佐々木

2014 年 7 月 31 日
社会認識教育方法学特講Ⅰ
M145308 佐々木 拓也
【発表題目】
C3 フレームワークの意義と実践における課題
‐ 学習を受ける人から作り出す人への転換 ‐
【発表構成】
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.筆者の紹介
Ⅲ.本論文の構成と問題の所在
Ⅳ.本論文の内容
Ⅴ.おわりに
Ⅰ.はじめに
本発表の目的は、
「From Receivers to Producers: A principal’s Perspective on using
The C3 Framework to Prepare Young learners for College, Career, and Civic Life」の構
成と内容についての要約、分析を行い、筆者の主張を通して C3 フレームワークの意義及
び、教育現場へと取り入れる際の課題を明らかにすることである。
Ⅱ.著者紹介
Michael Long は、カリフォルニア州南ホイッティア学区の Lake
Marie 小学校の校長であり、Biola 大学教育学部の非常勤教授であ
る。彼は 2008 年に英語学習者のためのライティング教育における
業績が評価され、カリフォルニア州のティーチャー・オブ・ザ・イ
ヤー2008 に選ばれている。また、C3 フレームワーク教師教育協議
会のメンバーであり、市民教育(Civic Education)に注目を集める
べく積極的な活動を行っている。i
Ⅲ.本論文の構成
本論文の構成は以下のようになっている。
(なお番号は発表者が便宜的に付けた)
(1)はじめに
(2)迫りくる疑問(The Looming Question)
(3)教師の役割を再考する
(4)受ける人から作り出す人へと変わること
(5)未知の領域
(6)我々はここからどこへ向かうのだろうか
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本論文では、C3 フレームワークを実際に教育現場で用いることの意義とその際に生じる
課題についての主張がされている。
上記の構成と内容の概要から、本発表に際して以下の RQ と SQ を設定する。
RQ:筆者は本論文を通して何を主張しているのか?本論文の意義は何か?
SQ1: C3 フレームワークに基づいた授業は学習者をどのように変えるのか?
SQ2: C3 フレームワークの導入に向けての課題は何か?
上記の RQ に対する RA を導くため、2 つの SQ に対する答えを本論文及び、前回までの
C3 フレームワーク本編の分析結果を基に考察していくこととする。
Ⅳ.本論文の内容
本論文の内容を整理しつつ各問いを分析していく。初めに、「SQ1:C3 フレームワーク
に基づいた授業は学習者をどのように変えるのか?」について考察していく。まず初め
に、SQ1 に対応した筆者の論文内での主張を整理し、表 1 にまとめた。
表1
C3 フレームワークの導入による学習者の変化
生徒は・・・
・事前に構造化された知識を教師から与えられる
従来の学習
・暗記や反復といった決まりきった方法のスキル
↓
学習を「受ける人」=
受動的な学習者
・(教師に支援され)自らの手で学習の多くを作り出す
C3 フレームワ
ークを用いた
学習
・ナビゲーション(学習を方向づける)のスキル
↓
学習を「作り出す人」=
能動的な学習者
(本文を基に発表者作成)
筆者が論文内で述べていることは、主張のごく一部だと思われるが、C3 フレームワー
クを用いることで、生徒を探求中心の学習に導き、その結果、能動的な学習者へと変容さ
せることができるということである。筆者は、社会におけるルールと法律をテーマとした
授業実践において、テーマに関して興味を示したことも、ワークシートなどの記述的な課
題を完成させたこともないような学習者たちを、十分に動機付け、学習を作り出させるこ
とができたことを実感し、期待以上の成果が見られたことに驚きを示してもいる。
C3 フレームワークの何が子どもを能動的な学習者へと変容させるのか。論文内では具
体的に示されていないが、前回までの C3 フレームワークの分析から、探求過程(Inquiry
Arc)において育成される能力について、筆者は主張していると考える。それは、次元 1
2
において自ら問いを立て、探求を計画する能力を、次元 2 で学問的な概念やツールを活用
する能力を、そして、次元 3 において情報を評価し根拠を明確に示す能力を、次元 4 で結
論を表現・共有し、行動に移す能力を育成することである。この探求過程を通して、子ど
もたちは市民の在り方であるとされる一連の能力を身につけ、能動的な学習者になること
ができるのだろう。
SQ1 で筆者が述べたように、C3 フレームワークを導入することにより、子どもたちを
能動的な学習者へと変えることができると言える。しかし、そこには様々な課題が残され
ていることについても言及されている。ここでは、
「SQ2:C3 フレームワークの導入に向
けての課題は何か?」について分析を行う。以下に、本文で主に指摘されている 2 つの課
題を示す。
○ 教師が従来の教育を手離さなくてはならない点
⇒ 教師主導の授業では、能動的な学習者は育成されない
○評価方法の詳細までは示されていない点
⇒ 統一されたテストは必要なのか、どのように評価すればよいのか
(本文を基に発表者作成)
筆者の主張を見ていくと、主に以上 2 つのような課題が指摘されていた。C3 フレーム
ワークは生徒を能動的な学習者へと変えるが、そのためには教師の在り方の変化が求めら
れており、そこに 1 つ目の課題があると述べている。教師に求められる在り方の変化につ
いての指摘を、以下の表 2 にまとめた。
表2
C3 フレームワークを活かすための教師に求められる変化
教師は・・・
・リテラシーの習熟に焦点を当てる
・台本(決められた道筋)通り、構造化した知識を子どもに与える
従来の学習
・標準化された学習成果へむけて学習をすすめる(テスト等)
↓
教師主導の授業形態
(教師はあくまで、知識等を教える立場)
・探求中心で学習をすすめる
・台本は無く、子どもの能動的な学習を支援する
C3 フレームワ
・様々な形の学習成果へむけて学習をすすめる
ークを用いた
↓
学習
生徒主導の授業形態
(生徒が能動的に探求する能力を育成し、
時には共に学習者となり、生徒を導く立場)
(本文を基に発表者作成)
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従来から行ってきた教師主導の授業形態を手放すことは容易ではないだろう。それは、
教師が子どもの学習を導くために新たなスキルを獲得することを必要とすることに加え、
導き方を誤れば子どもたちは目標に到達できない、あるいは見当違いな方向へと探求をす
すめてしまうリスクが存在するからである。筆者は、教師は探求過程において子どもたち
が能動的に学ぶことを支援し、導く立場であることが求められると主張し、教師の在り方
が変わることが大切であると述べている。従来の社会科においては、教師は様々な社会事
象などを子どもたちが理解しやすいよう、教師が知識を構造化し、それを教壇の上から教
授するという授業形態が一般的であった。しかし、そういった授業形態のままでは、C3
フレームワークの目指す、自身で探求する能力をもった市民を育成することはできない。
子どもを能動的な学習者へと変えるためには、教師の在り方から変える必要があると言え
る。
そして、2 つ目の評価方法については、本論文において何度も述べられている。特に、
テストという評価方法を手放すべきかという問題が取り上げられている。子どもの探求に
よって学習を進めていく上で、必ずしも学習の過程や成果を管理することはできないこと
について、筆者は認めており、従来のテストという形式では、C3 フレームワークを用い
た際の学習の成果を評価することが困難なのではないかという問題意識が読み取れる。さ
らに、各クラスまたは各生徒で異なる成果へたどり着くとき、それをどのように評価する
のかについても、課題として取り上げている。
Ⅵ.おわりに
本発表を通して、はじめに設定した RQ に対する RA を示す。RA は、SQ1 への答えよ
りもむしろ、SQ2 にこそあったと考える。C3 フレームワークを実際に教育現場で実践し
た人間だからこその主張であり、素晴らしさや意義を伝えることも重要だが、実際にそれ
を活かすためにはどういった課題が残されているのか、といった点を明らかにしたことが
本論文の意義なのではないかと考える。C3 フレームワークは、州スタンダード作成の支
援をするものとして、あえて具体的なものを示しすぎないようにつくられたが、教育現場
へと対応させていくためには、教師に向けて、より具体的なものを示すことが必要だろ
う。故に、次に期待されるのは、各州の取り組みではないだろうか。C3 フレームワーク
に準拠した州スタンダードを作成し、現場の教師がより具体的に実践方法について考える
ことができる下地を作っていく必要があると考える。また、優れた実践者によるモデル授
業の紹介を増やしていくことや、C3 フレームワークに適した評価方法についての研究な
ども、現場の教師に求められているものの一つであると考える。
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[ 註 ]
i 以下のウェブサイトより http://www.c3teachers.org/c3t/(C3 TEACHER LEADERS
2014/07/30 参照)
参考文献
・Michael Long の写真は以下のウェブサイトより
http://teacher2teacher.lacoe.edu/michael-long.aspx(Michael Long - Teacher2Teacher
2014/07/30 参照)
・Michael Long, ”From Receivers to Producers: A principal’s Perspective on using The
C3 Framework to Prepare Young learners for College, Career, and Civic Life” ,Social
Education, Vol.77(6), 2013, pp.342-344,350
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