7-3 シミュレーションで評価する高速炉 SG の安全性

高速炉研究開発
7-3
シミュレーションで評価する高速炉 SG の安全性
- SG 伝熱管破損時のマルチフィジックス解析評価システム-
(a)現象解明・検証データ取得実験(青字)
と知見データの反映先(赤字) (b)実験の一例:Na 中蒸気噴出実験
セルフウェステージ
セルフウェステージ実験
(SEWAP)
水・
蒸気
反応
ジェ
ット
不足膨張噴流
水中ガス噴出実験
(SERAPHIM)
液体Na
水・
蒸気
高温ラプチャ
水側熱伝達計測実験(RELAP5)
,
Na 側熱伝達計測実験,
急速加熱
伝熱管ラプチャ実験(TACT)
試験容器
(模擬SG)
反応生成物放出系
化学反応過程
対向流拡散反応実験,
熱分析実験(SERAPHIM)
ウェステージ
(LDI+FAC)
液滴エロージョン実験
(LDI)
,高温
NaOH 噴射実験
(FAC)
,Na 中蒸
気噴出実験(SERAPHIM,TACT)
水蒸気系
カバーガス
SG 実機条件(温度,圧力など)
での試験
Na液面
ターゲット管
20 mm
水蒸気
噴出孔
破損管
ウェステージ痕
反応ジェット
注水管
総合検証用試験(機構論解析システム,
長時間事象/圧力波伝播解析手法)
知見データベース構築
試験装置イメージ
Naループ
試験結果
(ターゲット管損耗状態)
図 7-6 SG 伝熱管破損時に生じる現象とその解明実験及び実験結果例
SG 伝熱管破損時には様々な現象が複合して発生します(マルチフィジックス)
。それらの解明実験や SG 実機条件での Na 中蒸気
噴出実験を実施し、得られた知見を解析手法の整備や検証に役立てました。
(c)解析評価システム概要
機構論解析評価システム
(1)
(4)
破損管
(2)
(3)
隣接管
(4)
SEWAP コード
初期欠陥(亀裂)拡大評価
(5)
長時間事象解析手法
(6)圧力波伝播解析手法
(d)解析の一例:SERAPHIM による Na 中蒸気噴出実験の解析
0
(1)SERAPHIM コード
化学反応を伴う圧縮性多成分多相流解析
(反応ジェット,
材料損傷環境評価)
境界条件
(流速,温度など)
(2)
TACT コード
流体−構造熱的連成&構造部応力解析,
ウェステージ評価,
破損有無判定
1300 ℃
0
1600 m/s
熱電対計測
データと一致
化学反応により
高温領域形成
0
500 m/s
90度回転断面
実験でのウェステージ
位置
(図 7-6
(b)
)
と整合
不足膨張による
加速
(超音速)
液滴
速度高
境界条件
(温度など)
(3)
RELAP5 コード
水側熱流動
(急速加熱)解析
注水管
気相温度
気相流速
液滴速度
図 7-7 マルチフィジックス解析評価システムと解析結果例
SG 伝熱管破損時の現象を評価するため、複数の数値解析コードを組み合わせた解析評価システムを開発し妥当性を確認しました。例えば
SERAPHIM コードにより Na 中蒸気噴出実験を解析し、温度分布やウェステージ発生位置が実験結果と整合することを確認しました。
ナトリウム(Na)冷却高速炉の蒸気発生器(SG)内
で伝熱管が破損すると、Na 中に高圧の水・蒸気が漏え
いして高速高温の反応ジェットを形成します
(図 7-6)
。
SG は計器により漏えいを検出し Na- 水反応を停止する
よう設計されますが、それまでの間に反応ジェットが隣
接する伝熱管に当たり、管壁の損耗(ウェステージ)や
内圧破裂(高温ラプチャ)が発生して破損伝播(周囲の
伝熱管が次々と破損)に至る可能性を評価することが重
要となっています。実証試験を積み上げる旧来の評価方
法は汎用性に欠け、経済性向上と安全性確保の両立を目
指す設計最適化には不向きです。そこで本研究では様々
な運転条件や設計オプションに対応可能な解析評価シス
テムの構築に取り組みました。
現象解明とコード検証用データ取得のため、図 7-6
に示す体系的な実験を実施しました。これにより、支配
的な反応素過程の同定、高温ラプチャ評価に関連する
Na 側/水側の熱伝達データや急速加熱時内圧破裂デー
タの取得、液滴衝突エロージョンと流動加速型コロージョ
ンの両者を考慮した局所ウェステージ相関式の導出等に
成功しました。実機条件での現象解明としては図 7-6 に
示す Na 中蒸気噴出実験を実施し、
ウェステージ環境やター
ゲット管損耗状況に関するデータを取得しました。また、
実験結果の不確かさを定量評価し、それを含めた知見
データベースを構築しました。実験結果を活用し、図 7-7
に示すように(1)
反応ジェット(2)
伝熱管(3)
伝熱管内
の 3 領域に対して可能な限り機構論に基づく解析手法
を整備し、これらを組み合わせた解析評価システムを
構築しました。
(1)
についてはウェステージ環境評価モ
デルを組み込んだ SERAPHIM コードを整備しました。
SERAPHIM で Na 中蒸気噴出実験を解析し、温度分布
やウェステージ発生位置が実験結果と整合することを確
認しました
(図 7-7)
。その他、
(2)
流体から伝熱管への
熱移行と構造部応力評価及び破損判定モデルを導入した
TACT コード(3)
急速加熱条件に適用できるよう伝熱
相関式を修正した RELAP5 コード等を構築し、実験解
析からシステムの妥当性を確認しました。構築した解析
評価システムは安全裕度適正化を図った SG の実現に寄
与することができます。
本研究は、文部科学省からの受託研究「蒸気発生器伝
熱管破損伝播に係るマルチフィジックス評価システムの
開発」の成果です。
●参考文献
内堀昭寛ほか, 高速炉蒸気発生器の伝熱管破損時事象に対する解析評価手法の開発, 日本機械学会論文集, B 編, vol.79, no.808, 2013,
p.2635-2639.
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原子力機構の研究開発成果 2014