住民の地域意識とまちづく り活動 - Kyushu University Library

J. Health Sei., 22 : 143 一150, 2000
143
意識とまちつく り活動
住民の地域
ハウステンボスを事例として
岩井 梢 山本教人*
佐藤充宏**長積 黒 二
二**
仁**
Resident’s Attitude toward Community and Their Community Movement
A Case Study of HUIS TEN BOSCH
Kozue IWAI, Norihito YAMAMOTO*, Hiroshi KURODA““
Mitsuhiro SATO*“ and Jin NAGAZUMI““
Abstract
This article analyzed the role of leisure in the community planning. lt presented a case study of the
extraordinary community of HUIS TEN BOSCH in Sasebo City. HUIS TEN BOSCH is leisure industries,
but it plans that guest enter for free to 2007 and will be true town. HUIS TEN BOSCH has a great
economic influence on Sasebo City. But accepted by community residents is more significant than
economic influence.
It is important to consider community planning through community resident’s attitude toward it.
Community residents was classified into two groups. lt called each groups,attached . cooperative group
(’
№窒盾浮垂戟j and evading participation.Iacking sense of common bonds group (group2). Either group didn’
t actively participate in community movement. Groupl recognized that HUIS TEN BOSCH had various
influences on economy, population, community atmosphere and so on. ON the contrary, group2
recognized only its economic influence, they lacked of its understanding. But either group thought that
HUIS TEN BOSCH would be essential to the future community. For the reason, HUIS TEN BOSCH
may be able to have influence on community movement.
Key words:community resident’s attitude, community residents, community movement
(Journal of Health Science, Kyushu University,22:143−150,2000)
はじめに
路を中心とする都市基盤整備などのハードづくりによっ
てはじまった。しかし,それにより自然破壊や公害な
本研究は,レジャーによるまちづくりの研究である。
どの弊害がでてくると住民の意識が高まり,反対運動
まちづくりは,高度経済成長期の新しい工業開発を
として住民運動が行なわれるようになった。その後,
中心とした地域開発の広がりにより,新幹線や高速道
住民運動は反対運動からそのまちの自然や町並みを守
Graduate School of Human−Environment Studies, Kyushu University 11, Kasuga 816−8580,Japan.
’ lnstitute of Health Science, Kyushu University ll, Kasuga 816−8580, Japan.
““ Faculty of lntegrated Arts and Sciences, The University of Tokushima, Tokushima 770−8502, Japan.
144
健 康 科 学
り,町を盛り上げてくものへと変化してきた。そして,
第22巻
重要なのは経済的な波及効果があることよりも,いか
現在では,住民と行政がともにまちをつくっていこう
にその地域にとけ込み,実際にその周辺で生活をして
とするものに変わってきているといえる61 8)。
いる住民に受け入れられるかということである。その
そのようなまちづくりの変遷のなかで,佐世保市行
ため,ハウステンボスに対する住民の評価が重要なの
政のまちづくりも住民を重視し、住民とともにまちづ
ではないだろうか。そこで,本研究では,住民の「地
くりを行なっていこうと変化してきている。平成4年
域意識」をもとに,住民がハウステンボスをどのよう
に出された第4次総合計画では,リゾートやテクノポ
に評価しているのかを明らかにする。また,ハウステ
リスといった産業のハードを重視したまちづくりであ
ンボスを受け入れた住民たちのまちづくりに対する関
り,ソフトの視点も企業や事業体主体の姿勢であった。
心や参加の意志はどのようなものかについても明らか
しかし,総合計画の見直しが行われ,平成10年度に第
にすることを試みる。
5次総合計画が出されている。第5次総合計画では,
佐世保市の都市将来像は「ひと・交流創造都市」と位
研究方法
置付けられており,まちづくりの中心に「ひと(個と
しての市民)」を位置付けている3)。つまり,まちづく
1.調査内容
りにおいて住民を最も重視しているのである。そして,
住民の「地域意識」とまちづくり活動,ハウステン
これから20年間の姿を見据えたまちづくり方針として,
ボスに対する評価の関係を検証するために,質問紙法
総合計画で決められた都市将来像を実現するために,
による調査を実施した。
都市マスタープランを作成している。そのなかの地域
住民の地域意識を測定するための項目として,「地
別構想では,行政がオリジナルで5地区に分け,作成
域意識に対する態度とコミュニティ」の19項目を利用
にあたっては住民の意見を聞くために各地区で「地域
した。それぞれの項目を「全くそう思わない」から
別懇話会」をワークショップ形式で行なっている4)。
「全くそう思う」の5段階で評定してもらい,それぞ
上記のような佐世保市のまちづくりにおいて,1992
れに「1」から「5」点を与えた。
年にテーマパークとしてオープンしたハウステンボス
次に,住民のまちづくり活動を測定するために,ま
の存在意義は大きい。ハウステンボスは現在テーマパー
ちづくり活動への関心や参加意志,実際の活動状況を
クのかたちをとっているが,開業15年で無料開放する
みる項目を作成した。まちづくり活動への関心や参加
計画をもっており,テーマパークやリゾートを超えた
意志をみるために,佐世保市の第5次総合計画であげ
ものなっている。つまり,レジャービジネスとしてま
られているまちづくり活動のなかの19項目によって測
ちづくりを行う新しいかたちの事業体である。このよ
定項目を構成した3)。回答は「1.関心があり,参加
うなハウステンボスによる経済的な波及効果は大きく,
している一」,「2.関心があり,今後参加してみたい1,
ハウステンボスの佐世保市における存在意義は大きい
「3.関心はあるが,参加する気はない1,「4.関心
といえる。昭和60年には約310万人にだった観光客が,
がない」の4つのなかからあてはまるものを1っ選ん
ハウステンボスのオープンした平成4年には約580万
でもらった。実際の活動状況を測定する項目として,
人となり,佐世保市は長崎市を抜き県内観光地トップ
活動組織,組織内での役割,活動内容,参加に関する
となっている。また,観光消費額は,昭和60年には約
意志,またその活動とハウステンボスとの関わりを使
223億円であったが,平成4年には約746億と2倍以上
用した。これらの項目は自由記述としたが,参加の意
になっている7)。
志に関しては,「1.自らすすんで参加1,「2.誘わ
しかし,田村(1999)は,「多くのテーマパークは,
れて,すすんで参加」,「3.誘われて,仕方なく参加」,
東京ディズニーランドや長崎オランダ村ハウステンボ
「4.順番のため仕方なく参加」の4つのなかからあ
スのように,無から創るものが多い。全く新たな創作
てはまるもの1つを選んでもらった。,また,それらの
として割り切って,コンセプトをもって細かい点まで
活動がハウステンボスとどのように関わっているかを
徹底して配慮しているものは事業的にも成功している。
みるために,「1.ハウステンボスには関係のない活
それが地域に与えたインパクトは大きいのだが,受動
動一1,「2.なんらかのかたちでハウステンボスと関わっ
的な受け入れ型になる。そこには現地とは全く離れた
ている活動」,「3.ハウステンボス事業に対立してい
『まち』ができる。」5〕といっている。ハウステンボス
る活動】のなからあてはまるものを1っ選んでもらった、二,
を中心としたまちづくりを行政が行おうとするなかで,
住民のハウステンボスに対する評価を測定するため
住民の地域意識とまちづくり活動
145
の項目として,インタビューや都市マスタープランや
表1に示すように,第1因子に負荷の高かった6項
文献1>2)3)を手がかりにハウステンボスによって影響
目は,「いま住んでいる地域のことを誇りに思ってい
を受けると考えられる20項目が採択された。それぞれ
る」,「いま住んでいる地域に対して愛着心を感じてい
の項目に対する回答には,「全くそう思わない」から
る」などの地域に対する愛着を示している。従ってこ
「非常にそう思う」の4段階を用意し,それぞれに
れに「愛着」因子と命名した。なおこの「愛着」因子
「1」から「4」点を与えた。
は,貢献度が31.7%と抽出された4っの因子の内最も
高く,重要な因子であることが理解できる。第2因子
2.調査対象と方法
は,「自分の住む地域でなにか問題が起きても,それ
調査の対象となったのは,ハウステンボス周辺の佐
に関わりを持ちたくない」,「この地域をよくするため
世保市東部地域(江上,早岐,針尾,三川内,宮)の
の活動は熱心な人に任せておけばよい」などといった
住民であった。調査票は,1998年10月24日から12月19
地域との関わりを回避する態度を示していると考えら
日にかけて配布,回収された。合計187部の調査票が
れ,「関与回避」因子と名付けた。第3因子は,「近所
配布され,146部を回収した。有効標本数は145で,回
に住む人々の間には『他人のことは他人のこと』とい
収率は78%であった。
う風潮がある」と地域内での関係の希薄さを示してい
ると考えられ,「連帯欠如」因子と命名した。第4因
子は,「地域で生じた生活上の問題は,そこに住む住
結果と考察
民が協力して解決すべきだ」と地域で生じた問題を協
1.地域意識の因子構造
力して解決していこうとする意識を示す項目に高い因
地域意識の分類を行うために,「地域意識に対する
子負荷量を示している。よって,「協力」因子と命名
態度とコミュニティ」17項目註Dに対し,主因子解法
した。なお,第3因子,第4因子は1項目であるが,
による因子分析を適用した。その結果,貢献量1.0以
特に第3因子は負荷量0.9以上と因子に対する相関が
上の因子4因子を抽出することができた。この4因子
高い項目であるため採用した。
に対して,バリマックス法による軸の直交回転を行なっ
4つの因子は,どのように地域をとらえているかと
た結果,最終的に4っの因子を確認することができた。
いう「認識」と,またどのような行動を行う意志をもっ
これらの因子の解釈と命名は,因子負荷量0.5以上の
ているかという「行動」の2側面にわけられる。前者
項目をリストアップし,そのまとまり具合を検討する
は,地域に対する愛着の認識を示す愛着因子と地域で
ことで行った。
の連帯感のなさを認識している連帯欠如因子であり,
表1 地域意識の因子構造(回転後)
項目/因子
いま住んでいる地域のことを誇りに思っている。
いま住んでいる地域に対して愛着心を感じている。
他の地域に住む人が自分の住む地域のことをうらやましがる。
いま住む地域には困ったときに助け合えるような温もりや人情を感じる。
地域の生活やしきたりにはできる限りそれに従うべきだ。
いま住む地域には住民の一体感や連体感を感じる。
自分の住む地域で何か問題が起きても、それに関わりを持ちたくない。
この地域をよくするための活動は、熱心な人たちに任せておけばよい。
近所づきあいは面倒なので、なるべく関わりをもたないようにいる。
自己の生活と地域社会とは別問題だ。
地域での行事に参加するのはおっくうに感じる。
近所に住む人々の間にはr他人のことは他人のこと」という風潮がある。
地域で生じた生活上の問題は、そこに住む住民が協力して解決すべきだ。
Fl
F2
F3
F4
.778
一一一
D133
一.204
.072
.748
一.319
−O.43
一.062
.662
一.1 70
一.034
.1 94
.541
一.075
一.397
.468
.524
.059
一.1 35
.264
.500
一.061
一一一
D448
.389
D1 79
D1 03
.669
.053
一一
.025
.600
一.007
一一一
一.1 76
,585
.1 87
一.207
一.090
.567
.1 47
一.1 OO
一.261
.552
.Ol 4
一.044
一.1 32
.1 46
.922
.044
.119
一.259
.045
.547
一一一一
D027
貢献量
5.077 1.449 O.942 O.556
貢献度(%)
累積貢献度(%)
31.7 9.1 5.9 3.5
31.7 40.8 46.7 50.2
第22巻
健 康 科 学
146
後者は地域で生じた問題解決に対する協力意識を示す
がみられなかった。
協力因子と地域への関与を回避しようという行動に対
する意識を示す関与回避因子である。このことは,地
3.ハウステンボスに対する住民の評価
域意識が少なくとも「認識}と「行動1という2つの
表3に示すように,愛着・協力型の方は,「ハウス
異なる次元で把握可能であることを示しているものと
テンボスによって新しい職場雇用が増えた1とハウ
思われる。
ステンボスを産業の1つとして評価している,また,
「東部地域出身の若い人が町に残るようになった1,
2.地域意識の類似性による住民の分類
「他の地域から東部地域に人が住むようになった1と
ここでは、先に明らかになった地域意識の類似性に
地域の人口にも影響を字えていると考え,「ハウステ
より,住民をグループ分けする,,そのために,4っの
ンボスができて町に活気がでてきた1といった地域の
地域意識因子のケース毎の因子得点を算出し,クラス
雰囲気の変化も評価している、そして,「ハウステン
ター分析によって全ケースの分類を試みた。各グルー
ボスは佐世保市東部地域の経済,文化の核となってい
プの特徴は,それぞれのグループが4っの地域意識に
る}とハウステンボスの地域での位置付けについても
どのような関わりを示しているのかということと,そ
評価している。以しのように,愛着・協力型は,ハウ
こにどのような人々が分類されているのか検討するこ
ステンボスの影響を様々な側面で感じている、,そして,
とで把握された、,
ハウステンボスの地域における位置付けは大きいと考
表2,図1に示すように,クラスター1は,住民の
えているようである,,
約6割が属しているグループである,,彼らは,地域に
…方,連帯欠如・関与回避型は,「ハウステンボス
は愛着やぬくもりがあるを感じており,地域への協力
によって新しい職場,雇用が増えた」を他のものと比
の意志があるグループといえる。そのため,このグルー
べて高く評価しているのみである。、連帯欠如・関与回
プは「愛着・協力」型とした。
避型は,ハウステンボスを産業の1つとしては認識し
クラスター一 2は,およそ4割の住民が属しているグ
ているが,それ以外の影響についてはあまり認識して
ループである。このグループは,地域には他人のこと
いないようである、,
は他人のことという風潮があり地域の人たちは冷たい
と感じており,地域との関わりを回避したいと考える
4.まちづくり活動
グループであるといえる。そのため,このグループは
まちづくり活動の現状としては住民の参加は少なく,
「連帯欠如・関与回nz i型と命名した。
主な活動は町内会・自治会などの地域コミュニティの
2つのグループは,地域にぬくもりを感じ協力意識
活動である。そして,住民が行っているこれらのまち
のある愛着・協力型と,地域の関係の希薄さを感じ地
づくり活動にはハウステンボスの関㌻はほとんど見ら
域への関わりを回避したいと考える連帯欠如・関与回
れない,,
避型といったように,地域に対する認識や行動に対し
グループ問で比較すると,表4に示すように,愛着・
て正反対の意識をもつグループであるといえる,,しか
協力型は比較的活動に自主的に参加して人が見られ,
し,両グループの個人属性は,愛着・協力型が一戸建
様々な活動に参加している人がいる。一・方,連帯欠如・
持ち家に住んでいる人が多少多いのみでほとんど違い
関与回避型は,表5に示すように,町内会などの自治
1
表2 クラスター別の「地域意識」因子得点の比較
0.8
クラスター Total
0.6
、、
N i= 145
0.4
1 2
N=一88 N=57
地域意識因子
地域愛着
関与回避
連体欠如
協力
グル÷
O.2
(61.70/o) (39.30/o)
\、 、
F一一
O.26
一〇.41
−O.工2
0.18
−O.50
0.76
106.84***
0.23
0.35
21.28***
N−T一 es (6L70/o)
N;i撃
0
21.64***
−O.2
4.02*
グル→
−O.4
N翻57
N :5? (39.3%)
−O.6
注)*p<.05 **p〈,0! ***p<。00!
愛着心 関与回避 連帯欠如 協力
図1 クラスター別のライフスタイル因fの比較
住民の地域意識とまちづくり活動
147
活動には順番のために仕方なく参加している人が多く
いるのは,愛着・協力型の住民が多い(17.5%)。ま
みられる。
た,連帯欠如・関与回避型の住民の1/4は関心がなく
また,まちづくり活動に関心があり参加している人
(28.1%),関心があっても参加意志のない人が4割近
は全体的に少ない。さらに,住民にとって関心はあっ
くいる(43.9%)。
ても参加する意志がない活動や関心ももっていない活
以上のように,住民の中で実際にまちづくり活動に
動も多くみられた。リサイクル推進のための活動は,
参加している人は少なく,彼らの関心や参加の意志も
関心があり実際に参加しているのは,図2,図3に示
低いようである。これは佐世保市は二人口25万の中規
すように,愛着・協力型の住民のみ(18.2%)である。
模な都市であるため,まちづくりの選択肢も多いこと
しかし,いずれのグループの住民も半数近くが関心が
なども影響しているかもしれない。また,佐世保市自
あり今後参加してみたいとする傾向にあり,関心がな
体が住民の力ででき上がったのではなく,朝鮮戦争の
い住民は比較的少ない。また,市民スポーツ活動は,
特需といった外からの力でなりたってきたために,住
図4,図5に示すように,関心があり実際に参加して
民の力でまちをつくっていこうという意識が薄いのか
表3 ハウステンボスの影響に対する評価
愛着・協力型 連体欠如・関与回避型
②ハウステンボス駅ができて早岐駅
1.94
〈
2.44
>> 2.13
2.23
t値
2.25*
周辺が寂しくなった。
④東部地域出身の若い人が町に残る
2.69**
ようになった。
⑤他の地域から東部地域に人が住む
2.94 >>> 2.47
3.61***
ようになった。
⑦ハウステンボスによって新しい職
3.07
〉
2.85
>> 2.47
3.04**
2.60
〉
2.35
2.16*
2.35
〉
2.09
2.30*
2.77
2.25*
場、雇用が増えた。
⑪ハウステンボスは佐世保市東平地
域の経済、文化の核となっている。
⑭ハウステンボスができて町に活気
がでてきた。
⑳ハウステンボスができて観光客に
対してもてなしの心をもつように
なった。
注)*p<.05 **p<.01 ***p<.001
表4 実際のまちづくり活動(愛着・協力型)
ケース
活動
参加の形態
表5 実際のまちづくり活動(連帯欠如・関与回避型)
ケース
活動
参加の形態
1
町内会
自らすすんで参加
1
町内会
順番のため仕方なく参加
2
自治会
自らすすんで参加
2
町内会
誘われてすすんで参加
3
PTA
順番のため仕方なく参加
4
消防団
誘われて、すすんで参加
Uわれて、仕方なく参加
∑ヤのため仕方なく参加
ャ内会
V友会
Xポーツクラブ
nB会
フ謡会
3
町内会
4
PTA
ゥらすすんで参加
ゥらすすんで参加
ゥらすすんで参加
ゥらすすんで参加
誘われて、すすんで参加
自ら進んで参加
oTA
ャ内会
健 康 科 学
148
第22巻
もしれない(,しかし,愛着・協力型の住民は,リサイ
を見えない地下に通したり,景観にも非常に配慮した
クルやスポーツ活動に参加している人が他の活動より
っくりにしていることなどが影響を与えているのかも
も多くみられることから,これらの活動からまちづく
しれない、,実際,行政はハウステンボスから学んだこ
りへと発展させていく可能性をもっている。
とは,景観を大切にすることだと話しており,現在行
われている駅周辺の開発でも景観に配慮する視点を大:
6.ハウステンボスが開業して6年間の間に
活発になったまちづくり活動
連帯欠如・関与回避型では,6年間の間に活発になっ
図6,7に示すように,ハウステンボスが開業して
たまちづくり活動として多くの人が評価しているもの
6年間の間に活発になったまちづくり活動に対して,
はなかったが,そのなかでも多かったのは国際交流の
愛着・協力型は37%,連帯欠如・関与回避型は20%が
ための活動(7.0%),観光の活性化のための活動
あると考えている,,多いとはいえないが,ハウステン
(7.0%)である、,ハウステンボスはオランダの街並み
切にしているとのことである譜凱,
ボスはまちづくりに影響を与えていると認識している
再現しており,従業員には外国の人もおり,オランダ
住民がいることから,ハウステンボスはまちづくりに
の大学もあるため国際交流活動に影響を与えることが
影響を与えていく可能性をもっているようである。
考えられる,,また,近年アジアからの観光客も多くなっ
活発になった活動としては,表6,表7に示すよう
ているためその影響も考えられる、、
に,愛着・協力型からは,具体的には観光の活性化の
ここでも,ハウステンボスがまちづくりに影響を{弄
ための活動(11.4%),文化活動への参加(10.2%),
えたと認識しているのは,愛着・協力型の住民に多い,,
都市景観づくりの活動(10.2%)への影響があがって
これは,愛着・協力型の住民の方が,まちづくりへの
いる。ハウステンボスには年間400万人以上の観光客
関心があり参加する傾向にあるため,ハウステンボス
が訪れる観光地であるため,観光の活性化に影響は大
のまちづくりへの影響を認識していると考えられる。、
きいと考えられる、,また,ハウステンボスには美術館
も多くあるため文化活動への影響もあるかもしれない。
そして,都市景観に関しては,ハウステンボスは電線
7.ハウステンボスの将来像
ハウステンボスが将来無料開放されたときに,住民
7%
140/o
■関心があり、参加
している
■関心があり、参加し
ている
田関心があり、今後
参加してみたい
30%
国関心はあるが、参
回する気はない
国関心があり、今後参
隣してみたい
目関心はあるが、参加
する気はない
34 0/o
ロ関心がない
4e/.
ロ関心がない
45%
図2 リサイクル活動への関心・参加意志
(愛着・協力型)
図4 市民スポーツ活動への関心・参加意志
(愛着・協力型)
2%o
90/. OO/.
460/o
■関心があり、参加
している
o/o
289060
團関心があり、今後
参加してみたい
團関心はあるが、参
卜する気はない
ロ関心がない
□関心はあるが、参
乱する気はない
450/o
■関心があり、参加
している
困関心があり、今後
参加してみたい
ロ関心がない
440/o
図3 リサイクル活動への関心・参加意志
(連帯欠如・関与回避型)
図5 市民スポーツ活動への関心・参加意志
(連帯欠如・関与回避型)
住民の地域意識とまちづくり活動
149
が望むその姿は,地域との関わり方に関するものが多
地域にとけ込んでいない理由としては,従来のテー
かった。具体的には,「東部地域の中のハウステンボ
マパークのようにアトラクションを楽しむというより,
スをとらえるとしたら,現在ハウステンボスとの交流
雰囲気を楽しむというハウステンボスの良さをまだま
が全くない。今後,ハウステンボスと東部地域とのな
だ理解できない人も多いという。つまり,住民側のレ
んらかの交流ができるような行事が必要だと思う」,
ジャー享受能力のなさが原因となっていると考えられ
「地域住民が進んで参加できるイベントを企画し住民
る。また,ハウステンボスが定期的に,地区の自治会
参加,入場機会を増す.1,「地域住民と一体となった施
代表,佐世保市行政機関の支所,佐世保市役所とのモ
設づくりをしてほしい」,「地域活性化の中心的存在と
ニター会議を行なっている。モニター会議に出席する
なり,自然保護,環境保護,また,ボランティア意識
のは,自治会代表なので70才前後で,「花火の音がう
や人権活動を推進していくためのモデルとなってほし
るさい」などの苦情をいう場になっており,一緒にま
いと思う」,「いまのハウステンボスは我々普通住民と
ちづくりを行なおうとい提案はでたことはない註3)と
はかけ離れた世界なので,将来的に無料になるならば,
いう。ハウステンボスを嫌がってはいないが小さな迷
そのとき地域に親近感や愛着心が強くなると思われる。
惑まで文句をいうように,ハウステンボスと周りの住
そのためには,地域住民に遠来の友を気軽に招待でき
民という構図でしかないのである。
るハウステンボスであってほしい。(入場料割引にす
一一方,ハウステンボス側の問題としては,住民から
る)」,「住民の文化的向上の手助けの場になってもら
「入場料を安くするように」という意見が多くあがっ
えたらと思います1,「東部地域の核となり,観光,文
ているように,入場料が高いことがあげられる。
化などの発信地となることを切望する,,また,周辺地
また,子供向けの施設が少ないため家族連れでいく
域への経済の波及を大きく期待していますので,ハウ
ことが難しいことから,「家族連れで楽しめる施設が
ステンボス内のみでなく周辺にも関連施設を設置され
ほしい」という意見もあった。つまり,「お金のとり
ること」などの意見があった。このような意見が多い
すぎなので,普通のとなり村みたいに気軽に行けるよ
のは,ハウステンボスが地域にとけ込んでいないため
うになってもらいたい。子供が遊べる遊園地をつくっ
であると考えられる。実際「東部地域の中のハウス
てもらいたい」という意見がでているように,現状で
テンボスをとらえるとしたら,現在ハウステンボスと
はハウステンボスは気軽に遊びにいける施設になって
の交流が全くない」,「いまのハウステンボスは我々普
いないと思われる。
通住民とはかけ離れた世界」,「東部地域のために何の
両グループの比較としては,愛着・協力型の住民か
役にもたっていない」という意見があった。
らでた意見のなかには,「年寄りにも気軽に立ち寄ら
れる憩いの場となるよう年寄り向けの施設など増やす
べきである」,「佐世保一ハウステンボス間にサイク
ある
リング道路が出来たら良い」,「ただ流行や目先のこと
37%
にとらわれたおざなりのテーマパークが増えているな
かで,ハウステンボスは商業面,観光面はもちろん,
表6 ハウステンボスが開業して活発になった
図6 ハウステンボスが開業して活発になった
まちつくち活動(愛着・協力型)
ある
20 o/.
まちつくち活動(愛着・協力型)
観光の活発化のための活動 11.4%
文化活動への参加 10.2%
都市景観づくりの活動 10.2%
tW 黙…
yts
ない
表7 ハウステンボスが開業して活発になった
まちつくち活動(連帯欠如・関与回避型)
80 o/.
観光の活発化のための活動 7.0%
図7 ハウステンボスが開業して活発になった
国際交流のための活動 7。0%
まちつくち活動(連帯欠如・関与回避型)
健 康 科 学
150
第22巻
環境面をもしっかりと考慮した安定性のある施設だと
回避の住民には,地域の人々と接する機会をもち,ま
思う,,こうした欧米型の理念のよいところを他の諸施
ちに対する愛着や協力の意識を育てることが第一…であ
設,さらには市・県,広範囲に広げていったらいいと
る。また,ハウステンボスは行政のまちづくりへ影響
思う、,今後は,ハウステンボスが文化面(芸術・音楽
を与え,その影響を認識している住民もいるので,今
など)において,拠点となるよう企画を広げていった
後は,住民のまちづくり活動へ関わっていくことは可
らよいのではないか」とハウステンボスに対する提案
能である。住民のまちづくりに関わることにより,た
だの箱ものではなく,「まち1の…・部となることが可
もいくつかみられた。
能になるのではないだろうか、,
まとめ
註
田村(1999)は,「誘致であっても受け入れでも,
始めは地元に関係ないものでも,できてしまえば『ま
1)19項目のうち2項目は地域に対する満足度などを
ち』の一部になる。『まち』全体が将来にわたってど
聞くための項目であったため因子分析のときは除
うなるものかという見通しと理念を地域の側がもって
いた。
いないと,一一一一時的な経済的活性化や人口増加があって
2)1998年9月8日に行なった佐世保市都市整備部都
も,創造とはいえない。」4}といっている。ハウステ
市計画課主査,田崎氏のインタビューより
ンボスの事例をみると,愛着・協力型は,人口,産業,
3)1998年9月8日に行なった佐世保市企画調整部企
地域での位置付けなど様々な側面でハウステンボスの
画調整課企画調整係長,森永氏のインタビューより
影響を評価しているが,住民の全体的な評価としては,
産業としての影響のみである,、しかし,住民からハウ
文 献
ステンボスの将来像に関して,地域との関わりに関す
るものは多くあがっているため,ハウステンボスや行
1)神近義邦:千年の街を創る一一ハウステンボスの
政がこれらをうまく取り入れていくことにより,今後
「街づくりj.岩崎忠夫・渡辺貴介・森野美徳編,
ハウステンボスが「まち}の一部として地域に根付い
シリーズ 地域の活性と魅力 第4巻 いこい
たものとなっていく可能性をもっているのではないだ
一リゾート,テーマパーク.ぎょうせい,1996.
ろうか,,
pp. 25−36
また,住民のまちづくりに関しては,まちづくりへ
2)川原紀美雄:海洋複合先端都市の協奏.鈴木廣・
の参以行動は地域意識に規定されていることが明らか
木下謙治・三浦典f・豊田健二編,まちを設計す
になっている。地域意識の愛着・協力は,参加行動に
る一実践と思想一.(財)九州大学出版会,
作用している。まちづくりに積極的に対応できる意識
1997. pp. 196−204.
が,地域に対する愛着の気持ち,地域の活動に対する
3)佐世保市企画調整課 企画調整部:佐世保市総合
協力の姿勢の中から形成されてくることを示している。
計画書21(概要版),1998.
しかし,実際のまちづくり活動は活発とはいえない,、
4)佐世保市都市マスタープラン(案)
今後は,ひとを中心としたまちづくりを行っていこう
5)田村 明:まちづくりの実践.岩波書店,1999.
とする行政が,まちづくり活動の情報や機会を与え,
pp. 110−112.
参加のきっかけをつくることにより,愛着・協力型の
6)田村 明:まちづくりの発想.岩波書店,1997.
住民の関心や参加意志を行動へと結び付けることがで
pp. 14−26.
きると考えられる。特に,リサイクルや市民スポーツ
7)長崎県企画部統計課:データでみる長崎県 なが
活動に関しては,現在でも参加している人が他の活動
さきP&A,1996.p.134.
と比較して多くみられるので,これらの活動からまち
8)森川 稔:「まちづくり」って何ですか.季刊 湖
づくりを広げていくことが可能ではないだろうか,,一一
国と文化,82:15−17,1998.
方,地域の関係の希薄さを感じている連帯欠如・関与