【労務】労働組合に係る費用

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キャスト・ベトナム・ニュース
2014 年 4 月 11 日号
([2014] 03)
トピック
【労務】
労働組合に係る費用
弁護士法人キャスト
弁護士
松長隆太
ベトナム弁護士
DOAN THANH HA
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労働組合に係る費用
弁護士法人キャスト
同
弁護士
ベトナム弁護士
松長 隆太【1】
Doan Thanh Ha【2】
2014 年に入ってから、労働組合を設立していない会社における労働組合に係る費用の支払い
に関するご相談が増えています。
今回は、このような労働組合に係る費用に関する基本的な事項をご紹介します。
1.労働組合の財源
ベトナムの労働組合が活動を行うにあたって必要となる財源は、以下の 4 つから構成されま
す(「労働組合法」(12/2012/QH13、2012 年 6 月 20 日付け、2013 年 1 月 1 日施行)第 26
条)。
(1)ベトナム労働組合の定款に従って、労働組合の組合員が支払う労働組合組合員費用【3】
(以
下「組合員費用」といいます。)
(2)機関、組織又は企業が支払う、労働者のために社会保険を支払う際の基準に用いられる賃
金の2%の労働組合経費(以下「労働組合経費」といいます。)【4】
(3)補助として支払われる国家予算
(4)その他の収入(労働組合の文化、スポーツ、経済活動による収入等。)
上記(1)は労働者が負担するもの、上記(2)は使用者が負担するもの、上記(3)は国家が
負担するもの、上記(4)はその他となります。
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本ニュースレターにおける日本の法律法規の解釈に関する部分及び日本語の原稿の起案を担当。
本ニュースレターにおけるベトナムの法律法規の解釈に関する部分を担当。
「労働組合組合員費用」はベトナム語の「đoàn phí công đoàn」の訳出です。
「労働組合経費」はベトナム語の「kinh phí công đoàn」の訳出になります。
VIETNAM NEWS「2014-4-11」
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本稿では、上記(1)の組合員費用及び(2)の労働組合経費について説明をします。
2.組合員費用
労働者である組合員個人が支払う組合員費用の金額は、実際に支給される賃金の 1%になりま
す(「1803/HD-TLĐ」(2013 年 11 月 29 日付け、2014 年 1 月 1 日施行)第 2 条等。)。
基層労働組合が組織されていない企業では、労働者は組合員費用を納付する必要はありません。
基層労働組合が組織されている企業では、基層労働組合は、組合員費用の 60%を自ら使用す
ることができますが、残りの 40%は上級労働組合に収める必要があります(「1935/QD-TLD」
(2013 年 11 月 29 日付け、2014 年 1 月 1 日施行)第 6 条、「170/QD –TLD」
(2013 年 1 月 9
日付け、同年 1 月 1 日施行)第 5 条等)。
なお、基層労働組合が組織されていない企業では、労働者が、自らの手取り給与の減少を避け
るために、基層労働組合の設立に消極的であるケースが見受けられます。基層労働組合は、労働
者の不満、要望及び意見等を吸い上げ、コミュニケーションを図る上で重要な役割を担うもので
あることから、このようなケースでは、企業側は基層労働組合の設立を希望しているにもかかわ
らず、労働者側が自ら動いてくれないことがしばしばあります。かかる場合、①上級労働組合の
協力を得て基層労働組合の設立を促す、②人事・労務の担当部署が中心になって、まずは会社に
友好的な基層労働組合を設立した上で、時間をかけて基層労働組合に対する労働者の信頼を高め
ていく、といったアプローチが取られることがあります。
3.労働組合経費
3.1 労働組合経費の支払いが必要な企業
労働組合経費は、「労働組合法」が施行された 2013 年 1 月 1 日から、基層労働組合が組織さ
れている企業であるか否かに係らず、全ての企業が支払うことが必要となっています。
これは、上記 1(2)で引用のとおり、同法第 26 条第 2 項が、労働組合経費は「機関、組織
又は企業」が支払うものとされており、何ら制限が設けられていないことから読み取れます。ま
た、同法の制定過程で、基層労働組合が組織されている企業であるか否かに係らず労働組合経費
の支払いを義務付けるという議論があり、それに基づいて同法が制定されたことからも明らかで
す。
そして、2014 年 1 月 10 日より施行されている「191/2013/ND-CP」(2013 年 11 月 21 日付
け。以下「191 号議定」といいます。)は、このことをより明らかにする規定を設けました。す
なわち、「191 号議定」第 4 条は、労働組合経費を支払う対象について、機関、組織又は企業が
「基層労働組合組織を有するか否かに関係なく」、「企業法」及び「投資法」に従って設立及び
運営される全ての経済分野の企業が含まれる旨規定します。
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以上の経緯で、2013 年までは、基層労働組合が組織されていない企業が労働組合経費の支払
いを求められるケースは少なかったと思われますが、2014 年に入ってから、このようなケース
が出てきているようです。
3.2 労働組合経費の計算
労働組合経費は、労働者のために社会保険を支払う際の基準に用いられる賃金の 2%となりま
す(「労働組合法」第 26 条、「191 号議定」第 5 条第 1 項)。
社会保険の計算においては、賃金が一般最低賃金を下回る場合には一般最低賃金に従うことと
し、一方、賃金が一般最低賃金の 20 ヶ月分を越える場合には、一般最低賃金の 20 ヶ月分とさ
れています。2013 年 1 月 1 日以降の一般最低賃金は 1,150,000 ベトナムドン/月とされているた
め(「66/2013/ND-CP」第 3 条第 2 項)、限度額は 23,000,000(1,150,000×20)ベトナムド
ン/月となります。
よって、労働組合経費は最大でも一人あたり 460,000 ベトナムドン/月となります。
3.3 労働組合経費の支払い方法等
企業は、労働者の強制社会保険の保険料を支払うときに合わせて、労働組合に毎月労働組合経
費を支払う必要があります(「191 号議定」第 6 条第 2 項)。
労働組合経費の支払い先等に関しては、基層労働組合の有無によって異なります。
まず、企業に基層労働組合が存在しない場合、企業は上級労働組合に対して労働組合経費を支
払います。上級労働組合は、支払いを受けた金額の 65%を組合活動に使用することができます
が、余った部分については、基層労働組合が設立されたときに基層労働組合に支払われることと
なります。
一方、企業に基層労働組合が存在する場合、企業は上級労働組合に対して労働組合経費を支払
います。そして、基層労働組合は、企業から受け取ったうち 35%は上級労働組合に支払うこと
になり、残りは自ら使用することができます(以上につき、「1935/QD-TLD」第 6 条、「170/QD
–TLD」第 5 条等)。
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4.まとめ
上記 2 及び 3 を簡単にまとめると以下のとおりになります。
基層労働組合
組合員費用(労働者負担)
労働組合経費(使用者負担)
・負担なし。
・賃金の 2%。但し、上限・下限あり。
がない企業
・労働組合経費は全て上級労働組合に納め、
上級労働組合は支払いを受けた金額の
65%を組合活動に使用することができる
が、余った部分は基層労働組合が設立され
たときに基層労働組合に支払われる。
基層労働組合
・賃金の 1%。
・賃金の 2%。但し、上限・下限あり。
がある企業
・組合員費用のうち、60%は基層
・労働組合経費のうち、65%は基層労働組
労働組合に割り当てられ、40%は
合に割り当てられ、35%は上級労働組合に
上級労働組合に割り当てられる。 割り当てられる。
以上
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