IV. 全体の調査結果からの考察

IV. 全体の調査結果からの考察
1. 魅力あるまちと地域活動に向けて
(1) 魅力あるまちと地域活動に向けて
めざすべき重点施策テーマは、「防犯・防災」、
「高齢者・障害者福祉」
、「子育て」
一般住民向けアンケートの問 2、自治会長、自治連合会長アンケートの問1では、まちの
現状認識と施策の重要性について聞いた。
一般市民と比べて、自治会長(自治連合会長含む)の方が、総じて「そう感じる」とした
割合が多く、「わからない」という回答が少なくなっている。一般市民、自治会長ともに、
堺市のまちづくりの施策における重要性については、
「防犯・防災対策」と「高齢者・障害
者福祉」、「医療」、「子育て」環境の充実が、現状に不満があるうえ特に望まれている結果
となっている。
また、一般住民向けアンケートの問 3 では、自由意見として、まちの将来への期待や改
善点をたずねているが、その中においても、上記テーマに関する意見も多く寄せられてい
る。
さらに、これらは、実際、自治会長からも、今後力を入れて取り組んでいきたい活動とし
て意識されている。
加えて、自治会長、自治連合会長向けアンケートでは、問 2 で近年の自治会活動の変化
についてたずねている。高齢者の集いや異世代交流、子どもの登下校の見守りなどが近年
活発になっている。逆に、少子高齢化を受け、こども会活動の低迷に危機感を感じている
との結果が出ている。
地域活動の観点から、上記の結果から考えると、堺市中区が今後、魅力あるまちづくりに
向けて、めざすべき重点施策のテーマは、
「防災・防犯」、
「高齢者・障害者福祉」、
「子育て」
があげられる。
魅力あるまちづくりに向けて、これらテーマを地域活動の中でも、一層取り組んでいくこ
とが重要であり、そのことが地域の活性化につながると考えられる。
- 105 -
図表 61
どんなまちにしたいか(市民の視点)
50
100
0
特に重要
歴史・文化を大切にしたまち
人権尊重・男女共同参画
市民がまちづくり進める
医療体制の充実
コミュニティ活動が活発
5
0
産業・工業が盛ん
都市基盤の充実
自然が豊かなまち
若者ににぎわい活気がある
スポーツ・レクリエーション
高齢者・障害者が
安心
子どもが健やかに育つ
防災・防犯対策
花やみどりがあふれる
ごみが少なく清潔
重点すべき施策
100
そうは感じない
- 106 -
図表 62
どんなまちにしたいか(自治会長・自治連合会長の視点)
50
100
0
特に重要
歴史・文化を大切にしたまち
医療体制の充実
ごみが少なく清潔
50
市民がまちづくり
子どもが健やかに育つ
人権尊重・男女共同参画
高齢者・障害者が安心
コミュニティ活動が活発
自然が豊か
防災・防犯対策
都市基盤の充実
スポーツ・レクリエーション
若者ににぎわい活気がある
産業・工業が盛ん
重点すべき施策
花やみどりがあふれる
100
そうは感じない
- 107 -
2. 地域活動への意識の波及、参加していない層への広がりに向けて
(1) 活動に参加していない層とは
参加比率の低い 20∼30 代と、以前活動していた 40 代以降の世代の取り込みが課題
一般住民向けアンケートの問 9 では、現在地域活動に参加しているかどうかを聞いてい
る。結果、自治会員でも 60%の人は何も活動に参加していないと答えている。非自治会
員においては、90%以上の人が実に何も活動を行っていない。また、年齢別では、20 代
と 30 代の若い世代ほど参加比率が低くなる結果となっている。また、40 代、50 代でも、
「以前活動をしていたが、今はしていない」と答えている人の比率が高い。
上記の結果から考えると、これからは 20∼30 代の若い世代と、40 代後半以降の子育て
がひと段落した世代を、いかにして取り込むかが課題であるといえる。
(2) 活動に参加しない(できない)理由
新興地区や若い世代に情報が行き渡っていない
一般住民向けアンケートの問 13 では、地域活動に参加していない理由を聞いている。
忙しいという理由以外では、「活動内容や参加方法がわからない、きっかけがない」と答
える人が半分以上と多くあげられている。若い層ほどその傾向が強くなっていることから、
若い世代に情報が行き渡っていないことが原因になっている。たとえば、回覧板を親の世
代が見ていても子どもは見ていない、古い世代は長年の近所づきあいの中ですでに人的ネ
ットワークが形成され、何かと情報が入ってくるが、新興地区や若い世代には、それにあ
たる人的ネットワークがない。このため、ほとんど情報がないという状況である。
また、問 12 では、以前は活動に参加していた人に活動をやめた理由を聞いている。そ
こでは、子どもが成長し必要がなくなったという答えが 3 割以上を占めている。これは、
こども会や PTA などの関係で仕方なく地域活動に参加していた、比較的消極的な層であ
ると思われる。しかし、子どもが手を離れても、ずっと活動を続けたい、ここに住んでい
る限りコミュニティに関わっていたいと思えるだけの必要性と魅力があれば、途中で活動
をやめてしまう人を減少させることは可能である。
- 108 -
(3) 活動参加へのきっかけ、参加への仕掛け
1 活動参加へのきっかけ
○
自治会報や回覧板、友人・知人からの誘い・口コミ
一般住民向けアンケートの問 11 では、活動に参加していない人が参加することになっ
たきっかけ、情報源について聞いている。もっとも多い理由として、自治会報や回覧板、
友人・知人からの誘い・口コミ、そして、自治会やこども会から活動を割り当てられた、
という順番になっている。
2 参加への仕掛け
○
住民の関心の高いテーマの企画が、これまで活動に参加していなかった層を参加へと導くき
っかけに
一般住民向けアンケートの問 6 では、地域活動への認知度・参加状況と参加意向をジャ
ンル別に聞いている。その中で参加者が比較的多い活動は、
「町内・公園などの清掃活動」
「古紙リサイクル・廃品回収」
「秋祭り」
「運動会などのスポーツイベント」となっている。
また認知度に比して、参加意向が高い活動として、
「健康体操・ウォーキング」
「花いっ
ぱい運動」
「防災訓練」
「文化祭・コンサート」となっている。認知度があまりないにも関
わらず、高い参加意向を示しているこれらの活動は、このアンケートを通じて、住民がそ
の活動の存在を新たに知り、関心を持ち、「実際に関わってみたい」と感じた分野として
捉えることができる。これら住民の関心の高いテーマを中心に新たな企画をたて、住民と
自治会のコミュニケーションを高める仕掛けを検討していけば、これまで活動に参加して
いなかった層を参加へと導くきっかけにつなげることができると思われる。
- 109 -
図表 63
活動の認知度と参加意向
50
100 ・運営をしてみたい
・参加を続けたい
・今後参加してみたい
0
人の割合
高 ↑
秋祭り・盆踊り
ふれあいサロン・食事会
古紙リサイクル・廃品回収
50
認知度
運動会・スポーツ
清掃活動
フリーマーケット・バザー
↓ 低
餅つき大会
巡回パトロール
防災訓練
乳幼児子育てサロン
悩み相談窓口
会報誌・情報誌づくり
歴史・風土記作成
・活動を知らない
・これまで参加したことはない
防犯灯の維持管理
登下校見守り
発見的活動
やってみたい
文化祭・コンサート
健康づくり
花いっぱい運動
高齢者声かけ訪問
世代間交流
パソコン教室
不法投棄・不法駐車監視
- 110 -
(4) 今後の施策へ向けて
1 広報、PR 活動の充実
○
コミュニケーションを活発化させることにより、解決するものも多い
一般住民からは、必要性や多忙を理由として入会しないケースも多いものの、入り方が
わからない、きっかけがないことによるものも多い。また、自治会長からみても、住民の
意識の低さを多くあげているが、交流不足や広報・PR 不足も課題として多くあげており、
コミュニケーションを活発化させることにより、解決するものも多い可能性がある。
また、今回のアンケートで、一般住民の多くは、地域活動に関する情報は、自治会報や
市の広報紙、回覧板等で入手していることがわかった。活動参加者を増やすには、自治会
の努力で、より親しみのある魅力的な広報紙を作り、非自治会員の世帯にも配布したり、
回覧板を域内の全ての世帯に回したりすることも考えられる。また、近年回覧板に代わる
新しい手段として注目されつつある、携帯電話のメール機能の活用、インターネットホー
ムページの掲示板の活用なども検討する必要がありそうである。
しかし、広報活動は、やみくもに行っても資金がかかるばかりで効果が見えない、とい
うことも多い。専門家のアドバイスをもらったり、先進的な事例に習ったり、工夫も必要
である。
また、PR や広報活動の充実は当然として、口コミによる市民同士の直接のコミュニケ
ーションを通じての活性化も重要である。そのためには、自治会やこども会、青年団、老
人会など何らかの組織に個々人が所属し、そこで、近隣の住民同士で交流し、人間関係を
深めることである。これこそが、地域活動の根本であり、活動参加のきっかけとしても最
も高い効果を発揮すると思われる。
2 リアルなコミュニティの場の創設
○
住民と自治会とのコミュニケーションを図る仕掛けを検討していく必要
上記の結果からもわかるように、今後は、住民の関心の高い活動テーマを中心に、地域
活動の取り組み状況や参加方法について、住民と自治会とのコミュニケーションを図る仕
掛けを検討していく必要がある。
それには、住民が集える拠点が必要である。今回のアンケートにおいても、さまざまな
テーマで語りあえる集いの場、茶話会の場というものが求められているのがわかった。拠
点がなければ人が集まることもままならない、あそこに行けば、常に誰かがいて、同じ趣
味をもった人と楽しく話せる、そういう誰でも気軽に立ち寄れるサロンのような場、寂し
いときや困ったときに駆け込める場、拠点をもつことが重要である。
特に、新たに場所をつくらなくとも、既存の施設を活用することなども検討すべきと思
- 111 -
われる。そこに、子どもたちから、高齢者まで老若男女が集い、次第に異世代交流へとつ
なげていきたい。
3 ライフステージにあわせた多様な活動メニューの提供
○
あればいいなと思う活動の企画実施が有効
活動に参加していない若い層の取り込みや、子育てが一段落し、子どもを通じた接点が
なくなることにより活動をやめていく層への参加の呼びかけていくことが重要である。そ
のためには、若い世代から子育て終了世代まで、それぞれのライフステージに合わせた地
域活動を企画・実施していく必要がある。
たとえば、一般住民向けアンケートの問 15 では、こんな活動があればいいな、という
意見を聞いているが、30 代までの若い人の意見で目立つものは、文化イベントやスポー
ツ活動、子育てサークル、50 代以降の年齢層は健康づくりやダンス、日帰り旅行、初心
者向けパソコン教室など、それぞれのニーズに合わせた活動メニューの提供に努めていく
ことが重要とみられる。
図表 64
あればいいなと思う活動の主な例
活動ジャンル
具体的な例
健康
体操教室、ウォーキング、ハイキング
趣味
ダンス教室、園芸、料理教室、音楽会
集い
茶話会、ワインの集い
子育て
子育てサークル、子どもが楽しく遊べる場所
4 自治会加入率の向上に向けた取り組み事例
○
住民参加のイベントや様々な団体等との連携に取り組んでいる自治会も
自治会長向けアンケート問7では、高い加入率を誇る自治会に対して、自治会への加入
率を上げる方策をたずねている。
主な意見として、祭りや盆踊り、集会所づくりなど住民参加型のイベントを企画し、苦
労や楽しみを共有すること、旅行やスポーツなど誰もが楽しめる企画をたくさん考えるこ
と、あるいはすでにそういったテーマで活動している団体を自治会活動の中にうまく取り
込んでいくことである。
また、地域活動の基盤である、自治会への非加入者の減少、加入機会の拡大を図るため
に、不動産業者やマンション管理業者と連携して自治会への加入を入居条件に組み入れる、
などの意見がある。このような加入を強制することはできないが、これらは、加入率が低
い自治会の方には参考となる事例であろう。
- 112 -
3. 地域活動の担い手と協働のあり方
(1) 自治会の位置づけ
今後、自治会の果たす役割がますます大きくなると自覚している自治会長が多い
自治会長向けアンケートの問 13(自治連合会長では、問 11).まちづくりにおけるこれ
からの自治会の役割では、今後、自治会の果たす役割がますます大きくなると自覚して
いる自治会長(自治連合会長含む)が多く、自治会は地域活動の基本単位であり、地域
のコミュニティ形成において重要な役割を担っていると認識されている。
図表 65
今後の自治会が担う役割(N=106)
今後、自治会が担う役割は
わからない
9%
小さくなると思う
7%
あまり変わらない
と思う
39%
ますます大きくな
ると思う
45%
- 113 -
(2) 地域活動の担い手と協働のあり方
活動ジャンル毎に、地域活動の担い手と協働のあり方がある
一般住民向けアンケート問7及び自治会長、自治連合会長向けアンケート問 12 におい
て、地域活動の担い手を聞いた。これを活動ジャンル毎に整理すると下表のようになり、
ジャンル毎に活動の担い手に対する意識の違いがあることがわかる。
市民主導で行うべきと認識されている活動としては、
「清掃活動」、
「地域イベント」
、
「廃
品回収」、
「サークル活動」、
「世代間交流」、
「花植え活動」
、
「地域パトロール」があげられ
る。
図表 66
活動と活動の担い手
活動の担い手(%)
活
動
市民主導
行政主導
自治会に
期待
自治会で
対応可能
1 自治会に期待されて
○
清掃活動
62.8 / 80.6
37.2 / 19.4
44.6
53.8
いて、自治会自身も対応
地域イベント
84.2 / 93.3
15.8 / 6.7
50.2
64.0
可能
廃品回収
66.3 / 84.3
33.7 / 15.7
45.2
49.4
2 自治会に期待はして
○
サークル活動
76.8 / 83.5
23.2 / 16.5
24.1
39.6
世代間交流
66.6 / 83.7
33.4 / 16.3
31.1
34.8
花植え活動
58.5 / 66.0
41.5 / 34.0
37.3
34.0
地域パトロール
53.3 / 59.8
46.7 / 40.2
40.6
25.8
4 行政に期待されてい
○
生涯学習
43.5 / 38.2
56.5 / 61.8
11.0
3.4
て、自治会自身対応が難
高齢者等の生活支援
26.2 / 28.0
73.8 / 72.0
27.7
10.0
しいと判断
防災訓練・避難地図
25.2 / 41.7
74.8 / 58.3
30.5
12.5
違法駐車
18.1 / 28.9
81.9 / 71.1
23.8
12.4
子育て支援
36.6 / 31.6
63.4 / 68.4
15.7
5.1
青少年健全育成
32.6 / 48.4
67.4 / 51.6
20.4
13.7
いないが、自治会自身は
対応可能
3 自治会に期待されて
○
いるが、自治会自身は対
応が難しいと判断
数値は、左が一般住民向けアンケート、右が自治会長、自治連合会長アンケートの結果
市民主導:
「市民が主体で行う」+「市民が主導で行い行政が支援する」*
行政主導:
「行政が主体で行う」+「行政が主導で行い市民が協力する」*
*丸め誤差があるため、グラフ上の数値を加算したものと一致しない場合がある。
網掛けは、市民主導及び行政主導については 50%以上、自治会に期待および自治会で対応可能 33.3%以上
- 114 -
1 自治会に期待されていて、自治会自身も対応可能
○
現在も自治会は活動しており、市民も参加意向があり、底辺の広がる活動
「清掃活動」
、「地域イベント」、「廃品回収」があげられる。
これらの活動は、一般市民は自治会へ期待しており、自治会も対応可能としている。ま
た、一般住民向けアンケート問 6.地域活動への参加状況で、参加者が比較的多い活動と
してもあげられている。さらに、非自治会員も、今は参加していないが、今後参加してみ
たい活動にあげていることから、市民の地域活動への参加を促す活動でもある。
これらは、めざすべき重点施策のテーマにかかる直接的な活動ではないが、自治会長向
けアンケート問 6.地域住民のコミュニティ形成に貢献している活動としても認識されて
おり、地域活動の活性化にも寄与するものである。
2 自治会に期待はしていないが、自治会自身は対応可能
○
自治会も市民も活動しており、これから膨らむ活動、協働で取りかかりやすい活動
「サークル活動」、「世代間交流」があげられる。
これらの活動は、一般市民は、市民主導で行うべき活動としながらも、自治会へは期待
しておらず、自治会枠にとらわれない形での協働で行うテーマとなりえる。
一方、自治会は対応可能としており、とくに「世代間交流」は自治会長や自治連合会長
からも近年活発になってきている活動にあげられている。また、「サークル活動」は現状
も地域の中で、自治会や市民が活発に行っている。今後、市民が積極的に参加できる活動
として、協働により、地域の中で広がっていくと考えられる。
3 自治会に期待されているが、自治会自身は対応が難しいと判断
○
自治会では限界、他の団体との連携を模索すべき活動
環境美化活動である「清掃活動」と「花植え活動」は、双方とも市民主導で行うべき活
動と認識されているが、
「花植え活動」は「清掃活動」よりも自治会への期待度が低く、
かつ自治会のみでの対応可能度は 20 ポイントも低い。
一方、一般市民が、認知度に比して参加意向が高い活動として「花いっぱい運動」をあ
げており、さらに運営レベルでも取り組んでみたい活動にあがっていることも合わせてみ
ると、「花植え活動」は、今後、様々な主体の参画を促すきっかけとなれる活動で、地域
の中で広がっていくと考えられる。
地域パトロールは、堺市が今後めざすべき重点施策のテーマ「防犯・防災」に関わる活
動で、青色防犯パトロール等警察と連携して取り組んでいる先進事例もある。
- 115 -
4 行政に期待されていて、自治会自身対応が難しいと判断
○
行政ができることを示しながら、協働のチャネルを開いていく
行政に期待されていて、自治会自身対応が難しいと判断されている活動については、そ
れぞれの活動で認識の違いがある。
「防災訓練等」は、めざすべき重点施策のテーマ「防犯・防災」に関する活動であるが、
行政主導で行うべきとされているものの、自治会への期待も大きい。「防災訓練等」にお
いては一般市民の参加意向の高い活動にあがっており、自治会長が消防署との連携により
今後力を入れていきたいという意見も多くあった。また、アンケートにおいて、改善提案
として多くあげられていた、公民の境界で起こる「不法投棄」等の課題(参考資料 5 頁
参照)に向けた対応等も、民間主体が公益性をもって課題解決していくためには、市民が
主体的に活動できる仕組みづくりを検討していくことが課題である。
「生涯学習」は、市民主導と行政主導の差はあまり大きくなく、自治会以外で市民主導
も検討すべきである。また、「青少年健全育成」は、行政主導での実施が期待されている
が、一般市民(行政主導)と自治会長(行政主導、市民主導で意見が分かれる)とで認識
が違う。
「違法駐車対策」活動は、一般住民向けアンケート問 3.現在住んでいるまちへの思い
でも、多くの意見があった。また自治会長が警察との連携により今後力を入れていきたい
活動としており、男性が今後参加してみたい活動としてもあげられている。今後、公民協
働の中で、市民が活動しやすい仕組みづくり等も含めた行政等の支援が必要であろう。
(3) 重点テーマと地域活動の担い手
公民協働で取り組むことにより、重点テーマが推進できる
先に触れた、今後魅力あるまちづくりに向けためざすべき重点施策テーマ「防災・防犯」
「高齢者・障害者福祉」
「子育て」と地域活動の担い手の関係をみると、例えば高齢者に
関連する活動では、高齢者の「交流活動」は市民主導で取り組むべきとされている一方で、
高齢者・障害者の「生活支援」は、市民が取り組むには専門性が求められるため、行政主
導で取り組むべきとされており、活動内容によって、協働のあり方について一定の整理が
なされている。なお、高齢者の「交流活動」については、自治会は対応可能としている。
このように、魅力あるまちづくりに向けての重点テーマに関する活動項目は、必ずしも
自治会の役割、自治会への期待と限定されていない一方、自治会が担える活動もあり、ま
さに公民協働で取り組むことにより、重点テーマが推進できる。
実際これらのテーマは、自治会も行政や他団体と連携して実施しており、また実施して
いきたいという要望も高く、今後の協働での取り組みは増えていく可能性がある。
また、重点テーマではないが、「花植え活動」、
「サークル活動」、
「世代間交流」といっ
- 116 -
た、いろんな主体の参画を得やすい活動テーマもあり、ここをチャンネルに「協働」を始
めていくことも今後の展開の一つとして考えられる。
(4) 協働のまちづくりの重要性と今後の方向性
お互いにできることを出し合って補完しあいデザインしていくことが大事
今後の協働のまちづくりの取り組みのあり方として、一般住民向けアンケート問 8.ま
ちづくりのために重要なことの結果では、「行政と地域住民が役割分担してまちづくりを
進めていく」ことが最も多くあげられている。また、非自治会員で「自治会等が中心とな
って取り組んでいく」ことをあげている人は、自治会員に比べて低いのに対し、「行政と
地域住民が役割分担してまちづくりを進めていく」ことは、自治会員に比べて高い。この
ことは、自治会枠にとらわれない協働のあり方を求めているとも捉えることができ、地域
活動に関わりたい住民が、協働により参加機会を得られれば、地域にとって好循環をもた
らし、活発な地域活動を展開できる。
したがって、今後、魅力あるまちづくりに向けて、単位自治会で担える活動、単位自治
会では担えないが、大きな連合単位でなら担える活動、また、地域間の連携により担える
活動、ボランティアやNPO等他団体と連携することにより取り組んでいける活動、広く
一般市民の参加を促す仕組みにより取り組める活動等の視点で、地域活動を整理し、様々
な協働の枠組みの中で、どの主体がどの部分を担っていくのかを、具体的にデザインして
いくことが必要である。また、そのための「場」づくりも重要であると考えられる。
そして、まちの構成員である様々な主体が、様々な協働のタイプで役割分担し、互いに
できないことを補完し合いながら、ソフトなレベルで行政と市民が協働して取り組んでい
ける仕組みづくりを実施していくことが魅力あるまちまちづくりをより推進していくこ
とになる。
- 117 -
図表 67
重要だと思うこと(自治会員N=625・非会員N=209)
良いまちをつくるためにもっとも重要だと思うこと
50.0%
43.5%
45.0%
会員
非会員
40.0%
35.0%
30.0%
33.3%
29.1%
25.0%
20.0%
19.2%
17.2%
16.7%
15.0%
10.2%
9.1%
10.0%
5.4%
7.7%
2.7%
5.0%
6 .行 政 と 地 域 住 民 が 役 割 を
分 担 し て 、ま ち づ く り を 進 め
て いく
5 .市 民 が 主 体 的 に 行 う ま ち
づく り 活 動 を 行 政 が支 援 し て
いく
図表 68
4 . 共 通 に 抱 え る 課 題 や 、取
り 組 ん で み た い テ ー マご と に
グ ルー プ に な って 取 り 組 ん で
いく
3 .個 人 個 人 が 意 識 を 持 って
積 極 的 に 活 動 に 参 加 し て いく
2 .地 域 組 織 と ボ ラ ン テ ィア
団 体 等 の民 間 団 体 が連 携 しな
が ら 、取 り 組 ん で い く
1 .自 治 会 等 の 地 域 組 織 が 中
心 と な って 地 域 で 助 け 合 いな
が ら 、取 り 組 ん で い く
0.0%
5.7%
アンケートから見出された協働のタイプ
1 地域(市民)の中の協働
○
2 行政との協働
○
・ 自治会活動への多くの住民参加
・ 市民(自治会を通さない)と行政の
・ 自治会と他団体の協働
協働
・ 自治会と他自治会との協働
・ 自治会と行政の協働
・ 地縁型組織以外の団体と市民と
・ 地域(自治会+他団体)と行政の協
の協働
働
・ 地縁型組織以外の団体と行政との
協働
- 118 -
4. 本調査結果を基礎とする今後の展開に向けて
昨年度の調査結果及び本調査結果を活用して、次のステップを考え、
「公民協働型のまちづくり」
を着実に進めていく必要がある。ここでは、2つの提案を行いたい。
図表 69
基礎調査
<本調査における事業効果フロー>
指針・計画
情報共有
実践
住民
本調査
まちづくり指針
地域住民組織
まちづくり計画
地域カルテ
行政情報
地域基盤
行政
- 119 -
公民協働まちづくり
地域住民活動
(1) 将来的な地域活動のデザインとしての「公民協働型まちづくり指針」策定
魅力あるまちに向けては、「公」を担う行政、「民」である市民の活動に加え、それぞれ
の独自の活動では、難しい活動が存在する。そのような活動の中には、今回、重点テーマ
として取り上げられた中にこれに属するものもあり、新たな枠組み、すなわち、
「公民協働」
による、取り組みが求められる。
今回の調査では、市民のまちづくりに対する熟度とともに、地域におけるまちづくり活
動について、
「公」主導、
「民」主導と「公民協働」が期待されている活動とを 13 項目の活
動ジャンルを題材に整理することができた。また、現在、中心となって、まちづくりを実
践しておられる、自治会長、自治連合会長の協働のまちづくりへの意識、課題認識、今後
の取り組みを把握することができた。
これら及び昨年度の調査データ、調査検討委員会での参考意見を活かし、今後のまちづ
くりにおける公民の役割分担や主体の育成等に向けた検討を行うことが可能である。
したがって、次のステップとして、
「公民協働型まちづくり指針」を策定していくことが
重要である。ここでいう、まちづくり指針とは、今後市民と行政が協働してまちづくりを
進めるための協定(ガイドライン)であり、市民と行政の役割分担、施策の考え方や方針
を示したものである。すなわち、公民協働による、地域活動の将来的なデザインを示すも
のである。
(2) コミュニケーションにより活発化させるベースとなる「地域カルテ」の作成
今回、一般住民向けアンケートでは、自由意見・コメントに多くの意見が寄せられ、地
域活動への関心の高さをアンケートという、一つのコミュニケーション・ツールにより、
把握することができた。
このように、住民の参加意識を盛り上げ、それをどのように活動成果に結びつけていく
かが、今後の地域活動にとって重要であり、行政が市民の意向を汲み取り、市民との協働
活動に活かしていく仕掛けが求められる。
また、今回の調査からもわかるように、今後の地域活動への広範な住民の参加や、自治
会と自治会以外の団体との連携を促進するためには、住民同士、異なる組織間のコミュニ
ケーション、交流促進の仕掛けを検討していく必要がある。
さらに、地域においても、住民の意見を参考に、何ができて、何ができていないをチェ
ックすることになる。
このような地域活動に関するコミュニケーションをより高めるための仕掛けを設けるこ
とにより、これを一層推進し、地域活動の活発化につながることが期待できる。
その一つのアプローチとして、
「地域カルテ」があげられる。これは、その地域がもつ特
徴やまちづくりの課題・目標、自治会などの組織、活動状況などをまとめた、いわばまち
づくりの状況を共有するツールである。
具体的には、本調査結果の実態と住民、自治会長意向を「地域カルテ」に反映させ、時
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系列的に地域活動の状況を把握した上で関係者で共有し、コミュニケーションのツールと
して活用すること等が考えられる。これにより、住民は「地域カルテ」を参照し、似た方
針を有する他主体との連携も視野に入れて、効果的な活動を展開することが可能となる。
一方、行政は「地域カルテ」を参照し、地域ごとにまちづくり計画や地域ごとの支援策を
立て、効果的に施策メニューを展開していくための基盤情報となる。
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