=
:
:
:
:
:
:
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コ
〉
ロ
ロ
=
=
:
:
:
:
:
:
:
:
コ
ー
モ
民笠生
3
>
図 3 煙感度試験器平面図(単位:凹)
図 2 感知部と気流の位置関係
整流板
6
0c
m
/
s
2
2
.
5首1
m
記「
※備考
① 発煙ヒ 1
1はポット型ヒ -11を 2個向い合せに
0
0
"C:t:1O"Cとすること.
用いて温度は 4
② 発煙材料は東洋ろ紙No.2とすること.
自動温度鯛節器
→
モ一寸O O
図 4 煙感度試験器正面図(単位:凹)
③風速 2
0-70c
m
/
s
(
循環ファンの回転数をかえて
風速を闘益する。)
④ 寸法は内法寸法とする。
図 5 煙感度試験器側面図(単位:皿m
)
96
∞
4 検匝結果
1
(
1
) 各風速時における住警器の作動状況は以下のとおり。
9
0
ア風速 1
0cm/s
8
0
70
風速 10cm/s時の住警器の作動状況を表 4、
図 6に示す。
怠 6
0
E50
UL規格の製品は減光率四/
m以上の煙濃度で、日本消防
ま40
検定協会の鑑定品は減光率 15%/m以上で全てが作動した。
UL規格品の方が高感度であった。
3
0
2
0
1
0
0cm/s時の作動状況(単位:秒)
表 4 風速 1
首
(1
m
)
N
1
1
0
N
2
N
3
U
1
作動せず
1
5
2
0
2
5
煙温度 (~/ m)
U
L
鑑定晶
建温度
図 7 風速 20cm/s時の作動状況
U
3
U
2
2
.
5 作動せず
作動せず
作動せず
5.
0 作動せず
作動せず
作動せず
7
1
5
2
7
.
5 作動せず
作動せず
作動せず
5
7
3
7
2
6
作動せず
作動せず
1
1
6
1
5
.
0
2
8
3
0
9
7
3
9
3
6
2
5
2
2
.
5
30
1
5
6
9I
3
3I
4
9
1
0
ウ 風 速 40cm/s
風速 40cm/s時の住警器の作動状況を表 6、図 8
1こ示す。
UL規格の製品は減光率四/
m以上の煙濃度で、日本消防
検定協会の鑑定品は減光率 15%/m以上で全てが作動した。
UL規格品の方が高感度であった。
1
2
0
∞
1
表 6 風速 40cm/s時の作動状況(単位:秒)
a
(
tB
o
耳
(1
m
)
~ 6
0
e
画
密
4
0
1
0
1
5
2
0
N
l
N
2
N
3
U
l
2
.
5 作動せず
作動せず
作動せず
作動せず
5.
0 作動せず
作動せず
作動せず
2
1
2
0
1
1
7
.
5 作動せず
作動せず
作動せず
2
2
1
8
1
1
U
2
U
3
3
8 作動せず
1
5
.
0
1
7
9
2
4
2
1
1
4
1
0
2
2.
5
1
4
8
2
2
1
5
1
3
5
2
0
。
U
L
鑑定品
煙温度
2
5
煙温度 (
%
1m)
5
0
図 6 風速 1
0cm/s時の作動状況
4
0
.
.
ー
イ 風 速 20cm/s
企3
0
風速 20cm/s時の住笹器の作動状況を表 5、
図 7に示す。
嘗
UL規格の製品は減光率 5%/m以上の煙濃度で、日本消防
E20
m以上で全てが作動した。
検定協会の鑑定品は減光率 l開 /
UL規格品の方が高感度であった。
1
0
。
1
0
首
(1
m
)
N
l
N
2
N
3
U
l
作動せず
2
0
2
5
図 8 風速 40cm/s時の作動状況
U
L
鑑定品
煙温度
1
5
煙温度 (¥1m)
表 5 風速 20cm/s時の作動状況(単位:秒)
U
2
U
3
エ 風 速 60cm/s
2.
5 作動せず
作動せず
作動せず
5.
0 作動せず
作動せず
作動せず
7
8
3
6
1
8
7
.
5 作動せず
作動せず
作動せず
2
2
3
7
2
0
作動せず
作動せず
風速 60cm/s時の住警器の作動状況を表 7、
図 9に示す。
1
5.
0
2
4
1
4
3
7
3
6
3
1
1
3
UL規格の製品は減光率 5%/m以上の煙濃度で、日本消防
2
2.
5
2
1
1
4
2
4
3
5
2
8
1
1
検定協会の鑑定品は減光率 15%/m以上で全てが作動した。
UL規格品の方が高感度であった。
97
表 9 煙濃度 22.5%/m時の作動状況(単位:秒)
表 7 風速 6
0cm/s時の作動状況(単位:秒)
煙讃度
U
L
鑑定品
首
(1
m
)
N
l
風速
N
2
N
3
U
l
U
2
U
L
鑑定品
(
c
m
l
秒)
U
3
N
l
N
2
N
3
U
3
U
2
U
l
2
.
5 作動せず
作動せず
作動せず
7
3
1
5 作動せず
1
0
3
0
1
5
6
9
3
3
4
9
1
0
5
.
0 作動せず
作動せず
作動せず
1
8
1
2
1
0
2
0
2
1
1
4
2
4
3
5
2
8
1
1
7
.
5 作動せず
作動せず
2
3
1
9
1
6
3
4
0
1
4
自
2
2
1
5
1
3
5
1
5
.
0
1
2
7
2
0
1
1
1
7
6
6
0
1
4
自
1
7
1
8
1
2
7
2
2
.
5
1
4
8
1
7
1
8
1
2
7
8
0
7
0
100
6
0
9
0
ー
← Nl ト一一
4ト
コ N2
トーー
ゼト N3
90
)
(
7
0
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E
→
← Ul ト一ー
_
_
_U2卜ー
6
0
E50
歯
0
学3
L全旦主
2
0
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1
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3
0
2
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1
0
。
二
R
ー
ー
』
ー
、
『
来
ー
ー
1
0
¥
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、
、
0
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1
0
1
5
2
0
2
0
a
1/
f
速(聞
5
0
6
0
7
0
図 10 煙濃度 22.5%/m時の作動状況
2
5
滅光率(耳1m)
図 9 風速 6
0cm/s時の作動状況
(
2
)
UL規格の製品は減光率 5%/m以上の煙濃度で、日本消
防検定協会の鑑定品は減光率 15%/m 以上で全てが作動し
(
2
) 作動・不作動試験
た。よって、 UL規格品の感度が高く、日本消防検定協会
住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術
鑑定品に比べ、火災以外の薄い煙でも非火災報が起こり
上の規格を定める省令(総務省令第 11号)第 7条に定め
やすいことが確認できた。
る感度試験の条件は表 8 r
省令基準 j 欄のとおりである。
(
3
)
今回の日本消防検定協会鑑定品は全て 2種であり、基準
技術上の規格を定める省令 j及び UL規格の煙感度試験基
に則した試験結果が得られた。一方、 UL規格品は不作動
準を比較したものを表 10に示す。
試験において全ての機種が作動し、基準に則した試験結
住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る
表 10より、 UL規格の試験基準は、省令の試験基準と比
果は得られなかった。
較すると、より低い減光率での作動が要求されている。
したがって、本検証で得られた UL規格品の方が高感度で
あるという結果と矛盾しない。
表 8 作動・不作動試験結果
¥
実測
条件
滅光率
且速
也
(1
m
)I
(聞/秒)
作動
猷駿
不作動
民E
量
作動時間(秒)
日本消防検定也会
鑑定品
表 10 煙感度試験基準の比較
省令基準
U
L規格品
(
2種)
住宅用防災警報器及び住宅用防災報知股備
に係る技術上の規格を定める省令
N
l IN
2 IN
3 IU
l IU
2 I
U
3
1
5
2
0
2
4
1
4
3
7
3
6
3
1
1
3
5
4
0
作動
せず
作動
せず
作動
せず
2
1
2
0
1
1
6
0秒以内
作動隊験 (
2祖)
で作動
5分以上
不作動
1
m当たりの濠光率が 1
5
協の温度の煙を含
む風速 2
0聞/秒以上 4
0
c
m
l
秒以下の気流に
投入したとき、
ω秒以内で火災警報を発す
ること。
不作動鼠般 (
2祖)
1
m当たりの濠光率が鴎の;1度の煙を含
5 考察
む息遣 2
0聞/秒以上 4
0聞/秒以下の気流に
投入したと曹、 5分以内で作動しないこと。
(
1
) UL規格品、日本消防検定協会鑑定品ともに、概ね煙
濃度及び風速が大きくなるほど作動時聞が短くなる傾向
がある。(表 4、5、6、7、9、図 10参照)
98
U
L規格
.光皐1.6
1
2
.5
¥
/
mで作動する」と。
E
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o
m
e
Masasuke HOSOYA*, Eiju SATO*
Abstract
1
nt
h
i
s experiment,w
eexamined t
h
e sensitivity characteristics t
o smokedensity
andwindv
e
l
o
c
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yofphotoelectricf
i
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nt
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e sensitivity
velocity become greater, and t
characteristics between t
h
e ]FE11-certified and UL-listed alarm s
y
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99