foods! ex

震災で大打撃を受けた沿岸部の第一次産業。
それを受けて、食品製造業の事業者たちは、
商品開発や販売方法などで、大きな変革を迫られた。
変化する食の価値観、そしてめまぐるしく動く市場に
新しい食のアプローチで立ち向かう企業の姿を追った。
ex
foods!
菌床しいたけ栽培を手がける南三陸町の株式会社椎彩杜。
震災から立ち直り、年間約96トンの出荷を目指している
「食」の復活・販路拡大
02
集
特 (9ページ参照)
特 集
「決して限界をつくらない」。
全員でその思いを共有しつつ
会社を強く育てていく。
笹かまぼこ
さん
株式会社 佐々直
代表取締役
佐々木直哉
日には試運転を実施、そして東北新幹線が
も力を入れました。それが高知県産のフレッ
粕仕込みにした『旬海漬』などを世に送り出
『揚蒲鉾』、『おとうふかまぼこ』、鮮魚を
を今に受け継ぎ、同社では『笹かまぼこ』や
が、〈株式会社佐々直〉の先代だ。その伝統
身とされる『手のひら蒲鉾』を生み出したの
産物の商いを行い、明治期に笹かまぼこの前
た閖上浜(名取市)。慶応年間よりこの地で海
台空港アクセス鉄道・杜せきのした駅の近く
ープ施設等復旧整備補助事業を活用して、仙
み。そこで、平成
年4月に中小企業等グル
「中田バイパス工場は、笹かまの1ラインの
度解雇した従業員の再雇用もスタートした。
製造再開までわずか9日間。これを機に、一
日に営業を再開した。工場の床工事開始から
仙台から東京まで再開通した平成
「まだまだ震災前の数字には届かないのが現
と何度も言葉を重ねた。
「私たちはまったく復興には至っていない」
木社長は厳しい目を向ける。取材中、社長は
その一方で、現在の経営環境について佐々
な後味は、夏にぴったりの商品です」
ガのシャキシャキとした歯ごたえ、さわやか
『生姜』です。魚本来の味と、千切りショウ
シュなショウガをたっぷり入れた笹かまぼこ
してきた。本店工場、第一工場、第二工場な
に名取工場を新設しました。生産品目と生産
状。工場新設に伴った二重債務については東
年4月
ど、生産施設をすべて閖上に構え、震災前の
能力の回復もさることながら、とにかく待機
日本大震災事業者再生支援機構の支援も受け
います。震災直後は買って応援という風潮も
億円だった。
従業員を再雇用したいという思いが強かった
ありましたが、震災から3年が過ぎたことも
売上高は
「震災時、全従業員を帰宅させてからも本店
名取工場の完成に伴い、それまで休止して
上の津波が押し寄せてきました。高さは9〜
いた『揚蒲鉾』や『おとうふかまぼこ』の生
あり、まさにこれからが正念場となってくる
当時をこう振り返るのは、代表取締役の佐
住者が増えた場所でもあり、そういった方々
を開店。この界隈は震災以降、閖上からの移
した時だと思っています」
時は、あらゆる数字が震災前の状態まで回復
メートル。何度も押しては引き、工場はも
産を再開させ、再雇用も着実に進めた。また、
々木直哉さん。広告塔のある西棟上階に避難
の「近くで買える店がほしい」という要望に
震災以前に比べて、回復した生産量は7割
し、その一部始終を間近に目撃した。同社の
ったと佐々木社長は振り返る。
ばとの思いがあったとはいえ、苦渋の選択だ
当面の生活を失業給付金でしのいでもらえれ
従業員100余名の解雇を余儀なくされた。
い去った。また、生産再開ができるまで、全
ただけでなく、大切な従業員5名の命をも奪
のは何よりもうれしいですね。事業再開から
「当社の商品にお客さまがついてきてくれる
れ行きを見せているという。
の商品よりも高単価でありながら、好調な売
が高く、特に神奈川県内の量販店では、他社
る。量販店用の笹かまぼこは首都圏でも人気
量販店用に
フト向けの商品を多彩に販売しているほか、
現在、同社では、直売所や百貨店などでギ
は『自ら限界を作らないこと』の大切さ。そ
自信につながりました。そこから気づいたの
員の努力のたまものであり、私たちの大きな
何とか応えることができたんです。これは社
かに上回る注文が入りましたが、その要望に
「先日、当社が想定している生産能力をはる
かして語るものの、インタビューの最後には
くための秘策は「特にない(笑)」と冗談め
程度と佐々木社長。厳しい状況を打破してい
それゆえに、佐々木社長はスピード感を伴
れこそが当社が復興していくためのカギにな
次のようなエピソードを披露してくれた。
って再起を進めていった。直売店のひとつ、中
3年を超え、ようやく既存品目の生産が回復
ると思っています」
枚入りの笹かまぼこを卸してい
田バイパス店の奧にあった休止工場を急きょ
しましたので、今シーズンは新商品の開発に
日後の
月
整備。機械を購入し、震災から
8
第一工場など、すべての生産施設を全壊にし
応えてオープンした。
でしょうね。私たちが『復興した』と言える
とより、周囲の倉庫や住宅を流し尽くしてし
年7月には工場に併設する形で直売所
平成
24
まいました」
ていますが、経営的には厳しい状況が続いて
ですね」
藩政時代には伊達家直轄の漁港として栄え
しめる新しい味わい。1枚150円(税込162円)
12
被害は深刻なものだった。津波は本店工場、
25
は首都圏でも人気の商品
株式会社 佐々直
ショウガを千切りにし、シャキッとした食感と魚の風味が楽
工場に残っていたのですが、想像していた以
25
ex
foods!
03
04
23
20
平成26年6月に新発売された笹かまぼこ『生姜』。高知産の
10
4
40
特 集
ex
foods!
量販店用に出荷される8枚入りの笹かまぼこ
仙台市太白区中田町字清水15-1
TEL 022-241-2324(代)
http://sasanao.co.jp/
名取工場には「なるべく閖上の近くで操業を」との思いが込められてい
る。また、近所の住民の方々の要望に応え、直売店も併設した
foods!
最もトレンディな海藻といえるでしょうね。
ューアルすることを思いついた。
を参考にし、独自の製法で作った藻塩をリニ
さらに、現社長の廣志さんも、平成2年に
言ってもいいかもしれませんね」
そういう意味では6次産業化のパイオニアと
造までを手がけるようになりました。祖父は
昆布やワカメ、アカモクを収穫し、加工・製
たのだ。それが、今ではアカモク関連商品は、
ていなかったアカモクに価値を見出そうとし
だ。同じ発想で、それまで地元では食べられ
をつけ、販路を拡げることが目的だったそう
どで値段のつかない海藻を加工して付加価値
そもそもこの会社を立ち上げたのも、傷な
ンズオン支援事業』を利用して実現した。
が実施している専門家による実践的支援『ハ
俊介さんが担当し、『仙台市産業振興事業団』
新しい感覚を盛り込んだ今回の商品開発は
路拡大を狙っています」と俊介さんは話す。
す。そして今回はさらにリニューアルして販
の機能性を含む塩として差別化を図っていま
「アカモクに目をつけたのも、最初は父なん
「まず考えたのが100グラム単位からの小
は、アカモクの更なる販路拡大を目指す。
これまでにない商品ができたと思っています。
新。専門家のアドバイスをいただいたことで、
里をつなぐ香り塩』と称して、デザインも一
をラインナップに加えました。宮城の『海と
いるが、中でもアカモクは、ミネラルや食物
藻は、美容と健康の強い味方として知られて
アカモクを活用した製品開発に着手した。海
を受けたこともあり、
〈シーフーズあかま〉は
もキャップが付いているので保存するときも
たいときに使う分だけ出すことができ、しか
「ちょうどゼリー飲料のような容器で、使い
ブタイプの容器を採用し、市場の拡大を狙う。
そして、俊介さんは新たに開発したチュー
の方々とのつながりをより強くし、刺激し合
ね。加えて、復興を目指す三陸沿岸の生産者
地元を盛り上げたいという気持ちは強いです
「やはり塩竈で生まれ育った人間ですから、
塩竈の地名の由来でもある藻塩焼きに使われ
新しいアイデアをどんどん実現していきたい
押しのアカモク製品を全国に広めるために、
創業は25年前。当時から、今で言う6次産業化を実践。付加価値を加えた
14名のスタッフとともに、さらなる販路拡大を目指している
魅力ある商品づくりを行ってきた
もっともトレンディな海藻、
『アカモク』を全国に発信し、
三陸沿岸の活性化を目指す。
株式会社
他の海藻に比べて、丈が長く加工が難しかっ
「塩の製造工程中にアカモクを煮詰め、塩分
さん
シーフーズあかま
マ ネ ー ジャー
赤間俊介
平成元年に現社長の赤間廣志さんが立ち上げ
たのですが、短く切り揃え、工場にあったメ
塩竈市藤倉にある〈シーフーズあかま〉は、
た海産物加工業を営む会社だ。今回お話を伺
の濃縮が進むことによってアカモクの成分が
することに成功し、約
カブの製造ラインを使うことで〝たたき〞に
年になる。
った赤間俊介さんは社長の長男で、入社して
ちょうど
中国の大連でワカメなどの養殖指導を行った
会社の年商の3分の1近くを占めるまでにな
「気仙沼のくわ茶、大河原の梅しそ、蔵王山
ですよ」と俊介さん。
袋販売でした。使う人の身になって考えると、
本当に感謝しています。当社の藻塩の美味し
麓のゆず。この3種類の香りを合わせた藻塩
アカモクとは、松島湾に広く自生している
どうしてもこのくらいのサイズがちょうどい
などパイオニア精神を受け継いでいる。
ホンダワラ科の海藻で、秋田県ではギバサと
い。あわせて土産品の提案など、自分なりの
呼ばれ、古くから食用とされてきた。平成
さをよりたくさんの方々に味わってほしいと
繊維、ポリフェノールに加え、生活習慣病の
安心。まさに、
〝使う人の気持ちを考えた〞自
た「藻」も実はアカモクだとされ、廣志社長
ですね」
していきたいです。そのためにもまず、いち
いながら東北の水産業を復活、そして元気に
さらに、今後の取り組みについて俊介さんは、
予防に効果があるとされるフコイダンを豊富
た。しかし、大昔から松島湾に生えていたア
年ほど前のことなのだそうだ。
カモクが、県内の食卓にデビューしたのはわ
ずか
は古い文献と御釡神社に伝承されている神事
さらに、俊介さんのアイデアは止まらない。
信作です」
年に地域産業資源として、塩竈市地域が指定
19
に含むことから、健康食として注目されてい
いう思いを込めました」
営業活動を行ってきました」
代々のパイオニア精神を受け継ぐ俊介さん
り、最近では、従来より収穫時期が1ヵ月ほ
ばさ』として販売を開始しました」
10
った。
社の藻塩は、一般的な海水塩と違いアカモク
溶出し、塩に取り込むことができるんです。当
さまざまな料理との相性を楽しめる香り塩を新たに発売する
年 前 、『おさしみぎ
海藻アカモクを古式製法にのっとって復刻した藻塩をベースに、
ど早いワカメ『金華の誉』の養殖に成功する
「基本的には漁師なのですが、祖父の代から
10
「いわば、海藻界のニューフェイスであり、
10
津波により養殖施設と漁船を失ったが、加工工場の被害は軽微で済んだ。
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05
06
特 集
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アカモク・しおがまの藻塩
特 集
株式会社 シーフーズあかま
宮城県塩竈市藤倉2-14-14
TEL 022-362-5653
http://www.kaisounomori.jp/
(公財)仙台市産業振興事業団
仙台市青葉区中央1-3-1 AER7階
TEL 022-724-1212 http://www.siip.city.sendai.jp/
foods!
ex
foods!
創業以来の製法が差別化に。
地道なファンづくりが
新たな販路を切り拓く。
に顔を出してくださったお客さまもいらっし
さん
株式会社カネシゲ
髙嶋商店
専務取締役
出されている。こうした品評会に出品を重ね、
ゃったんです」
髙嶋康博
受賞を果たしても、販路拡大に直接結びつか
年の創業。
初代から干物を専門とした加工業を営んでお
ないこともあると髙嶋専務は語る。
が倒れたほか、床にヒビが入った程度だった
〈カネシゲ髙嶋商店〉は、昭和
り、専務の髙嶋康博さんで3代目を数える。
「ひとつの理由として挙げられるのが、原材
震災における同社の被害については、機械
同社が手掛けている干物は、いずれも大型で
と髙嶋専務は振り返る。被害が軽微だったこ
日から製造を再
味をたっぷりと楽しんでいただけます」
んです。味も水っぽくなく濃厚で、魚のうま
が特徴。解凍してもドリップがあまり出ない
「当社の製品は、乾燥に時間をかけているの
が落ち着いていれば、さらに販路拡大ができ
しゃるんです。ですから、あの時に原料価格
く、直接うちの工場に買いに来る方もいらっ
の商品をおもしろがってくれるお客さまは多
なサイズを使って、じっくりと干すというこ
たちを引っ張っていかないと』という一念で
「震災直後は『動ける人が動いて、周囲の人
提供した。
災者支援の販売会に参加して、商品を安価で
開。多賀城市の依頼を受け、同市が開いた被
は高く評価されており、平成
年には同業の
どに積極的に出店しているほか、仙台市中心
山形県村山地域による仙山交流のイベントな
髙嶋専務。その上で、干物を主力製品にしな
る水産加工団地への工場移転を第一に掲げる
今後の目標については、塩竈市新浜町にあ
ましだまし使っていた機械に限界が来て新調
部の東北ろっけんパークや、仙台なびっくで
がら、新たな製品の開発にも挑戦してみたい
回全国水産加工品総合
賞を獲得した。
開かれた復興物産市『東北いいもんパーク』
と語る。
先輩に勧められて第
「別に変わった作り方をしているわけではな
にも参加した。こうした販売活動を通して、
「工場は大きな生産ラインでなくとも構わな
したり、工場のシャッターを新設したという
く、代々受け継がれてきた製法を守り続けて
髙嶋専務が感じたこととは。
いのですが、たとえばその一角に魚焼き器な
販路を拡大する手段として、髙嶋専務は、
いるだけです。ただ、当社の干物は手間を惜
「高くても自分が気に入ったものであれば、
どを入れて、干物以外の分野にも踏み出して
同社の製品のファンを獲得していくことに力
しまず、時間をかけて作るので、他社が真似
買ってくださる方が多くいるということ。当
いきたいですね。それから、近所にお住まい
品質審査会に『ツボ鯛の一夜干し』を出品。
をすると経費のかかる商品になってしまうん
社としては、リピーターのお客さまを増やし
の方でも、当社の商品を食べたことがないと
こともあるので、助成を含めた支援制度の活
です。ですから、魚の大きさもさることなが
たいので、販売店さんとも当社のファンをコ
いう方はまだ多いと思うんです。ここに直接
を入れる。同社では、毎月最終日曜に富谷町
ら、味そのものや製法が差別化に結びついて
ツコツと増やしてくれるような、長いスパン
お買い求めにいらっしゃる方も多いことです
初めてのエントリーにも関わらず、1400
いるのではないかと思います。当社のような
で付き合ってくださる関係を築きたいと思っ
し、どこかに直売店を置くのもいいかなと考
用も視野に入れています」
小さなところは、大手と同じことをやってい
ています。また、一連の販売活動を通して、
えています。その実現のためにも、まずは当
内で行われている朝市や、宮城県仙台地域と
回宮城県水産加工品品評会では、大型の有
また、震災から3年ぶりに開催された、第
人とのつながりの大切さを感じました。震災
社のファンを着実に増やしていきます」
社の中から3社のみに贈られる農林水産大臣
頭キチジを甘塩にしてじっくりと干し上げた
後の出店では、私の安否を確認するためだけ
ても勝てませんからね」
『吉次一夜干し』が、優れた水産加工品に選
20
21
塩竈市内の水産加工業者からも同社の干物
した。ただ最近では、被害を受けながらもだ
21
たと思います」
たる。
料の高騰です。ツボ鯛の時がそうだったんで
33
脂がしっかりと乗っており、魚種はホッケや
も大型で肉厚の魚を使用している
とと、電気が早く復旧したこともあり、在庫
ング海産の『縞ホッケの一夜干し』。いずれ
すが、受賞直後に不漁が続いて仕入れ値が跳
うま味を絶妙に封じ込めた逸品。右はベーリ
ツボダイ、キチジ、イカ、サバなど多岐にわ
夜干し』。じっくり時間をかけて水分を除き、
していた原料を使って3月
会で農林水産大臣賞を受賞した『ツボ鯛の一
ね上がってしまったんです。それでも、大き
写真下が第20回全国水産加工品総合品質審査
38
07
08
特 集
ex
手造りひもの工房
特 集
株式会社 カネシゲ髙嶋商店
宮城県多賀城市下馬5-13-16
TEL 022-362-2915
初代からの製法を頑なに守り続ける。その丁寧な仕事が品評会などで
高く評価され、多くのファンを生み出している
特 集
3年目にして、ついにフル稼働へ。
菌床しいたけの新しい魅力を
全国に向けて発信したい。
トンと以前の約5分の1
株式会社
椎彩杜(しいさいど)
さん
代表取締役社長
髙橋幸俊
さらに、〈椎彩杜〉では『椎茸リーフパイ』
(しいさいど)〉は、そ の 津 波 に よ っ て ほ と
たけの栽培を手がけていた〈株式会社椎彩杜
た。南三陸町志津川の小森地区で、菌床しい
た約1500坪の土地に5棟の新施設を建設
支援事業』の採択を受け、同町の高台に借り
に、宮城県の『特用林産物生産施設早期再開
なく地道に生産を続け、ついに平成
にまで減少した。それでも、あきらめること
うと思ったのがきっかけでした。もともと菌
形で、椎茸を生かしたさまざまな商品を作ろ
には売上が減少してしまいます。そこを補う
「生しいたけは、どうしても暑い夏場の時期
などの菓子類から、『炊き込みしいたけごは
んどの施設を失った。
し、仕込みを開始した。
床栽培は原木栽培に比べ、安定的に収穫でき
年の年間生産量は
はできることから再開に着手。しかし、その
菌床しいたけ
南三陸町を襲った津波は町の中心部はもと
「社長である父と専務の兄、そして自分もな
「この冬の大雪で当初よりは遅れていますが、
るのが魅力。そのうえ、おいしい椎茸を使っ
より、海岸から3㎞の離れた山間まで到達し
んとか生命だけは助かりました。きのこを作
まもなくフル稼働できる予定です。目標の年
た商品開発をすれば、さらなる販路拡大につ
10
幸さん。
と話すのは、社長の次男であり常務の髙橋浩
けに、それを見た時にはうれしかったですね」
いました。一時はやめようかと思っていただ
たけを有効活用しようと、女川のかりんとう
「もともとは、出荷するには小さすぎるしい
販売も手がけていた。
たけや乾燥しいたけのほか、加工品の開発・
また、〈椎彩杜〉では、震災以前から生しい
沼市や栗原市などの産直、さらには東京の「み
の「さんさん商店街」で販売。その他、気仙
南 三 陸 町 内 で は 歌 津 「 み な さ ん 館 」、志津川
『椎茸かりんとう』を平成
人員体制が整い、施設のフル稼働が実現した
現 在 、『 椎 茸 か り ん と う 』 な ど の 商 品 は 、
込めて話す。
〈株式会社椎彩杜〉は、J A 職 員 だ っ た 浩 幸
やぎふるさとプラザ」でも購入可能だ。
冬場の収入源にと脱サラして始めた菌床しい
います。食べていただいた方からは『しいた
のち、自社内での加工にも着手する予定だ。
さんの父幸俊さんが、平成
たけ栽培がきっかけ。その6年後には法人化
けが苦手な人でも、これなら食べられる』と
ける方法で栽培するもの。1ブロックからは
のおがくずブロックにきのこの種菌を植え付
移してしまった。そういう状況にもかかわら
を南三陸町から約900㎞も離れた鳥取県に
た〈きらら女川〉も震災で被災し、製造拠点
しかし、かりんとうの製造をお願いしてい
生まれます。仕事に対する誇りと地元で働く
が全国に広がれば、携わる私たちにも自信が
ね。魅力的な製品を作ること、そしてそれら
ただいて、全国へ拡大していけたらいいです
「まずは地元宮城で美味しいという評価をい
新しい施設内には加工設備も整えている。
し、改良を重ねて作り続けた生しいたけは、
評価をいただいていました」
個、約1㎏ ほど収穫できる。〈椎 彩杜〉
22
の植え付けから収穫までを約9ヵ月間かけて
では約1万8000個のブロックを使い、種
ひとつの商品を試行錯誤して作り上げてきた
も連携は続けています。何もないところから、
「せっかくつながった縁なので、離れた今で
ず、現在でも両社の連携は続いている。
ャレンジを続けている。
床しいたけ栽培のさらなる飛躍を目指し、チ
浩幸さんは地元活性化への可能性も秘めた菌
営に結びつけていきたいと思っています」と
ことの喜びを、今後の雇用をはじめとした運
震災前は年間生産量
・8トンと規模も拡
76
じっくり行なっている。
ので、今後も共に協力してやっていきたいと
〜
さ れ る 。『菌床しいたけ』とは、約 ㎝ 四方
年から販売して
製造会社〈きらら女川〉を紹介してもらい、
ながると思うんです」と、浩幸さんは期待を
など惣菜類の商品も企画。
んの素』『切り干し大根としいたけの煮付け』
るための仕込棟、培養棟、散水棟そして発生
トンの生産を可能にし、1日も早く全国
月
棟など計8棟の栽培施設は津波で流出しまし
間
25
へ出荷したいですね」と浩幸さんは話す。
年
たが、少し離れた高台にあった一棟がかろう
16
年に養蚕農家の
じて残り、そこでしっかりきのこが成長して
96
思っています」
20
東京の百貨店からも指名買いされるほど 注 目
14
大し、順調に業績を伸ばしていた矢先の被災
70
厚さ3センチの断熱材で守られている、培養棟。徹底した空調管理の下、
約1万8000個の菌床ブロックの培養棟で、菌床しいたけの魅力を熱く語る常務取締役の
ここでしっかりと種菌を増殖させていく
髙橋浩幸さん
ex
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だったが、残った一棟で、震災直後の5月に
60
09
10
特 集
ex
foods!
株式会社 椎彩杜
宮城県本吉郡南三陸町入谷字桜沢516
TEL 0226-46-2237
http://ameblo.jp/small-forest-mobile/
伝統が培った製麺技術と、
新たな製法が作り出した宮城
産食材にこだわった新商品。
株式会社
マルニ食品
代表取締役社長
さん
指した直営店をオープンさせることにしたん
二階堂玲子
した」と代表取締役社長の二階堂玲子さん。
年夏、こだわりの麺と郷
です」と二階堂さんは話す。
こうして、平成
く親しまれてきたが、戦後は製麺メーカーに
た。地元住民や街道を行き来する人びとに長
初代・二階堂文左衛門が麺茶屋として創業し
を完成させた。
て作り上げた、半生手延べうどん『青葉の恋』
し、代々受け継がれてきた製麺技術を生かし
年3月、県内産小麦「あおばの恋」を使用
食材にこだわった新商品の開発に着手。平成
ある〈マルニ食品株式会社〉では、県内産の
どん『青葉の恋』だ。
水」を使用して生まれたのが、半生手延べう
が豊富な気仙沼産の「桑の葉」「北上水系の
った塩竈産の「藻塩」とミネラルとビタミン
いる。この小麦粉に、古代より製塩が盛んだ
強く、麺の色ツヤにも優れているといわれて
麺に加工すると、粘りと弾力性、滑らかさが
る宮城県で品種改良された新品種の小麦で、
「あおばの恋」は、登米市を中心に育成され
した新商品の開発に取り組むことになった。
種として採用されたことを受け、これを使用
のストライプ麺になるストライプ製法を新た
もっと個性を持たせたいと、濃い緑と淡い緑
完成当初は淡い緑の麺だったが、どうせなら
年に渡る開発期間を経てついに完成となった。
り支援事業』に採択され、平成
の協力もあって、宮城県の『売れる商品づく
『青葉の恋』は、〈東経連ビジネスセンター〉
一方、震災前から研究開発を続けてきた
りたいという思いが込められていた。
もてなす「くつろげる温かい家」のようにあ
に、この地区に避難してきた多くの被災者を
店には地元住民のふれあいの場になると同時
土料理が楽しめる〈麺や文左〉がオープン。
転換。高度経済成長とともに事業を拡大させ
「まもなく創業130周年という節目を迎え
に考案し、見た目にも斬新で爽やかな麺にリ
年、
「あおばの恋」が宮城県の奨励品
てきた。麺茶屋時代から親しまれてきた伝統
ることもあって、『青 葉 の 恋 』 開 発 に 取 り 組
ニューアルを施した。
〈マルニ食品〉は、明治
年(1885年)、
の手延べ麵は、うどん、蕎麦、中華麺、焼き
みましたが、当初は小麦自体の品質がなかな
「現在まで、さまざまな種類の麺をラインナ
年3月、5
そばにまで至り、また、郷土食文化として受
か安定せず、商品開発は一筋縄ではいきませ
も行っている。
これらをトータルした世界観でのブランディ
もにスーパー、次いでコンビニが進出し、個
人商店や飲食店に納入していたが、時代とと
災で工場内がめちゃくちゃになった。また、
究開発を続ける中、東日本大震災が発生。震
そして、試行錯誤を重ね商品化に向けた研
ティングやブランディングなど、多方面から
の平成
『青葉の恋』は、
〈東経連ビジネスセンター〉
ングを目指します」と二階堂さん。
人 商 店 は 減 少 の 一 途 を た ど っ た。〈マルニ食
地盤沈下によってインフラが寸断され、なん
強力にバックアップされることで、さらなる
転換当初は、数多く存在していた地元の個
品〉も時代に合わせて、納入先をスーパー、
とか工場稼働に持ち込むことができたのは、
の一括納入が多くなり、お客さまとの直接の
可能になりましたが、一方で配送センターへ
「スーパーやコンビニの普及で、大量納入が
増え、生産量は大幅に増加した。
けて、原点に帰ることを決意しました。そこ
ではいけないと感じていましたが、震災を受
「震災前から、お客さまの顔が見えないまま
上げが戻るには半年を要した。
ます」
えてくれた多くの方々へ恩返ししたいと思い
で、地元経済の活性化に貢献し、これまで支
なく、宮城産の食材を広くアピールすること
「地産地消はもちろんですが、それだけでは
26
で、再び地域の方々との温かいつながりを目
年度の支援事業に認定され、マーケ
年頃か
広がりが期待できる。
60
らコンビニが急激に増えたことで、納入量が
コンビニへと新たに開拓。特に昭和
震災発生から1ヵ月後だった。さらに、売り
長の上野千恵さんは当時を振り返る。
け継がれる小麦の練りもの「はっと」の製造
帰を見せている。そんな中、登米市南方町に
23
ップし、直営店もオープンさせてきましたが、
平成
社内でも地域に根ざした事業を展開するため、
ページのほか、仙台駅、仙台空港、道の駅など
東日本大震災以降、宮城県をはじめとした
で購入できる
被災各地では、地域の絆を大切にする気持ち
製法に、特許出願中のストライプ製法で作
地元食材の活用が検討されるようになった。
創業時から伝承されてきた手延べうどんの
んでした」と、開発を担当した取締役製造部
21
とともに、地元食材など地域財産への意識回
られた『青葉の恋』。
〈麺や文左〉や自社ホーム
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foods!
つながりが減ってしまったように感じていま
仙台市青葉区中央2-9-10-11F TEL 022-225-8561
代表取締役社長 二階堂玲子さん(写真左)と、取締役製造部長 上野千
http://www.tokeiren-bc.jp
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特 集
foods!
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半生手延べうどん
特 集
つるつるなめらかな平麺『麦つるり』と、
低分子コラーゲンを独自の製法で練り込
んだ『花つるりん』はギフト用にも人気
マルニ食品 株式会社
宮城県登米市南方町鴻ノ木123-1 TEL 0220-58-5502
http://www.02-food.com
麺や文左
宮城県登米市南方町雷35 TEL 0220-29-7227
営業時間/11:00~15:00(LO14:00) 17:30~22:00(LO21:00)
http://bunza02.jp
東経連ビジネスセンター
恵さん(写真右)後ろに見えるのは『麺や文左』