東京地裁判決 H25.9.24 損害賠償,同中間確認各請求事件 1. 当事者

2014.2.13 一弁 知財部会
永井 徳人
東京地裁判決 H25.9.24 損害賠償,同中間確認各請求事件
1. 当事者・事実の経緯
SW
提供
X
事業
譲渡
Y(SW 部品)
【本件ソフト群】
SW 部品開発
事業譲渡
代取:Y 代取
取
BSS
:A1
代取:A1
日本電子
サンライズ
フロンテッ
計算
著作権
譲渡
ク
【先行ソフト群】
著作権
譲渡
著作権譲渡
<先行ソフト群>「BSS-PACK」シリーズ
BSS-PACK (VAX/VMS)
BSS-PACK サーバー(UNIX)
先行
ミドルソフト
先行
SW 部品
BSS-PACK サーバー(WindowsNT 版)
BSS-PACK クライアント(メニュークリエイト)
先行両
ソフト
先行各
プログ
ラム
本件両
ソフト
本件各
プログ
ラム
部品マイスター
<本件ソフト群>「部品屋 2007」シリーズ
部品屋 2007 サーバー
部品屋 2007 クライアント
本件
ミドルソフト
本件
SW 部品
SW 部品開発ツール
<先行ソフト群>
H4 頃~
BSS、BSS-PACK シリーズ(BSS-PACK (VAX/VMS)、BSS-PACK サー
バー(UNIX)、BSS-PACK サーバー(WindowsNT 版)、BSS-PACK クライ
アント(メニュークリエイト)、部品マイスター等)を開発
H7. 10
BSS、BSS-PACK クライアント(メニュークリエイト)の著作権登録
H8 頃~
BSS、提供先に BSS-PACK シリーズのソース開示
H9.3.14
BSS、BSS-PACK サーバー(WindowsNT 版)の著作権登録
H18. 4.7
BSS→サンライズ、BSS-PACK サーバー(WindowsNT 版)、BSS-PACK ク
ライアント(メニュークリエイト)の著作権譲渡
1
H18. 9.27
BSS→サンライズ、部品マイスターの複製権譲渡
 譲渡代金合計 11.5 億円(全額コンサルティング報酬と相殺?)
H19.9.19
サンライズ→フロンテック BSS-PACK サーバー(WindowsNT 版) 、
BSS-PACK クライアント(メニュークリエイト)、部品マイスターの著作
権譲渡
<本件ソフト群>
H18.12 頃~
BSS、部品屋 2007 シリーズ(部品屋 2007 サーバー、部品屋 2007 クライ
アント、ソフトウェア部品開発ツール等)を開発
途中で、BSS→SW 部品開発 事業譲渡、SW 部品開発が開発引継
さらに、SW 部品開発→Y 事業譲渡
H21.5.22
フロンテック→日本電子計算 BSS-PACK サーバー(WindowsNT 版)、
BSS-PACK クライアント(メニュークリエイト)、部品マイスターの著作
権譲渡
H21.8 頃~
Y、部品屋 2007 シリーズの販売
H21.10.1
X-Y、部品屋 2007 シリーズのパートナー契約締結
 標準価格の 30%OFF で、Y→X 提供
 X、再販、複製等
H21.10.22
Y→X 部品屋 2007 サーバー、部品屋 2007 クライアント販売
H22.2.26
Y→X 部品屋 2007 クライアント・プロテクションキー販売
H22.4.9
Y→X 部品屋 2007 クライアント・プロテクションキー販売
H22.10.1
X-Y、パートナー契約更新
H23.2.28
X→Y パートナー契約解除通知、損害賠償請求
2. 判決
(1) 原告の損害賠償請求を全部認容
(2) 被告の中間確認の訴え(本件ミドルソフトが著作権を侵害しないとして、被告の原告
に対する債務不履行に基づく損害賠償債務が存在しないことの確認)は、二重起訴の
禁止(民訴法 142 条)に当たるとして却下
3. 争点
(1) 本件各プログラムが先行各プログラムを複製又は翻案したものであるか
(2) 原告と被告以外の第三者が先行各プログラムの著作権(複製権又は翻案権)を有する
か
2
4. 争点(1)について
結
論
原告の主張
被告主張
裁判所の判断
 本件各プログラムは、
 本件各プログラムは、先
 本件 SW 部品の一部は、
先行各プログラムを複
行 各 プ ロ グ ラ ム を 複製
製又は翻案
又 は 翻 案 し た も の では
ない
先行 SW 部品を複製
 その余の本件各プログラ
ムが先行各プログラムを
複製又は翻案ことを認め
る証拠なし
S
W
部
品
 先行ソフト群と本件ソ
 本件 SW 部品の一部は先
 約 1500 の先行 SW 部品
フト群のソフトは各々
行 ソ フ ト ウ ェ ア 部品 と
に、新たに開発した約 200
対応
同一だが、他は BSS が
の SW 部 品 を 加 え 、約
 本件 SW 部品の一部
先行ミドルソフト・部品
1700 の本件 SW 部品を制
は、先行 SW 部品と同
マ イ ス タ ー の 各 プロ グ
作
一
ラ ム を 消 去 し 新 たに 開
発
ミ
ド
ル
ソ
フ
ト
 本件ミドルソフトと先
 関数は、規約に当たり、  関数は、SW 部品に対応し
行ミドルソフトには,
著 作 権 法 の 保 護 が及 ば
た I/F で規約であるので、
同一の関数が多数使わ
ない
著作権法の保護が及ばな
れている
 先行ミドルソフトは、
い
 Windows2000/XP/2003
 Windows2000/XP/2003
Windows NT と同じ基
は、Windows NT と基本
と Windows NT の基本設
本設計の後継である
設計を異にする
計の基本設計が同じであ
Windows2000/XP/200
る証拠なし
3 にも対応
 本件ミドルソフトは、
 本 件 ミ ド ル ソ フ トは マ
 本件ミドルソフトは,先
先行ミドルソフトの表
ル チ シ ス テ ム 等 の新 機
行ミドルソフトにマルチ
現上の本質的な特徴を
能を多数追加し、コーデ
システム機能や新法等に
維持
ィングも大幅に変更し、
対応した機能が追加
表 現 上 の 本 質 的 な特 徴
を維持していない
 ソースコードの記述が随
所にわたって変更
 本件ミドルソフトと先行
ミドルソフトのソースコ
ードは、表現上の本質的
な特徴の同一性を維持し
てない
3
カ
ス
タ
マ
イ
ズ
ツ
ー
ル
 SW 部品開発ツールと
 本 件 / 先 行 SW 部 品 は
 SW 部品開発ツールと部
部品マイスターは、同
Microsoft Visual Studio
品マイスターが、SW 部
一 SW 部品を同様にカ
でカスタマイズ
品を同様にカスタマイ
スタマイズするから、
 SW 部品開発ツールと部
表現上の本質的な特徴
品マイスターは、カスタマ
を維持
イズ用の各種情報を集積
ズする証拠なし
したものにすぎず、対象ミ
ドルソフトが異なるから
表現上の本質的な特徴を
維持していない
5. 参考判例
【最判 S53.9.7】
 著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りる
ものを再製することをいう。
【東京高判 H1.6.20】
プログラムはこれを表現する記号が極めて限定され、その体系(文法)も厳格であるか
ら、電子計算機を機能させてより効果的に一の結果を得ることを企図すれば、指令の組
合わせが必然的に類似することを免れない部分が少なくないものである。したがって、
プログラム著作物についての著作権侵害の認定は慎重になされなければならない。
【東京地判 H14.9.5】
ビジネスソフトウェアに要求される機能や利用者の利便性の観点からの制約があり、作
成者がその思想・感情を創作的に表現する範囲は限定的なものとならざるを得ない。
【知財高判 H23.2.28】
 プログラムは、
「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対
する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同法2条1項10号 の2)であ
り、コンピュータに対する指令の組合せという性質上、表現する記号や言語体系に制
約があり、かつ、コンピュータを経済的、効率的に機能させよう とすると、指令の組
合せの選択が限定されるため、プログラムにおける具体的記述が相互に類似せざるを
得ず、作成者の個性を発揮する選択の幅が制約される場合があり得る。
 後に作成されたプログラムが先に作成されたプログラムに係る複製権ないし翻案権侵
害に当たるか否かを判断するに当たっては、プログラムに上記のような制約が存在す
ることから、プログラムの具体的記述の中で、創作性が認められる部分を対比し、創
作性のある表現における同一性があるか否か、あるいは、表現上の創作的な特徴部分
を直接感得できるか否かの観点から判断すべきであり、単にプログラム全体の手順や
構成が類似しているか否かという観点から判断すべきではない。
4