医師資格を証明する電子証明書(ICカード)を持てます 札

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札医通信
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1 第3種郵便物認可
医師資格を証明する電子証明書(ICカード)を持てます
ITの世界や現実の世界で医師国家資格を
証明す る 電 子 証 明 書 な ら び に 証 と な る IC
の提供、ICカード発行に係る必要な事項が
あげられます。
カードを持つことができるようになりまし
認証関係の事業としては地域でITを用い
た。申請するとネットワーク上で医師資格を
た連携基盤を構築する際に日医認証局の利用
証明できる電子証明書が発行されます。この
を促し、標準的な認証手段を提供する基盤の
電子証明書はICカードのICチップの中に格
整備。医療ドキュメントのe−文書法対応の
納され、電子的な医師の印鑑の機能やログイ
ための、電子署名環境の整備。日本医師会医
ン時の医師資格確認のために利用することが
療認証基盤(シングルサインオン基盤)の導
できます。そのため、このICカードを使う
入促進による標準的なログイン基盤の整備。
ためのコンピューターやICカードリーダー
生涯教育ポイント管理システムの提供。その
が必要です。今後、行政機関などとの協議が
他、セキュリティー確保のために必要な基盤
進めば、本人の顔写真が添付されたICカー
の整備(セキュリティー対策支援など)があ
ドの医師資格証を持っていれば災害現場など
ります。認証センターは資格証の発行以外
で医師免許証が無くても本人確認ができるよ
に、これから医療連携を構築しようとする地
うになり、いわゆる「なりすまし」の防止が
域に対するコンサルタント業務も行い、地域
期待できます。カードリーダーを使ってパソ
の基盤構築を助ける役割なども担う予定で
コンにその情報を読み込ませれば、民間事業
す。
者などが情報通信技術を利用して書面の保存
などを行う際の取り決めをまとめた「e−文
Q:申し込みは?
書法」に沿う形で、電子署名のある電子紹介
A:受付審査局は、日本医師会内に設置され
状などのやり取りが可能になります。また、
ています。医師資格証の発行を希望する場合
各地域で展開されている医療連携システムに
は、発行に必要な各種書類と共に医師免許証
アクセスする際の「認証カード」として本人
の原本の提示が必要です。申請者の負担を考
確認にも利用できます。
慮し、必要書類の提出と対面確認は地域の郡
発行機関の『日本医師会電子認証センター』
市区医師会で行えられる仕組みを順次用意す
が日本医師会の内部に設置されました。当セ
る予定です。認証センターに書類を持参して
ンターは、国や企業の干渉を受けない日本医
申請することもできます。資格証は認証セン
師会の自律的な機能として、医師の資格を証
ターに必要な資料が届いてから2週間程度で
明する事業とセキュリティーを確保した医療
発行されます。年会費として、日医会員5
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IT基盤の整備事業を実施する予定です。当
円、非会員1万円の費用がかかります。
センターにおける基幹となる証明関係の事業
として、医師資格を証明する電子証明書の発
Q:電子署名の仕組みは?
行に係る登録、審査業務、登録個人情報の管
A:電子署名をする場合、秘密鍵Aと公開鍵
理、メンテナンス、安全管理、地域や病院に
Bは次のようにして使います。
おける審査局の設置支援業務、ポータル機能
太郎さんのみが保有する秘密鍵Aを使って
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電子情報を暗号化します。情報をもらった花
盤は、情報へのアクセス時のシングル・サイ
子さんは太郎さんの公開鍵Bをインターネッ
ンオン(SSO:Single Sign-On)の機能を提
トから取ってきて復号します。この場合、誰
供します。
でも情報を復号できるので、秘密情報のやり
ホームページには、会員専用ページなど、
取りはできませんが、太郎さんしか持ってい
ログイン認証(IDとパスワードやICカード
ない秘密鍵Aと対になる太郎さんの公開鍵B
認証を用いた認証、以下、「ログイン情報」)
で復号ができたということは、送られてきた
を必要とするものがあります。特に、医療分
電子情報が確実に太郎さんによって暗号化さ
野では医師などの資格者に限定して情報を提
れたことになり、太郎さんが書いた電子情報
供することが多く、ログイン認証が必要なも
であることが分かります。
のが多く見られます。したがって、利用者
は、それぞれのホームページのログイン情報
Q:認証の仕組みは?
を覚えておく必要があり、例えば1
0ヶ所の
A:認証をする場合、秘密鍵Aと公開鍵Bは
ホームページがあれば、1
0回ログイン情報を
次のようにして使います。
入力する手間が生じてしまいます。
太郎さんが、データセンターにある患者さ
これを一度、ログイン情報を入力すれば、
んの情報にアクセスして、情報を閲覧した
その後はログイン情報を入力しなくてもホー
り、操作したりしたいとします。
ムページ間で連携してログイン情報を受け渡
まず、太郎さんは閲覧・操作したい情報が
存在する患者さんのデータベースに閲覧・操
す仕組みがあり、この仕組みのことをシング
ル・サインオンと呼んでいます。
作の許可を求めるためデータベースのシステ
ム(以下、データセンターとします)にアク
Q:HPKIとは?
セスします。
A:保健医療福祉分野の公開鍵基盤(Health
そうすると、データセンターがメッセージ
Public Key Infrastructure ) の 略 称 で す 。
ダイジェストを太郎さんに送ってくるので、
HPKIは、厚生労働省に設置されている医療
太郎さんは自分の秘密鍵Aでメッセージダイ
情報ネットワーク基盤検討会が、医療におけ
ジェストに電子署名をします。電子署名され
る認証基盤のあり方を検討し、2
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4年9月の
たメッセージダイジェストを受け取ったデー
最終報告書の中で「医療従事者が勤務する医
タセンターは、太郎さんの公開鍵Bをイン
療現場において電子化による効果を最大限に
ターネットから取ってきて、暗号化されたメ
発揮させながら運用するための仕組みとし
ッセージダイジェストを復号して、元々送っ
て、署名自体に公的資格の確認機能を有する
たメッセージダイジェストと比較をします。
保健医療福祉分野の公開鍵基盤(ヘルスケア
これらが一致すれば、確かに太郎さんである
PKI;HPKI:Health Public Key Infrastruc-
ことの確認ができるため、太郎さんに対して
ture)の整備を目指していくことが必要であ
データベースの閲覧・操作を許可します。
る」と提言したことから開始されました。
この一連の流れをチャレンジ&レスポンス
と呼んでいます。
HPKIの最大の特徴は、厚生労働省が所管す
る医師を始めとする2
4個の医療分野の国家資
格を証明することができる仕組みを持ってい
Q:日本医師会医療認証基盤とは?
ることです。従って、これらの国家資格を審
A:日本医師会電子認証センターでは、日医
査するための基準が厚生労働省の「証明書ポ
認証局の運営と共に「医療認証基盤」という
リシ」というもので定められており、それに
サービスも提供しています。この医療認証基
準拠しているかを確認する準拠性監査があり
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ます。この準拠性監査に合格すれば、厚生労
でした。このため、HPKIの準拠性監査を実
働省が運営する「その認証局が正しいと証明
施する厚生労働省の「保健医療福祉分野にお
するための認証局(ルート認証局)」と相互
ける公開鍵基盤認証局の整備と運営に関する
接続することができます。また、これらの仕
専門家会議」が、厚生労働省の事業として
組みは、国際標準であるISO1
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0に則って
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6年にルート認証局の構築を決め、その運
整備されています。このように、日本におい
用と準拠性監査を実証することにした時、日
ては、IT世界における保健医療福祉分野の
医認証局に実証への協力依頼がありました。
国家資格の証明方法は制度としてルール化さ
日医はこの依頼に対して、最終的な運営準備
れています。
を整えた2
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9年に協力をすることで、正式に
厚生労働省のルート認証局と相互に接続を完
Q:日医認証局とは?
了しています。このような経緯から、日医認
A:日医はHPKIがルール化される前から
証局はHPKIのルール作りの段階からHPKI
ISO1
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9
0(当時はIS前のTS)に則った認証
に関与し、現在、医師の証明を行うHPKIの
局を構築・試験運用していて、厚生労働省が
認証局として先駆的な役割を担っています。
HPKIをルール化した時には、すでにHPKI
に準拠した認証局を保有しているという状況
(政策部担当理事
清水
研吾)